大東文化大学 4班 五十嵐亮佑 諏訪靖奈 瀬戸祥雄 花王「エコナ」の絞り込み戦略 大東文化大学 4班 五十嵐亮佑 諏訪靖奈 瀬戸祥雄 これから4班の発表を始めさせていただきます。テーマは、花王「エコナ」の絞り込み戦略です。 発表者は、五十嵐亮佑、諏訪靖奈、瀬戸祥雄です。よろしくお願いいたします。★
目次 1. はじめに 2. 企業概要 3. 花王について 4. エコナとは 5. エコナの売上高 6. 食用油市場 7. 絞り込みによるマーケティング 8. 広告宣伝活動の展開 9. 販売戦略 10.研究開発に関しての基本方針 11.考察 12.参考文献 本日は、はじめにテーマ設定の理由からお話し、企業概要、花王について、エコナとは、エコナの売上高、食用油市場、絞り込みによるマーケティング、広告宣伝活動の展開、販売戦略、研究開発に関しての基本方針についての研究発表をし、最後に私たちがエコナについて学んだ上での考察をお話ししたいと思います。★
1.はじめに ライオンの部屋干しトップの成功にいたるまでの、ニーズを絞り込んだマーケティングプロセスに興味を持った。 他にも、成功している商品はないかと考えたところ、花王のエコナが適切ではないかと考え、エコナについて詳しく調べることにした。 私たちは、「ケースに学ぶ経営学」の第16章で取り上げられているライオンの部屋干しトップの成功にいたるまでの、ニーズを絞り込んだマーケティングプロセスに興味を持ちました。 他にも、ニーズを絞り込んだマーケティングで成功している商品はないかと考えたところ、現代の健康志向に伴い順調に売上を伸ばしている花王のエコナが適切ではないかと考え、エコナについて詳しく調べていくことにしました。★
2.企業概要 設立 昭和15年5月(1940年) 代表者 尾崎元規 売上高 連結 13,185億円(2008年3月期) 従業員数 5,642人(連結対象会社合計 32,175人) 本社所在地 東京都中央区日本橋茅場町1-14-10 事業内容 パーソナルケア製品・化粧品・洗剤・サニタリー・ヘルスケア製品等の家庭用製品および食品・各種工業用製品の製造・販売 花王の企業概要です。 従業員数は、約5千6百人です。売上高 は、連結で約1兆3千2百億円です。 事業内容は、体、顔、髪の毛に関するケア製品であるパーソナルケア製品・化粧品・洗剤・サニタリー・ヘルスケア(健康管理)製品 などの家庭用製品および食品・各種工業用製品の製造・販売 です。★
3.花王について ? 健やかな部分を強化しよう! エコナという商品が生まれた 経営理念 花王は、清潔で美しく健やかな暮しに役立つ商品を作りだすことで、顧客から最も支持され、信頼される企業グループとなることを目指している 尾崎元規社長 健やかな部分を強化しよう! 清潔 石鹸 美しさ 化粧品 健やかさ ? 花王は、清潔で美しく健やかな暮しに役立つ商品を作りだすことで、顧客から最も支持され、信頼される企業グループとなることを目指しています。 ★清潔という分野では、石鹸。★美しさでは化粧品などが代表的商品でありますが、★健やかな、という分野では、代表的な商品はありませんでした。そこで、★開発者は、健やかなという分野を強化しようと開発を行い、★エコナという商品が生まれました。★ エコナという商品が生まれた
4.エコナとは 花王から1999年に発売され た健康志向の植物性油 食用油として初の特定保健用食品認定 日本人間ドッグ学会の推薦 花王から1999年に発売され た健康志向の植物性油 食用油として初の特定保健用食品認定 エコナは1999年に花王から発売された健康志向の植物性油です。また1998年に当時の厚生省に食用油としては初めて「特定保健用食品」の表示を許可されました。 発売の翌年には、民間企業の商品として初めて日本人間ドッグ学会の推薦も受けるなど高い評価を得ています。その後、花王は2003年に「特定保健用食品」の表示許可されたヘルシア緑茶を発売し健康食用市場を拡大してきました。 味は、風味が軽く揚げ物や炒め物などに使用する従来の食用油と変わりません。★ 日本人間ドッグ学会の推薦
