2008年度 第1回 金沢工業大学 大学知財セミナー 特許セミナー(権利化編)

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2008年度 第1回 金沢工業大学 大学知財セミナー 特許セミナー(権利化編)  2008年度 第1回  金沢工業大学 大学知財セミナー    特許セミナー(権利化編)  2008年11月19日 加藤特許事務所         弁理士 加藤 浩一郎 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

本日の特許セミナー(権利化編) 内容 (1)知的財産権総論 (2)特許の保護対象 (3)特許をとるための要件 (4)特許をとるための手続 (5)特許権とは (6)補足資料 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

知的財産権=知的所有権(Intellectulal Property) *いずれも用いられるが、最近は「知的財産権」に統一 されつつある           (1)知的財産権総論 知的財産権=知的所有権(Intellectulal Property) *いずれも用いられるが、最近は「知的財産権」に統一 されつつある 知的財産権=知的財産法により守られる権利 *「知的財産法」という法律自体があるわけではない 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

知的財産法とは? *:これら4法を特に 産業財産権法(または工業所有権法)とも言う 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

<主要な知的財産法> 産業財産権法(工業所有権法) (特許法、実用新案法、意匠法、商標法) ↓ 著作権法 ↓ ・「産業の発達」を目的        ↓    ・「産業の発達」を目的    ・所定の手続き、審査が必要    ・権利維持のために費用がかかる   著作権法     ↓    ・「文化の発展」を目的    ・手続き不要    ・権利維持の費用不要 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

<主な知的財産法の保護対象>=知的財産 特許法=発明(アイデア)の保護 実用新案法=考案(小アイデア)の保護 意匠法=意匠(デザイン)の保護 商標法=商標(ブランド)の保護 著作権法=表現(コンテンツ)の保護 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(例)コンピュータと知的財産法 コンピュータにはどんな知的財産権が含まれる? CPU、メモリ、HDD PCのデザイン IBM、ThinkPad HPに載せた写真 ダウンロードした音楽 Web公開日記 プログラム →特許権 →意匠権 →商標権 →著作権 →著作権 →著作権 →特許権、著作権 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(2)特許の保護対象 特許法の存在意義 (目的) (2)特許の保護対象 特許法の存在意義              (目的) 第一条  この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。 発明の保護(特許権付与)及び利用(公開・実施) ↓ 発明を奨励(特許=発明創作活動のインセンティブ) (国内)産業の発達 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

「発明」を保護する理由 発明を保護しなければ⇒ 技術の進歩による産業発達が阻害 (発明の秘匿化) 発明を保護しなければ⇒ 技術の進歩による産業発達が阻害                     (発明の秘匿化) 新規な発明を保護 ⇒ 公衆に対して公開させる(特許出願) 利益:発明者=新規な発明の公開代償として独占権(特許)付与 発明者以外=新規な発明の情報を元に新たな発明                 ↓ 重複研究、重複投資を防ぎ、技術の飛躍的進歩を図る           産業の発達につながる 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

