アイソン彗星は なぜ期待されているのか 自然科学研究機構 国立天文台 渡部潤一 ©東京都⼩⾦井市 守⾕ 昌志郎
2012年は「金」の天文現象の年だった 5月21日 金環日食 6月 6日 金星の日面通過 8月14日 金星食
ー今年の天文現象ー 天文現象不作の年! といわれていが。。 「地球接近型の天体ショー」の年に ロシアに前代未聞の大型隕石が落下 天文現象不作の年! といわれていが。。 「地球接近型の天体ショー」の年に ロシアに前代未聞の大型隕石が落下 小惑星2012DA14が地球に接近 そして彗星の出現 パンスターズ彗星 アイソン彗星
ロシア隕石 衝突天体 直径 10~20m (17m ー NASA、10mーロシア) 質量 ~107 kg (約1万トン) 質量 ~107 kg (約1万トン) 速度 18 km/s エネルギー 500キロトン(TNT) 絶対光度 -27~-28 等 (太陽 -27等)
ロシア隕石と小惑星2012DA14 NASA/MSFC/Meteroid Environment Office(2013)
地球は 小惑星や彗星、流星体などの小天体がうようよしている空間をすり抜けて公転している 1kmクラスの小惑星は90%発見されているが100m以下はまだまだ いつどこに、このクラスの隕石が落下するかは予測が困難 ただ地球に近づくことで天体ショーにはなりうる
次は「彗星」 パンスターズ彗星がやってきた そしてアイソン彗星がやってくる
ドナチ彗星
彗星のイメージ ・一般に 「凶兆」 ー その出現、動きが予測不可能 ー 姿・形が不気味 ・日本書紀 ・一般に 「凶兆」 ー その出現、動きが予測不可能 ー 姿・形が不気味 ・日本書紀 「正月己巳、長星見西北、時みん師曰、彗星也。見則飢之(みゆれば、いひうえす)」 (彗星が出ると飢饉になる)
彗星のイメージ ・一方、「瑞兆」としても ・扶桑略記二十五(941年) 「春三月、相当西方有星、其光如白虹、(中略)、其名曰穂垂星、其秋年登、天下頗豊」 「穂垂星」 彗星の尾が穂に
どうして“彗”になるのか? ・ 彗星の本体=彗星核(かく) 水や二酸化炭素などの「氷」 砂粒などの「塵」 ・ 「汚れた雪だるま」 ・ 彗星の本体=彗星核(かく) 水や二酸化炭素などの「氷」 砂粒などの「塵」 ・ 「汚れた雪だるま」 ・ 太陽熱によって蒸発 ーー> 詳細は小林さんから ハレー彗星の核 ボレリー彗星の核
ほうき星(彗星)とは イオンの尾 頭部 塵の尾 コマ+核 ーー> 詳細は猿楽さんから 神戸大学講義2004
“彗”の漢字の起源 馬王堆漢墓から
彗星の軌道 一般にとても遠くからやってくる 歪んだ楕円(だえん)、大きな軌道 惑星軌道を横切ることも多い 太陽 火星 地球
彗星の分類 周期>200年以上 長周期彗星 (一回きりの帰ってこない彗星を含む) 黄道面を上からも下からもやってくる 周期>200年以上 長周期彗星 (一回きりの帰ってこない彗星を含む) 黄道面を上からも下からもやってくる 周期<200年以下 短周期彗星 黄道面に集中している
短周期彗星:黄道彗星
長周期彗星
短周期彗星はどこから来たか? 短周期彗星の故郷 : 冥王星の外側にある小天体ベルト(太陽系外縁天体:エッジワース・カイパー・ベルト) 短周期彗星の故郷 : 冥王星の外側にある小天体ベルト(太陽系外縁天体:エッジワース・カイパー・ベルト) エッジワース・カイパー・ベルト ーーー>短周期彗星 大惑星により内側へバケツリレー式に運搬 現在、300個あまりが発見、登録されている
長周期彗星はどこから来るか? 長周期彗星の故郷 : オールトの雲 まだ発見されていない彗星も多く、いつどんな彗星がやってくるか予測不能 長周期彗星の故郷 : オールトの雲 オールトの雲 ー> 長周期彗星 まだ発見されていない彗星も多く、いつどんな彗星がやってくるか予測不能
彗星はどこからやってくるのか? ー軌道の観測からー オールトの雲 太陽系を1-10万天文単位直径に大きく球殻状に包む「長周期彗星の故郷」 エッジワース・カイパーベルト (太陽系外縁天体) 海王星以遠で黄道面に集中した「短周期彗星の故郷」 ーー> 見てみよう
彗星の数 これまでに古文書の記述を含め、3700個弱 一年に数十個~100個以上発見される しかし、肉眼で見えるような彗星は少ない
彗星の数 日本で肉眼で見えた直近の彗星 肉眼で尾を引く彗星らしい彗星は ヘール・ボップ彗星(1997年) 肉眼で見えた彗星は ヘール・ボップ彗星(1997年) 肉眼で見えた彗星は ホームズ彗星(2007年) (アウトバーストをおこして2等に) 和歌山 津村光則氏
彗星の数 肉眼で見えた彗星でも、南半球からのみのケースも マックノート彗星(2006年) ラブジョイ彗星(2011年) ESO NASA
大彗星になる条件 単位時間あたりの蒸発量が多いこと 地球からの観察条件が良い 核が大きい (絶対等級が明るい) 太陽に近づく 核が大きい (絶対等級が明るい) 太陽に近づく 地球からの観察条件が良い 位置関係(距離、方向) 太陽からある程度(角度的に)離れている
過去の大彗星の例 大型彗星が近づいた例 太陽接近型(サングレーザー)の例 地球接近型(ニアミス型)の例 1997年へール・ボップ彗星 1843年第一彗星(フレート・マーチ・コメット) 1965年池谷・関彗星 地球接近型(ニアミス型)の例 1996年百武彗星
C/2011 L4 (パンスターズ彗星) 2011年6月6日 Pan-STARRS 1 telescope (Haleakala) 発見 太陽に近づく時 2013 Mar. 10.16753 TT 太陽に最も近くなる距離 = 0.3015430 (A.U.) 絶対等級が明るい=核が大きい -1.8等 ~ 4等
