少年兵問題における国際法 ケーススタディから 佐野由梨
■目次■ (1)国際法の内容 (2)ケーススタディ (3)問題点
(1)国際法の内容
国際法における少年兵の定義 15歳未満説と18歳未満説 傾向としては15歳未満→18歳未満と発達 実務上は15歳未満が有力 15歳未満 ■ジュネーブ諸条約及び二つの追加議定書(1949) ■子どもの権利条約(1989) ■子どもの権利及び福祉に関するアフリカ憲章(1990) ■ICC規程(1998) ■シエラレオネ特別裁判所規程(2002) 18歳未満 ■ILO第182号条約(1999) ■子どもの権利条約選択議定書(2000)
規制の内容① ■ジュネーブ諸条約及び二つの追加議定書 (1949) 第一追加議定書第77条2項 ○先進的な法律 「紛争当事者は、15歳未満の児童が敵対行為に直接参加しないようす べての実行可能な措置をとるものとし、特に、これらの児童を自国の 軍隊に採用することを差し控える。紛争当事者は15歳以上18歳未満の 者の中から採用するにあたっては最年長者を優先させるよう努める」 ○先進的な法律 ○国際紛争・非国際的武力紛争、政府軍・反政府武装勢力 いずれも、15歳未満の者を紛争に参加させることが全面的 に禁止 ○締約国数 第一・・・171 第二・・・166
規制の内容② ■子どもの権利条約(1989) ■子どもの権利条約選択議定書(2000) ○ジュネーブ諸条約追加議定書と同内容 ○ジュネーブ諸条約追加議定書と同内容 ○締約国193か国 ■子どもの権利条約選択議定書(2000) ○締約国119国 ○18歳未満に保護対象を引き上げた
規制の内容③ ■ICC(国際刑事裁判所)規程(1998) ○少年兵利用への個人の刑事責任を規程 ○禁止の幅を拡大 ○締約国122か国 ○少年兵利用への個人の刑事責任を規程 ○禁止の幅を拡大 ○締約国122か国 第8条2項(b) 「15歳未満の子供を自国軍隊に徴兵し若しくは入隊させる こと、または敵対行為に積極的に参加させるために利用す ること。」
(2)ケーススタディ
ケーススタディ①シエラレオネ特別裁判所 2001年、シエラレオネ内戦後安保理によって設立 個人に国際人道法上の刑事責任が課された最初の試 み 15歳未満の少年兵利用の罪で政治的指導者13名が起 訴され、うち8名が有罪判決(e.g.元リベリア大統 領)
ケーススタディ②コンゴ紛争 国際刑事裁判所は2012年、15 歳未満の「少年兵」を戦 闘に従事させたとして戦争犯罪に問われた当時の武装勢 力指導者ルバンガ被告に有罪判決を言い渡した。 2002年のICC発足以来、ICCによる最初の判決 日本をはじめとする各国政府やアムネスティなどNGO から歓迎される
ICC(国際刑事裁判所)とは? 2002年に設立された、史上初めての個人を裁く常設の 国際裁判所で、オランダ・ハーグに本部 (1)ジェノサイド(2)人道に対する罪(3)戦争犯罪 (4)侵略 の四種を裁ける 補完性の原則 問題点 ①国際法を私人に及ぼすこと ②政治的に悪用されないか―米・中・露
(3)問題点
どうやって守らす? ■少年兵問題の現在 2004年から2007年の間だけで86か国で使用、 現在おおよそ30万人の少年兵がいるとされる。 (兵士総数の1割) ・・・少年兵をめぐる国際法は現実的効果ない・・・?
解決案 経済学的アプローチ(小野圭司) ケーススタディにみられる、違法行為への取締 強化と厳罰化―ICCの活用 成年兵士と子ども兵の特性と需要の比較により、 子どもへの教育の充実で子どもの機会費用を増大させ 少年兵需要を減少させることができる ケーススタディにみられる、違法行為への取締 強化と厳罰化―ICCの活用
参考文献 「子ども兵士に関する戦争犯罪:ノーマン事件管轄権判決(シエラ レオネ特別裁判所)」、稲角光恵、2005 「子ども兵の使用を法によって裁くことは可能か」、近藤多恵子 「北部ウガンダにおける紛争と子ども兵士の社会復帰」杉木明子、 2007 「子ども兵士問題の解決に向けて―合理性排除に向けた検討と今後 の課題―」、小野圭司、2009 「平和構築に向けたガヴァナンスの実験―和平プロセスにおける国 際刑事裁判所の役割―」、鳥潟優子、 David M. Rosen, 2007, Child Soldiers, International Humanitarian Law, and the Globalization of Childhood