<5> ★ ミネラル・ウォーターの是非? エコノミスト派の物語 【世界市民】「水」問題を考える 世界の水 日本の水 <5> ★ ミネラル・ウォーターの是非? エコノミスト派の物語 ■ ボトルの水の売買は禁止すべき? <S4>市民派 1 増加する「ミネラル・ウォーター」 2 ★ ミネラル・ウォーターの変化を見るメガネ 3 ★ 価格規制か所得補償か?
<前 & 前々回の復習> 市民派 と 価値判断力 前回VIDEO: 水問題に関する「環境・市民派」の物語(考え方) <前 & 前々回の復習> 市民派 と 価値判断力 前回VIDEO: 水問題に関する「環境・市民派」の物語(考え方) たとえば,ボトル水に対する主張・考え方は? 理解力・要約力 アナタの評価・意見は? <S3>価値判断力 <S4>事実判断力 前々回 <S3> : 価値判断力の基礎 価値基準・原則: サンデルによる正義への3アプローチとは? 事実判断力: スミスによれば人間の本性とは? 共感 道徳の起源は? 費用便益: 薬認可の厳格化の費用は? 機会費用・トレードオフ
例題 アナタは,何を飲みますか? 家庭の日常飲料に,アナタが主に使用している水は? その理由は? 例題 アナタは,何を飲みますか? 家庭の日常飲料に,アナタが主に使用している水は? (浄水器等の有無も含めた)水道水 (茶や料理使用分を含めても)容器入り飲料水 その理由は? <S4>市民派の「ミネラルウォーター(類:容器入り飲料水)は,買う べきではない」の論理を,簡潔に説明すると? 知識 それに賛同? or 反対なら,その理由は? 見識 <S1> 授業の目標: 4,試験: 3 テキストで練習
1 ミネラル・ウォーター? EUのナチュラル・ミネラル・ウォーター 日本の「ミネラルウォーター類」ガイドライン 【世界市民】「水」問題を考える 1 ミネラル・ウォーター? EUのナチュラル・ミネラル・ウォーター =厳しい基準を満たす原水から直接採取 ミネラル分・生菌数の基準 ( 殺菌禁止) 日本の「ミネラルウォーター類」ガイドライン 処理が前提: 1&2は濾過・沈殿・加熱処理のみ ナチュラルミネラルウォーター ミネラル分が溶解した地下水 ナチュラルウォーター 地下水 ミネラルウォーター 1+ 「オゾン殺菌」や「ミネラル分調整」等追加処理 ボトルドウォーター 地下水以外でもOK,処理法にも限定なし 農林水産省の基準の解説 WEB 水大事典(SUNTORY)
米国のミネラルウォーター 欧州: 18C後: 王侯貴族 19C中: 鉄道 「スパ」名がブランド化: スパ,エビアン,ヴィッテル,‥ 米国: 19C中:同上ローカルブランド (ボーランド) by ロイド(10, 2章) その後: 水道 輸入ボトル 水道水のボトル ペリエ:1988年3億本(輸入シェア80%) 歴史 + マーケティング but 1990年ベンゼン混入 ネスレ But 今や米国の5割弱は,水道水から作る「ボトルウォーター」 1994年ペプシコ: アクアフィナ, 1997年コカコーラ: ダサニ
