米国ウイスコンシン州マーシュフィールドにおけるプレイリードッグから感染した サル痘の初発症例と家族内感染 ( 臨床像の写真 )

Slides:



Advertisements
Similar presentations
米国の外来呼吸器感染症での抗菌薬投与状況 抗菌薬投与率 普通感冒 5 1% 急性上気道炎 52% 気管支炎 6 6% 年間抗菌薬総消費量 21% 【 Gonzales R et al : JAMA 278 : ,1997 】
Advertisements

佐久総合病院 総合診療科 高山義浩 平成17年10月11日 インフルエンザの 予防と治療 Prevention and control of Influenza.
動物咬傷 ~噛みなやな 犬猫どもが ゆめの痕~ 研修医.com.
扁桃腺炎・咽頭炎.
三例の糖尿病性腎症導入例 仁和寺診療所 田中 貫一 仁和寺診療所.
Web-siteへ寄せられた の分析と ジアテルミー手術のため来院した症例 ひたちなか市 志井田 守
A case of pneumatosis cystoides intestinalis attributed
豚丹毒 豚に敗血症を起こす 人獣共通感染症.
つちだ小児科  土田晋也
伝染性膿痂疹の患者さんの皮膚状態 水疱、びらんを特徴とする水疱性膿痂疹と、厚い痂皮を特徴とする痂皮性膿痂疹に大別される。
初心者を対象とした 形態グループミーティング
図1 び漫性管内増殖性糸球体腎炎(PAS像)
マイコプラズマ感染による豚の 慢性呼吸器疾病
端 緒 鹿児島県徳之島において、第5週(1月26日)以降、多数の風疹患者の届け出があった。
急性間質性腎炎とDIC時の 腎病変など 出典
図1 膜性増殖性糸球体腎炎typeⅠ(PAS)
牛丘疹性口炎 (Bovine papular stomatitis)
関東地方会 症例検討(治療) 東京医科大学 乳腺科学分野     寺岡冴子.
1~3ヶ月齢子馬の難治性化膿性肺炎潰瘍性腸炎および付属リンパ節炎
馬パラチフス 馬科動物の生殖器感染症.
がんの家族教室 第2回 がんとは何か? 症状,治療,経過を中心に
輸血後GVHD 琉球大学輸血部 佐久川 廣.
最近の肺結核の治療と診断 浜松医大救急部           白井 正浩.
重篤副作用疾患シリーズ(1) スティーブンス・ジョンソン症候群
狂犬病 忘れ去られている恐ろしい病気.
1,709種類(ウイルス、細菌、真菌、原虫、寄生虫)
牛白血病(届出) 本病はリンパ系細胞が全身に悪性腫瘍性に増殖したもので、血流中に腫瘍細胞のみられる白血病の他、全身にリンパ肉腫を形成するものの総称である。 大きく地方病性牛白血病(enzootic bovine leukosis ; EBL)と散発性牛白血病(sporadic bovine leukosis.
症例報告書フォーム 小児歯科学会認定歯科衛生士 申請症例報告書 (所属)  ○○歯科 (氏名)  ○○ ○○子 
牛の尿路コリネバクテリウムによる 血尿を主徴とする感染症
DCC エボラウイルス病(EVD, エボラ出血熱) 対応フローチャート(テンプレート)
馬ウイルス性動脈炎 (Equine viral arteritis)
虫垂炎 研修医.com       
第一回勉強会 ~風邪を正しく診断する~.
Epidemic cerebrospinal meningitis Meningococcal meningitis
「小児急性中耳炎診療指針」 利用上の注意点
Case17 6班 小池・越田・後藤 ・古谷野 3.
線維素性胸膜肺炎を主徴とする 豚の呼吸器系感染症
連携・連絡 (退院時まで) 術後連携の説明 □ 患者様用パス説明 手術後後遺症・再発等 発生時の連絡先 □ 確認の実施 ~ 2 ~
山羊関節炎・脳脊髄炎(届出) 山羊関節炎・脳脊髄炎ウイルスによって起きる成山羊の関節炎や乳房炎、幼山羊の脳脊髄炎や肺炎を主徴とする疾病
ICPC分類を用いた一次応急診療所受診者の能動喫煙・受動喫煙と受診理由・診断病名の分析
第13回 日本乳癌学会関東地方会 教育セミナー 診断部門.
当院における 急性中耳炎の 起炎菌とその臨床像 (インフルエンザ菌vs肺炎球菌)
緩和ケアチームの立ち上げ ー緩和ケア医の立場からー
問題5 正しいものを記せ。.
2015年症例報告 地域がん診療連携拠点病院 水戸医療センター
症例1 53歳 女性 血性乳頭分泌を自覚 その後右乳房腫脹が著明となり近医を受診 右乳房の大部分を占める腫瘤 (130×120mm)を触知 腋窩リンパ節は非触知 【既往歴及び家族歴】特記事項なし.
臨床診断総論 画像診断(3) 磁気共鳴画像 Magnetic Resonance Imaging: MRI その7
大宮ソニックシティー 足利赤十字病院 外科 戸倉英之
輸入感染症例(平成18年) フィリピンで感染し、日本に帰国後発症死亡
ロタウイルス 2015年1月13日.
(CCHF: Crimean-Congo haemorrhagic fever)
疫学概論 疾病の自然史と予後の測定 Lesson 6. 疾病の自然史と 予後の測定 S.Harano,MD,PhD,MPH.
血栓性血小板減少性紫斑病 TTP 溶血性尿毒素症候群 HUS
―自家培養真皮移植、超薄分層植皮による瘢痕拘縮形成― 北里大学人工皮膚開発センターとの共同研究 文献  Skin regeneration for children with burn scar contracture using autologous cultured dermal substitutes.
新型感染症 2004.11.28.
肺炎診断の最新知見と ガイドラインに基づく治療戦略 ~カルバペネム系抗菌薬を中心に~
クラスター(集団発生)サーベイランスについて
2015年症例報告 地域がん診療連携拠点病院 水戸医療センター
経過のまとめ 家族歴、基礎疾患のない14歳女性 筋力低下、嚥下障害を主訴としてDM発症 DMは、皮膚症状と筋生検にて確定診断
病理学実習2:女性生殖器Ⅱ 卵巣の疾患・絨毛性疾患
( sGOT ・ sGPT ・ Alp ・T bil ・ LDH )
他施設からの針刺・血液曝露に関する抗体検査等問い合わせに対する対応
溶連菌感染症 1.急性咽頭炎・急性扁桃腺炎 2.伝染性膿痂疹
病理学実習1:女性生殖器Ⅰ 子宮頚部,子宮体部の疾患
問13. デング熱 の地理的分布に関する最近の知見では、従来の生物地理区の説明とは違っているので、再確認する。
形成 太朗 日本形成外科学会事務局.
インフルエンザウィルスA型及びB型検出用試薬
手術安全は重大な 公衆衛生上の問題です 毎年、世界中で約2億3千4百万件の手術が行われています
私のカルテ 発熱性好中球減少に対する予防的G-CSF製剤使用のための地域連携パス(通称:G連携)
図1 斑紋異常の子牛 出生 性別 精液の銘柄 症例1 H27.3.13 雄 Ⅰ 症例2 H27.5.26 雄 Ⅱ
Presentation transcript:

