高LDLコレステロール血症患者の栄養指導上の問題点について

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高LDLコレステロール血症患者の栄養指導上の問題点について 医療法人社団 新虎の門会             新浦安虎の門クリニック          滑田 梨沙 大前 利道         大前 由美  沼本 美由紀          嶋 奈津子  柏崎 千恵美 高LDLコレステロール血症患者の栄養指導上の問題点について検討いたしましたので発表いたします。

現状 高LDLコレステロール血症患者の栄養指導による改善は困難な場合がある。 食事のコントロール難しい? 他の疾患の影響?  現状  高LDLコレステロール血症患者の栄養指導による改善は困難な場合がある。 食事のコントロール難しい? まず、なぜこのような問題を挙げたかといいますと、当院で高LDLコレステロール血症患者を継続的にみてみると、栄養指導による改善は困難な場合があります。食事でのコントロールが難しい患者の問題点を探り、他の疾患による影響を考慮して 他の疾患の影響?

目的 管理栄養士の立場で検査や薬物療法を医師に相談し、一方通行ではなく連携をとることを目的をする。 目的  管理栄養士の立場で検査や薬物療法を医師に相談し、一方通行ではなく連携をとることを目的をする。 管理栄養士の立場で検査や治療を医師に相談し、一方通行ではなく連携をとることができれば、改善がみられるのではないかと考え、検討いたしました。

対象 健康診断受診者(一部外来受診者) 2008年4月1日~2009年3月31日 高LDLコレステロール血症で栄養指導をうけ、継続的に来院された45名 対象は、健康診断受検者で医師より栄養指導の依頼があり、2008年4月1日~2009年3月31日の間に、高LDLコレステロール血症患者で栄養指導をうけ、継続的に来院されている45名を対象としました。

改善がみられない患者さんの背景に問題はないか検討する 方法 栄養指導 食事内容、食習慣(誤った知識)、生活習慣、家族歴等 採血 1ヵ月後の経過 方法は、医師より依頼を受けた高コレステロール血症患者に栄養指導を行います。日常の食事内容や食習慣、生活習慣、家族歴等を伺います。中にはマスメディアの影響を受け、誤った知識を持っている方もいます。食事以外でコレステロールが悪化する原因はないか調べます。栄養指導終了後、1ヶ月後に採血し、経過をみます。栄養指導を受けた患者で継続的に来院されている方のうち、改善がみられない患者の背景に問題はないかを検討しました。 改善がみられない患者さんの背景に問題はないか検討する

結果 継続的な来院者 45名 家族性脂質異常症 6名 甲状腺機能低下症 1名 * 栄養指導後、医師の指示より検査を行なった。 継続的な来院者     45名 家族性脂質異常症      6名 結果、 継続的に来院されている45名のうち、家族性脂質異常症6名、甲状腺機能低下症1名でした。これは、栄養指導後、医師の指示より検査を行なった結果なので、実際にはもっとこれらの患者がいたと考えられます。 甲状腺機能低下症      1名 * 栄養指導後、医師の指示より検査を行なった。

症例1 薬 薬 薬 栄養指導11月12日 栄養指導12月17日 ここで栄養指導で改善がみられなかった症例を紹介します。まずは、75歳女性の脂質異常症の方です。10月21日に外来で採血をしLDLコレステロールが224ありました。そして11月12日に1回目の栄養指導を行いました。1ヵ月後12月10日の採血では233で悪化していましたので、プラバスタチンナトリウム細粒を処方し、2回目の栄養指導を行いました。1ヵ月後の採血では182まで下がりましたが、家族性だとわかったため処方薬を増量しました。次の3月の採血では変化がなかったため、ピタバスタチンカルシウム錠に変更になりました。すると5月の採血では114まで下がりました。初回の栄養指導時には医師の指導がはいりましたが、その他採血より1週間後に再診しています。

以前から脂質異常症の治療していたが、服薬をやめていた 75歳女性 身長:158.0cm 体重:49.9kg BMI:20 外食:あまりしない 間食:毎日和菓子や果物を食べている 運動:ウォーキングやジムで軽い運動 飲酒:週2、3日(ビール80cc) 喫煙:なし 家族歴:糖尿病、脂質異常症 以前から脂質異常症の治療していたが、服薬をやめていた こちらは栄養指導で伺った内容です。

症例1検査値結果 VLDL 8.2 % LDL 58.5 % HDL 33.3 % βーリポ蛋白 443 mg/dl アポ蛋白A-1    214 mg/dl アポ蛋白A-2   31.3 mg/dl アポ蛋白B    132 mg/dl アポ蛋白C-2    5.9 mg/dl アポ蛋白C-3   12.8 mg/dl アポ蛋白E    5.7 mg/dl これは、この患者さんの家族性脂質異常症の検査結果です。

症例の患者さんの反応 栄養指導を受けて、食生活をすごく注意していたのに、まったく良くなっていない。 これ以上栄養指導しても意味ないから薬で下げたい!! この方は、食事改善ではコレステロールが下がらなかったので、苦痛のようでした。栄養指導を受けてから食生活を改善したが、まったく良くならない。これ以上栄養指導をしても意味がないので、薬を飲むほうが効果がある。という気持ちになってしまいました。家族性のコレステロールだと判明して、食事改善だけでは難しいと知り、薬と食事でうまくコントロールをしていきたいと思ったようです。

症例2 薬 192 184 174 170 栄養指導4月11日 栄養指導5月23日 栄養指導7月18日 症例2は、47歳男性です。以前からLDLコレステロールが高く、2008年8月18日に人間ドックで184ありました。その後、CPAPで当院の外来にかかり、同時に脂質異常症に関しても栄養指導から治療を始めました。現在、栄養指導を3回受けていますが、横ばいで、8月5日の人間ドックでは、192と悪化してしまいました。そこで外来にてアポリポ蛋白の精密検査を行いました。 170

症例2検査値結果 HDL 23 % LDL 50 % IDL 13 % VLDL 14 % RM値(LDL) 0 症例2検査値結果 HDL 23 % LDL 50 % IDL 13 % VLDL 14 % RM値(LDL)   0.34  カイロミクロンは認めない           アポ蛋白A-1    159 mg/dl アポ蛋白A-2   31.2 mg/dl アポ蛋白B    136 mg/dl アポ蛋白E    5.6 mg/dl

考察 高LDLコレステロール血症患者の栄養指導による改善は困難な場合がある。 管理栄養士の立場で食事以外の原因を検討することにより、医師に相談し連携できるきっかけとなった。今後も、他の疾病にも目を向け、クリニック全体で患者さんの病状を改善できるよう検討する。 食事の影響でLDLコレステロールが上昇している方は、栄養指導は有効であるが、疾患によるものなら、食事だけでのコントロールは難しいと考えられます。しかし、薬物療法を開始しても、食事指導を続けることは大切です。管理栄養士の立場で食事以外の原因を検討することにより、医師に相談し連携できるきっかけとなりました。他の疾患がわかった方もいるので、もっと検査をして調べ、薬物療法を拒否する方の動機付けや食事指導に挫折しそうな人への励みになればいいと思います。今後も、他の疾病にも目を向け、クリニック全体で患者さんの病状を改善できるよう検討いたします。