特許の保護対象 (定義) 第二条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。 第二条  この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。 ・自然法則を利用   → 経済法則、永久機関× ・技術的思想の創作 ⇔ ビジネス方法*、パッティング方法× *(ビジネス方法)+(IT)=(ビジネスモデル特許) ・高度のもの      →(実用新案) 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(補足事項)発明者について ・発明者とは、真に発明をなした自然人である。   わが国特許法は、発明は自然人によってなされ、その自然人に権利が原始的に帰属するという考え方に立脚している。 ・発明者とは、当該発明の創作行為に現実に加担した者だけを指し、単なる補助者、助言者、資金の提供者、あるいは単に命令を下した者は、発明者とならない。 例)・単に指示を受け発明にかかる装置の製作図面を作成した者   ・課題ときわめて素朴なアイデアを提供した者 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(3)特許をとるための要件 1)産業上利用性 ⇒(法目的)産業の発達 <産業上利用できる発明に該当しない場合> 1)産業上利用性  ⇒(法目的)産業の発達 <産業上利用できる発明に該当しない場合> ①人間を手術、治療又は診断する方法 ②その発明が業として利用できない発明 例:(ⅰ)喫煙方法のように、個人的にのみ利用される発明   (ⅱ)学術的、実験的にのみ利用される発明 ③実際上、明らかに実施できない発明 例:オゾン層の減少に伴う紫外線の増加を防ぐために、地球表面全体を紫外線吸収プラスチックフイルムで覆う方法。 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(3)特許をとるための要件 2)新規性 ⇒新規発明公開代償としての特許付与 <以下の場合は新規性がない発明とされる> 2)新規性      ⇒新規発明公開代償としての特許付与 <以下の場合は新規性がない発明とされる> (いずれも特許出願時前において) ①公然知られた発明 例:発明の内容を講義で説明した、発明について知り合いの先生とディスカッションを行った ②公然実施された発明 例:発明を利用した製品の共同研究を行った会社が販売を開始した ③刊行物・インターネット等で発表された発明 例:発明の内容を雑誌に掲載した、自分の研究室の紹介HPに発明内容の解説を掲載した 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(3)特許をとるための要件 2)新規性 ※新規性喪失の例外 2)新規性  ※新規性喪失の例外 学会発表、論文発表、新聞発表等の所定の場合には、その発表の日から6月以内に出願するとともに、所定の手続をとることにより新規性を喪失しなかったものとみなされることが有る ただし、あくまで例外規定のため、救済されないことも有るので、発表前に出願を済ますことが望ましい 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(3)特許をとるための要件 3)進歩性 ⇒技術の飛躍的な進歩 >当業者が従来技術から容易に思いつかないこと ↓ 3)進歩性      ⇒技術の飛躍的な進歩 >当業者が従来技術から容易に思いつかないこと     ↓   (その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者 ) ・特許の拒絶理由の多くはこの進歩性違反 ・主として従来文献との差異が問題となる場合が多い ・出願前に充分な従来技術調査(IPDL等利用)を行うことが望ましい 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(3)特許をとるための要件 4)先願主義 同一の発明について特許出願があった場合、最先の出願について(他の要件を満たしていれば)特許が認められる。 ⇔先発明主義(米国) 同一の発明について特許出願があった場合、最先の発明者に権利を付与する。 5)その他の要件 拡大先願、冒認出願、書類の記載要件違反等 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(4)特許をとるための手続 ↓ 所定の書面を提出 →(先願主義)⇔(発明者主義) ・明細書、(図面) ・特許請求の範囲 所定の書面を提出 →(先願主義)⇔(発明者主義)   ・明細書、(図面)   ・特許請求の範囲   ・出願から1年6月後に公開           ↓ 審査請求をして、特許庁*で審査を受ける   ・審査期間約2-3年   ・特許要件を満たせば特許、満たさなければ拒絶   ・審査(1人)⇒審判(3人)⇒東京高等裁判所 *東京特許許可局?? 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

特許出願前の手続 所定の学内手続の後(研究支援機構) ↓ 書類の作成(外部特許事務所の弁理士による) 発明者による内容チェック    ↓ 書類の作成(外部特許事務所の弁理士による) ・明細書、図面=出願する発明を詳細に説明するための書類、            当業者が実施できる程度に記載されていること ・特許請求の範囲=審査対象及び権利範囲を定めるための書類              明細書に記載された発明であること 発明者による内容チェック 特許庁へ出願(オンライン) 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

出願から特許権発生までの手続きの流れ(詳細) 実体審査 拒絶理由あり 拒絶理由通知 1年6ヶ月後 方式審査 拒絶理由なし 意見書・補正書 特許査定 出願公開 YES 拒絶理由解消? 特許料納付 3年以内 NO 審査請求? あり 設定登録/ 特許権発生 拒絶査定 なし 取下擬制 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

