6 民主政治の基本制度と原理 ①代表と議会政治 なぜ代表(職業政治家)は必要か? 我々は24時間政治を考えることはできない

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6 民主政治の基本制度と原理 ①代表と議会政治 なぜ代表(職業政治家)は必要か? 我々は24時間政治を考えることはできない 6 民主政治の基本制度と原理 ①代表と議会政治 なぜ代表(職業政治家)は必要か?   我々は24時間政治を考えることはできない   公共問題を決める専門家の必要

代表民主制の意義と限界 代表民主制のまどろっこしさ 1票という擬制 脱原発○ 増税×・・・・ どこに投票すればよいの?   1票という擬制    脱原発○ 増税×・・・・    どこに投票すればよいの? 大雑把なパッケージとしての政党

直接民主制の可能性 国民(住民)投票 Referendum ナポレオン3世の教訓 人気者がよい政治家であるという保証はない   ナポレオン3世の教訓   人気者がよい政治家であるという保証はない   情緒と感情の支配へ道を開く

吉野川可動堰をめぐる住民投票

名古屋市議会リコール

直接民主制が作動する条件 ・決定に至る過程の重要性 様々な角度からの議論 他者の意見を聞くことの重要性 ・試行錯誤の余地を残す   様々な角度からの議論   他者の意見を聞くことの重要性 ・試行錯誤の余地を残す   ローカルな空間で

リーダーシップ マックス・ウェーバー 『職業としての政治』(岩波文庫) 政治家の3条件  情熱             責任感             判断力 ×虚栄心 興奮 距離感の喪失

職業としての政治(続) 政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくりぬいていく作業である。 どんな事態に直面しても「それにもかかわらず」と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への「天職」を持つ。

ポピュリズムの落とし穴 民主政治においては、市民に好かれることが政治家にとって重要     大衆迎合という問題     リーダーと市民の適切な距離

議会 民主政治における議会の機能   政策決定   指導者の鍛錬   国民に対する政治教育       議論することそれ自体に意味があるという信念

アメリカ議会

イギリス議会

議会政治:2つのモデル アメリカ型議会(Congress) 権力分立とチェックアンドバランス 立法の主体 行政府に対するチェック   権力分立とチェックアンドバランス   立法の主体   行政府に対するチェック   law maker

イギリス議会 議院内閣制における議会(Parliament)   与野党の対決の場   指導者育成の場   次の選挙に向けた政治宣伝

アメイジンググレイス

議院内閣制という仕組み 議会の多数派が行政権力を掌握 =権力の融合   not 権力分立 議会によるチェックには限界

議院内閣制

アメリカの統治機構

歯止めとしての政権交代 与党への権力の集中   議会の多数派と行政権力   党議拘束による多数決 どこに歯止めがあるのか       時々権力を入れ替える

②選挙と政党政治 代表の基本原理   社会の反映  民意の伝達             多様性の保持   勝者の明確化 権力者を決定             多数派を作り出す

小選挙区制度(特にイギリス) 歴史的経緯     同質的エリートの中の選挙   国民代表という神話 階級社会との結合    二大政党

エドマンド・バーク 「自らの代表に広い視野に立って行動する余地を認めないなら、わが国の代議制度は単なる地域的な利益代表者間の騒々しい抗争の舞台に堕落するに決まっている」 「諸君は確かに代表を選出するが「いったん諸君が彼を選んだ瞬間から、彼はブリストルの成員ではなくイギリス本国議会の成員となる 『ブリストル演説』

イギリスの政治地図 赤 労働党 青 保守党

比例代表と多元的社会 階級以外の政治的アイデンティティ   民族 言語 宗教 勝者皆取りという暴力の可能性

選挙の意義と限界 ・正統性の源としての選挙 ・選挙における無力感   有効性感覚の低下   政策選択との乖離

年代別投票率(総選挙)

政党とは何か 理念の共有→綱領 政策集 多数決原理からの必然→権力を取るための集まり 政党政治における理想と現実

政党政治のモデル ・二大政党制  保守-進歩           自由-平等           多数決による実行 ・多党制と連立政治  多様性               話し合いと妥協

有能な野党の必要性 理念の基軸をどう立てるか 選挙互助会をいかに脱却するか 不人気を耐える忍耐力をどう養うか 野党の存在が危機を救う

③ローカルデモクラシー 地方自治の起源   近代中央集権国家以前の伝統   自治都市   近代化と中央集権化   =多様性の喪失

地方自治の本旨(憲法92条) 団体自治: 地方政府の自律 住民自治: 住民による自己決定 画一化から一国多制度へ 団体自治: 地方政府の自律 住民自治: 住民による自己決定 画一化から一国多制度へ 憲法95条 1つの地方公共団体に適用する特別法には住民投票が必要

地方自治は民主主義の学校 市民の成熟と地方自治   身近な問題から政治を考える   顔の見える空間で議論する     市民の政治能力と地方自治

トクヴィルの慧眼 行政の集権は、これに服する国民を無気力にするだけだと思う。・・行政の集権は戦いの日に国を勝利に導くが、長い間には国力を弱める。一人の人間の一時的栄光に大いに与ることはあっても、一国の人民の持続的繁栄には貢献し得ない。 『アメリカにおけるデモクラシー』第1巻

地方政治をめぐる問題点 二元代表制   首長   議会 両者の関係をどう考えるか

地域間格差をどう考えるか 中央集権体制と地域格差の是正 水平的再分配(都市→農村) 垂直的再分配(国→自治体)      水平的再分配(都市→農村)      垂直的再分配(国→自治体) ナショナルミニマムという国家目標 地域の個性をどう生かすか

④司法と民主政治 司法の独立と民主主義   権力者に対する独立したチェック   =権力分立の柱   多数決原理に対するブレーキ   =多数の専制を防ぐ

裁判と政策形成 政策形成過程の扉が閉まっている時 裁判がこれをこじ開けることもある 例 公害事件 薬害事件 しかし、司法は本来受動的機関   例  公害事件 薬害事件 しかし、司法は本来受動的機関      市民の能動的動きが必要

B型肝炎被害者の救済

違憲審査制と民主政治 憲法の番人としての裁判所 しかし、誰が番人の番をするのか? 司法消極主義と司法積極主義 憲法の理念を積極的に実現   憲法の理念を積極的に実現   政治的問題は民意に委ねる

憲法9条と裁判 自衛隊は憲法9条違反か?   長沼ナイキ基地訴訟   1審 憲法違反   最高裁  国民の多数意思を尊重

人権規制に関する二重基準論 基本的人権の制約をめぐって   民主政治の基本に関わる権利        制約について厳格に審査   経済的自由        政策判断の領域

司法への市民参加 司法は専門家の領域か?   確かに独自の技術、知識が必要   しかし、官僚主義に陥る危険性     司法に対する市民参加の必要

陪審制と民主政 トクヴィル 『アメリカのデモクラシー』 第2部第8章 トクヴィル 『アメリカのデモクラシー』 第2部第8章  陪審制、とりわけ民事陪審制は、判事の精神的習性の一部をすべての市民の精神に植え付けるのに役立つ。まさにこの習性こそ、人民をもっともよく自由に備えさせる

トクヴィルの陪審制論続き 陪審制は公平原理の実践を人々に教える。 陪審制は各人に自分自身の行動の責任を回避せぬことを教える。 陪審制はすべての人に、社会に対して果たすべき義務のあることを感じさせ、また統治に参加しているという実感を与える。   

司法制度改革と民主政治 裁判員制度の意義 検察の脱官僚化は可能か 裁判の政策形成機能の行方