米国ウイスコンシン州マーシュフィールドにおけるプレイリードッグから感染した サル痘の初発症例と家族内感染 ( 臨床像の写真 ) 米国ウイスコンシン州マーシュフィールドにおけるプレイリードッグから感染した サル痘の初発症例と家族内感染 ( 臨床像の写真 ) Kurt Reed MD John Melski MD Erik Stratman MD マーシュフィールドクリニック(2003年5月~6月)

マーシュフィールドにおける初発症例児 プレイリードッグに噛まれて14日日後の右手示指原発接種部位(2003年5月25日, 発熱症状から11日 後, 第5病日). © Marshfield Clinic

患児: 左手の初発接種部位の続発する病巣 (2003年5年27日) © Marshfield Clinic © Marshfield Clinic © Marshfield Clinic

患児: 播種状の肢端部位(2003年5月27日) © Marshfield Clinic © Marshfield Clinic

2003年5月26日夜間より発汗・発熱と倦怠感が出現. 母親の猫に引っ掻かれた部位に水疱と発赤が出現した 翌日(2003年5月27日)の皮膚所見を示す. 咽頭痛を訴える. © Marshfield Clinic

母親: 播種状で臍状に窪んだ水疱疹(2003年5月27日).発汗を繰り返すが子供ほど重症ではない. 咽頭痛を有する. © Marshfield Clinic

母親(2003年5月29日), 生検(2003年5月27日)部位を超えての水疱疹の拡大. サテライトの水疱疹ではない. © Marshfield Clinic

2003年5月29日の母親, 発赤疹の上の臍状の水疱疹. 全身状態良好. 患児が退院. 2003年5月29日の母親, 発赤疹の上の臍状の水疱疹. 全身状態良好. 患児が退院. © Marshfield Clinic

2003年6月3日:父親の皮膚所見(2003年5月31日~ 6月1日の発熱・発汗・全身倦怠感). 全身状態良好. © Marshfield Clinic

2003年6月3日:父親の体幹部位 © Marshfield Clinic © Marshfield Clinic

2003年6月5日:父親の体幹部位 © Marshfield Clinic

2003年6月5日の患児と母親の皮膚所見, 初発接種部位の痂皮化. 両者とも全身状態改善. 2003年6月5日の患児と母親の皮膚所見, 初発接種部位の痂皮化. 両者とも全身状態改善. © Marshfield Clinic

