小児発声発語障害学 2011.4.26 学習目標:機能性構音障害にみられる音の誤り について説明できる。 学習内容:音の誤りの定義 小児発声発語障害学 2011.4.26 学習目標:機能性構音障害にみられる音の誤り について説明できる。 学習内容:音の誤りの定義 音の誤りの表記方法 機能性構音障害にみられる構音の 誤り 発達途上の構音の誤り(未熟構音) 特異な構音操作の誤り(異常構音) その他の誤り
構音の誤り 省略(omission) 置換(substitution) 歪み(distortion) 付加(addition) 発達的には誤りは省略→置換→歪みと移行 語の音の配列や音節構造の誤り(構音の誤りではない) 音節の脱落、音位転換、同化(順行、逆行)
省略 ごはん[gohaN]→[go aN] てれび[terebi]→[te ebi] 置換 さかな[sakana]→[takana] かさ [kasa]→[tasa] 歪み さかな[sakana]→[sakana] 歯間化
誤り音の表記方法 省略: happa terebi 置換: sakana taiko 歪み: sakana ɕippo
演習 naiteru oka:saɴ toke: karasu ɕimbuɴ isu
機能性構音障害にみられる構音の誤り 発達途上の構音の誤り(未熟構音) 特異な構音操作の誤り(異常構音) その他の音の誤り
発達途上の構音の誤り(未熟構音) 幼児音(赤ちゃんことば) *幼児語は? 健常児の構音発達の過程でみられる構音の誤り *幼児語は? 健常児の構音発達の過程でみられる構音の誤り 省略、あるいは獲得されていない音を、自分が 産生できる構音位置や構音方法が近い音に 置き換える誤り 知的に問題がなければ自然治癒
発達途上の構音の誤り(未熟構音) 音 誤り方 k,g t, ʨ,d,ʥ s t, ts, ɕ, ʨ ts t, ʨ dz d, ʥ ɕ 誤り方 k,g t, ʨ,d,ʥ s t, ts, ɕ, ʨ ts t, ʨ dz d, ʥ ɕ t,ʨ ʨ t ʤ d r 語頭:dへの置換, 語頭以外:省略,jに近い歪み h,ɸ,ç 省略
その他の音の誤り 母音部の誤り エ列音の中性母音化 e→ə 歯茎音の軟口蓋化 taiko→kaiko semi→kemi /s,ts,dz/の唇歯音化 semi→femi 声門化
特異な構音操作の誤り(異常構音) 側音化構音:機能性構音障害で頻度高い。 口蓋化構音:口蓋裂術後に多いが、機能性構音障害にもみられる。 鼻咽腔構音:口蓋裂、機能性構音障害のどちらにもみられる。 声門破裂音:鼻咽腔閉鎖不全が原因と言われているが、機能性構音障害にもみられる。
側音化構音 定義:舌が硬口蓋のほぼ全面に接し、舌縁と臼歯の口蓋側面あるいは咬合面で音を産生する。 呼気は側方から流出。 呼気は側方から流出。 なりやすい音:い列音、拗音、s,ts,dzなど 聴覚的特徴:独特の歪み音 構音操作の特徴:舌、口角、下顎の側方への偏位 鑑別診断:呼気の流出部位が側方 経過:自然治癒は少ない 発話サンプル 原因:不明、歯列不正と関連?
側音化構音-舌造影X線写真所見-
側音化構音-EPG所見- [ki]
側音化構音-呼気流出- 鼻息鏡を置く位置
口蓋化構音 定義:歯茎音が舌の中央部と硬口蓋の後端で 産生された歪み音 なりやすい音:歯茎音 聴覚的特徴:独特の歪み音 産生された歪み音 なりやすい音:歯茎音 聴覚的特徴:独特の歪み音 構音操作の特徴:舌背が挙上し、舌尖の挙上が みられない。 鑑別診断:呼気は正中、舌背の挙上 経過:自然治癒は少ない 発話サンプル 原因:機能性構音障害の場合不明
口蓋化構音-舌造影X線写真所見-
口蓋化構音-呼気流出-
鼻咽腔構音 定義:舌が口蓋に接した状態で、軟口蓋と咽頭後壁との狭めまたは閉鎖、開放により産生される歪み音。呼気は鼻腔から流出。 なりやすい音:い列音、う列音、/s,ts,dz/など 聴覚的特徴:ン、クン、グンに近い 構音操作の特徴:舌は口蓋に接触 鑑別診断:鼻閉すると構音できない 経過:自然治癒も多い 発話サンプル: 原因:不明
鼻咽腔構音-舌造影X線写真所見-
鼻咽腔構音-呼気流出-
声門破裂音 定義:声門部での破裂音。声帯と仮声帯を閉鎖、開放。 なりやすい音:破裂音、破擦音 聴覚的特徴:力を入れて母音を構音したように聞こえる 構音操作の特徴:口唇や舌の動きが観察されない 鑑別診断:省略との鑑別 原因:鼻咽腔閉鎖不全であるが、機能性構音障害にも 認められる 経過:機能性構音障害では自然治癒も多い 発話サンプル:
正常な話しことばのメカニズム 発声と構音(調音)
声門破裂音-X線所見-
機能性構音障害における誤り -言語治療室受診116例- 誤りパタン 症例数 s,ts,dz,ʃ,ʧ,ʤ,ɾの破裂音化、破擦音化 53 k,gのt,dへの置き換え 47 h,ɸ,çの省略 9 側音化構音 31 声門破裂音 t,d,n,s,ts,dz, rのk,gへの置き換え、 口蓋化構音 6 鼻咽腔構音 4 母音部の誤り 3 赤:発達途上の構音の誤り 重複例を含む
異常構音の評価の練習 日本音声言語医学会編 CD 「口蓋裂の構音障害」 インテルナ出版、1999 *練習したい方は貸し出します。 小テスト:5月10日(火)Ⅰ講時 構音障害を理解するのに必要な 日本語音声学の基本的事項 IPAによる音声表記
問題:現時点で原因が明らかではないものはどれか。 吃音 失語症 c. 発語失行 d. 特異的言語発達障害 e. 機能性構音障害 a,b,c 2. a,b,e 3. a,d,e 4. b,c,d 5. c,d,e
機能性構音障害をきたす要因と 考えられるのはどれか。 a. 音韻発達の障害 b. 語音弁別能力の低下 c. 知的発達の遅れ d. 鼻咽腔閉鎖機能不全 e. 構音器官の運動障害 a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e