Pox virus 感染 種々の動物名が付けられたウイルスが存在しているが、Orthopox 属とParapox 属の多くは宿主域が広く、ヒトも感染する人畜共通感染症である。痘瘡(天然痘)ウィルス、牛痘ウィルスおよびワクチニアウイルスは近縁であり、痘瘡根絶後ワクチン接種が中止されたため、その他のウイルスに対する防御能も低下している。

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Presentation transcript:

Pox virus 感染 種々の動物名が付けられたウイルスが存在しているが、Orthopox 属とParapox 属の多くは宿主域が広く、ヒトも感染する人畜共通感染症である。痘瘡(天然痘)ウィルス、牛痘ウィルスおよびワクチニアウイルスは近縁であり、痘瘡根絶後ワクチン接種が中止されたため、その他のウイルスに対する防御能も低下している。

International Committee on Taxonomy of Viruses Subfamily: Chordopoxvirinae  Genus: Orthopoxvirus  Genus: Avipoxvirus Fowlpox virus (鶏痘) Camelpox virus (ラクダ痘) Cowpox virus (牛痘) Ectromelia virus (エクトメリア痘) Monkeypox virus (サル痘) Raccoonpox virus (アライグマ痘) Taterapox virus (アレチネズミ痘) Vaccinia virus (ワクチニアウイルス) Variola virus (痘瘡、天然痘) Volepox virus (ハタネズミ痘)  Genus: Capripoxvirus Goatpox virus (山羊痘) Sheeppox virus (羊痘) Tentative Species in the Genus  Skunkpox virus (スカンク痘)  Uasin Gishu disease virus (馬痘)  Genus: Parapoxvirus Pseudocowpox virus (偽牛痘) Bovine papular stomatitis virus (牛丘疹性口炎) International Committee on Taxonomy of Viruses

痘瘡(天然痘、smallpox、variola) WHO: Smallpox outbreak

痘瘡(天然痘、smallpox、variola) 痘瘡の記録は紀元前1350年に遡り、紀元前1100年代に没したエジプト王朝のラムセス5世のミイラには痘痕が確認されている。この古典的な大痘瘡(variola major)の他に、19 世紀後半にアメリカ大陸で出現した小痘瘡(variola minor)がある。大痘瘡は全身症状が強く死亡率も 30%と高いのに対し、小痘瘡は一般に軽症で死亡率は 1%未満である。両ウイルスは、孵化鶏卵の尿漿膜にポックスを作る限界温度が異なる以外は性状は同じである。 1663年 米国のインディアン集落の流行では約4万人の内数百人しか生き残らなかったこと、1770年 インドの流行では300万人が死亡した等の記録がある。 1796 年 Jenner が種痘法を発表された当時、英国では45,000 人が天然痘のために死亡していた。我が国では明治年間に、2~7 万人程度の患者数の流行(死亡者数5,000~2万人)が6回発生している。

日本の痘瘡流行の最初の記録は天平7年(735) 「日本書紀」とされ、一般に「疱瘡(ほうそう)」といわれた。生まれた赤子が大人になるまでの最大の危険因子が痘瘡であり、それを免れるため地域では「疱瘡神」を祭り、近しい人の出産に「疱瘡絵」を送り、無事育ったことを「七五三」の節目で祝った。 「疱瘡退除の図」 疱瘡除けの祈願。 鬼のように見える武将から疱瘡神が慌てて逃げていく様子が描かれている。 病児のお見舞と回復祈願に用いた。

発熱 日 – 4 – 3 – 2 – 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 21 発疹前 丘疹・小水疱 膿疱 痂皮 発疹 発疹出現日 発熱の後に発疹が現れた日を起点として病日を数える。丘疹→水泡→膿庖→ 痂皮へと進行し、回復後は痘痕を残す。右は、丘疹の典型的経過を示す(数値は病日)。 感染研 天然痘研修会資料

人痘法 種痘法は古代インドのサンスクリットに記載されており、その後、紀元前600年頃に中国で痂皮を鼻腔に接種する経鼻伝痘法が確立・普及したという。接種を受けた子供の2%は重症化して死亡するという危険を伴う方法であったが、中近東から欧州へと広がったことは、痘瘡が流行した際の被害の大きさを物語るものである。日本に人痘法が入ったのは1744年で、清の医学書「医宗金鑑」を基に緒方春朔が経鼻伝痘法を改良し、秋月藩内での流行(1789~1790年)の際に効果を発揮したという。 牛痘法 1796年に牛痘法を発見したエドワード・ジェンナーも人痘法を受けており、接種を受けた子供の2%は重症化して死亡するという危険を伴う人痘法の改善に取組む動機となったとされている。 人痘法の日本への導入 ジェンナーの偉業を日本に伝えたのは、26年後(1802年)の長崎のオランダ商館長とされる。その後、商館医師に着任したシーボルトが持参の牛痘苗で種痘を行ったが成功しなかった。モーニッケが、オランダ領バタビアから取り寄せた牛痘痂を接種して善感させることに成功したのは1849年とされている。緒方洪庵が大阪に「除痘館」を開いたのはこうした先人の努力によるものである。