特許出願後の手続 ①審査請求・・・出願日から3年以内に要否を決定 ②実体審査・・・特許庁審査官による特許要件に関する審査 ③拒絶理由通知・・・ 審査官からの心証の通知。9割以上の出願についてなされるといわれている。その多くは進歩性違反と記載不備。 ④中間処理・・・ 拒絶理由に対する出願人の対応。 発明者を中心として、引用された文献との相違点を主張し意見書を提出する。 必要に応じて出願内容を補正する(新規事項の追加は不可)。 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

特許出願後の手続 ⑤査定・・・審査官の最終判断 ⑥その他 ・特許査定=拒絶理由がない場合になされる。設定登録料の支払いにより、登録され、特許が発行する。 ・拒絶査定=拒絶理由がある場合になされる。  不服がある場合は、さらに   拒絶査定不服審判→審決取消訴訟(知財高裁)  という不服申し立てが可能である。 ⑥その他 ・一般に審査請求から最初に拒絶理由が通知されるまでは2-3年程度かかる ・ただし、ライセンス予定や実施予定が確定している場合等は、早期審査・優先審査等を受けられることがある(最短1週間で権利化可能) ・権利を断念する場合は取り下げ等を行うことがのぞましい(出願公開されていれば他人の権利化は排除できる) 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(補足事項)共同発明・共同出願の留意点について 共同発明・・・複数の発明者による発明。 例:KIT教員と共同研究の会社の研究者との共同による発明 ・発明者全員による共同出願が原則 ・特許を出願するための権利を移転する場合は、他の発明者の承諾が必要 共同出願・・・複数の出願人による特許出願。 例: KIT教員がKITに出願するための権利を移転し、共同研究の会社の研究者がその所属会社に出願するための権利を移転した場合のKITとその会社による共同の出願 ・一般には共同出願契約締結が望ましい(共同研究契約で含むことも多い) ・権利の所属やライセンス料(いわゆる不実施補償)を契約に含めることが多い ・権利のライセンス、移転は原則として相手方の承諾が必要となる 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(5)特許権とは ・特許権が発生 ↓ 特許を受けた発明を独占排他的に実施できる権利 登録日から、最大出願日から20年まで権利は存続    ↓   特許を受けた発明を独占排他的に実施できる権利   登録日から、最大出願日から20年まで権利は存続 ・他人が勝手に特許発明を実施していたら? 特許 (設定登録) 出願日 出願公開 (出願日から20年) 特許権 20年 差止請求 損害賠償請求    ⇒ライセンス料の請求の根拠 刑事罰 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(6)補足 ①特許公開公報の例とその読み方 ②特許電子図書館(IPDL)による先行特許出願検索 ③特許明細書・特許請求の範囲の記載要領 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(6)補足① ①特許公開公報の例とその読み方 (PDFファイルにより説明) 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

補足② ②特許電子図書館(IPDL)による先行特許出願検索 (http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl) 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

補足② ②特許電子図書館(IPDL)による先行特許出願検索 (1)簡単な検索1「初心者向け検索」から入る (2)簡単な検索2 「特許実用新案検索」→「公開特許公報フロントページ検索」 (3)やや高度な検索 「特許実用新案検索」→「公報テキスト検索」→「要約+請求の範囲」 (4)高度な検索 「特許実用新案検索」→「公報テキスト検索」→「公報全文(書誌を除く)」 (5)公報全文をPDFでダウンロード可能 ※ただしデータはいずれも平成5年公開以後分 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

(補足③)特許出願前の手続 明細書の記載要領 1. 【発明の名称】の欄について  「ロボットの二足歩行装置」や「電気自動車の充電制御方法」のように発明の内容を簡潔、明りょうに表示する名称をつけます。発明の内容と直接関係のない「田中式」とか「最新式」といった字句を添えてはいけません。 2. 発明の詳細な説明について  「発明の詳細な説明」は、当業者が発明を実施できるように、特許法第36条第4項及び特許法施行規則第24条の2の規定に従い、明確かつ十分に記載する必要があります。 原則として、段落の前に「【」と「】」を付した4桁のアラビア数字で【0001】、【0002】のように連続した段落番号をつけ、以下の(1)から(5)に示すような見出しを段落番号の前につけて、発明の内容を簡潔に説明します。(発明の性質等から、どうしても以下の見出しをつけることが不適切な場合は、別の見出しを設けることも可能です。) 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