美味しい水 と 硬度 美味しく感じる要素 主観的 but 日本は軟水・欧州は硬水の傾向 温度,容器,炭酸,物語,体調,‥ 日本は軟水・欧州は硬水の傾向 水の硬度 カルシウム&マグネシウム濃度 WHO基準= Ca(mg/ℓ)×2.5+ Mg(mg/ℓ)×4 軟水(60未満),中軟水,硬水(120以上),超硬水 コントレックス: 1551, ペリエ: 401, ヴィッテル: 307 , エビアン: 291 天の川: 43, IKOMA Spa: 40, 六甲のおいしい水: 32
日本のミネラルウォーター 1人当たりの消費量: 25ℓ 10ℓ N.M.W.のシェア: 81% 95% 2011年ミネラルウォーター類(国内+輸入) 数量: 317万kl = 258万kl + 59万kl (19%) 2001年: 125万kl = 102万kl + 23万kl (18%) 金額:2348億円 = 2065億 + 283億 (12%) 2001年:1006億円 = 855億 + 150億 (15%) ∴需要拡大(8割国産・8割NMW) but 輸入は低額化 1人当たりの消費量: 25ℓ 10ℓ N.M.W.のシェア: 81% 95% 統計 WEB 日本ミネラルウォーター協会
Q1 ミネラルウォーター? ミネラルウォーター類上での分類は? 軟水or硬水? コントレックス (1591) ペリエ (401) エビアン (291) サントリー天然水 アルプス (30) 六甲のおいしい水 (32) 室戸のおいしい深層水 (30) キリン アルカリイオンの水 (58)
A1 ミネラルウォーター類の見方 日本の分類: NMW, NW, MW, BW 日本天然水(06) 硬度120以上なら硬水 欧州のミネラルウォーター 1, 2, 3 日本の販売量の8割 4, 5 BW: 地下水以外・限定処理以外でもOK 米国 海洋深層水,電気分解 6, 7 硬度120以上なら硬水 欧州は硬水(1-3), 日本は軟水(4-7) の傾向 例外的: ボルヴィック: 60, 月のしずく: 171
2 ★ ミネラル・ウォーターを見るメガネ ミネラルウォーター(類)に関する「事実」 の変化 2 ★ ミネラル・ウォーターを見るメガネ ミネラルウォーター(類)に関する「事実」 の変化 「水はタダ(自由財) ⇒ ボトル販売(私的財)」 <S6> 成分はミネラルや水道水まで多様だが,需要は拡大 変化の原因: 需要と供給の(変化を捉える)仮説(メガネ) 「私的財の競争市場」の一般理論 <S6>・経済学 需要の増加: 人口 & 所得↑,健康志向↑ 需要曲線の右方シフト 供給の減少: 都市化 & (乱)開発 による汚染 供給曲線の左方シフト
私的財の「競争的な」需要と供給のイメージ 「競争」的な(2ℓ) ボトルの水市場 自由競争・完全競争 短期の(一般的な)競争市場 需要曲線は,右下がり 供給曲線は,右上がり 競争市場の均衡 均衡価格 P* 150円 均衡数量 Q* 12億本 長期: ダイナミックな需要と供給のシフト 価格 需要曲線 供給曲線 均衡 150 12 数量
Q2 競争的な私的財市場 の変化 前頁の「ミネラルウォーター(類 ボトル入りの水)」市場で, 前頁の「ミネラルウォーター(類 ボトル入りの水)」市場で, さらに自然・健康志向が高まり,需要が増加した場合の 市場価格 P と数量 Q の変化は? Or さらに汚染が進み,供給が減少した場合の市場価格 と数量の変化は? ★以上の逆を考え,自由財(= タダ)であった頃の美味しい 水の需要と供給を図示すると?
