壊死桿菌感染による牛に肝膿瘍など 感染局所の化膿性病変を主徴とする疾病 壊死桿菌症 壊死桿菌感染による牛に肝膿瘍など 感染局所の化膿性病変を主徴とする疾病
壊死桿菌症 穀類多給の肉用牛に発生が多い。 わが国では濃厚試料多給の乳用雄肥育牛に発生が多く、30%前後の発生がみられる肥育農場もある。 消化管内のF.necrophorum subsp.necrophrumが粘膜を通過して門脈経路で肝臓に達する。 新生子牛では臍帯感染による肝膿瘍形成もある。
壊死桿菌 原因菌はFusobacterium necrophrumでグラム陰性の嫌気性無芽胞多形性桿菌で、鞭毛を有しない。 ペプトンやブドウ糖から酪酸を産生し、スレオニンと乳酸からプロピオン酸を産生するのが特徴である。 現在F.necrophorum subsp.necrophorumとF.necrophorum subsp.fundiriformeの2亜種に分類されていて、前者は主として病変部から、後者は主として消化管から分離される。 F.necrophorum subsp.necrophorumの方がマウスなどを用いた実験感染においても強い病原性を示す。 両亜種の鑑別性状は鶏赤血球凝集能の有無で、 subsp.necrophorumは凝集性を有するが、 subsp.fundiriformeは凝集性が無い。
壊死桿菌症の症状および病変 臨床症状は乏しく、病変がと蓄検査で発見される。 小膿瘍が多発する例と少数の大膿瘍が形成される例がある。 膿瘍は表面から容易に観察されるが、臓器内部に形成されるものもある。 膿瘍は硬い膿瘍膜に囲まれ、内部は悪臭のあるクリーム様の膿で満たされている。 本菌は肝膿瘍の他に、子牛ジフテリー、趾間腐爛、乳房炎、臍帯炎、肺炎などからも分離される。
壊死桿菌症の診断・予防 膿の直接鏡検により、特徴ある長桿菌を確認する。 膿瘍材料から市販の嫌気性培地を用いて、菌分離を行う。 本菌は市販のFM培地に発育し、バクテロイデス培地に発育しない。 病原性の強いsubsp.necrophrumは2~3mmの灰白色のラフ型扁平集落を形成し、広いβ溶血環に囲まれ、鶏赤血球を凝集する。 本病は濃厚飼料多給によるルーメンパラケラトーシスなどによる第一胃粘膜の損傷部から、F.necrophorumが門脈経由で肝臓に達し肝膿瘍を形成する。 従ってルーメンパラケラトーシスなどが発生しないように飼養管理に注意する。 釘や金属片の誤飲による創傷性肝膿瘍予防のために、飼養環境中からこれらを除去する。