第8回 11/12 多角化と事業構成 今後のスケジュール 2015年秋学期 経営学3 『組織マネジメント入門』の第3章2節 2015年秋学期 経営学3 第8回 11/12 多角化と事業構成 『組織マネジメント入門』の第3章2節 今後のスケジュール 第9回 11/19 事業戦略 第10回 11/26 学習する組織 第11回 12/03 組織能力 第12回 12/10 企業統治 第13回 12/17 まとめ 【期末テスト】 第14回 01/07 休講 第15回 01/15 セブンイレブンの事例
3-2-3 多角化(p.62) 補足① 環境変化への対応 経営学では企業をとりまく様々な外的要因を「 環境 」と呼ぶ。 補足① 環境変化への対応 経営学では企業をとりまく様々な外的要因を「 環境 」と呼ぶ。 一企業にとっての(ビジネス)環境として、 技術 動向、インフラ 整備状況、消費者や 社会 からの要求、ライバル企業の動向、 各種規制 などが該当する。 自然環境と同様にビジネス環境も変化する。 (環境変化に 対応 しないと生き残れない⇒新たなビジネスによ る成長の機会を求める 多角化 のマネジメントへ) 音楽メディアプレーヤーの例 音楽・音声の記録・配信媒体が変化 (レコード→ カセットテープ →CD→ネット配信) ※30年の間にビジネス転換の必要性が何度も発生
補足② 環境の変化を予測し、乗り越えるための戦略論の登場 補足② 環境の変化を予測し、乗り越えるための戦略論の登場 1950年代以降、 技術進歩 と経済の グローバル 化によって、 ビジネス環境の変化が激しくなった。 既存の事業内容の修正や別の事業を手掛ける多角化が不可欠となる。 しかし、当時の経営管理の理論は事業内部の効率的な 組織構造 の適切な選択が中心であった。保有する事業自体の選択に関しての 管理手法は確立されていなかった。 アンゾフが成長のための事業拡大や多角化プロセスを議論し、事業展 開可能な 代替案 を考え、それぞれの リスク と リターン を 予測し、望ましい成長の方向を選択する「 戦略的意思決定 」プロ セスを提示した。
アンゾフの成長ベクトル アンゾフの成長ベクトル( 製品 ・ 市場 マトリックス);企業の成 長の方向性の代替案を考え、比 較・評価し、成長戦略を導く分析 ツール。 既存事業に対して、右図のような 4つの成長の方向について実現 可能性、リスクを検討し、成長の 方向性 を選択・決定する(意思 決定 ツール )。 図:アンゾフの成長ベクトル 製品 市場 既存 新規 既存 市場浸透 製品開発 拡大化 新規 市場開拓 多角化
市場浸透 :現在の製品の使用頻度や量の増加、新しい顧客の獲得、市場シェアの拡大などで、事業の成長を維持する。(値下げによる購入頻度増) 製品開発 :現在の市場に新技術の活用やデザインを変更した新製品を導入することで、新たな需要を呼び起こし、事業の成長を維持する(スマホなどの新商品投入)。 市場浸透 :現在の製品の使用頻度や量の増加、新しい顧客の獲得、市場シェアの拡大などで、事業の成長を維持する。(値下げによる購入頻度増) 製品 既存 新規 既存 市場浸透 製品開発 拡大化 市場開拓 :現在の製品を新しい市場に展開することで、事業の成長を維持する(別の用途での活用を促進)。 市場 新規 市場開拓 多角化
多角化( 2種類) 関連 多角化:顧客や技術面で既存事業と関連する事業に展開( ノウハウ の活用やシナジー効果は期待できるが、 弱点 を共有するリスクがある) 非関連 多角化:既存事業と関連の薄い事業に展開(ノウハウのない事業に展開することは収益性を低める恐れがあるが、関連性のない多様な事業を抱えることで、事業が 同時 に衰退するリスクを軽減し、 予想外 の変化に対応する能力を高める) 製品 既存 新規 既存 市場浸透 製品開発 拡大化 市場 新規 市場開拓 多角化
