藍藻Phormidium tenueの光特性と カビ臭物質の発生機構の解明プロジェクト

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藍藻Phormidium tenueの光特性と カビ臭物質の発生機構の解明プロジェクト   No.2 藍藻Phormidium tenueの光特性と カビ臭物質の発生機構の解明プロジェクト Study on optical characteristics and musty odor compound of Phormidium tenue 福山 朝子、王聰、大山恭平、菅原久嗣、中村祐太 浅枝 隆(Asaeda Takashi) (財)ダム水源地環境整備センター(WEC) (株)環境科学コーポレーション 東京都水道局水源管理事務所 <はじめに> ダム湖に発生する藍藻Phormideium tenueはカビ臭を発生させることが知られている。ここでは、室内実験や野外観測によって、Phormidiumのカビ臭発生の特性およびPhormidium自体の増殖についての分光特性を調べ、カビ臭の発生抑制の方法を理論的に確立する。 <Introduction> It is known that Phormideium tenue generated in the dam lake are generated of the moldy smell. So the spectrum characteristic of the proliferation of the characteristic of the moldy smell generation of Phormidium and Phormidium is examined by the laboratory experiment and the field observation, and the generation control of moldy smell method is established theoretically. 背景・目的 ダム湖に発生する藍藻Phormidium tenueはカビ臭を発生させることが知られている.しかし、Phormidium tenueは古くから研究されているにもかかわらず、現地での発生パターンやその環境要因が明確になっていない。その原因の一つとして、性質の違う株が複数種存在するにもかかわらず、大半のデータはPhormidium tenueとしてそれらをひとくくりにしていることが挙げられる。ここで、全ての株の生態を個別に追うのは現実的ではないため、多様な株を合理的にグルーピングして扱うことによって、発生パターンやメカニズムの解明に役立ち、フィールドでのカビ臭防除対策を考える上でもターゲットが絞れると考えられる。 また、藍藻は緑株から茶株へ変化し、それに伴い2-methylisoborneol (2-MIB)産生から非産生の変化が起きると推測されているが、色素タイプとカビ臭生産/非生産の対応関係を合理的に説明できる考察は今のところ報告されていない。 そこで、藍藻の発生するダム湖において生態的特性を調べ、最終的にその結果をフィールドで応用し、カビ臭防除の方法を確立することを目的とする。 今までの実験・分析方法と結果 まず数種のサンプルを前培養によって増殖させ、その後本培養によって光合成を促進させる波長を推定する。 それにより藍藻の発生メカニズムについて把握し、また藍藻の持つカビ臭発生の原因について検討する。 サンプル NIES-30  :Leptolyngbya sp.(緑株、無味無臭) NIES-512 :Pseudanabaena galeata Böcher(緑株、異味異臭) NIES-611 :Pseudanabaena sp.(茶株、無味無臭) 培地 CT(株式会社環境科学コーポレーションによる) 培養条件 インキュベータ(SANYO社製、MIR-254)内の設定。 温度:25℃ 照度:25~75μMol/㎡/s 明暗周期:12時間(明:6~18時、 暗:18~6時) 培養実験 第1段階:前培養 株を安定して増殖させる(100万細胞/mlまで)。 第2段階:本培養1 第1段階で増殖した株を新たな培地に植え継ぎ、 光条件を変え(白→赤、緑)同様に増殖させる(100万細胞/mlまで)。 第3段階:本培養2 第2段階で増殖した株を新たな培地に植え継ぎ、 光条件を変え(赤→緑、緑→赤)同様に増殖させる(100万細胞/mlまで)。 ※初期添加量:10000細胞/mlになるように株を添加する。 ・定期的に細胞数を落射蛍光顕微鏡により計測、growth curveを描く。 光合成色素・臭気分析 培養の各段階終了後にフィコビリ蛋白、クロロフィルa、臭気をそれぞれ測定する。 