東大・東工大CubeSat Project 報告 ~超小型衛星による学生の宇宙への挑戦~

Slides:



Advertisements
Similar presentations
災害に強い通信 1.電気通信の対応状況 2.大震災の概要 3.将来の災害対応通信 4.災害時における通信への要望・条件 5.災害に強い通信システムの提案 2014.5.31 立川 敬二.
Advertisements

1 若者の夢を育む工学教育 (財 ) 日本無線協会 参与 芝浦工大 非常勤講師 都立航空高専 元校長 島田 一雄
Linuxを組み込んだマイコンによる 遠隔監視システムの開発
反射波が支配的な状況下でのマルチパス誤差低減
北大における Super-SINET 接続と利用: 2004 年度報告
(Precipitation Radar)
DECIGO pathfinder の 試験マス制御系の開発(2)
国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
磁気トルカ較正試験結果 宇宙機ダイナミクス研究室 D2 宮田 喜久子.
金星への相乗り衛星「UNITEC-1」 UNISEC Technology Experiment Carrier – 1
GPS観測 2006年度地球観測実習 ~新しい可能性を求めて~     新井隆太 大久保忠博 米田朝美        担当教官 宮崎真一.
『どこでも運用システム』の開発状況 (第二報) iPad版衛星状態監視システム (プロトタイプ) どこでも運用システムと他システムとの接続
筑波大学衛星と教育との関わり 筑波大学 保田敦司 「小型衛星の科学教育利用を考える会」 2015/08/22.
神岡宇宙素粒子研究施設の将来 Future of the Kamioka Observatory
e-nuvo BMS リチウムオン電池実験キット 特徴 用途 仕様 価格(税別)
2008年度CANSAT活動報告 (Team SCOREs)
全天X線監視装置(MAXI)の 地上処理システムの現状 小浜 光洋、三原 建弘(理化学研究所)、佐藤俊宏、小笠原 直進、
修士二年 宮﨑一樹 鶴田佳宏,加藤貴裕,永峰健太,上津原正彦,眞庭知成
USB2.0対応PICを用いたデータロガーの製作
携帯端末による 海洋情報グラフ表示システム
画像工学 2011年10月6日 担当教員 北川 輝彦.
スペース重力波アンテナ(DECIGO)WG第4回ミーティング (2006年05月11日 国立天文台, 東京)
高周波観測 大田 泉 (甲南大学理工学部) 空気シャワー電波観測ワークショップ2014@甲南大
LCGT Collaboration Meeting (2010年2月15日)
宇宙での重力波観測 (1) 宇宙での重力波観測 宇宙で観測するメリット : 他にはないサイエンスがある
サーボ機構製作 ~マイコンカーのステアリング機構~
2015年10月10日 WASA50周年記念報告会 電装プロジェクト 活動報告 電装プロジェクト 代表 杉山 拓弥.
2m電波望遠鏡の製作と 中性水素21cm線の検出
産業協力情報授業プロジェクト 宇宙と先進情報技術 ~GPSの活用~ 2時限目
アマチュア無線家が小型衛星に 期待することについて
スペース重力波アンテナ(DECIGO)WG第4回ミーティング (2006年05月11日 国立天文台, 東京)
フィールドセンシング Field Sensing Technologies
画像工学 2012年10月3日 担当教員 北川 輝彦.
第8週 高精度GPSの構築 位相測位の原理 通信システムの構築.
①浮上(RTB準備)→ 圧力センサー(水深)
ーJapan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration-
Cute-1.7プロジェクト ミッションシナリオ ( 更新)
(GAmma-ray burst Polarimeter : GAP)
第2回 GPS測位の原理 衛星測位の原理 GPS衛星システム GPSの信号システム GPSの測位方式.
柔軟エアロシェルと柔軟翼航空機を利用した
小型地球観測衛星 「雷神2」完成報告記者発表
DECIGO pathfinderのための 試験マスモジュールの構造設計・解析
University Space Systems Symposium 2003
九州気候区の高専における太陽光発電 ◯葉山清輝,大山英典 (熊本電波高専) 中川重康 (舞鶴高専) 仲野 巧 (豊田高専)
第6回 高精度GPSの構築 位相測位の原理 通信システムの構築.
『超小型高出力パルスレーザーの応用・レーザー製品化に関する募集』公募
MEMSセンサを用いたINS/GPS複合航法システム
DECIGOパスファインダー検討会 (2007年10月05日, 東京大学, 本郷)
サンテクノ技術セミナー 高周波技術入門 講座テキスト その1 平成18年6月2日.
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
小型衛星パスファインダーによる総合的試験
Nano-JASMINE計画 ー 超小型衛星によるミリ秒角アストロメトリサーベイ ー
京都大学理学研究科 中村卓史 2006年2月24日 国立天文台
特定実験試験局制度 平成30年7月1日 北海道総合通信局 無線通信部 企画調整課.
1.新ISS組立てシーケンス 2.MAXIのシャトル打上げについて
南極観測支援衛星 「はやて」の概念設計 Concept Design of HAYATE
並列処理プロセッサTPCOREの 組み込みシステムへの応用 理工学研究科数理情報科学専攻 福永 力,岩波智史,情報システム研究室.
GPSハッキングとGPS信号の弱点 信号が微弱 2万km彼方に100Wの電球があるのと同じレベル
超小型航空機における 位置および姿勢の同定
緊急地震速報の消防防災分野での活用に関する検討懇談会 市町村防災行政無線(同報系)による 緊急地震速報伝達システムの実証実験
総務省総合通信基盤局電波部 国際周波数政策室 平成19年12月9日
JASMINEワークショップ March 6-7,2003 松原英雄(宇宙研)
GSTOS コマンド計画検証ソフトウェアの開発
低軌道周回衛星における インターネット構築に関する研究
DECIGO Workshop DECIGO:衛星設計/検討の進め方 JAXA宇宙科学研究本部 船木一幸.
INDEX衛星によるオーロラ微細構造のin-situ観測
宇宙重力波干渉計検討会 -小型衛星とDECIGO- (2006年02月24日 国立天文台, 東京)
(GAmma-ray burst Polarimeter : GAP)
MACFT3 Review Meeting CONTENTS 進捗状況報告.
ASTE望遠鏡を用いたVLBI観測の ための超伝導230GHz帯受信機開発
Presentation transcript:

東大・東工大CubeSat Project 報告 ~超小型衛星による学生の宇宙への挑戦~ 2003.7.10 UNISEC設立総会

1999年USSSにてStanford大Twiggs教授の提唱 超小型衛星CubeSatの概要 1999年USSSにてStanford大Twiggs教授の提唱 10cm立方,1kgの標準サイズの超小型衛星 各大学独自の製作と共同での打上げ目指す 宇宙工学教育が第一の目的 学生が衛星プロジェクト1サイクル(ミッションの構想、設計,製作、試験、打ち上げ、運用)を短期に経験する(1,2年で) 作ったものの現実世界からのフィードバックを得る 学生主導:プロジェクトマネジメントの生きた鍛錬 教育を超えた狙い:新しい宇宙開発への挑戦 民生品利用,短期開発により「しきい」を根本的に下げる. 新規技術の大胆な実験,新しい宇宙利用の試行を手軽に

60以上の大学,ベンチャー,宇宙機関による開発 世界の CubeSat 開発の動向 60以上の大学,ベンチャー,宇宙機関による開発 小型衛星で新しい技術(シーズ)を開発し、その中から有意義なものを宇宙機関等で本当に使えるものに発展させる (技術発掘・開発の場として) 新規技術の迅速・低コストの宇宙実証(実験の場として) 超小型衛星のまま実ミッションに適用(ビジネスとして) 具体例 (CubeSatシンポジウムなどより) 地震予知のための電磁気観測(QUAKESAT) NASAによるバイオ関連の実験への応用 MEMS関連技術の軌道上実証実験 個人的な目的のため,など 東大・東工大CubeSatは初期に完成,最初の打上げ