2003年6月5日の患児の治癒過程の病変部位 © Marshfield Clinic

2003年のサル痘(monkeypox)の症例: 患児 5/11の母の日, ウッソー(Wausau)での開催されたペット交換会で得た 2匹のプレイリードッグがウイスコンシン州のドーチェスター(Dorchester) の母親に贈られた. 5/13プレイリードッグが3歳半の娘の右示指と左手の手背部を噛む. 5/15プレイリードッグは皮膚病変の絡みと鼻や目からの浸出液の漏出により獣医師に診察を受ける.プレイリードッグが獣看護師を噛む. 5/16 患児発熱, 受傷部位は発赤する. 5/20患児が家庭医を受診.患部は隆起し蒼白で患児は上気道炎様の兆候を示した. オーグメンチンとジスロマックの投与開始.プレイリードッグが死亡する. 獣医により頭部はマディソンに送られ狂犬病の検査を実施したが陰性だった. 肥大化した顎下リンパ節を摘出し、培養検査のためマーシュフィールドジョイントベンチャー検査所(Marshfield Joint Venture Laboratory)に送られた.

2003年のサル痘の症例 :患児 5/22 患児は創面の開創、発熱、発汗、右眼の浸出液漏出と眼周囲の腫脹(受傷した手で擦ったためか?)、肩甲骨・会陰部と四肢にあらたな皮疹が出現し入院となる. シプロフロキサシンを含む複数の抗菌薬の経静脈的な投与を開始. 5/25 持続する発熱と新規の皮疹の出現により皮膚科併. 初発部位である右手示指と左手の手背部の皮疹は膿疱性の辺縁部の中心が出血性に痂皮化した. 播種状の小水疱性丘疹と膿疱は 中央部の臍状の窪みを伴う紅斑性発疹 で出血性の痂皮を伴うか場合もある. 生検部位の好気性培養と病理検査を12時30分に実施. 同日21時には, 広範な表皮の壊死像と細胞間質内での封入体と恐らく多核細胞の存在が報告された. HSV I & II の特殊染色は陰性であった. 経静脈的にアシクロビルの投与を開始.

2003年のサル痘の症例 :母親 5/27 28歳の母親が右手手背部猫に引っ掻かれた部位に水疱形成が出現. ウイルス培養・電子顕微鏡検査・病理検査のため生検を施行. スワッブで好気培養を実施. 母親はびしょ濡れになるほどの発汗をし, 倦怠感, 咽頭痛があり気分を悪がる. 5/28 母親は播種状に皮膚病変が広がる. 発汗が激しくなるが気分は改善し、口腔内体温は正常化. 5/29 母の初発病巣部位を再度生検. 右手前腕の播種状の病変部位も生検を実施. 母親の気分はさらに改善したが咽頭痛は残り、扁桃は肥大.急性期の血清を採取. WBC 6,200(杆状核 23%, 分葉核 39%, リンパ球 24%, activated lymphs 5%, 単球8%), CRP=5.3, 一般生化学検査: 正常. 咽頭培養陰性でアシクロビル 1g/2回/日投与. 母親は就労を制限. 子供はシプロフロキサシンを処方し退院. 5/30 母親の初回生検部位からオルソポックスウイルス(Orthopox virus)を検出. バラシクロビル投与を中止.

2003年のサル痘の症例:父親 5/31~6/1 38歳の父親が発汗・倦怠感を訴える。多発性の皮膚病巣が出現. 6/2 初診医が父親の四肢・体幹・頭部の皮膚に12~15の播種状病変を報告. 気分は改善したが就労を控える. 6/5 家族が外来受診.全員症状改善.初発病巣は潰瘍部位が痂皮化.母親の扁桃は縮退しリンパ節肥大も消失していた。父親は水疱状態の部位が2箇所残存し腋窩リンパ節腫大が存在した.急性期の血清とウイルス分離用検体が父親から採取された.両親には就労禁止が言い渡された. 6/6 家族の飼育していた13匹の猫,20匹の犬,7頭の馬,4頭の山羊,3匹の猿と1匹のプレイリードッグが検疫の対象となる. オルソポックスウイルス(Orthopox virus)がプレイリードッグのリンパ節から分離された.

注意・免責事項 [提供] 本プレゼンテーション資料はKurt Reed, M.D. (Director of Clinical Research, Clinical Research Center, Marshfield Clinic Research Foundation:Email: reed.kurt@mcrf.mfldclin.edu)が提供しているmonky poxの教育用の資料の邦訳版を著者の了解を得た上で公開するものです。 [出典] http://research.marshfieldclinic.org/crc/monkeypox.asp http://research.marshfieldclinic.org/crc/files/MonkeyPox_MarshfieldWI_ClinicalPhotos_v3.ppt [翻訳] 横浜市立大学医学部附属病院 臨床検査部講師 満田年宏 [免責] (1)本プレゼンテーション資料は原文に沿って可能な限り忠実に訳していますが、学会の特定の審査機構(委員会など)を経ている資料ではありません。スライドセットの内容に関しては原文と対比戴き、自己責任でご使用下さい。 (2)本資料や関連のホームページの内容を引用したり誌面で使用する場合は原著者に必ず掲載の許可を自らお取り下さい。