無菌培養実験による研究 <1> フィールドにおけるカビ臭の由来生物を特定する。 ・サンプルの臭気測定よりサンプルが2MIBまたはジェオスミンを含む場合 ・ターゲット:2MIBとジェオスミン ・Pseudanabaena galeata Bocher(NIES-512)の存在を16srRNAのDGGE法  →シークエンスより確認 ・サンプリング:カビ臭のする河川水、河川中の礫に付着した微生物膜、湖水、湖底泥 (フィールドは参考文献等より決定) →サンプルのカビ臭を測定 →2MIBまたはジェオスミンが検出されたらDNAを取る ・Pseudanabaena galeata Bocher(NIES-512)の培養 ・DGGE法によるモニタリング ・Pseudanabaena galeata Bocherが存在すると仮定した場合のプライマーの設計 ・濃度勾配ゲルの設計 ・電気泳動 ・染色 ・バンドの切り出し →Pseudanabaena galeata Bocherで同じ位置にバンド確認 →サンプルにPseudanabaena galeata Bocherがいる可能性 ・PCR法 ・クローニング ・大腸菌で増やす ・シークエンスして塩基配列の決定→種の同定(Pseudanabaena galeata Bocher)   <2> Pseudanabaena galeata Bocher(NIES-512)の生育特性からカビ臭防除の方法を考察する。 ・培養条件による生育の違い ・growth、カビ臭測定よりどのような状況でカビ臭は発生するのか検討 ・結果をフィールドで応用し、夏期・冬期それぞれに対応するカビ臭防除の方法の確立 サンプル:(N512) 培地:BG-11、CT 培養条件を何種類か設定する。 ・静置or振盪(90回転/分) ・照度(暗いor明るい) ・温度(冬期or夏期を想定) growth(OD)、カビ臭の計測を行う。 H3C CH3 OH CH3 OH  2-MIB Geosmin ・臭い物質について 2-MIBはNIES-512からのみ検出され、ジェオスミンは全ての株においてほぼ検出されなかった。 結果 フィールドから採取したサンプルの培養 <フィールド> ・渡良瀬遊水地(利根川上流) <培地> BG-11 <状態> 静置 <照明> 白色光 <明暗周期> 明(6:00~18:00) 暗(18:00~6:00) ・サンプリングは建設環境研究所による。6月中旬より、毎週1回、0.5m層の水サンプルをホルマリン固定し、 100mlボトルに5本採取。 ・培養の他に1ml中の細胞数の計測、目視による同定を行う。 考察 顕微鏡による観察では、各サンプルにおいて珪藻、緑藻、藍藻など様々な種の藻類が見られた。特に写真のようなNIES-512に類似した藻類も多く見られた。 また、夏季と冬季のサンプルでは検鏡による細胞数の計測の結果、夏期(8~9月がピーク)の方が冬期より小水中に含まれる細胞量が多いことが分かった。 ・今までの分析結果を細胞当たりに換算 ・growth curveについて NIES-30では光条件を変えると、 緑→赤では赤→緑より良く増殖している。 NIES-611では光条件を変えると、 緑→赤では赤→緑より増殖が少ない。 考察  光条件を変えた培養実験において、NIES-611では細胞が光波長の変化に対応するという現象(相補的色素対応)が見られ、NIES-30では見られなかった。  また、カビ臭物質については検出量が既存の報告されているデータより遥かに少なかったことから、NIES-30、NIES-611共にカビ臭非生産株であると考えられた。  NIES-512の分析結果によっては、相補的色素対応の有無がカビ臭生産の有無を特徴付けることが確認されると考える。 ・Ch-a当たりに換算 9月サンプル ・光合成色素について NIES-30 観察では、PC-richであると考えられた。細胞当たり、Ch-a当たり共にPEはいずれの段階、光条件においてもほぼ検出されなかった。 細胞当たりのPCの検出量は赤→緑>緑→赤>赤>白>緑         Ch-aの検出量は赤>緑→赤>赤→緑>白>緑 Ch-a当たりのPCの検出量は白>赤→緑>赤>緑→赤>緑               Ch-aは緑→赤>白>赤>緑>緑→赤 NIES-611 観察では、PE-richであると考えられた。 細胞当たりのPEの検出量は白>赤→緑>緑>赤>緑→赤          Ch-a当たりだと白>赤>緑>緑→赤>赤→緑 Ch-a当たりのPCの検出量は赤>白>緑>赤→緑>緑→赤          Ch-a当たりだと白>緑>赤>緑→赤>赤→緑 12月サンプル Incubator In incubator 計数結果