油として再合成されにくく、食後の血中中性脂肪が上昇しにくい 脂肪が燃焼しやすく、体に脂肪がつきにくい VCVCC 脂肪酸 一般の食用油の主成分 VCVCC グリセリン 油として再合成され全身にまわる トリアシルグリセロール 脂肪酸 「エコナ」の油の主成分 VCVCC グリセリン エコナがほかの食用油とどのように違うのか一般の食用油と比較して説明します。一般の食用油はトリアシルグリセロールという成分が主成分ですが、エコナはジアシルグリセロールという成分が主成分です。ジアシルグリセロールはトリアシルグリセロールより脂肪酸を一つとった形をしています。これにより、食後の血中中性脂肪を上昇させにくいため、体に脂肪がつきにくい特性を持っています。 食に欠かせない油という物で現代日本が抱える「肥満」、「生活習慣病」という問題の改善につながる商品です。★ 油として再合成されにくく、食後の血中中性脂肪が上昇しにくい 脂肪が燃焼しやすく、体に脂肪がつきにくい ジアシルグリセロール
5.エコナの売上高 年度 (2004年) エコナの売上高です。 2003年までしかデータがなかったため、スライドには1999年から2003年までのデータについてお話いたします。1999年にエコナが発売されて以来、エコナ油を使った商品などを次々と発売し、売り上げを伸ばしていきました。初年度となる1999年には年間80億の売り上げを記録し、翌年2000年には特定保健用食品では初となる売り上げ100億円を突破しました。 その後2001年には190億、2002年には250億と売り上げを伸ばし、さらに2003年の売り上げは280億にまでに達しました。このデータから、消費者にエコナが受け入れられ、支持されてきたことがよくわかります。★ (2004年) 年度
6.食用油市場 購入したことのある油 (2005年) エコナ ヘルシーヘルシークッキングオイル (花王) 33% 6.食用油市場 購入したことのある油 エコナ ヘルシーヘルシークッキングオイル (花王) 33% 現代の食用油市場では、主に健康油、というテーマで一番購入したことのある油として、日清サラダ油があげられました。続いて、エコナクッキングオイル、日清キャノーラ油、エコナヘルシーヘルシークッキングオイルが上がりました。 健康油は年々支持されてきていますが、トップは日進オイリオ、エコナが独占していることがわかります。★ 日清キャノーラ油(日進オイリオグループ)59.2% (2005年)
今後も使いたい油 (2005年) エコナ クッキングオイル (花王) 13.7% エコナ ヘルシー ヘルシークッキングオイル(花王) 今後も使いたい油 エコナ クッキングオイル (花王) 13.7% エコナ ヘルシー ヘルシークッキングオイル(花王) 19.1% こちらのグラフは一度使用し、今後も使いたい、という油をアンケートしたものです。 トップは先ほどとは逆転し、エコナ ヘルシーヘルシークッキングオイルがトップです。続いて、エコナクッキングオイル、日清サラダ油、日清キャノーラ油が上がっています。 エコナは一度使用したらリピーターが多いということがわかりました。今後も使いたくなる魅力がエコナにはあり、その魅力はなんなのか、詳しく報告していきたいと思います。★ (2005年)
7.絞り込みによるマーケティング活動 生活習慣病が気になるので油をあまり使いたくない しかし、脂質はなくてはならない 栄養素 食用油市場で説明したように近年、国民の健康意識は高まっています。★食生活の欧米化に伴って脂質摂取量が増大し、肥満や生活習慣病が増加し、生活習慣病が気になるので油をあまり使いたくない、という意見も多くなっています。 現在、日本における「生活習慣病」の患者はおよそ600万人、生活習慣病予備軍とも言われる「肥満」の人は1700万人にものぼっています。そのことから油を控えようと食用油を使う機会は減りました。 ★しかし、体にとっても、脂質はなくてはならない重要なエネルギー元や栄養素でもあります。★このようなことから、食生活は変えずに中性脂肪を抑えたいという新しいニーズが生まれました。★ 食生活は変えずに、中性脂肪を抑えたいという新しいニーズが生まれた
マーケティング調査 大好評を得ることができた エコナのような健康志向の食用油が支持されるのではないか 商品開発者 (エコナのコンセプト・販売価格の受け入れ性、家庭で使用してもらうなど) そこで花王の商品開発者はエコナのような健康志向の食用油が支持されるのでないかと考え、★マーケティング調査を行いました。エコナのコンセプトの受け入れ性、販売価格の受け入れ性、家庭で実使用してもらうなどの、多くの調査を行い、★大好評を得ることができました。★ 大好評を得ることができた