特許出願前の手続 明細書の記載要領(続き) (1) 【技術分野】  特許を受けようとする発明の技術分野を明確にするため、「本発明は~するための~に関する。」のように簡潔に記載します。 (2) 【背景技術】  特許を受けようとする発明に関連する文献公知発明のうち特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載します。 また、文献公知発明を含め、特許を受けようとする発明に関連する従来の技術についても、なるべくそれを記載します。 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

特許出願前の手続 明細書の記載要領(続き) 具体的には、次のように記載します。 「【背景技術】 【000○】  具体的には、次のように記載します。 「【背景技術】  【000○】    従来の○○○には、・・・・を施したものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、・・・・・を配置しているものがある(例えば、非特許文献1参照。)。・・・・・・・・・。  以下、図○、図○により従来の○○○について説明する。・・・・・・・・。     【特許文献1】特開平6-996620号公報(第3頁、図1)     【特許文献2】特開平7-997730号公報(第4頁、図1)     【非特許文献1】「○○電機 家電製品カタログ1994」、○○電機株式会社、1994年、p.16」 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

特許出願前の手続 明細書の記載要領(続き) (3) 【発明の開示】  「【発明が解決しようとする課題】」の見出しの前に「【発明の開示】」の見出しを付します。 ・ 【発明が解決しようとする課題】  特許を受けようする発明が課題にしている従来技術の問題点などを記載します。 ・ 【課題を解決するための手段】  請求項に記載された発明がこの解決手段そのものとなりますから、普通は特許請求の範囲に記載された構成を記載しておきます。 ・ 【発明の効果】  特許を受けようとする発明が、従来の技術に比べて優れているといえる点を、発明の有利な効果として記載します。発明の進歩性を判断する材料にもなりますから重要です。 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

特許出願前の手続 明細書の記載要領(続き) (4) 【発明を実施するための最良の形態】、【実施例】 特許を受けようとする発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が当該発明を実施することができるように、発明をどのように実施するかを示す発明の実施の形態を【発明を実施するための最良の形態】に記載し、必要があるときはこれを具体的に示した実施例を【実施例】の見出しをつけて記載します。その発明の実施の形態は、特許出願人が最良と思うものを少なくとも一つ掲げて記載します。 (5) 【産業上の利用可能性】  特許を受けようとする発明が産業上利用することができることが明らかでないときは、特許を受けようとする発明の産業上の利用方法、生産方法又は使用方法をなるべく記載します。多くの場合には発明の産業上の利用可能性は自明なので、この欄への記載は必要ありません。 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

特許出願前の手続 特許請求の範囲の記載要領 (1) この欄には、特許出願人が特許を受けようする発明を特定するために必要な事項を記載します。特許発明の技術的範囲はこの特許請求の範囲の記載によって定められますから、特許法第36条第5項及び第6項並びに特許法施行規則第24条の3の規定に従い、明確に記載する必要があります。 (2) 特許請求の範囲は請求項に区分して記載し、特許を受けようとする発明が複数ある場合には、【請求項1】、【請求項2】のように請求項の語句の後に連続した番号を添えて欄を設けます。請求項が一つであっても【請求項1】と記載します。 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎

特許出願前の手続 特許請求の範囲の記載要領(続き) 特許法第36条第5項及び第6項 5  第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。 6  第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。 一  特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。 二  特許を受けようとする発明が明確であること。 三  請求項ごとの記載が簡潔であること。 四  その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。 2008/11/19 KIT特許セミナー(1) 加藤浩一郎