(3)携帯電話はバリアフリ-のための援助設定か? ITによるバリアフリ-and ITのバリアフリ- バリアフリーのための心理学10 (3)携帯電話はバリアフリ-のための援助設定か? ITによるバリアフリ-and ITのバリアフリ- (樋口宜男先生@情報理工) 望月 昭 コメントは「対人援助学のすすめ」にも http://d.hatena.ne.jp/marumo55/
(復習)バリアフリーの位置づけ ●同化・統合:本人のリハビリテーション ●異化・統合(これが重要):反応形態の 差異のまま、多数派の享受する権利に アクセスを可能にする(accessibility)。 そのために、差異のある反応形態が不利益にならないように「援助設定」を整える作業 (バリアフリー) ●しかし多数派の享受する権利を基準にして良いか?
障害のある人への支援・サービスのありかた 統合 ここが重要! 平等派 同化 異化 差異派 排除 石川准(2000)
●同伴者も車椅子ユーザに「何にする」といった動作を示せば店員もとっさに理解する(同伴者の態度) ●子どもにバリアフリーの意味を教える際、「楽しさ」と障害者の生活に対する困難さに気づくことを両立させるのは難しい。耳栓でジェスチャーゲームをしてもバリアフリーにまで思い至るのか? ●障害者の人にも店員として聞けます。慣れですよ。 ●朝のラッシュ時には運転手も自分も迷惑。 ●手伝おうとしたら怒られた。何もしなかったら怒られた。どうすればいいんじゃ?
http://www. ritsumei. ac http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hs/hs/publication/files/ningen_3/3_037-46.pdf 立命館大学人間科学研究第3巻
コミュニケーションのバリアフリー 基礎ターム ここから新テーマ コミュニケーションのバリアフリー 基礎ターム 0)表出と理解(Expression and Comprehension) 1)トータルコミュニケーションとは? 2)反応形態を学習するための教授の方法 課題分析、全課題呈示法 3)機能を学習するための教授 機会利用型学習法(Incidental Teaching) 4)バリアフリーのための IT, ITのための バリアフリー(http://www.ritsumei.ac.jp/~bfit/) BKC:樋口宣男先生
様々なコミュニケーションモード 口話・手話・カード・各種AAC機器など 様々なコミュニケーションモードがあるが、 それぞれに特徴がある。 極端にいえば、それぞれ文化があるかも知れない 携帯電話はどんな特徴があるか?
携帯電話はTCM? (Total Communication Machine) ●反応形態の「差異」を生める援助機器? AAC:Augmentative and Alternative Communication ●援助設定(行動を成立させるための新たな環境設定)といえるか? ●実は新しいバリア?
文部科学省通知(2008) 文部科学省は全国の学校や教育委員会に対し、携帯電話の取り扱いに関するルールを明確化するよう通知した。具体例の一つとして「小中学校では持ち込みを原則禁止する」という規制案も提示。児童生徒の利用実態把握に努めることや、情報モラル教育を充実させることなども要請した。 通知は7月25日付。都道府県教委などを通じ、小中学校や高校、市町村教委にも周知するよう求めた。携帯電話に関するルールとしては、「校内持ち込み禁止」のほか、「やむを得ない事情で持ち込みが必要と判断される場合もある」として、▽居場所確認や通話機能に(用途を)限定して持ち込み可能とする▽登校後に学校で預かり下校時に返却する--の2例も示した。
ろう学校では、携帯電話をどう考えている? 100 % 予定なし 予定なし 通話機能 メイル機能 50 使用している 試みたい 試みたい 使用している 小 中 高 小 中 高 小 中 高 小 中 高 小 中 高 小 中 高 図1. 聾学校の「重複学級」で、携帯電話の「通話機能」あるいは「メイル機能」をどれくらい使っているか(望月,2002)
図2. 一般には、携帯メールはどのように使われているか? 2000年
携帯が認められたら 携帯電話?
様々な方法による コミュニケーションの特徴 表出モード 理解モード 固定電話 音声 聴覚(揮発・即対) 無線機 音声 聴覚( 〃 ) ファックス 書字・描画 視覚(読字)不揮発 携帯電話(通話) 音声 聴覚(揮発・即対) 携帯メール 文字入力 読字(不揮発) 写メール 撮影 写真の理解(不揮発) 動画メール 撮影 動画理解(不揮発) テレビ電話 撮影 動画理解(揮発・即対)
携帯電話はTCM? ●考えられるメリット 1)自分のペースで確認可能 要議論 2)再現可能なC(不揮発モード) 要議論 3)防犯ベル、GPS、安否メール (管理的デメリット?) 要議論 4)実は、日本語教育にも役立つ のでは(助詞の使い方など日常的に)要議論
1)自分のペースで確認可能 かつて(現在も)パソコン通信時代、この利用については障害のある個人(とくに肢体不自由系)の普及率は高かった。 ・BBS(掲示板)を通じたコミュニケーションは、 「時間遅延」を許す言語行動 (参考文献) 望月昭・正木茂夫(1989): 「BBSネットの開設と運営:愛知県コロニーMARUMONETを例に」.行動分析学研究、4, 57-70.
