TTF骨格を配位子に用いた 分子性磁性体の開発 分子科学研究所 西條 純一.

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学年   名列    名前 物理化学 第2章 2-1、2-2 Ver. 2.0 福井工業大学  原 道寛 HARA2005.
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TTF骨格を配位子に用いた 分子性磁性体の開発 分子科学研究所 西條 純一

Introduction

分子性磁性体 ・低次元磁性体など特徴的な物性 ・分子の設計性による物性のコントロール ・置換基による複合物性化 といった優れた特徴を持つ  ・低次元磁性体など特徴的な物性  ・分子の設計性による物性のコントロール  ・置換基による複合物性化    といった優れた特徴を持つ その一方で,  ・分子間での相互作用が弱い(事が多い)        という点が大きな弱点 相互作用を強くする手法の開発が重要 1分

(大きなスピン + 軌道による強い相互作用) 遷移金属錯体と安定ラジカルに注目 遷移金属錯体 ラジカル 両者の特徴を併せ持った磁性分子 (大きなスピン + 軌道による強い相互作用) を作ることは出来ないか? 遷移金属錯体とラジカルを組み合わせた 新規錯体を開発 2分30秒 ○大きなスピンが可能 ×配位子で間接的に相互作用 ×配位子上でのスピン密度が   低い(事が多い) ×スピンはほとんどが1/2 ○スピンが直接相互作用 ○スタックによる非常に強い   相互作用が可能

[CrCyclam(CCMeEDT-TTF)2]+ 【エチニル基】 強い分子内相互作用 【TTF系分子】 酸化によりラジカル化 での強い分子間相互作用 【遷移金属錯体】 S = 3/2の大きなスピン 4分 ・遷移金属に由来する大きなスピン 今回,この新規錯体を合成,電解により磁性結晶 を得たので,その構造と物性を報告する. 将来的には,磁性-伝導複合系の構築も ・スタックによる強い分子「間」相互作用 ・CC三重結合による,強い分子「内」相互作用

Experimental

最終的な錯体は,Cr3+(S = 3/2)に中性のTTF分子が配位したモノカチオン 合成 4分30秒 最終的な錯体は,Cr3+(S = 3/2)に中性のTTF分子が配位したモノカチオン

[CrCyclam(CCMeEDT-TTF)2]OTf   対アニオン    [BF4]-,  [ClO4]-,  [ReO4]-  ([PF6]-) アニオンサイズ (小) (大) Bu4N[Anion] [CrCyclam(CCMeEDT-TTF)2]OTf + Bu4N[Anion] PhCl + MeCN (1:1) ~0.6 A, 1-3 weeks 5分30秒 電解酸化により,部分酸化塩   [CrCyclam(CCMeEDT-TTF)2][X]2(PhCl)2(MeCN) の単結晶を得る. ただし,[PF6]-塩に関しては脱溶媒による崩壊が速く, 良質な結晶を得る事は出来ていない.

結晶構造と磁性

[CrCyclam(CCMeEDT-TTF)2][X]2(PhCl)2(MeCN) b a c o o 7分 TTF骨格の二量体 (二量体で+1価) b o a

構造の特徴と,推定される磁気構造 ・ 強いスタック: スピンが分子間で非局在化 スピンを隣接分子が共有し,一体のスピン系に ・Cr3+(S = 3/2)とTTF二量体(S = 1/2)が交互に配置 分子“内”での強い相互作用が期待できる フェリ鎖が磁気的な基本構造 ・鎖間では二量体間に弱い接触 7分30秒

かなり高い転移温度(強い鎖内相互作用に由来) 磁気特性(無配向試料) 1次元フェリ鎖 + 鎖間分子場 のモデルでフィッティング エチニル基を介した 鎖内(分子内)相互作用 2J ~ -30 K 9分弱 23 ~ 17 KあたりにTの飛び  磁気転移 鎖間の実効的な相互作用    2J ~ -1.9 K([BF4]-,[ClO4]-)    2J ~ -1.4K([ReO4]-) かなり高い転移温度(強い鎖内相互作用に由来)

磁気転移の詳細1:磁化過程(配向試料,[ClO4]-塩) 9分30秒 c-axis (容易軸) TTF骨格の影響? スピンフロップ,小さな残留磁化  弱強磁性体

磁気転移の詳細2:残留磁化の温度依存 アニオン [BF4]- [ClO4]- [ReO4]- アニオンサイズ 小 < 中 < 大 [PF6]-塩のおおよその挙動 (ただし再現性に難あり) 10分30秒 アニオン [BF4]- [ClO4]- [ReO4]- アニオンサイズ 小   <  中   <   大 転移温度 23 K   > 22 K   >  17 K 残留磁化(1.8 K)  0.009 B <  0.015 B < 0.018 B

弱強磁性の起源

弱強磁性の起源: Single Ion Anisotropyで説明可能 C2軸 11分30秒 自発磁化

アニオンサイズとの関係 二量体間S-S接触の距離 アニオンサイズが大きくなると 鎖間距離が伸びる [BF4]-: 3.827 Å [ClO4]-: 3.854 Å [ReO4]-: 3.911 Å アニオンサイズが大きくなると 鎖間距離が伸びる

観測結果と定性的に一致 自発磁化大 低い転移温度 自発磁化小 高い転移温度 小さいアニオン 大きいアニオン 鎖間相互作用 強 (反平行に近づく) 大きいアニオン 鎖間相互作用 弱 自発磁化大 & 低い転移温度 自発磁化小 & 高い転移温度 12分30秒 観測結果と定性的に一致

Conclusion

まとめ ・TTF骨格が配位した新規磁性アセチリド錯体を合成 Cr3+のS = 3/2のスピン 強い分子内-d相互作用(2J ~ -30 K)     スタックによる隣接分子間での二量化 → 強い分子間相互作用の実現 19~23 Kで弱強磁性転移 ラジカル配位子 13分弱 大きなスピン スタックによる強い分子間相互作用

ラジカルによる分子間でのネットワーク化 遷移金属イオンによる大きなスピン と ラジカルによる分子間でのネットワーク化 を併せ持つ新規磁性体を開発 今後,さらなる物質開発を行い ・分子間相互作用の強い磁性体 ・伝導と磁性が共存・相互作用する系 の構築を目指す. 13分

可逆的な二段階の酸化還元:TTF骨格の性質は失われていない 電気化学的性質 + + 可逆的な二段階の酸化還元:TTF骨格の性質は失われていない

ESR ・Single Lorentzian ・磁気転移点で発散  → 強磁性成分はバルクの性質    (不純物由来ではない)

伝導カラムの構築は可能か? [CrCyclam(CCMeEDT-TTF)2]2(OTf) 1次元伝導カラムなら可能性あり

TTP化など系の拡大による積層性の向上 ・接触面積の増大 ・CrCyclam部位の比率が低下