繊維状担体を用いた 油脂含有排水処理法の開発 金沢大学 ○江川 史将 金沢大学大学院 登美 鈴恵 金沢大学 池本 良子 中木原 江利 今 円 繊維状担体を用いた油脂含有排水処理法の開発と題しまして金沢大学の江川が発表させていただきます.
厨房排水規制の現状 排水規制:油分濃度30mg/L以下 50m3/day以上 下水処理場 排水処理施設 50m3/day未満 公共用水域 飲食店等の厨房排水には高濃度の油分が含有されており,水質悪化の原因となることからその対策が求められています.平均排出水量が1日当たり50m3以上の飲食店では,排水中の油分濃度が30mg/L以下に規制されていますが,飲食店の多くが50㎥未満であり規制を受けることなく下水道もしくは公共用水域に放流されており,その対策が急務となっています. 50m3/day未満 大規模飲食店 排水規制 中小規模飲食店
グリーストラップの管理と問題点 微生物製剤・酵素・ばっ気・オゾン 単独使用・組み合わせ 滞留時間が短く,油脂の分解不十分 有機物の増大 油分濃度の増大 (昨年度の金沢大学生協食堂厨房排水の実態調査) 近年,グリーストラップの管理の目的で,微生物製剤・酵素・ばっ気・オゾン単独使用・組み合わせがあります。中小規模飲食店のグリーストラップのサイズでは,流入水の入れ替わりが激しく微生物の滞留時間が短いため,十分に油脂が分解されないまま放流されている可能性があります.また,微生物を定期的に投入する必要があるため,有機物の増大につながります.昨年度の金沢大学生協食堂厨房排水の実態調査結果から,夜間の微生物製剤投入と曝気により,浮上した油脂やグリーストラップ内の側面に付着した油脂が水中に溶け,油分濃度の増大がみとめられたことから,微生物製剤の問題点を指摘しました.このような背景から,中小規模飲食店にも適用できる油脂含有排水処理装置の開発が必要となります. 中小規模飲食店のグリーストラップにも適用できる 油脂含有排水処理法の開発が必要
本研究で提案する方法 油分解 油分解 微生物 投入 本研究では中小規模飲食店のグリーストラップにも適用でき,環境負荷が少ない処理方法として,スライドに示すような付着能の高い生物付着担体をグリーストラップに投入し,油を付着させてから担体を引き上げて,油分解微生物を使って担体に付着した油を分解し,その担体を再びグリーストラップに投入するといった工程を繰り返す方法を提案し実験的検討を行いました. 油分解
研究の目的 繊維状担体への油付着実験 油分解微生物の集積 油分解実験 繊維状担体の水・油吸収能評価 油付着速度の評価 最大油付着量の評価 その有効性を検討するために数種の繊維状担体の油付着能を評価し,次に活性汚泥から集積した油分解微生物の集積をし、その微生物を使って,繊維に付着した油の分解実験を行いました.
繊維状担体の概要 まず、今回の実験に使用した繊維状担体を説明します。 SR繊維とは、ポリエステル製であり繊維を編んだものです。 TB繊維とは、ポリプロピレン製であり細かい繊維をモール状に加工してあります。
繊維状担体の水・油吸収能評価 ~重量測定方法~ ①繊維の重量測定 SR繊維 TB繊維 ②添加後の総重量測定 繊維状担体の水・油吸収能評価方法について説明します. SR繊維、TB繊維を切り取って重量を測定したのちシャーレにいれ,水もしくは油を添加して,総重量を測定しました.次に,吸収した繊維をピンセットで取り出して,シャーレの重量を測定し,その差から繊維に吸収された重量を求め,体積に換算しました. ③シャーレの重量測定
繊維状担体の水・油吸収能評価 ~結果~ グラフの縦軸は、繊維1gあたりの吸収量になっています。 ポリプロピレン製のTB繊維は油吸収能が高いが,水の吸収量が低いのに対し, SR繊維は水・油ともに吸収しますが,油吸収量はTB繊維と変わりませんでした.
油付着速度評価 ~方法~ 油付着速度評価方法について説明します. 油付着速度評価 ~方法~ 油付着速度評価方法について説明します. 三角フラスコに厨房排水と繊維状担体を切り取ったものを入れて振とうさせ,定時的に油分濃度測定を行いました.
油付着速度評価 ~結果~ このグラフの縦軸は油分濃度で横軸は時間軸を示します. 油付着速度評価 ~結果~ このグラフの縦軸は油分濃度で横軸は時間軸を示します. ブランクにおいても,ガラス瓶内壁に油分が付着して,液層の油分濃度の低下しましたが,繊維を添加した方が減少速度が速かったことから,ブランクとの差を繊維への油付着量として評価しました. 3時間までの付着速度はSR繊維よりもTB繊維の方が速く,3時間以降はTB繊維よりもSR繊維の方が速いことが分かります.
最大油付着量評価 ~方法~ 最大油付着量評価方法について説明します. 最大油付着量評価 ~方法~ 最大油付着量評価方法について説明します. 三角フラスコに厨房排水と繊維状担体を切り取ったものを入れて振とうさせ,1時間ごとに繊維を取出し、 新たな厨房排水を入れたフラスコに繊維を入れることを繰り返しました。
最大油付着量評価 ~結果~ このグラフの縦軸は繊維1gあたりの付着量となっています. 最大油付着量評価 ~結果~ このグラフの縦軸は繊維1gあたりの付着量となっています. 生協排水を繰り返し添加した結果, SR繊維は3日目途中で油分の付着吸収が停止しましたが,TB繊維は3日目終了まで継続しました.最大油付着量は,SR繊維よりもTB繊維の方が大きいことが分かります.