補足⑨ アンゾフの成長ベクトルに垂直統合を加えたアーカーによる修正モデル 補足⑨ アンゾフの成長ベクトルに垂直統合を加えたアーカーによる修正モデル 図:アンゾフの成長ベクトル のアーカーによる修正 アンゾフは 垂直統合 を多 角化の一つとして捉えている が、アーカーは垂直統合は事 業の 効率化 の一つの手 段として考えた方がいいと考 えていた。 垂直 統合 既存 市場浸透 製品開発 拡大化 新規 市場開拓 多角化 市場 既存 新規 製品
補足⑩ ルメルトの多角化戦略研究(多角化の分類) 補足⑩ ルメルトの多角化戦略研究(多角化の分類) (1)成功する成長のパターンの模索 当該企業における事業の構成比・事業間の関連性に関し て、大量の データ も踏まえて、 「どのような多角化パターン(抑制型か拡散型か)が多 いのか?」 「多角化のパターンによって 業績 の差は生じている のか?」 を実証分析を行った。 ※ルメルトは1949-1969年の間に『 フォーチュン 』の上位500社ラ ンキングに載った米国企業から製造企業246社を選んで分析した。
ルメルトの多角化パターンの分類 ①事業の構成比・事業間の関連に関する指標 A. 専門 比率(SR:Specialization Ratio) 企業全体の売り上げに対して、 最大 の事業がどれだけ を占めているか? B. 垂直 比率(VR: Vertical Ratio):垂直的事業がある時のみ 企業全体の売り上げに対して、製造部門や販売部門など の垂直的な事業の中で 最大 ものがどれだけ占めてい るか? C. 関連 比率(RR: Related Ratio) 技術や市場において関連のある関連事業グループの売り 上げをそれぞれ合計し、その中で 最大 のものが、企業 全体の売り上げに対してどれだけを占めているか? \\
②多角化(事業展開)のパターン分類 A. 抑制型 :中核となる事業や技 術をもとに事業展開する パターン(本業からかけ 離れた事業には手を広 げない:集約的) B. 連鎖型 :ある事業で得た技術 や開拓した市場をもとに、 さらに新たな事業に進 出することを繰り返すパ ターン(多様な事業に手 を広げる) A 事業 B 事業 中核事業 C 事業 D 事業 D 事業 C 事業 B 事業 A 事業 中核事業
図 ルメルトによる多角化の分類 ノー イエス イエス ノー イエス イエス ノー ノー イエス ノー イエス ノー 図 ルメルトによる多角化の分類 最大事業が垂直統合しているか ノー イエス SRが0.95以上か イエス 単一事業型 ノー RRが(SR+1)/2 未満か SRが0.7以上か イエス イエス ノー ノー 本業非関連型 本業抑制型/本業連鎖型 イエス VRが0.7以上か 垂直統合型 ノー 関連抑制型 /関連連鎖型 イエス RRが0.7以上か ノー コングロマリット/非関連受動型
コングロマリット 型多角化(企業買収等により多様な事業を展開) 本業抑制・連鎖型多角化(中核事業を中心に展開) 中核事業 比率高い 本業非関連型多角化(中核事業とそれに関連の無い事業も展開) 垂直統合型多角化(川上や川下などの垂直方向に展開) 単一事業型 (ほぼ単一事業) 関連事業 比率高い 関連型抑制型・連鎖型多角化(中核事業は不在だが、関連分野に展開) コングロマリット 型多角化(企業買収等により多様な事業を展開) 多様な 事業展開 非関連受動 型多角化(企業買収等せずに、結果として多様な事業を展開)
ルメルトの多角化研究からの示唆 246社の20年間に及ぶ追跡調査の結果 業績の成長性が高かった企業は、 本業集約 型企業(本 業抑制型・本業連鎖型)と 関連集約 型企業(関連抑制 型・関連連鎖型)であった。 業績の成長性が低かった企業は、 コングロマリット や 非関連受動 型企業であった。 ※企業の成長には多角化が重要であり、多角化する際には、中核となる 事業を中心として、関連した事業に展開するべき。