痘瘡の感染力、罹患率、致命率の高さは古くからよく知られている。1663年米国では、人口約4万人の先住民族部落で流行があり、数百人の生存者を残したのみであったこと、1770年のインドの流行では300万人が死亡した等の記録がある。Jennerが種痘を発表した当時(1796年)、英国では45,000人が痘瘡のために死亡していた。我が国では明治年間に、2~7万人程度の患者数の流行(死亡者数5,000~2万人)が6回発生している。第二次大戦後も、1946年に18,000人程の流行があり、約3,000人が死亡したが、緊急接種などが行われて沈静化し、1956年以降には国内発生はない。 種痘 IDWR 種痘後には10~50万人接種あたり1人の割合で脳炎が発生し、その致死率は40%と高い。その他、全身性種痘疹(右図)、湿疹性種痘疹、接触性種痘疹などの副反応がある。このような副作用があっても、未接種による大流行と比べれば被害ははるかに軽微であり、「ワクチン禍」を過大評価する風潮は誤りである。

痘瘡ワクチン: ワクチニアウイルス 1798年のJennerによる牛痘法開発以降、現代のように冷凍保存技術もない時代にはウイルスは動物から動物,あるいはヒトに継代して維持された。したがって,痘瘡ワクチン株は国によりさまざまな継代法で維持されてきており,多種類のワクチン株が存在した。その過程で、痘瘡根絶に役だった種痘ワクチン、ワクチニアウイルスが出来上がった。ジェンナーは牛痘ウイルスを用いたのだが、遺伝子配列が行われた結果両者は全く別物であることが判明した、ワクチニアウイルスは自然界から見つかっておらず、その由来については次の仮説がある。 a. 牛痘ウイルスが動物や人間の皮膚で継代されている間に変異を起こした。 b. 痘瘡ウイルスが、牛に感染して変異した。 c. 牛痘ウイルスと痘瘡ウイルスの合の子。 ・ Jennerの時代は病原微生物発見以前であり、牛痘ウイルスを特定した訳ではない! ・ 自然界のワクチニアウイルス 種痘200年を迎えて 当初のワクチン製造方法は、仔牛の腹側皮膚を剃髪消毒後に接種刀で傷をつけ、そこにウイルス液を塗布し、発痘後これを掻き取り、乳剤として希釈液と混合し製造しており、無菌痘苗を製造することがいかに難しいかは想像に余りある。ワクチンの副作用問題が大きく取上げられるようになって、1970年頃から細胞培養系の検討が行われ、1975年にワクチン株として製造承認されたものの、1979年の痘瘡根絶を前に実際の使用には至らなかった。 LC16m8株ワクチン

ワクチニアウイルスの謎と牛痘 牛痘 (Cowpox) 家畜伝染病ではない。人畜共通感染症 病原体:  ポックスウイルス科コルドポックスウイルス亜科オルソポックスウイルス属に属する牛痘ウイルス。 宿主:  自然宿主: ケッシ類(英国をはじめ西ヨーロッパの野ネズミの抗体調査において、ヨーロッパヤチネズミ、モリアカネズミ、キタハタネズミの陽性率が高かった)。 感受性動物: ネコ科動物、ヒト、牛など種々の動物に感染する。ネコ科動物の感受性が高い。 病態:  症状として丘疹、結節、水疱、膿疱を形成する。 「牛痘」という名前であるが、Jennerの「乳絞りの手」に由来するウイルスとは別物である可能性が高い? What is cowpox?

