循環構造 民間部門経済循環の流れ circular flow 家 計 企 業 (価格メカニズム) 市場機構 が働く p p 消費財市場 y 循環構造 民間部門経済循環の流れ circular flow (価格メカニズム) 市場機構 が働く y p x p 需要 消費財市場 供給 支出 収入 家 計 企 業 労働供給量 賃金w 供給 所得 労働需要量 賃金w 費用 需要 生産用役市場 ミクロ経済学(Ⅰ) 財・サービスの流れ 貨幣の流れ
第2章 需要と供給 ■ 市場均衡 需要曲線D: D=D(p) 価格と需要量の関係を表し,通常右下がりの曲線である。 第2章 需要と供給 ■ 市場均衡 需要曲線D: D=D(p) 価格と需要量の関係を表し,通常右下がりの曲線である。 供給曲線S: S=S(p) 価格と供給量の関係を表し,通常右上がりの曲線である。 S 需要量と供給量が一致する場合,市場均衡と呼ぶ。そのときの価格を均衡価格と呼ぶ。 均衡点Eで, 需要量=供給量=x* 均衡価格=p* E点で均衡需給量と均衡価格が決定される。 x p D E p* x* ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.1 完全競争 完全競争(perfect competition)市場の特徴 完全競争市場の条件 第7章 市場と均衡 7.1 完全競争 完全競争(perfect competition)市場の特徴 この市場において,誰もが自分だけの行動によって市場価格を左右しうるほどの力を持っていない。 つまり,すべての個別の市場参加者(消費者・企業)は価格支配力を持たずに,パライス・テイカーとして行動する。 完全競争市場の条件 各財の買い手と売り手が多数存在 各財の製品差別化product differentiationなし すべての成員が市場の価格や財の特性について完全な情報をもつ 企業の市場への参入・退出が自由(自由参入free entry) ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム ■ ワルラス的調整過程(価格調整) 均衡の安定条件: 超過供給 第7章 市場と均衡 S D 7.2 市場価格の調整メカニズム x p 超過供給 ■ ワルラス的調整過程(価格調整) 需要量 > 供給量 D(p) > S(p) の時,超過需要excess demandが発生し,買い手が不足な商品を入手するためにより高い価格をも受容することになり,価格は上昇する。 需要量 < 供給量 D(p) < S(p) の時,超過供給excess supplyが発生し,売り手が過剰な商品を売りさばくためにより低い価格をつけることになり,価格は下落する。 D" S" p" E p* x* S' D' p' 超過需要 需要と供給は市場での価格調整を通じて,均衡点Eへ収束する場合,市場均衡は安定である。 均衡の安定条件: ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム ■ ワルラス的調整過程(価格調整) (不安定均衡のケース) 需要量 > 供給量 第7章 市場と均衡 S D 7.2 市場価格の調整メカニズム x p ■ ワルラス的調整過程(価格調整) (不安定均衡のケース) 需要量 > 供給量 D(p') > S(p') の時,超過需要excess demandが発生し,価格は上昇する。 需要量 < 供給量 D(p") < S(p") の時,超過供給excess supplyが発生し,価格は下落する。 需要と供給は市場での価格調整を通じて, 均衡点Eから発散する場合,市場均衡は不 安定になる。 D" p" S" E p* p' D' S' S D x p S" p" D" E p* p' D' S' ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム ■マーシャル的調整過程(数量調整) 調整過程 均衡の安定条件: 需要価格pD: 第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム S D ■マーシャル的調整過程(数量調整) 需要価格pD: 買い手にちょうどそれだけの数量xを過不足なく買わせる誘因となるような価格である。 供給価格pS: 売り手をしてちょうどそれだけの数量xを市場に供給させるに足りる誘因となるような価格である。 調整過程 pD > pS の時,企業が増産するほうが有利であるので,生産量xは拡大する。 pD < pS の時,企業が減産するほうが有利であるので,生産量xは縮小する。 x p p'D p"S E p* x* p'S p"D x' x" 市場価格は数量調整を通じて均衡点Eへ収束する場合,市場均衡は安定である。 均衡の安定条件: ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム ■マーシャル的調整過程(数量調整) (不安定均衡のケース) 第7章 市場と均衡 D S 7.2 市場価格の調整メカニズム x p ■マーシャル的調整過程(数量調整) pD > pS の時,企業が増産するほうが有利であるので,生産量xは拡大する。 