著 作 権(1) 情報社会と情報倫理 第5回
講 義 内 容 著作権 小説(著作物の例) 勝手にコピーされると,作家は困る 作家の権利を法律で保護する(著作権法) 著作権法について 著作物とは 著作者の権利とその制限
知 的 財 産
知 的 財 産(1) 難病治療薬 人に感動を与える芸術作品 知的創作活動の成果
知 的 財 産(2) これらを作った人には,報いなければならない そのことにより,新たな作品が産まれることになる 新しい作品といっても,他人の成果の影響を受けている場合もある
知 的 財 産(3) 知的財産権・知的所有権 このような権利を保護するための法律 特許権,実用新案権,育成者権,意匠権,商標権,著作権 “著作権”以外のものは後で取り上げる予定
著 作 権
著 作 権(1) プロの作家 作品が売れることにより生活している(印税) 勝手にコピーされると困る 過去の他人の作品の影響を受けていないとは言い切れない
著 作 権(2) 知的創作活動をした人に報いることにより,さらなる創作活動をしてもらう 結果として,一般の人々も利益を得る
著 作 権(3) ただし,過去の創作物の影響を,何らかの形で受けている 中には,完全にオリジナルのものもあるかも知れないが
著 作 権 制 度
目 的 “等”に注意 著作者等の権利の保護 やる気を出してもらう 文化的所産の公正な利用 既存の作品をベースにして新しい作品 100%オリジナルなものは,ほとんどない “自分の作品を一定期間独占”という方法によ り達成 情報流通を抑制する面と促進する面
時代の流れに影響を受ける(1) 制度自体は古い 日本の著作権法は1899年 ディジタル機器とインターネットの影響が大 もうひとつあるが,それは来週 従来は,我々にはほとんど関係がなかった
時代の流れに影響を受ける(2) ディジタル機器の出現 オリジナルと全く同じコピーができる 何回コピーしても劣化しない オリジナルが売れなくなる
時代の流れに影響を受ける(3) インターネットの普及 誰でも情報発信ができるようになる 他人の著作物を,不当に使ってしまう可能性が大 自分の著作物を,他人が不当に使う場合もある
英 語 で は… copyright © copy 複写する right 権利 厳密には,copyright は “著作権”ではない
著 作 権 法
著 作 物(1) 第2条1 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの “創作”と“表現”がキーワード (後述) 第2条1 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
著 作 物(2) 第10条 1 小説,脚本,論文,講演その他の言語の著作物 2 音楽の著作物 3 舞踊又は無言劇の著作物 4 絵画,版画,彫刻その他の美術の著作物 5 建築の著作物 6 地図又は学術的な性質を有する図面,図表,模型その他の図形の著作物 7 映画の著作物 8 写真の著作物 9 プログラムの著作物
著 作 物(3) 著作物かどうかは,創作性が問題 芸術作品として認められないものでも可 いたずら書きでも立派な著作物の可能性あり 表現を保護する アイデアではない 新しく考え出された料理のレシピは著作物ではない ただし,料理の本は著作物
著 作 物(4) コンピュータのプログラムも著作物(1985年から) データベースも著作物(1986年から) 著作権制度の長い歴史からみると,非常に新しい
著 作 権 の 全 体 像 誰の権利 どんな権利
著 作 者 の 権 利(1) 人格権 人格権 公表権 氏名表示権 同一性保持権 侵害されると,気分を害する 未公表著作物を,いつ,どのように公表するかを自分で決められる 氏名表示権 氏名を表示するかしないか,実名かペンネームかを自分で決められる 同一性保持権 無断で変更させない 侵害されると,気分を害する
著 作 者 の 権 利(2) 財産権 財産権としての著作権 広い意味での“複製に関する権利” 侵害されると,金銭的損害を受ける 著 作 者 の 権 利(2) 財産権 財産権としての著作権 広い意味での“複製に関する権利” 侵害されると,金銭的損害を受ける 英語のcopyrightはこの権利に相当
著 作 者 の 権 利(3) 財産権 複製権 上演権 貸与権 無断で印刷,複写などをさせない 無断で上演・演奏させない 著 作 者 の 権 利(3) 財産権 複製権 無断で印刷,複写などをさせない 上演権 無断で上演・演奏させない 貸与権 無断で貸すことをさせない 貸本屋,図書館,レンタルCD/DVD
誰もダウンロードしていなくても,侵害したことになる 著 作 者 の 権 利(4) 財産権 翻訳権 無断で翻訳させない 公衆送信権・伝達権 無断で放送させない,だけでない 無断でインターネットに接続されたサーバにアップロードさせない(自動公衆送信,送信可能可) 他にもある 誰もダウンロードしていなくても,侵害したことになる