乳搾りの「できもの」 (Milker‘s nodules) 原因ウイルスは、Parapoxvirus属のPseudocowpox virus(偽牛痘ウイルス)であり、罹患牛乳房から搾乳者の手指に伝染して結節およびリンパ管炎を生じ、ときに広汎性の丘疹、丘疹状の小疱疹を作る。ヒト感染から未感染乳牛に伝播する。牛丘疹性口炎ウイルスもヒトに類似の病変をつくる。ヒトーヒト感染はないとされている。 潜伏期(5-14日)が過ぎると、赤く盛上った小班ができ、1週間もすると赤紫色の水泡または結節となる。できる部位は、手指が多いが、顔面に及ぶこともある。表面は灰白色を呈し、痂皮を形成する。腕のリンパ管に沿った赤い線条とリンパ節の腫脹がみられることもある。多くの場合、細菌の二次感染を伴う。

Cowpox Infection, Human 種痘が出来上がる前のJennerの時代には? 牛痘ウイルスはヨーロッパ大陸と英国に分布し、ヒトの感染は稀であるとされてきた。しかし、今世紀に入ってオランダ、フィンランド、ドイツ、フランス等での感染例が相次いで報告された。ただし、感染者の大半は少年・少女であり、痘瘡根絶後に育ったために種痘を受けていない。 Cowpox Infection, Human 種痘が出来上がる前のJennerの時代には? 新興感染症? ワクシニアウイルスは、痘瘡ウイルスおよびその他のオルソポックスウイルスに近縁であり、交叉免疫を誘導する。牛痘感染者増加は、種痘中止後牛痘に対する免疫を持つ人口が減少しているという事実を反映している可能性がある。 16歳少年

Feline cowpox virus infection ネコは牛痘ウイルスに感受性が高いが、死亡することはなく、自然治癒する。子供達が接触することによって感染する。 Feline cowpox virus infection

Cowpox Virus Transmission from Pet Rats to Humans ドイツでは同じペットショップから購入したラットから2家族5人が感染した。店の従業員の感染はなかったが、店のラット31匹中4匹に病変があり、17匹がPCR検査陽性だった。 日本への輸入は?

Brazilian Vaccinia Viruses and Their Origins VARV: Variola virus 痘瘡 VACV: vaccinia virus 痘瘡ワクチン CPXV: cowpox virus 牛痘 ブラジルには、ポルトガルのリスボンから戻る奴隷の腕に痘苗が接種されて1804年に持込まれ、腕から腕に接種されていった。子牛でワクチン製造が始まったのは1887年以降である。1960年代以降、野生のネズミ、牛およびヒトからワクシニアウイルス(Group1、Group2)が分離されてきたが、それらは遺伝子解析によってワクチン株とは異なっていた。 ブラジルで流行しているワクシニアウイルスは、国連による痘瘡根絶計画以前から存在していたと考えられる。 ブラジルで使われたワクチン株 "Paris," Lister, "Lederle”

Jennerの牛痘法を嘲笑する戯画 牛になるぞ! ジェンナーの時代には病原微生物は未だ発見されておらす、彼が牛から採ったウイルスは、一体何だったのか? その後使われたワクチン株の起源は? 近年の調査結果は、牛痘ウイルスではなくワクチニアウイルスであったことを示唆する。

サル痘 (Monkeypox) 家畜伝染病ではない。人畜共通感染症 病原体: ポックスウイルス科コルドポックスウイルス亜科オルソポックスウイルス属に属するサル痘ウイルス。 疫学: 自然宿主: アフリカ棲息のリス族やげっ歯類。感受性動物: サル、ウサギ、プレーリードックなど。これら動物との接触(水疱、膿疱、痂皮)によりヒトも感染する。ヒトのサル痘は、痘瘡が清浄化したザイール(現コンゴ民主共和国)で1970年に初めて報告された。ヒトーヒト感染は限定的とされている。 ヒトの病態: 7~21日の潜伏期の後、発熱や発疹、頭痛、悪寒、局所リンパ節腫大をきたし、重症例になると臨床的に天然痘との鑑別が困難になる。特異的な治療法はなく、対症療法が中心。 国立感染症研究所

(左) Rhesus macaque: 額と眼瞼部に多数の出血性丘疹 (下) 霊長類の前腕: 赤みを帯びて凹んだ孤立性の丘疹が多数ある。 通常は自然回復するが、幼獣では死亡もある。不顕性感染もある。

ザイールの7歳少女 半年後:痘痕(治癒後に残る陥凹)を残して治癒 全身に発痘。下顎リンパ節や鼠径リンパ節等の腫脹。口腔内に粘膜疹とその潰瘍化。

アフリカの中央から西部の広大な熱帯雨林における 108名 ガーナ 26名 サルが生息する熱帯雨林を持つ国で散発的発生が確認されたが、発生の大半はザイールで占められ、1982年40名、83年84名と流行が拡大する気配をみせた。 ザイール :ヒトのサル痘感染(症例数) :熱帯雨林地帯 アフリカの中央から西部の広大な熱帯雨林における ヒトのサル痘感染 1970~1984年 (円内の数値は患者数)