A2 私的財の需要と供給のシフト 傾向継続なら,価格上昇 (★下落要因は?) 需要→: 価格↑・数量↑ 供給←: 価格↑・数量↓ 傾向継続なら,価格上昇 (★下落要因は?) 需要→: 価格↑・数量↑ 供給←: 価格↑・数量↓ ∴両方なら,価格はもっと上昇 自由財の場合のヒント 需要は,ずっと左 供給は,ずっと右 ∴ 自由財=価格がゼロ (→ 次頁) 価格 需要曲線 供給曲線 2 1 150 12 数量
★A2 自由財の需要と供給 のイメージ 自由財の市場: タダだった頃の美味しい水 なぜ経済財に変化? <S6> 前頁の2つの変化 需要の増加: 右方シフト 供給の減少: 左方シフト 新鮮な空気の現状と将来は? <S6> 財の性格 時代・環境の変化 価格 需要曲線 供給曲線 150 12 数量
3 ★ 価格規制か,所得補償か? 価格規制(無料化・現物給付を含む)か,所得補償か? 【世界市民】「水」問題を考える 3 ★ 価格規制か,所得補償か? 価格規制(無料化・現物給付を含む)か,所得補償か? 所得補償(eg. 生活保護) エコノミスト派,リバタリアン 当人の嗜好・必要に応じ,財・サービスを「自由に選択」可能 価格規制(無料化・現物給付を含む) <S4> 市民派,リベラル 当人のために現物(パターナリズム) or 誰もに無料でアクセス権 資源配分の効率性 = 社会の余剰が大きいこと = 経済厚生(国民の満足度)の 1 尺度 <S3>功利主義 個々人の余剰(= 便益 - 費用 = 純便益) ↑ 選択の自由
競争市場の社会余剰: 効率的とは? 社会余剰=消費者余剰 + 生産者余剰 消費者余剰 生産者余剰 ∴市場均衡 社会余剰の最大化 = 支払意欲 - 購入価格 生産者余剰 = 販売価格 - 生産費用 ∴市場均衡 社会余剰の最大化 =「支払意欲-生産費用」が最大 ⇒ できるだけ低い生産費で,できるだけ高い欲求を満たす ∴ 効率性: 国民の最大満足 自由選択の結果: <S4> 帰結主義 数量 価格 需要曲線 供給曲線 均衡 150 12 消費者余剰 生産者余剰
★Q3 ボトルの水の価格規制 競争市場の規制 社会余剰は? 図示できる? 均衡価格\150は高すぎる,との消費者の声で, 競争市場の規制 社会余剰は? 図示できる? 均衡価格\150は高すぎる,との消費者の声で, より低い \50 に上限価格を設定すると? (上限価格規制) 均衡価格\150は安すぎる,との生産者の声で, より高い \250 に下限価格を設定すると?(下限価格規制) ★効果のほとんどない価格規制の例は? 均衡価格より高い(低い)上限(下限)価格の効果
★A3 価格規制の非効率性 価格規制は社会余剰を減少させる 規制は非効率 \50の上限価格 ⇒ 生産余剰↓・消費者余剰?・社会余剰↓ =死荷重の発生 非効率 \250の下限価格 ⇒ 生産余剰?・消費者余剰↓・社会余剰↓ ★均衡より上(下)の上限(下限)価格規制は,効果がない 下限価格規制: 地方の「最低賃金」水準 ★なぜ「時給=1万円」に下限設定しない?すればどうなる?
価格規制は,「死荷重」 の分だけ非効率 上限価格: B 死荷重ABC 下限価格: A
Q4 私的財の無料化政策の愚行 競争的な私的財(ボトル)無料化政策の効果は? <S4> 政策の意図: 飲料水を買えない人も,飲めるようにすべき But 政策の効果: Q3の「上限価格がゼロ円」の特殊ケース 「無料化は貧しい人を助ける」のは本当か? No; 需要量↑ but 供給量↓ 取引量↓ 超過需要↑ 無料化政策は,低格政策より望ましいか? No: 「水の量↓ & 社会余剰↓ 死荷重↑」 の程度が拡大 ★★無料化による需要増を支援する補助金も含めると?
A4 さらに非効率な無料化政策 上限価格ゼロの規制: B 非効率:取引↓& 死荷重↑ ★★補助金によって需要Dまで実現 非効率の拡大 【世界市民】「水」問題を考える A4 さらに非効率な無料化政策 上限価格ゼロの規制: B 需要量: C → D 供給量: C → B 均衡: B,超過需要: BD 貧しい人がOBに割当??? 非効率:取引↓& 死荷重↑ B↓ & ABC↑ 前々頁左図 ★★補助金によって需要Dまで実現 非効率の拡大 需要曲線 価格 供給曲線 A C 超過需要 D O B 12 数量
ボトルの水の売買: 市民派 vs. エコノミスト 全人類にアクセス権 × 商品化 & 売買 局所的な不足・水循環 × 移出 & 輸出 ボトルの水の売買↑ 公営水道の経営悪化 売買の自由は権利 かつ 効率を高める エコノミスト派 私的財の競争市場の価格規制は,非効率 = 社会余剰↓ それでも必要なら,無償化より,所得補償が自由かつ効率的 日本の現状: 水・食糧・教育・… 「全人類の所得補償」は?
