2015年春学期         「現代の経営」          第5回 多国籍企業 樋口徹.

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                2015年春学期         「現代の経営」          第5回 多国籍企業 樋口徹

グローバル市場へのアプローチの仕方 企業が全世界的に販売活動を行う目的は利益を増やす(獲得す る)ためあるいは利益を安定させるためである。 海外市場へのアプローチ(市場戦略;販売の仕方)は、グローバ ル市場の捉え方によって異なる。 「 標準化 (方針・戦略)」・・・製品やサービスが世界的に 共通で世界的なブランド力があれば有効。同じ製品を 大量生産できるので生産コストが安くなる。サービスで はマニュアルによって全世界的にサービス水準を保証 「 現地化 (方針・戦略)」・・・各国ごとの市場の嗜好が異 なる場合に採用。自然環境や文化的な違いが製品の嗜 好に大きな影響を与える場合がある。 ※グローバル競争では、標準化(世界共通)と現地化する部分の比率や 組み合わせが重要となる。

企業の主な海外進出形態 形態 説明 取引による進出 輸出 間接輸出 委託販売業者(他社)が輸出担当(投資不要だが、情報収集は困難) 直接輸出 自社で輸出(投資要、情報収集可能;将来、海外生産に移行する場合ある) ライセンス供与 ライセンシング 他企業に、自社の特許、商標、技術等の使用を認める契約(技術流出危惧) フランチャイジング 現地運営の細かい規則を課し、ブランドの使用を許可(出資者を募る) 直接投資による進出 合弁 複数企業で会社を設立(現地市場へのアクセスが容易だが、技術流出危惧) 完全所有子会社 単独で会社設立(自前で一から立ち上げる場合と買収による場合がある)

多国籍企業(multinational company) 多国籍企業とは、複数の国・地域に(海外)直接投資を行い、 少 なくても2カ国以上の国で生産活動や販売活動を行ってい る巨大企業を意味するのが一般的である。   ※多国籍企業の認定基準には、5か以上の国や地域で本格的に活動す ることとか、売上高で全世界500位以内とか様々な基準が存在する。 一般的な発展形態は、 (海外直接投資は行わずに)  国内企業 として発展し、 生産コストを引き下げるために、海外生産や調達を本格 化させ(製造拠点を海外に設立)、 売り上げを増やすあるいは安定させるために、海外市場 を本格的に開拓(販売子会社などを海外に設立 )する。 ※販売先を先に多国籍化(国際化)してから、生産拠点を移転させる 場合もある。

海外直接投資 直接投資 は、投資者が、資本および技術の提供を通じて、 自ら経営に参加するような投資のことを意味する。 直接投資 は、投資者が、資本および技術の提供を通じて、 自ら経営に参加するような投資のことを意味する。     ※有価証券を市場で入手する形の間接投資に対する言葉 海外+直接投資⇒海外直接投資(海外での直接投資活動) 具体的には、 自社の優位性あるいは経営資源を地球規模でどのように活 用するのかを考え、 自社で行うこと(海外直接投資)が良いのか、市場(購入)や 他社を利用すること(戦略的提携や間接投資)が良いのかの 意思決定を行う。

直接投資(IMFの定義) 海外直接投資(海外への直接投資)に関して、IMF(国際通貨基 金)の国際投資マニュアルでは、親会社が投資先会社の株 式や議決権の10%以上を保有する投資と定義している。  ※親会社が投資先会社の株式や議決権の10%以上を保有した場合、影響 力が強まり、支配権が発生する可能性があるからである。 (米国) (日本国内) (中国) 直接投資 B社の株式や議決権の10%以上 米国企業C社 日本企業A社 中国企業B社 10%未満なら間接投資

多国籍企業(multinational company) 多国籍企業 とは、複数の国・地域に(海外)直接投資を行い、 少なくても2カ国以上の国で生産活動や販売活動を行ってい る巨大企業を意味するのが一般的である。   ※多国籍企業の認定基準には、5か以上の国や地域で本格的に活動するこ ととか、売上高で全世界500位以内とか様々な基準が存在する。 一般的な発展形態は、 (海外直接投資は行わずに) 国内企業 として発展し、 生産 コスト を引き下げるために、海外生産や調達を本格 化させ(製造拠点を海外に設立)、 売り上げを増やすあるいは安定させるために、海外 市場 を本格的に開拓(販売子会社などを海外に設立 )する。 ※販売先を先に多国籍化(国際化)してから、生産拠点を移転させる場 合もある。

国際経営組織の展開 多い 世界的製品別事業部 グローバル・ マトリクス組織 海外製品の種類 国際事業部 世界的地域別事業部 少ない 小さい      海外売上高の割合      大きい (出所)Galbraith, J. R. and D. A., Nathanson, Strategy Implementation: The Role of Structure and Process, West Publishing Co., 1978.(岸田民樹訳『経営戦略とを組織デザイン』白桃書房、1989年、P.48)

