J-PARC MLFでのドップラーシフターを用いた超冷中性子の生成

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J-PARC MLFでのドップラーシフターを用いた超冷中性子の生成 今城想平, 藤岡宏之, 清水裕彦 A, 三島賢二 A, 吉岡瑞樹 A, 北口雅暁 B, 日野正裕 B and NOP collaboration 京大理, KEK A, 京大原子炉 B

最終目標: EDM 測定実験 EDM を測る = CP対称性の破れの大きさがわかる. T violation 基本粒子の永久電気双極子能率 (permanent Electric Dipole Moment) をしらべる. spin クォークやレプトンは生まれつき時間反転非対称な存在か否か、非対称の大きさはいかほどか. EDM EDM CPT定理 T violation = CP violation spin EDM を測る = CP対称性の破れの大きさがわかる. Xe等の原子(電子), ミューオン, 中性子(クォーク) 中性子EDM (Standard Model) : dn ~ 10-32 e・cm 小さすぎる. hDn EDM 実験では蓄積した粒子のスピン歳差運動の周波数を見る. B E B E Storage Bottle Storage Bottle 統計誤差:

実験道具: Ultra Cold Neutron 粒子が感じるFermiポテンシャル以下にまで運動エネルギーが下がった中性子. 通例, 研磨したニッケル表面 (240 neV) より低いエネルギーのもの. 速度:~ 7 m/s 以下, 波長: ~ 56 nm 以上. 超低エネルギーゆえの特異な挙動 UCN ・容器内に溜められる. ・遅いので重力による落下を無視できない. ・遅いので磁場によく反応する. 高濃度 UCN を使えば中性子の EDM がよくわかる.

EDM実験用UCN源 (J-PARC P33) LINAC proton UCN 新設UCN源候補地 Moderator & Converter 冷却にはスーパーサーマル法 (固体酸素や超流動ヘリウム中のフォノンに中性子のエネルギーを渡す冷却手法) を用いる. レンズ 粒子数 時間経過 速度に応じてばらける bottle 位置 このような光学的操作が可能なら大きな強みになる. 瞬間的だがきわめて濃い

Doppler Shifter R & D 始状態にまで回復させる装置 (Rebuncher) を設計中. Shutter Storage Bottle Rebuncher Pulsed UCN Time focus UCN source 始状態にまで回復させる装置 (Rebuncher) を設計中. たとえば、先に到着した高速な UCN ほど減速量を大きくする. パルス構造ゆえに可能. MLF のパルス中性子源で R&D ができるとうれしい. はっきりとしたパルス構造をもつUCN をはき出す装置がすぐにほしい. LINAC MLF Doppler Shifter

全体像 J-PARC EDM計画 実験設備開発 R & D Doppler shifter UCN源建設

Doppler Shifter とは ビームライン上に置くだけでビーム粒子を減速できる. 取り出し口 Beam 鏡 鏡の慣性系 Lab系 325 mm 弾性散乱 ドップラーシフト 逃げる鏡に粒子を反射させ粒子の勢いをうばう装置. (野球のバント) mirror Vn⊥ neutron Vm⊥ 鏡面速度の2倍が最適値 Vr⊥ ビームライン上に置くだけでビーム粒子を減速できる. 位相空間密度を保ったまま.

世界最高の反射能力 この Doppler Shifter の特徴 136 m/s の中性子を1回の反射で UCN 化できる. 本装置では京大原子炉で研究された多層膜ミラーを使用. (日野氏) 鏡を回転させて中性子を減速する装置にはすでに前例がある. (例) ILLのUCNタービン 世界最高の反射能力 従来の装置では反射可能な粒子の入射エネルギーは低い. (斜め入射で 50 m/s 程度) 68 m/s の中性子を垂直に反射できる. ( ニッケル鏡面の10倍の反射能力 ) 136 m/s の中性子を1回の反射で UCN 化できる. 30 mm 30 mm 装置に搭載した鏡. Bragg反射で中性子を反射. 反射率 40%

実験場所 J-PARC MLF BL05 からの制限 25 Hz pulsed beam 現在 120 kW 非偏極ビームライン(真ん中のライン)での中性子スペクトル @120 kW 200 m/s proton Hg target 136 m/s neutron 100 m/s 減速可能 Doppler Shifter でUCN化をねらえる限界. 1度に反射する粒子数を多くしたい. UCN の TOF も見やすくしたい. シフターの直径 65 cm, 中性子源 25 Hz. 回転数 2000 rpm で 136 m/s を 3 パルスに 1 回蹴り出す. ~ 腕の長さ 325 mm で 68 m/s