油分解微生物の集積 ~方法~ 200mLのBOD希釈液で2週間培養 2週間ごとに新しい基質へ1mL植え継ぐ ピペット 油分解微生物の集積方法について説明します. BOD希釈液に微生物を入れ有機物としてサラダ油を与えて2週間撹拌培養しました. 油分解微生は、金沢市城北水質管理センターの活性汚泥を種汚泥として集積したものです.
油分解微生物の集積 ~結果~ DOCの濃度高いことから油脂は脂肪酸とグリセリンへの加水分解が進行したものと考えられます。
油分解実験 ~方法~ 1-1 1-2 油分解実験方法について説明します. フラスコに金沢大学生協食堂の厨房排水中の油を付着したSR繊維に表に示すBOD希釈液を入れ油分解実験を行いました. 厨房排水中の油を付着した繊維状担体の油分解性を調べるために行いました. 油分解微生物菌は、金沢市城北水質管理センターの活性汚泥を種汚泥として,食用油を基質として1年間処理実験を行った好気性ろ床装置内の微生物を三角フラスコに投入し,マグネチックスターラーで攪拌培養を行い,2週間に1回1mlの植えつぎを繰り返すことにより集積したものです. 1-1 1-2
油分解実験 ~結果~ すべて条件で油分濃度が減少しました。 時間をかければ、油分解微生物菌を入れなくても厨房排水中の微生物によって分解できることが分かりました。
結論 繊維状担体への油付着実験 油分解微生物の集積 油分解実験 油の付着能が認められた 最大付着量 油の付着能が認められた 最大付着量 SR繊維:0.355g/g・繊維 TB繊維: 0.456g/g・繊維 油分解微生物の集積 植物油の分解が可能 油分解実験 厨房排水中の微生物によって油の分解が可能 繊維状担体への油付着実験から、油の付着能が認められ繊維1gあたりの最大付着量は、SR繊維は、0.355gで、TB繊維は、0.456gでした。 油分解微生物の集積から、植物油の分解が可能であり、油分解実験から、厨房排水中の微生物によって油の分解ができることが分かりました。 以上で発表を終わります。
ご清聴ありがとうございました
グリーストラップにおける油脂流出防止対策 ~微生物製剤添加効果~ 自然研食堂では微生物製剤を添加し、ばっ気を行っている。 油脂分解の効果はない 油脂の流出量を増大させている このグリーストラップ内で油分を減少させるため、自然研食堂では微生物製剤を投入し、およそ12時間空気を送りこんでいます。この間は流入、流出はありません。ばっ気開始時とばっ気終了前でのグリーストラップ内の水質を分析し、その効果について検討しました。 有機物は減少していましたが、油分濃度が増加していたため、微生物製剤の使用は油脂流出防止に逆効果であることがわかりました。
サラダ油組成
実験に使用した繊維状担体 繊維の種類:ポリエステル繊維 組織:編物(ニット) 縦糸:ポリエステル強力糸 横糸:バルキー性を持たせる特殊加工 樹脂・薬剤塗布なし 用途:活性汚泥や排水との接触機会向上のため 担体は,タテ糸及びフリンジ部(ヨコ糸)共に,ポリエステル繊維を用いています. 素材(組織)としては,編物(ニット)です.通常のニットですと,伸縮がありますので,伸縮低減及び強度UPの為に, 挿入ラッシェルという編み方で作成しております. タテ糸については,耐久性や強度が求められるため,『ポリエステル強力糸』を使用しています.強力糸は,通常のポリエステルより,破断強度が高い特徴がございます.詳細は割愛しますが,防護ネットや漁網など,強度が必要とされるシーンに使われる糸です. ヨコ糸もポリエステルですが,活性汚泥や排水との接触機会向上のため,バルキー性(嵩高性)を持たせる特殊加工を施しています. 糸自体に,樹脂や薬剤を塗布したりする加工はしておりません.
実験に使用した繊維状担体 繊維の種類:ポリプロピレン繊維 組織:モール状 目詰まりしにくい構造 空隙率が99%以上、高度の処理水質が得られ, 食物連鎖が長くなり,汚泥の発生が低くなる. 汚泥の付着,剥離しやすいため,微生物が常 にフレッシュな状態である. 耐久性に優れている. 用途:工場排水の生物処理機能強化や,活性 汚泥法の処理の安定性向上など ひも状,すだれ状でどこでも設置可能 TB繊維は,生物膜処理用ひも状接触材であり,その特長は,細かい繊維をモール状に加工してあるため,高い微生物の保持量を持ちつつ,目詰まりしにくい構造である.空隙率が99%以上で,多種多様な生物が生息できるため,高度の処理水質が得られ,食物連鎖が長くなり,汚泥の発生が低くなる.汚泥の付着,剥離しやすいため,微生物が常にフレッシュな状態である.耐久性に優れている.ひも状,すだれ状でどこでも設置可能で,曝気槽内での水の流れを阻害しないため効率のよい生物処理が可能である.用途は,工場排水の生物処理機能強化や,活性汚泥法の処理の安定性向上および,余剰汚泥の低減対策,めっき等の低濃度廃水処理,河川や湖沼の浄化,畜産排水の三次処理である.
油分解微生物について 活性汚泥を種汚泥 食用油を基質として1年間処理実験を行った好気 性ろ床装置内の微生物 マグネチックスターラーで攪拌培養を行い,2週 間に1回1mlの植えつぎを繰り返すことにより, 油分解微生物を集積した. 金沢市城北水質管理センターの活性汚泥を種汚泥として,食用油を基質として1年間処理実験を行った好気性ろ床装置内の微生物を500 mL三角フラスコに投入し,マグネチックスターラーで攪拌培養を行い,2週間に1回1mlの植えつぎを繰り返すことにより,油分解微生物を集積した.