著作者の“権利”について(1) 著作物を創作すると,権利が発生する どこかに申請する必要はない “無方式主義”と呼ぶ
著作者の“権利”について(2) 例 “複製権”とは,“自分の著作物を複製することができる権利”ではない 当然,できるに決まっている! 例 “複製権”とは,“自分の著作物を複製することができる権利”ではない 当然,できるに決まっている! 他人が自分の著作物を複製することの可否を決めることができる権利 許諾権 著作権法での権利全般
著作者の“権利”について(3) つまり,自分の著作物に対して,他人が無断で行う行為にクレームをつけられる権利 自分ができる権利ではない 勝手にコピーされても,黙認することも可能 親告罪
著 作 権 の 全 体 像
伝 達 者 の 権 利 著作隣接権 俳優,歌手,レコード会社,放送局など 人格権と財産権
人 格 権 と 財 産 権 人格権は,著作者・伝達者自身の権利 譲渡できない 財産権 譲渡できる 著作権者(著作者とは限らない) 複製権を譲渡すると, 自分の作品であっても 勝手に複製できなくなる
著 作 権 の 全 体 像(再) 誰の権利 どんな権利
著 作 権 の 制 限
著 作 権 の 制 限(1) 第30条 私的使用のための複製 家庭内で使うためにコピーする場合は,著作権者の承諾不要 第30条 私的使用のための複製 家庭内で使うためにコピーする場合は,著作権者の承諾不要 ただし,コピーしたものを売ることなどはできない
著 作 権 の 制 限(2) 第32条 引用 公正な慣行に一致し,正当な範囲内 オリジナルの部分が主で,引用は従でなければならない 第32条 引用 公正な慣行に一致し,正当な範囲内 オリジナルの部分が主で,引用は従でなければならない 引用部分は明確にする 誰の著作物であるか明示する …など レポート作成時に注意! “無断で引用”
著 作 権 の 制 限(3) 第35条 学校その他の教育機関における複製等 必要な範囲内でのみ 講義担当者・受講者が自分で複製する 第35条 学校その他の教育機関における複製等 必要な範囲内でのみ 講義担当者・受講者が自分で複製する 講義を受けている者に対してのみ配布
著 作 権 の 制 限(4) 他にもある あくまでも例外的に著作権者の権利を制限している だからいろいろ制約がある 勝手にできる権利ではない
ディジタル機器による複製(1) 第30条2 ディジタル機器による私的複製の場合,補償金を支払わなければならない なぜ? 実際には,指定された機器やメディアの代金に上乗せされている
ディジタル機器による複製(2) データ用は対象外 私的録音補償金管理協会 http://www.sarah.or.jp/qa/qa03.html
ディジタル機器による複製(3) 私的録画補償金管理協会 http://www.sarvh.or.jp/dis/dd_navi.html
ディジタル機器による複製(4) 新しい機器(iPodなど)の出現 権利者側は,補償金の対象を拡大したい パソコン全部 新たなディジタル機器 利用者側には,反対意見あり
著作権の存続期間(1) 第51条 著作者の死後50年 注意 第60条人格権について 第54条 映画は公表後70年
著作権の存続期間(2) すべて70年に延長するかどうか議論 国によって異なる 著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム http://thinkcopyright.org/
著作権法の罰則規定 第119条~124条 いろいろあるが,最高は“10年以下の懲役,1,000万円以下の罰金”
著作権の話題 いろいろある 次週以降
ま と め (1) 著作権制度 目的 著作権者の権利保護と著作物の公正利用 目的 著作権者の権利保護と著作物の公正利用 古くからある制度 ディジタル機器とインターネットの影響で,現状と合わなくなる
ま と め (2) 著作権法(1) 著作物とは(“創作”と“表現”) 保護される権利 誰の(著作権と著作隣接権) 何を 財産権:複製権など(譲渡可) 人格権:公表権・氏名表示権・同一性保持権(譲渡不可)
ま と め (3) 著作権法(2) 著作権者の権利を制限 私的使用のための複製・引用・教育機関での複製 など 著作権の存続期間 著作権者の権利を制限 私的使用のための複製・引用・教育機関での複製 など 著作権の存続期間 いろいろ現状と合わない部分 毎年改正
注 意 “ディジタル”と“デジタル” digital 注 意 “ディジタル”と“デジタル” digital 私の授業では,“ディジタル”をつかうことを原則としますが,(学生に)強制するつもりは全くありません。
次 週 著作権が揺れている ビデオを観てもらうので,遅刻厳禁