実験概要 Dt = (tdetect - ttrigger) – q0 / w = Dttrue + Dtoffset MLF のビーム入射に同期した 25 Hz 信号 (加速器由来のClock) 1 / 3 にまびく 回転位相制御, TOFのトリガーに使用 トリガー信号が来た瞬間 TOFの意味するところ 検出器 Dt = (tdetect - ttrigger) – q0 / w = Dttrue + Dtoffset 飛程 L in 角速度 ω 腕が垂直になった瞬間≒粒子を反射した瞬間 鏡 とみなす. 位相オフセット θ0 このTOF からの速度推定 vneutron = L / Dt

Setting 全体図 136 m/s 136 m/s 前後を蹴り出せているかを TOF で確認. ±8 % 3He detector Pb & B4C 遮蔽体 単色化ミラー UCN 3He detector UCN 2次元検出器 2次元検出器 白色中性子 136 m/s (RPMT)

3He Detector での測定 中性子はちゃんと反射されてきていた. UCN領域 回転時 非回転時 入射量: 13 kcps, RPMT の Efficiency 80% イベント@120 kW 出力: 0.8 cps ノイズ@120 kW 出力: 0.07 cps → 入射量 16 kcps 正味の出力: 0.73 cps ただし, これはUCN以外も含めた分布全体の合計出力.

UCNであることの確認 UCN であればUCN領域の統計が減るはず. v > 7 m/s v < 7 m/s バックグラウンドにより, TOFからの波長の推定だけでは確実なことは言えない. この位置に研磨したニッケルの板を設置する. 3He detector UCNに対するニッケルの有効ポテンシャルは 240 neV . それ以下のエネルギーの粒子は通過できない. v > 7 m/s v < 7 m/s UCN であればUCN領域の統計が減るはず. 136 m/s

UCNであることの確認 ニッケル板なし ニッケル板あり

UCNであることの確認 UCN の存在を確認した 7 m/s たしかに減っている. ? Ni 板有り (赤), Ni 板無し (黒), それらの差 (青). Ni 板有り (赤), Ni 板無し (黒). UCN領域のefficiency UCN の存在を確認した 正味の UCN 出力は 120 kW において~ 0.73/3/0.84 ~ 0.3 cps.

2つ目のpeakについて 不明なピーク ニッケルを置いても消えないのでUCNではない.

2つ目のpeakについて 次のパルスの端を鏡が引っかけた結果が見えていた. パルスは 40 ms に1回 ms 40 80 120 30 2000 rpm だとミラーは 30 ms で1回転 次のパルスの端を鏡が引っかけた結果が見えていた.

シミュレーションとの比較 赤:実測データ 黒:シミュレーション 赤:実測データ 黒:シミュレーション TOF の全波長 Simulation: V < 7 m/s のみ抜粋. Data: Ni ミラー有無の差分値. ドップラーシフターの壁面が中性子を反射しなかったと設定した。 シミュレーションを積分し補正すると 0.183/0.84 = 0.218 cps @120kW.

まとめ 今後の展開 大規模EDM実験に向けた R&D のためにドップラーシフターを開発した. ドップラーシフターでのUCNの生成を確認した.  ドップラーシフターの出力は入力16kcpsに対し0.3cps. 今後の展開  生成UCNを用いてのEDM実験用装置のR&Dの開始 (本年末実験開始予定, まずは Rebuncher から).  入力ビームをフォーカスするなどしてのUCN収量の向上.  単色ミラーを経由した入力ビームが強度低下を起こすなどの動作不良点の解明.

入射ビームの減少 ドップラーシフターに入射した中性子は計算値よりもかなり少ないらしい. 黒い線: 白色中性子のデータ 赤い線: 単色ミラーで蹴り出した中性子のデータ. 青い線: 単色ミラーで蹴り出した中性子のシミュレーション. 136 m/s ドップラーシフターに入射した中性子は計算値よりもかなり少ないらしい. 理由は現在議論中.

2次元検出器で透過ビームを見た結果 30 msec 周期で削れている.

2つ目のpeakについて 2つ目のpeakは2つ目のパルスに由来している. 位相オフセットの増加に伴いこれらのエッジが図中の右に移動する. UCNではなく, ただのオーバーラップ.

3He Detector (UCN Detector) cathode 比例計数管. 90 mm Efficiency の fit 結果. 20 nm で 46%, 60 nm で 84% となる.

一次反射の入射粒子数の見積もり 170 m/s 120 m/s 積分値 = 10714.7 10.7 kcps が一次反射のビーム量とみなせる.