pD < pS の時,企業が減産するほうが有利であるので,生産量xは縮小する。 (不安定均衡のケース) 市場価格は数量調整を通じて均衡点Eから発散する場合,市場均衡は不安定である。 pS' E pD' pD" x* pS" x' x" p*= pD(x*) = pS(x*) x p D S pD" E pS" pS' x* pD' x' x" ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム : : : ■ 蜘蛛の巣の理論(動学的調整) 仮定: 均衡の安定条件: 第7章 市場と均衡 S D 7.2 市場価格の調整メカニズム ■ 蜘蛛の巣の理論(動学的調整) 仮定: (1)前期の市場価格がそのまま維持すると予想して,今期の生産数量を決定する。 xt = St+1=S(pt) (2)今期の産出量はすべて今期の市場で売り尽されねばならない。 pt=pD(xt) 年期 供給 価格 0 p0 1 x1=S(p0) p1=pD(x1) 2 x2=S(p1) p2=pD(x2) : : : x p A p0 p2 E C B p1 x2 x1 需要と供給は市場での動学的調整を通じて,均衡点Eへ収束する場合,市場均衡は安定である。 均衡の安定条件: ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム : : : ■ 蜘蛛の巣の理論(動学的調整) 仮定: 第7章 市場と均衡 S D 7.2 市場価格の調整メカニズム 不安定のケース ■ 蜘蛛の巣の理論(動学的調整) 仮定: (1)前期の市場価格がそのまま維持すると予想して,今期の生産数量を決定する。 xt = St+1=S(pt) (2)今期の産出量はすべて今期の市場で売り尽されねばならない。 pt=pD(xt) 年期 供給 価格 0 p0 1 x1=S(p0) p1=pD(x1) 2 x2=S(p1) p2=pD(x2) : : : x p p0 E 需要と供給は市場での動学的調整を通じて,均衡点Eから発散する場合,市場均衡は不安定である。 ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム 需要の変化 第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム 消費者の所得や嗜好,企業の生産技術や雇用量など他の事情のなかの1つの与件の変化による市場均衡の変化を分析するのは比較静学の手法である。与件の変化も,均衡の変化も1回限りの変化である。 需要の変化 消費者の心理(嗜好)などの需要面の事情が変化する場合,市場にどのような影響を及ぼすのか。 S D D' x p 例えば,同じ価格に対して,以前よりも多くの量を需要するようになったら,需要曲線が右へシフトする。このような他の事情の変化による需要曲線のシフトを需要の変化と呼ぶ。 需要曲線の右へのシフトによって,均衡価格は上昇し,均衡取引量が増加する。 E' 超過需要 p'* E p* x* x'* ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム 供給の変化 第7章 市場と均衡 7.2 市場価格の調整メカニズム 消費者の所得や嗜好,企業の生産技術や雇用量など他の事情のなかの1つの与件の変化による市場均衡の変化を分析するのは比較静学の手法である。与件の変化も,均衡の変化も1回限りの変化である。 供給の変化 災害や課税など供給面の事情が変化する場合,市場にどのような影響を及ぼすのか。 S D S' x p 例えば,企業に対して従量税を課するようになったら,供給曲線が左へシフトする。このような他の事情の変化による供給曲線のシフトを供給の変化と呼ぶ。 供給曲線の左へのシフトによって,均衡価格は上昇し,均衡取引量が減少する。 E' p'* 超過需要 E p* x'* x* ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.3 市場取引の利益 部分均衡分析 第7章 市場と均衡 7.3 市場取引の利益 部分均衡分析 多くの財の中から1つの財のみを取り上げ,他の財の価格,消費者の所得や嗜好,企業の生産技術や雇用量などを一定(他の事情を一定)として,特定の財の価格とその財のへ需要量と供給を分析すること。 一般均衡分析 すべての財の価格と需要・供給,即ちすべての市場を同時に分析すること。 ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.3 市場取引の利益 ■ 消費者余剰の大きさ 第7章 市場と均衡 7.3 市場取引の利益 ■ 消費者余剰の大きさ 数値例: 真夏の暑い日に,飲み水も手に入らないとしたら,コップ1杯の水に払ってもよいと思う金額について,下表のようである。 最初の1杯目 450円 第2杯目 250円 第3杯目 50円 x1 p1 このとき,もしこの人が3杯の水を買うなら,750円を払ってもいいと思っている。 しかし,実際に店頭では1杯50円で売っているので,3杯の水を買っても150円しか払わない。 従って,実際1杯50円の水を3杯購入したら,600円得していることを感じる。 