第24回 呼吸運動療法症例検討会 「気管支拡張症」 第24回 呼吸運動療法症例検討会 「気管支拡張症」 大阪市立大学医学部附属病院 第一内科 立石 善隆リハビリテーション部 金尾 顕郎
症例 症 例:60歳 女性 診断名:sinobronchial syndrome 気管支拡張症 慢性呼吸不全 うつ病 主 訴:安静時呼吸困難 症 例:60歳 女性 診断名:sinobronchial syndrome 気管支拡張症 慢性呼吸不全 うつ病 主 訴:安静時呼吸困難 喀痰量増加
現病歴 1 43歳時より、肺炎のため近医で入院加療 した。その後も咳嗽、喀痰排出が続き、46歳 時気管支拡張と診断された。 現病歴 1 43歳時より、肺炎のため近医で入院加療 した。その後も咳嗽、喀痰排出が続き、46歳 時気管支拡張と診断された。 47歳時より当院外来通院を開始し、マクロラ イド少量長期投与、抗コリン剤吸入、β2刺激 剤の貼布と去痰剤内服を続けた。 当院通院当初より、喀痰培養から多剤耐性緑 膿菌を検出した。
現病歴 2 しかし、呼吸状態は徐々に悪化し、 53歳時より SpO2 94%(room air)となり、 56歳時にHOT導入 現病歴 2 しかし、呼吸状態は徐々に悪化し、 53歳時より SpO2 94%(room air)となり、 56歳時にHOT導入 (安静時1l/min、労作時2l/min)し、その後、安静時 2l/min、労作時3l/minとなった。急性肺炎のため入院 加療を行った際には、CEPM 2g/day点滴の後、BIPM 0.6 g/day点滴を施行した。 今回、57歳時より、呼吸困難増悪と喀痰量増加(黄 緑色粘稠痰)、及びうつ状態の悪化のため、当院に入 院となった。
その他 既往歴:46歳時、慢性副鼻腔炎手術、57歳時、うつ病(内服加療) 喫煙歴:なし 身体所見:意識清明、BP 134/80 mmHg、PR 110/min(規則的)、RR 30/min、補助呼吸筋使用著明。 眼瞼結膜貧血なし、眼球結膜黄疸無し、心音正常、心雑音聴取せず。 呼吸音:右下肺で呼吸音減弱、全肺野でcoarse crackle、wheezeを聴取。 腹部異常所見なし、下腿浮腫を認めず。
血液所見 WBC 10600/mm3 RBC 439x104/mm3, Hb 13.4 g/dl, Ht 41.3%, (白血球分画 Eos.0.7%, Seg.75.9%, Ly.16.2%, Mono.6.8%), RBC 439x104/mm3, Hb 13.4 g/dl, Ht 41.3%, Plt 24.4x104/mm3 ,TP 7.7 g/dl, Alb 3.8 g/dl, T-Bil 0.4 mg/dl, AST 25 IU/l, ALT 18 IU/l, ALP 231 IU/l, CHE 513 IU/l, LDH 421 IU/l, γ-GTP 13 IU/l, BUN 12 mg/dl, CRE 0.58 mg/dl, UA 3.1 mg/dl, Na 140 mEq/l, K 4.2 mEq/l, Cl 97 mEq/l,CRP 0.7 mg/dl.
所 見 血液ガス(O2 5l/min経鼻): pH 7.359 PCO2 66.5 mmHg PO2 58 mmHg 所 見 血液ガス(O2 5l/min経鼻): pH 7.359 PCO2 66.5 mmHg PO2 58 mmHg HCO3 36.5 mEq/l BE 9.0 mEq/l SaO2 89.9 % 呼吸機能検査 VC 2.43 L(35.4%) FVC 2.43(35.4%) FEV1.00 0.61 L(35.3%) FEV1.0% 70.93 % 心電図:臥位をとれないため施行せず
入院後経過 入院6日目の血液ガスデータ上、低酸素血症の 悪化がみられたため(O2 5l/min経鼻でpH 7.404, 入院6日目の血液ガスデータ上、低酸素血症の 悪化がみられたため(O2 5l/min経鼻でpH 7.404, PCO2 57.1 mmHg, PO2 49 mmHg, HCO3 35.0 mEq/l, BE 8.7 mEq/l, SaO2 86.8 %)、NIPPV をO2 6l/min、STモード、IPAP 7cmH2O、EPAP 4 cmH2Oで導入し、翌日にはpH 7.341, PCO2 67.8 mmHg, PO2 71 mmHg, HCO3 35.7 mEq/l, BE 8.1 mEq/l, SaO2 94.0 %に改善した。入院6日目より、 NIPPV使用下の排痰訓練も開始した。
55歳時
56歳時(HOT導入時) pH 7.439 PaCO2 39 PaO2 59 O2投与量 3㍑/min
pH 7.365 PaCO2 49.8 PaO2 64 O2投与量 3㍑/min 56歳時
pH 7.359 PaCO2 66.5 PaO2 58 O2投与量 5㍑/min 57歳時(今回入院時)
呼吸理学療法 前 呼吸理学療法 後
呼吸理学療法 前 呼吸理学療法 後
呼吸理学療法の目的と方法 目的 1)胸郭の柔軟性の改善 2)呼吸パターンの改善 3)排痰 方法 1)上部胸郭からの呼吸介助法 1)胸郭の柔軟性の改善 2)呼吸パターンの改善 3)排痰 方法 1)上部胸郭からの呼吸介助法 2)Squeezing 3)上肢運動
呼吸介助による無気肺改善メカニズム 宮川哲夫氏資料より
呼吸介助による無気肺改善メカニズム ①痰が気管支を閉塞し、肺胞が虚脱している ②吸気時に気管支が拡張し、吸気圧・吸気流速・吸気量が増大する ③Critical opening pressure を超えると、閉塞した痰が破れて、 肺胞に空気が入る a.粘稠な痰で、付着力が凝集力より小さい場合 b.粘性が低い痰で、付着力が凝集力より大きい場合 ④虚脱した肺胞が膨らみ、呼気流速で痰が押し出される 宮川哲夫氏資料より
痰の変化と胸部への刺激 チクソトロピー現象 痰が攪拌されると粘調度が下がり流れやすくなる。 それを放置すると再び粘調度が戻る。 この等温可逆的なゾル・ゲル交換をいう。 Squeezing,kneading 粘調度が低い 流れやすい痰 流れやすい痰 粘調度が高い 流れにくい痰 放置 坂本恵子
肺胞→気管支 体位排痰 排痰介助 (Squeezing,etc) 肺胞 呼吸介助 口すぼめ呼吸 換気の改善 坂本恵子
気管支→気管(上気道) 咳で喀出できる気流量が生じるのは中枢部の気管支 (第5~6分岐)から上の上気道にかけての領域に限られる。 坂本恵子 咳で喀出できる気流量が生じるのは中枢部の気管支 (第5~6分岐)から上の上気道にかけての領域に限られる。 坂本恵子 坂本恵子 坂本恵子
痰は下にたまる 空気がなければ移動しない
溜まった分泌物を 残らず出すには この空気を利用しましょう
出 た !