第3章補足 ローレンツ曲線とジニ係数 統計学基礎 2010年度
この分布は、少数の大金持ちと多数の庶民がいる状態を示している。 第2章で示した、貯蓄現在高階級別の世帯分布は、下のようになっていた。 この分布は、少数の大金持ちと多数の庶民がいる状態を示している。 このような状態は不平等であると考える。 すべての人の資産†が等しい状態を平等‡とし、そこからどの程度離れているかを知りたい。 † 所得面から平等をみることもある。 ‡ 平等を定義することは容易ではないが、ここではこのように定義する。 出典:総務省統計局『家計簿から見たファミリーライフ』 (http://www.stat.go.jp/data/kakei/family/4-5.htm#1)
5人兄弟が遺産を相続するとき、 † 5人兄弟の遺産相続の例 † 5人兄弟の遺産相続の例 5人兄弟が遺産を相続するとき、 (a) は、5人兄弟がそれぞれ5分の1ずつ相続するという例。 (b) は、5人兄弟がそれぞれ異なった取り分を相続する例。 (c) は、長男がすべての遺産を相続するという例。 (a) は、5人が平等に相続しているのに対して、(b)や(c) は、不平等である。
(b)のパターンを例に取り上げる。このパターンを、取り分の小さい順に並べかえ、人数の比率と金額(遺産の取り分)の比率の累積を計算してみる。 累積-それ以前のものをすべて加えるということ。 (例) (b)の三男の累積金額比率 「五男の取り分」+「四男の取り分」+「三男の取り分」となるので、1/15 + 2/15 + 3/15 = 6/15 となる。
横軸に累積人数比率を、縦軸に累積金額比率をとり、線でつないだものが下の図である。 a) ローレンツ曲線 横軸に累積人数比率を、縦軸に累積金額比率をとり、線でつないだものが下の図である。 この曲線は、ローレンツ曲線とよばれ、不平等の度合いを表す 曲線である。
遺産相続の3つのパターンについて、取り分の小さい順に並べかえ、人数の比率と金額(遺産の取り分)の比率の累積を計算してみた。 45度線が完全平等線といわれる。 (この例では(a)のグラフが該当す る。) 不平等度が大きいほど、グラフが 完全平等線から右下方に離れる。 → (b)より(c)の方が不 平等
ローレンツ曲線の完全平等線からの離れぐあいを数値で表したもの 完全平等線とローレンツ曲線で囲まれる部分の面積を2倍したもの b) ジニ係数 ローレンツ曲線の完全平等線からの離れぐあいを数値で表したもの 完全平等線とローレンツ曲線で囲まれる部分の面積を2倍したもの この面積の2倍 灰色の四角の面積が1なので、0と1の間の値をとり、1に近いほど不平等度が大きい
残りの部分を台形に分割し、正方形から引く ジニ係数の計算方法 残りの部分を台形に分割し、正方形から引く 台形の面積の公式 (上底+下底)×高さ÷2 を使う。 下底 上底 高さ
このような台形(1番左は直角三角形)の面積を全部加え、その2倍を正方形から引く 遺産相続の例 (b) 0.267 遺産相続の(b)で、次のような台形がある。 上底 - 三男までの累積金額比率(6/15) 下底 - 次男までの累積金額比率(10/15) 高さ - 三男と次男の累積人数比率の差(1/5) この台形の面積は (6/15 + 10/15)×1/5÷2 = 8/75 このような台形(1番左は直角三角形)の面積を全部加え、その2倍を正方形から引く 1-(1/150 + 2/75 + 3/50 + 8/75 + 1/6) × 2 = 1-11/30×2 = 4/15 = 0.2666…
年間収入の例 (平成21年 家計調査 2人以上世帯) (例) (0.00612+0.02165)×(0.06704-0.02426)÷2 = 0.00059 ジニ係数 1-0.35060×2 = 0.29880