2)再現可能なコミュニケーションモード コミュニケーションモード? モード:表出の形態 メディア:感覚系としての分類:聴覚・視覚 モード:表出の形態 メディア:感覚系としての分類:聴覚・視覚 ●揮発系モード:表出と同時に消えてしまう (日常的な口話や手話) ●不揮発性モード:痕跡が残る (書字、写真、動画ファックスetc)
3)防犯ベル・GPS・安否メイル 従来の障害のある個人に対する携帯電話の利用についての研究の多くは、地域生活のsafety(安全確保)に関わる研究が多い。 しかし「安全確保」は個人のQOLを拡大と一致するか? 「電源を切る」スキルは教えるべきか? 「リスクを冒す権利」もあるのでは?
4)日本語教育にも役立つ? 携帯電話(メイル)の使用は、教科書などで学ぶ場合と異なり、実際の生活の文脈の中でその内容がシェイプアップされる?
実践的な教授方法を考える 仮想事例: 自閉的傾向もあるろう重複の障害のある聾学校生徒、17歳。 ・一部、書字と文字理解あり。 自閉的傾向もあるろう重複の障害のある聾学校生徒、17歳。 ・一部、書字と文字理解あり。 ・携帯電話を遠隔地ではなく、文字表示をして楽しむ。50音構造は理解している(入力が可能)
実践的な練習問題 1)携帯電話(メイル)をどのような設定の中で具体的に「教授」するか? 2)宿題:携帯電話の受信・送信の操作をどのように教えるか? ・まず操作に関する「課題分析表」を作ってみよう。 ・それに従って「全課題提示法」で援助つきで教授をするための細かい手続きを考える。
課題分析の例 書いてみよう! 以下の表は、高齢者にPCでメイルを送信することを教授するための課題分析表である。 これも参考にしながら携帯電話メイルの課題分析をしてみよう。 書いてみよう!
高齢者におけるPC操作の支援 (課題分析) Mさんの課題分析 : メールを送信する これは、Mさんの「メールを送信する」という目標を達成するために必要な各課題です。 この課題分析が、そのままマニュアルになるようにしています。 斉藤(2001)
聴覚障害と知的障害がある生徒における携帯メールを使用した「おつかい行動」の獲得 濃添晋矢・南 美知代・望月 昭( 2004) 立命館人間科学研究, 7,181-191. http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hs/ningen/NINGEN_7/181-191nozoe.pdf
ケータイメ-ル:どの特性を活かすか? 1)自分のペースで、コミュニケーション 2)「不揮発」な特性を活かして、コミュニケーション(言語行動)の痕跡を繰り返して確認することができる(備忘録機能) (当然ながら)モバイル性 そこで、「お使い」場面
大学 目標行動(おつかい物の追加と取り消し)
研究デザイン プレポストテストデザイン 地域店舗プレテスト 地域店舗ポストテスト シミュレーション場面での訓練 予備訓練
操作訓練(予備訓練) 条件性弁別訓練(見本あわせ)のスタイル 着信(物品名)→4物品から→タッチ→強化 選択
「着信に気づく」:その改善について、行動分析学的な観点から説明せよ! ② 「選択刺激」(実物) ① 「見本刺激」 (メール) 着信信号 開封 りんご 選択 強化
「気づく」「見る」も行動のうち 着信刺激(弁別刺激) 言語刺激(強化) 選択刺激 選択 強化 開封行動(反応) 行動ユニット1 着信刺激(弁別刺激) 言語刺激(強化) 選択刺激 選択 強化 開封行動(反応) 行動ユニット2 条件刺激 弁別刺激 反応 強化 ユニット1,2を維持するのは、この強化
シミュレーション場面の設定 (創思館のトレイニングルーム) 移動中に「追加・取り消し」 文面例:「バナナいりません 佐藤」
実践的問題 「着信に気づく」:その改善について、行動分析学的な観点から説明せよ! この研究で、日常生活の中で、ケータイの持つ特性として、どのようなことが明らかになったか(固定電話やファックスとの違い、ハンドライトのメモとの違い等)?
参考記事 「新しい対人援助と情報通信技術」 望月 昭(文学部教授) 樋口宜男(情報理工学部教授) 「新しい対人援助と情報通信技術」 望月 昭(文学部教授) 樋口宜男(情報理工学部教授) 「学びの交差点」,立命, 230. 立命館大学校友会 http://www.ritsumei.ac.jp/mng/al/report/pdf/230pdf/20_25.pdf