ある会社のグローバル・マトリクス組織のイメージ 地域別事業部 製品別事業部 中国 韓国 ベトナム エアコン事業部 ★ 映像機器事業部 冷蔵庫事業部 ・ ★印はベトナムにあるエアコン事業部で、世界的なエアコン事業部(長)とベトナム地域の事業部(長)の指示を受け活動を行う( ボス が2人いる:ツーボス)。

多国籍企業の分類(ERPGプロフィール) 親会社と海外子会社の関係を以下の3要素を中心に4分類  ・意思決定権限(誰がどこまできめられるのか?)  ・人事(採用権限は誰が持っているのか?)  ・コミュニケーション(指示・命令が中心なのか?)  国内 志向(E: ethnocentric) 現地 志向(P: polycentric) 地域 志向(R: regiocentric) 世界 志向(G: geocntric) D. A. ヒーナン & H. V. パールミュッター著、江夏健一監訳『多 国籍企業-国際化のための組織開発』文眞堂、1982年

多国籍企業の分類(ERPGプロフィール) 意思決定権限 人事 コミュニケーション 国内志向(E: ethnocentric) 重要な意思決定は 本社 重要な役職者は本社から人材を派遣 本社 から指示・命令が多い 現地志向(P: polycentric) 日常的 な権限は子会社に移行(財務や研究開発は除く) 現地の主要ポストは 現地 採用(本社への影響は小さい) 重要事項のみが指示・命令される 地域志向(R: regiocentric) 重要な意思決定は地域本部あるいは海外子会社間で協議 人材の採用、訓練、評価、配置が 地域 ベースで展開 地域 内のコミュニケーション活発化 世界志向(G: geocntric) 世界的視点での資源配分の最適化(適宜) 主要ポストは 世界中 から登用 本社と海外子会社が 有機的統合

多国籍企業のERPG各タイプの位置 分散管理 世界志向 現地志向 (G: geocntric) (P: polycentric) 集中管理 本社主導                  現地主導 地域志向 (R: regiocentric) 国内志向 (E: ethnocentric) 典型的な発展パターン     国内志向(E)⇒現地志向(P)⇒世界志向(G) ※ 例外的な発展パターン     国内志向(E)⇒現地志向(P)⇒ 地域 志向(R)⇒世界志向(G)

バートレットとゴシャールによる多国籍企業の類型整理 ① インターナショナル 型 本国での「 技術革新」が経営戦略の基本となっている。 本国にある本社が海外拠点を統括し、 「遠隔地の前線基地」 として扱っている。 ※本国が中心で、海外拠点の重要度は低い。 本国 B国 A国 指示・命令 指示・命令 生産拠点 本社 販売拠点 技術革新

海外拠点を独立した企業として扱う(人材の現地化が進む) ※個別に対応するので、経営資源の共有ができずに、効率が低下する ことが危惧される。 ② マルチナショナル 型 「差別化」が経営戦略の基本にある。 各国や地域の市場に適応する。 海外拠点を独立した企業として扱う(人材の現地化が進む)  ※個別に対応するので、経営資源の共有ができずに、効率が低下する ことが危惧される。 本国 A国 B国 支社 本社 支社 個別対応 個別対応 個別対応

消費者の選好を標準的なものとみなしている。 本社が研究開発と製造に対応し、世界の市場に向け、共通 製品を販売する。 ③ グローバル 型 「効率化」が経営戦略の基本にある。 消費者の選好を標準的なものとみなしている。 本社が研究開発と製造に対応し、世界の市場に向け、共通 製品を販売する。 本国 本社 本国 A国/本国 A国 研究 開発 指示・命令 本社 生産拠点 販売拠点 B国 販売拠点

「効率性」と「適応性」の同時実現を目的とする。 経営資源と権限は世界規模で拡散されている。 ④ トランスナショナル 型 「効率性」と「適応性」の同時実現を目的とする。 経営資源と権限は世界規模で拡散されている。 世界規模の ネットワーク 網(拡散した資源)を運用する。 本国 本社 A国 B国 支社 支社 個別対応 個別対応

多国籍企業の整理 アメリカ 企業に多い 欧州 企業に多い 日本 企業に多い 狙う効果 現地への権限移譲 該当する国や地域の企業 インターナショナル型 本国の技術革新の活用 本国集中 アメリカ 企業に多い マルチナショナル型 差別化 現地に委譲  欧州 企業に多い グローバル型 効率化  日本 企業に多い トランスナショナル型 効率化と差別化を同時追求 理想的

I-Rフレームワーク(Integration-Responsiveness) プラハラードとドーズが提唱した産業、製品、機能、サービスなどの属性を標準化と現地化の視点から整理したもの 高(製造が難しく、国際的 な分業体制構築が必要) 電子部品 (組立型) 自動車 (気候の影響有) I( グローバル統合 の必要性=連携体制) 製造の難しさ 食品 (気候や文化の影響大) セメント (単純な製造工程) 高 R(反応性;現地適応の 必要性= 現地化 ) 低 産業、製品、機能、サービス属性に合わせた組織体制が大切で あり、特に、規模の経済を活用できるかも重要となる。 ※技術進歩、規制、消費者の変化などによって、 I-Rフレームワーク上の位 置が変化することもある。