しかし・・・・ 肯定意見は40%しか到達していなかった 製造コストもかかってしまうし、マーケティング結果が反映されるとは限らない 反対意見 購買ターゲットを肥満、生活習慣病の人に絞ればエコナは確実に売れていく しかし、エコナは製造過程が複雑で製造コストはかかってしまうため、販売価格は一般の食用油の4~5倍になってしまいます。販売価格の問題も含め、マーケティング調査が売上に反映されるというのは難しく、社内で意見がわれてしまいました。 ★花王では肯定意見が70%に到達しないと商品にはなりません。しかし、エコナの場合、社員の肯定意見は40%しか到達していませんでした。花王のトップからもエコナの成功に懐疑的な意見がでていましたが、★開発者は購買ターゲットを肥満や成人病の人に絞ればエコナは、確実に売れていくだろうと確信しており★開発者の熱い想いで販売を認めさせることができました。★ 商品開発者 開発者の熱い想いで販売を認めさせる
特定保健用食品という独自の付加価値をつけることを考案 1995年にはエコナは商品として開発されたが、認定を待ち・・・・ 食用油という健康にはマイナスイメージのある商品に特定保健用食品という独自の付加価値を付けることでマイナスイメージを払拭(ふっしょく)できると考え、★1995年にはエコナは商品として開発されていましたが、特定保健用食品の認定を待ち、★4年後の1999年に販売を開始しました。★ 4年後の1999年に販売を開始
8.広告宣伝活動の展開 バブ・アタック エコナ ターゲット ターゲット 広告 広告 使う人を厳密に区切らない大衆向け 肥満、生活習慣病の人または、予防したい人 広告 広告 大々的な広告は行なわない、学会の発表や料理教室のタイアップなどで時間をかける 大々的に行う CMや新聞など 今までの花王商品のバブやアタックは使う人を厳密に区切らない大衆向けの商品でした。しかし、エコナは肥満、生活習慣病の人、または予防したい人に限定していこうと考えました。このような人達を購入にいたらせるためには、バブ・アタックでの大々的に行うような、CMの15秒間では薄いと考え、むしろ時間をかけ商品特性をしっかり理解してもったほうがよいと考えたのです。 そのため大々的な広告宣伝は行わず、学会での発表や料理教室のタイアップ、健康情報記事での紹介などに限定し、時間をかけてゆっくりと市場に認知されるような活動を行いました。芸能人を起用して油物をおいしそうに食べる作風で、イメージを高めるとともにブランド力も高めています。 ★エコナは食用油初となる「特定保健用食品」の許可をもらい、肥満、成人病の人向けに徹底的なターゲットを絞ったという点で、一般の企業で行われるターゲティングとは一線を画していたと言えます。 また、最近になりCMを使った宣伝活動にも力を入れています。エコナを使っているとコレステロールや中性脂肪を下げる働きがあるということが、全般的に認知されてきました。★ エコナの宣伝活動は、徹底的なターゲットを絞ったという点で、 一般の企業で行われるターゲティングとは一線を画していた
ヒット商品へと成長 9.販売戦略 プロダクトブランドを拡大 さらに・・ 食品分野のヒット商品を持っていなかったが、 差別性のある素材と地道で継続的なブランド浸透活動により・・ ヒット商品へと成長 プロダクトブランドを拡大 さらに・・ 「エコナ」を製造している花王は、食品の分野でのヒット商品は持っていませんでした。それを、「エコナ」という 差別性のある素材と地道で継続的なブランド浸透活動により、★食用油で消費者の注目を集めヒット商品へと成長させました。★さらに、他社食用油メーカーが主力商品としているドレッシング、マヨネーズに(マヨネーズはキューピーに対抗)までプロダクトブランドを拡大しました。★
Wブランド戦略の実施 Wブランド戦略とは・・・? エコナ自体も、エコナを使ったプロダクトブランド商品の価値も高めることができる戦略 エコナはダブルブランド戦略の実施を行いました。 Wブランド戦略とは、「エコナを使ったサッポロ一番」のように、すでに、その会社の主力商品であるロングランのブランドに、「エコナ」を素材ブランドとして取り入れ、「エコナ」自体も、「エコナを使ったプロダクトブランド商品」の価値も高めることができるという戦略です。 ★このWブランド戦略によって、着々と売上を伸ばし、その手の商品のトップを狙い日々奮闘しています。★ 着々と売り上げを伸ばし商品のトップを狙い、日々奮闘!