1996年2月に始まった流行は、その後も発生が続き、97年までに合計511名に達した。 Congo, 1996-1997  1996年2月に始まった流行は、その後も発生が続き、97年までに合計511名に達した。  ヒト・ヒト感染の疑いもあったが、疫学調査の結果では、 患者の多くは野生動物(ヤマアラシ、ガゼル、サル、ネズミ等)を食べており、これらの動物の捕獲、調理、喫食を介して感染していることが判った。リス属の抗体を調べたところ、42%が陽性であった。 サバンナオニネズミ(3/19)、ハネジネズミ(1/3)、Thomas‘s tree(2/4、キリス属)、Kuhl’s tree(7/18)、Elephant shrew(1/3)。 CDC: EID 2001

コンゴ民主共和国保健省の調査は、21世紀になっても毎年千名程度のサル痘類似患者の発生があるとしたが、ウイルス学的裏付けがなかった。米国が協力して2001~2004年の症例を調べたところ、類似した水泡を形成する水疱瘡ウイルスによる症例が半数程度含まれていることが判った。これまでのサル痘患者の病態には、臨床診断のみに基づく情報も含まれていたと考えられた。 <4 5–14 15–24 25–34 >35 計 33 41 30 17 13 134 15 21 12 2 1 51 9 11 61 年齢 検体数 サル痘 水疱瘡 痘瘡 水疱瘡 致命率 発熱 丘疹の進行 丘疹の状態 丘疹の部位 掌や足の裏 10%以上 丘疹の2-4日前 遅い 同じ 手足 通常はある 稀 丘疹と同時 早い 様々 体幹 通常はない 分離された48株のサル痘ウイルスのHA遺伝子のopen reading frame を解析した結果、左図の明灰色と暗灰色で示した2グループに分けられた。 未知の部分が多い Congo, 2001–2004

ヒトのサル痘は中央・西アフリカの主に熱帯雨林で流行してきた(致命率数%~10%)。ところが、2003年に突如米国で発生し、アフリカ大陸以外でのヒトサル痘感染の最初の事例となった。ペットとして輸入したネズミが原因である。 CDC ウイルス検出 サバンナオニネズミ アフリカヤマネ ロープリス キリス シマネズミ ヤマアラシ

イリノイ、インディアナ、カンサス、ミズリー、オハイオおよびウイスコンシン州におけるサル痘症例の日別発生状況 MMWR July 11, 2003 イリノイ、インディアナ、カンサス、ミズリー、オハイオおよびウイスコンシン州におけるサル痘症例の日別発生状況 (2003年7月8日現在、71症例中69症例が発症日特定)

イリノイ州のペット業者がサバンナオニネズミをプレーリードッグと一緒に飼育し感染を広めた。 Wisconsin Illinois Indiana Missouri South Carolina アフリカヤマネ17匹が日本にも転売されており、7月の調査時点で15匹がすでに死亡し、生存していた2匹は感染していなかった。 Kansas Michigan アフリカからの輸入が禁止されている齧歯類は、ラッサ熱を媒介するマストミスのみであり、日本にもサル痘患者が発生する可能性は否定できない。

E F G H A B C D プレリードッグの舌の潰瘍:HE染色(A)、扁平上皮のウイルスを示す免疫染色(B)、Pox感染に特徴的なグアルニエーリ細胞質内封入体を示す電験像(C、D) プレリードッグの肺:細胞浸潤と壊死を示すHE染色(E)、気管支上皮細胞間隙のウイルスを示す電験像(F)、繊維芽細胞や肺胞上皮(G)および細気管支上皮(H)のウイルスを示す免疫染色

Monkeypox: Public Health Significance 2003 U.S. Outbreak Zoonotic disease 6 Midwestern states Animal illness Suspect cases: 93 Confirmed cases: 10 Human illness Suspect cases: 72 Confirmed cases: 37 All had contact with infected prairie dogs Potential bioweapon 米国の流行で死亡例はなく、ヒト・ヒト感染もなかった。プレリードッグ以外による感染もなかった。イヌとネコの感染もなかった。

Monkeypox: The Response Treatment: supportive care Smallpox vaccination 痘瘡ワクチン Moderately protective (85% of cases) 30 individuals in 2003, no adverse events Infection Control EPA registered detergent disinfectant 0.5% sodium hypochlorite (bleach) Embargo 禁輸措置 Euthanasia of animals Quarantine for 6 weeks 検疫 アフリカで流行した際の症例