消費者余剰 450 250 50円/杯 50 1 2 3 ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.3 市場取引の利益 ■ 消費者余剰の大きさ 第7章 市場と均衡 7.3 市場取引の利益 ■ 消費者余剰の大きさ マーシャルによる消費者余剰の概念: 支払う意思はあるが支払わないで済んだという意味での,需要行動を通じた消費者の利益を表したものである。 消費者個人の特定の財へ需要曲線が与えられたとき,市場価格p*の上方,需要曲線と縦軸が囲む面積の大きさは,消費者余剰の大きさを表している。 これは消費者が財の量x*を買うために支払ってもよう総額が,実際に市場で支払う総額を超過する額だからである。 需要曲線 x1 p1 消費者余剰 450 250 50円/杯 50 p* 1 2 x* 3 ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.3 市場取引の利益 ■ 生産者余剰の大きさ y p 供給曲線 生産者余剰 p1 y1 ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.3 市場取引の利益 ■ 社会的余剰(余剰の和) 第7章 市場と均衡 7.3 市場取引の利益 ■ 社会的余剰(余剰の和) D S 総余剰=余剰の和 需要曲線はこの財を需要する人々のこの財に対する限界的評価を表している。 供給曲線は生産の限界費用を表している。 市場均衡点Eにおいて Y = Y* ⇒ 限界費用 = 限界評価 消費者余剰+生産者余剰=総余剰 E点において,総余剰は最大となる。 Y p 消費者余剰 生産者余剰 E p* Y* 総余剰(=社会的余剰)は消費者と生産者から成る社会全体の利益であり,経済厚生(あるいは社会的厚生)であると経済学ではみなされている。 部分均衡分析における余剰の和の大小は,社会的厚生を測る1つの基準として用いられ,余剰の和が大きいほど,資源配分がより効率的であると考えられる。 ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.4 政策介入のコスト ■ 間接税(従量税) 過小生産の例 第7章 市場と均衡 S' 7.4 政策介入のコスト ■ 間接税(従量税) D 政府の税収 S 総余剰 過小生産の例 酒税のような間接税の下では,例えば生産物1単位当たりに一定額の税金を生産者から徴収する。 このような税金の徴収は,生産の限界費用曲線が上方へシフトに相当する。従って,供給曲線も上方シフトするのである。 生産者価格PP,消費者価格PCの下で需給量Y'が均衡となる。 自由な取引に比べ,総余剰が減少し,厚生損失(死荷重)が生じてしまった。 Y p 消費者余剰 K PC E p* 税金分 PP C Y' Y* 厚生損失 (死荷重) 生産者余剰 Y < Y* ⇒ 限界費用 < 限界評価 ミクロ経済学
第7章 市場と均衡 7.4 政策介入のコスト ■ 間接税(従量税) 第7章 市場と均衡 7.4 政策介入のコスト ■ 間接税(従量税) 企業に財の1単位当たりにt円の税金が課されるとすると,供給曲線は上方へt円だけシフトする。均衡点は課税前のE点から,課税後のE'点へシフトし,均衡価格が上昇する。 S D 政府税収=t・x'*= E'A・x'* 買い手の負担: 買い手の購入価格がp*からp'*まで上昇したので,購入財1単位当たりの税負担は(p'*-p*)であり,税負担総額は(p'*-p*)x'*=E'F・x'*である。 売り手の負担: 財1単位当たりにt円の税が課されたので,企業にとって販売価格からt円を引いた実質価格はpSまで低下し,税負担総額は(p*-pS)x'*=FA・x'*である。 S' 買手負担 x p 政府税収 E' t 円 p'* x'* E p* F pS A x* 売手負担 ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.4 政策介入のコスト ■ 価格維持政策 最低賃金政策の例: 価格を均衡価格pEよりも高い水準pFに維持する政策 第7章 市場と均衡 7.4 政策介入のコスト ■ 価格維持政策 最低賃金政策の例: 価格を均衡価格pEよりも高い水準pFに維持する政策 pFの下で,需要量がxFしかないので,市場の取引量はxFとなる。従って,市場では超過供給に陥っている。 この政策によって,社会的余剰はΔEGFだけ減少した。 消費者余剰 x p 余剰の損失 S F pF xF E pE G D xE 生産者余剰 ミクロ経済学(Ⅰ)
第7章 市場と均衡 7.4 政策介入のコスト ■ 価格維持政策 家賃の統制政策の例: 第7章 市場と均衡 7.4 政策介入のコスト ■ 価格維持政策 家賃の統制政策の例: 家賃に上限価格pGを均衡価格pEよりも低い水準に設定する政策 pGの下で,需要量がxFしかないので,市場の取引量はxFとなる。従って,市場では超過需要に陥っている。 この政策によって,社会的余剰はΔEGFだけ減少した。 消費者余剰 x p 余剰の損失 S F xF E pE pF G D xE 生産者余剰 ミクロ経済学(Ⅰ)