プロダクトブランドのエクステンション力の高さ (2004年) 全体 男性 女性 認知 両方認知 89.1 82.8 95.1 73.7 65.8 81.1 89.6 85.5 93.4 37.2 34.8 39.4 80.9 77.9 83.7 69.1 65.4 72.7 72.0 59.2 84.1 38.9 27.7 49.6 66.1 67.9 64.4 41.3 42.2 40.5 健康食用油「エコナ」 89.1 89.1 73.7 「エコナ」と「マヨネーズ」 「ガーナチョコレート」 89.6 「ガーナチョコレート」と 「ガーナアイス」 37.2 「C1000タケダ」 80.9 「C1000タケダ」と 「C1000タケダキャンディー」 69.1 日本マーケティング協会の調査からみても、エコナのWブランド効果の高さが伺えます。 「冠ブランドがつくことで、よい商品と思う」人が多かったものは、★「エコナとエコナマヨネーズ」★「C1000タケダドリンクとC1000タケダキャンディ」です。「エコナ」「C1000タケダ」ともに食品であり、冠ブランドが、安心やおいしさの印象の向上に貢献していることが、感じられます。★★ ※エクステンション=商品の伸び 「Ora2」 72.0 「Ora2ハミガキ剤」と 「Ora2マウスウオッシュ」 38.9 「UNO(ウーノ)」 66.1 「UNOスタイリング剤」と「UNO洗顔剤」 41.3
10.研究開発に関しての基本方針 (1)社会的有用性の原則 (2)創造性の原則 (3)パフォーマンスバイコストの原則 (4)調査徹底の原則 (1)社会的有用性の原則 (2)創造性の原則 (3)パフォーマンスバイコストの原則 (4)調査徹底の原則 (5)流通適合性の原則 また、花王の研究開発に関しての基本方針として、こちらの5つを掲げています。 まず(1)社会的有用性の原則は(開発する製品が真に社会にとって有用であること)が原則づけられています。 次に(2)創造性の原則には(自社の創造的技術が盛り込まれているということが決められています。 (3)パフォーマンス・バイ・コストの原則は(世界で最も高いパフォーマンス・バイ・コストの製品を生産し、提供すること、 (4)調査徹底の原則では(商品化前に徹底的な消費者テストを実施していることが決められています。 最後に流通のあらゆる段階でその商品に関わる情報を、花王が市場を通して顧客と十分に伝達しうることを(5)流通適合性の原則といいます。 この基本方針を元に、日本を含むアジア・オセアニア地域,米国,欧州を軸としたグローバル事業(海外に20工場、台湾、タイ、マレーシア、インドネシア、中国、アメリカ、ドイツ、スペイン)を展開して,併せて知的財産戦略(グローバルな生産活動とエンジニアリング(工学技術活動))を進めています 。★
エコナの場合では・・・ 社会的有用性 創造性 調査徹底 (2)創造性 健康にはあまり結びつかない油が健康にいいなどの、花王独自の技術が盛り込まれていた。 (1)社会的有用性 生活習慣病などが注目されている現代の社会で健康に良いとされるエコナは、真に社会にとって有効であると感じられた。 (4)調査徹底 社内アンケートで社員がどのような油を必要としているのか、価格はどれくらいまで出せるのか、などのアンケートを事前に実施し、徹底的に調査していた。 社会的有用性 創造性 調査徹底 花王の基本方針が、エコナという商品にはどう方向づけられているかを考えました。 その結果、★(1)の社会的有効性の原則では、生活習慣病などが注目視されている現代の社会で体にいいエコナは、真に社会にとって有効であると感じられました。 ★(2)の創造性の原則では健康にはあまり結びつかない油が健康にいいなどの、花王独自の技術が盛り込まれていました。 ★(4)の調査徹底の原則では社内アンケートで社員がどのような油を必要としているのか、価格はどれくらいまで出せるのかなどのアンケートを事前に実施し、徹底的に調査しており、エコナにもしっかりと花王の方針が方向づけられていることがわかりました。★★★★社会的有用性、創造性、調査徹底など、★花王の方針にしっかりと沿っているエコナの成功は決してまぐれではなく最初から綿密に計算されていたのだと感じました。★ 花王の方針にしっかりと沿っているエコナの成功は決してまぐれではなく、最初から綿密に計算されていた
11.考察 エコナは時代の背景をよく理解し、人々のニーズに応えることでヒット商品へと成長 基本方針に沿った商品開発を行っており、花王が数々の商品をヒットさせているのも納得 エコナは花王のブランド力、現在の生活習慣病などを気にする健康志向の人々の増加など、時代の背景をよく理解し人々のニーズに応えることでヒット商品を開発していきました。中性脂肪などを気にする人に絞りこんだエコナですが今は生活習慣病の予防など花王が当初絞り込んだターゲット以外の人々にも受け入れられています。そして花王はきちんと基本方針にそった商品開発を行っており、花王が数々の商品をヒットさせているのが納得できました。花王の強さの秘訣は軸に沿った商品開発を行っているからなんだと改めて感じました。今後もエコナを使用した商品はヒット商品になっていくと思います。★ 今後もエコナを使用した商品はヒット商品になっていくだろう
12.参考文献 平林千春、広川州伸 『花王強さの秘密』2004 実業之日本社 今村哲也『花王魂 やり遂げることの大切さ 』2008生産性出版 平林千春、広川州伸 『花王強さの秘密』2004 実業之日本社 今村哲也『花王魂 やり遂げることの大切さ 』2008生産性出版 http://www.kao.co.jp/ http://jmr-g.co.jp/proposal/183.html http://www.nikkei.co.jp/rim/plus1/hit/hit020912.htm こちらが参考文献です。 以上で4班の発表を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。