絶対等級の明るい彗星 C/1729 P1 -3 C/1995 O1 (Hale-Bopp) -2 C/1577 V1 Great Comet 0 C/1811 F1 Great Comet 0 C/1743 X1 Great Comet 0.5 C/1882 R1 Great Sept. 0.8 C/1402 D1 Great Comet ~1 ーーーーーーーーーーーーーーーー P1/Halley 5
C/2011 L4 (パンスターズ彗星) つまり かなり大型の彗星&そこそこ太陽に近づく しかし 大彗星の条件をそなえている しかし 近日点通過後の北半球からの観察条件はよくなかった
C/2011 L4 (パンスターズ)
C/2011 L4 (パンスターズ彗星) 吉田誠一氏 ホームページより
パンスターズ彗星 日本では。。。。 春霞、条件が悪い中でも天文ファンが観察 しかし、一般の人はほとんど見えなかった パンスターズ彗星 日本では。。。。 春霞、条件が悪い中でも天文ファンが観察 例えば。。。 しかし、一般の人はほとんど見えなかった ーー> 次のアイソン彗星に期待 ©JAXA 大川拓也
C/2012 S1 (アイソン彗星) 2012年9月21日 International Scientific Optical Network (ISON) Kislovodsk, Russia 発見 太陽に近づく時 T 2013 Nov. 28.80632 TT 太陽に最も近くなる距離 = 0.0124496 !!(A.U.) 太陽をかすめる彗星としては大型 5.5等 -> 8等
C/2012 S1 (アイソン) つまり やや大型の彗星&太陽に極めて近づく 接近後の地球(北半球)からの観察条件もよい 大彗星の条件をそなえている 接近後の地球(北半球)からの観察条件もよい
アイソン彗星の動き
C/2012 S1 (アイソン) つまり やや大型の彗星&太陽に極めて近づく 接近後の地球(北半球)からの観察条件もよい 大彗星の条件をそなえている 接近後の地球(北半球)からの観察条件もよい どのように見えるか? ーー 太陽接近型の同様の彗星の例を
太陽接近型の例 これまでの太陽接近型の彗星で、アイソン彗星よりも、やや小型および大型の彗星 ーー ラブジョイ彗星(2011) これまでの太陽接近型の彗星で、アイソン彗星よりも、やや小型および大型の彗星 ーー ラブジョイ彗星(2011) ーー 池谷・関彗星(1965)
ラブジョイ彗星(C/2011 W3) 2011年11月27日 Terry Lovejoy (Thornlands, Qld., Australia) 太陽に近づいた時 2011 Dec. 16.01211 太陽に最も近づいた距離 = 0.005556(A.U.) 太陽をかすめる彗星としては中くらい 11~15.5等 蒸発してしまうと思われたが。。。。。
C/2011 W3 (ラブジョイ) 吉田誠一氏 ホームページより
太陽をかすめて 大化けしたラブジョイ彗星 NASA
池谷・関彗星(C/1965 S1) 1965年9月18日 池谷薫、関勉 (高知、静岡) 1965年9月18日 池谷薫、関勉 (高知、静岡) 太陽に近づいた時 1965 Oct 21.1837 TT 太陽に最も近づいた距離 = 0.007786 (A.U.) 太陽をかすめる彗星としては大型 ~5等
同じような特徴を持った彗星 C/1965 S1 (池谷ー関) 発見後、40日あまりの1965年10月21日 に、太陽に接近 乗鞍コロナグラフで撮影に成功 マイナス10-11等? 10月末-11月はじめには、尾が20-25度に伸びた姿が観察された 11月4日には分裂核が確認された
■ 過去の太陽接近型彗星の尾 菅原賢氏提供 近日点通過時に、その前に放出された塵が蒸発 近日点通過時から観測時刻まで放出された塵 つまり細く長く http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/34/Great_Comet_of_1882.jpg http://spaceweather.com/comets/lovejoy1/Scott-Alder1.jpg C/1965 S1 (Ikeya-Seki) q=0.007786 [au] C/2011 W3 (Lovejoy) q= 0.0055538 [au] C/1882 R1(The Great Comet) q=0.007750 [au] http://science.nasa.gov/media/medialibrary/2000/08/27/ast28aug_2_resources/ikeya-seki_med.jpg
アイソン彗星のダストテイル予想 (菅原賢氏提供) Dec.6 Dec.16 Dec.26 Jan.6 Jan.16 Jan.26
半月前のアイソン彗星
C/2012 S4 (アイソン)彗星の 明るさの現状 吉田誠一氏ホームページより
C/2012 S1 (アイソン) ふたつの彗星の中間の規模と思えば。。。 太陽に最も近づいた時の明るさ 太陽に近づき、蒸発してしまうことはない 日本から11月中旬ー12月中旬に観察可能 太陽に最も近づいた時の明るさ マイナス13等(当初の希望的な予測)にはならず、マイナス6等からマイナス1.5等 核が分裂する可能性が高い 尾:11月の近日点前は短く、12月上旬の近日点通過後には長さ10度以上の直線的な尾が出現
本当にどうなるかは彗星の個性次第:来てみないとわからない (ESO)
さらなる最新情報を盛り込んで 10月末、発売予定