本日の要点 & 次回の準備 ミネラルウォーターは買うべきでない? アナタの判断は? 増加するミネラルウォーター(類) 【世界市民】「水」問題を考える 世界の水 日本の水 本日の要点 & 次回の準備 ミネラルウォーターは買うべきでない? アナタの判断は? 増加するミネラルウォーター(類) 日本は,「軟水 & NMW」 が一般的 EUは,処理禁止 米国では,BW が増加 エコノミストの見方: 私的財 市場取引による余剰↑ 自由な売買が効率的 (必要なら所得補償) 社会余剰の増加 次回: 指定テキストYを含む3つの物語への判断の最終準備 <S1> Y(09)を一読できた? マークシート用HB黒鉛筆?
例解 環境・市民派 と ジャーナリスト系 ミネラルウォーター販売↑ (水道水需要↓) 容器: 美味,健康,便利 (Or 水道: 低価格) 【世界市民】「水」問題を考える 例解 環境・市民派 と ジャーナリスト系 ミネラルウォーター販売↑ (水道水需要↓) 容器: 美味,健康,便利 (Or 水道: 低価格) ロイド(10, p.51): 1: ブラインドテストではたいてい水道水が勝つ 2: ボトル入りの価格は,水道の240-1万倍 市民派: ① 人権 売買×, ② 水循環 移出× ロイド(10, p.237): ③ 水道需要↓水道経営悪化 ロイド(10, p.245,58): ミネラルウォーターにも役割 but 本人: ニューウォーター(再生水), 家族: 水道水 ジャーナリスト系: 事実判断の複雑性 + 選択の自由
ジャーナリスト系の参照文献 ●ロイト(10) 『ウォーターショック』 河出書房新社 中村靖彦(08) 『ウォータービジネス』 岩波新書 【世界市民】「水」問題を考える ジャーナリスト系の参照文献 ●ロイト(10) 『ウォーターショック』 河出書房新社 中村靖彦(08) 『ウォータービジネス』 岩波新書 その他日本のミネラルウォーター事情 日本天然水研究会(06)『知識ゼロからのミネラルウォーター入門』 幻冬舎 松下和弘(08)『最新ミネラルウォーター完全ガイド』 だいわ文庫 注: 容器入り飲料水=Bottled Water ≒日本: ミネラルウォーター(類) ≒ ボトル入り飲料水 But ≠ ヨーロッパの「ミネラル ウォーター」
美味しい水の選択の自由か パターナリズムか? 美味しい??? ミネラルウォーター類 水が自由財 であった頃・地域の「昔の日本」 生存には,豊富な自然の水が前提 人口増・都市化 混雑・汚染 <S6>私的財・独占・共有資源 美味しい水が私的財 になった「現代の日本」 所得制約下で,水道水や他の飲料から「自由に選択」可能 2ℓ\150 / 東京水道\0.5 = 300倍 <S3> トレードオフ:機会費用 ∴ 自由選択の現状 vs. 現物支給のパターナリズム
★A4 超過需要を支援する補助金の非効率性 ∴社会余剰は,非常に小さい 現実の補助金は,長期的に拡大傾向?(食管政策) ★A4 超過需要を支援する補助金の非効率性 O A: 「価格=0 超過需要OA」を実現するには? - 政府による「補助金 OABC」が必要 国民からの課税 + 産者余剰 OCB + 消費者余剰 DOA ∴社会余剰は,非常に小さい = DOE ー EAB = DCA 死荷重 = EOD ー 社会余剰 現実の補助金は,長期的に拡大傾向?(食管政策) 数量 価格 需要曲線 供給曲線 O 12 B A C E F D