日本の少子化問題:その原因と対策 ~県別のパネルデータでの分析~
目的と結論 目的:女性の社会進出(女性の高学歴化)が出生率低下の原因の一部と考えられるが実際にどの要因が原因となっているのか調べたい。 結論:女性の社会進出は出生率低下の大きな原因になっていることが分かった。したがって、これらの障害を取り除くことが少子化対策として重要である。
日本の少子化の現状 合計特殊出生率*が人口を維持するのに必要な水準=人口置換水準を相当期間下回っている状況を「少子化」と定義している。 日本では人口置換水準が2.08必要と言われている。 1974年に2.05とこの水準を下回って以来、30年間人口置換水準よりも低い値が続くこととなった。 合計特殊出生率*は年齢別出生率を15歳から49歳まで1歳ごとに求め、それらを合計したもので「一人の女性が一生の間に出産する子供の数」を示す指標である。
少子化のグラフ 「人口動態統計」厚生労働省大臣官房統計情報部
計測モデル ln(Yit)=αit+βln(AGit)+γln(SAit) +ζln(UNit)+νln(Hit)+εit
解決方法 被説明変数、説明変数に地域的ばらつき時系列的ばらつきが存在しているため、それを無視して計測する場合計測結果にバイアスが生じてしまうため、個別効果及び時間効果を入れたモデルに書き換える。 ln(Yit)=(α+ηi+μt) +βln(AGit)+γln(SAit) +ζln(UNit)+νln(Hit)+εit
計測結果 係数 標準誤差 t p-値 切片 農林水産業比率 保育所の定員充足率 女性の大学進学率 女性の年間賞与等 0.7028 0.150319 4.675391 農林水産業比率 0.029385 0.010281 2.858194 0.0045 保育所の定員充足率 -0.030662 0.010826 -2.832178 0.0048 女性の大学進学率 -0.13865 0.033543 -4.133472 女性の年間賞与等 -0.031744 0.01421 -2.233954 0.026
マクロ効果 2000年~2004年の間に新エンゼルプランの実施 1995年~1999年の間にエンゼルプランの実施
マクロ効果と日本の株価 時系列効果は日本の景気を表す代表的な指標である日経平均株価に連動していることから、時系列効果は日本の景気にある程度左右されていることがわかる。
計測結果のまとめ 出生率低下の一番の原因は女性の大学進学率の上昇であった。またそれに伴って上昇した女性の年間賞与等も原因であった。この二つの原因は、女性の社会進出を促すことになる。そして社会進出をする女性にとって、育児の時間が奪われ、それを補う保育所の施設が必要となった。保育所の充足率がマイナスに働いていることはこのことを示している。
少子化対策 ・女性の仕事と育児の両立をサポートする ・女性も労働力として積極的に活用していく 「保育施設の充実」 「子供の手当の拡充」 ・女性の仕事と育児の両立をサポートする ・女性も労働力として積極的に活用していく 「保育施設の充実」 「子供の手当の拡充」 「女性の働きやすい環境の整備」 を社会全体で作っていくことが重要である。