3-2-4 事業構成の見直し(p.64) PPM(Product Portfolio Management) (1)事業の選択と集中による競争力強化の必要性 1960年代から1980年代に M&A(買収・合併) ブームが起 こり、コングロマリット 型の非関連多角化企業が台頭した。 その頃、日本企業は安価な製品によってアメリカ市場の輸出攻 勢をかけていたので、アメリカ企業にとって 効率的 な事業 管理の必要性が生じていた。 M&Aで膨れ上がった事業の中から、 競争 を維持できる事 業を残し、それ以外を 切り捨て ようとする考え方が生まれ た。 その定番の手法がボストン・コンサルティング・グループ(BCG) が開発した PPM(事業構成マネジメント) である。 ※ PPMでは、事業(競争)戦略やシナジーは考慮されていない。
補足⑪ PPMの理論的な基礎 事業毎に、 現時点 での売上やROI(投資収益性)などを基にし て、事業の選択と集中をすることは簡単だが、 将来性 のある事 業を失う可能性がある。そこで考案されたのが、PPMと呼ばれるも ので、現在と将来の収益性を評価する 分析ツール である。 現在の事業構成 将来の事業構成 A事業 廃止・ 撤退 A事業 事業を廃止・撤退、 存続、強化、新設 する基準あるいは 根拠は? B事業 B事業 C事業 存 続 C事業 D事業 D事業 E事業 E事業 F事業 F事業 G事業 強化 G事業 新設 H事業
PPMによる事業の分類 金のなる木 :資金 需要も低く、高い競争 力があり、高い収益 をうみだすことができ る。得られた資金を 他の事業 に回す。 花形 :競争力があ り、 金のなる木 になりうる。研究開発 により花形として立ち 上げ、シェアを 維持 するために投資が必 要となる。 負け犬 :資金需要は低いが、収益率も低い。投資を抑えるか、 売却 などを行い、資金を他の事業に回すことを検討する。 問題児 :競争力が低く、負け犬になりうる。成長市場なので、逆転もありうる。 投資 するか 撤退 するかの判断が必要。
PPMの2軸(①収益性と②資金需要の必要性:評価のための軸) ① 収益性 の指標: 相対市場シェア (自社の市場シェア/最大のライバルの 市場シェア:1が優劣の境目) 経験曲線効果 を前提とすると、シェアが高い企業ほど、よ り多くの製品を生産・販売でき、経験を積み、効率的な生 産が可能になり、 収益性 が高くなる傾向がある。 1台当たり 生産費用 シェアの大きい会社ほど、よりたくさんの製品を生産していることになる。そうなると、一台当たりの生産費用は割安になるので、収益性が高まることになる。 100万円 累積 生産量 1億台
資金需要の指標:市場の成長率 製品ライフサイクル (導入⇒成長⇒成熟⇒衰退)を前提と すると、成長市場は収益性は低いが、 資金 を投入し て育てていかなければならない。市場成長率が 10 % になると資金需要が減ると言われている。 なぜなら、新製品を導入した当初や市場が成長している時に は、 製品開発 、 生産体制 や 流通チャネル の整備、 宣伝・広告 などが必要となるからである。 市場が 成熟 状態(成長の鈍化)あるいは衰退(マイナス成 長)し始めると、生産設備や研究開発などの効果が小さく なるので、 資金需要 が減る。
PPMにおける事業の選択 花形(☆) 問題児(?) 金のなる($) 負け犬(×) 研究開発 シェア 拡大 高 シェア維持 投資回収・撤退(売却) 市場成長率(10%) (成長性と資金需要) 低 堅持 低 高 相対市場シェア(1) (競争力と収益力) PPMでは、①相対市場シェアと②市場の成長率から強化すべき事業と撤退すべき事業を明確にしている。それによって、企業は、資金を 優先的 に投入すべき事業を特定することができる。PPMを 事業構成 の見直しツールとして活用されているが、PPM自体には個別の事業(競争)戦略を立案する機能はない。