技術背景: CanSats 1999-2002

東大・東工大CubeSat開発の経緯 1999.11 USSSにてプロジェクト化決定 2000 概念検討フェーズ (2000.11 USSSでBBMデモ) 2001.2 OSSSと打上げ契約 (2002.11打上げ予定に) 2001.3 経済産業省より一般包括輸出許可取得 2001.4 PDRと詳細設計・EM製作開始 2001.5 三陸での気球実験(バス機能確認,通信実験) 2001.9 打上げ延期決定,その後何度も順延 2002頭 CubeSat完成,独自に打ち上げ手段探索続ける 2002.9-12 EUROCKOT社へ打診,モスクワ会議で打上げ決定 2003.1 EUROCKOT社との打上げ契約 2003.3 衛星登録手続き(Spacewarnと文部科学省) 2003.4~6 衛星局申請と免許取得(JARL,JAMSATの協力)→7/8に本免許交付 2003.6.30 3週間のPlesetskでの作業の後,打上げ!!

打上げ:MOM (Multiple Orbit Mission) ROCKOT 打上げ 日時:2003 6/30 23:15:26 (JST)場所: Plesetsk 軌道: 830km SSO Eurockot Launch Vehicle Provider other satellites CalPoly Separation System Developer CubeSat & Separation System Developer U of Tokyo Tokyo Inst. Tech. 60kg級 Standford Univ. U of Toronto Aalborg Univ. CubeSat Developer 上段ロケットBREEZEーKM により8個の衛星を順次分離

東京大学CubeSat “XI(サイ)”

衛星の概要 ●構造 10cm 立方, 1kg, アルミニウム(A7075) ●メインCPU OBC PIC16F877 4MHz(プログラムメモリ 8k, RAM 368) 記憶装置 EEPROM 32k + 224k ●通信系 ダウンリンク 437.490MHz, FSK, AX.25, 1200bps, 600mW アップリンク 145MHz帯, FSK, AX.25, 1200bps ビーコン 436.8475MHz, CW, 100mW ●電源系 バッテリ リチウムーイオン(マンガンタイプ), 8 並列 太陽電池 単結晶シリコン, 60 セル バス電圧 5V ●姿勢制御   永久磁石を用いた受動制御 ●搭載センサー 電圧、電流、温度、カメラ

分離から起動まで 1. 2. 3. ■T-PODから分離後 ■分離から一定時間後 ■テレメトリのダウンリンク メインコンピュータのみON. 他は一定時間OFFで待機 . ■分離から一定時間後 アンテナが展開(ニクロム線で) すべての系がON. ビーコンの通信始まる。テレメトリのダウンリンクのみ、コマンドを待って待機。 ■テレメトリのダウンリンク 地上からのアップリンクコマンドで要求したときだけ、テレメトリがダウンリンクされる

開発の足取り 2000 2001 9 11 1 2 4 Conceptual Design USSS Conference Mission Defined CDR Thermal Vacuum Radiation Test XI-II(BBM) XI-I(BBM) 5 6 9 11 12 Long Range Comm. Test (ISAS Balloon) Vibration Const. Temp. Oven Vacuum XI-IV,V (FM) XI-III(EM) Operation Practice Thermal Vacuum

打上げ作業 L-26 輸出手続@成田空港 L-25 ロシアへ空輸:衛星は機内持込 税関手続き@モスクワ L-19 プレセツクへ列車で移動 作業用クリーンルーム内 L-14 ロケットアダプター搭載 以降は衛星へのアクセス不可 一時期全員がロシアから離れる L-0 打上げ 他の業務との関係で3組9人が短期滞在する形となった NLS1,2(合計4機)は1人が担当

打上げ体制 東大局:運用局, 関係者向け放送 プレス対応 菅平局(電通大):独自に軌道推定 プレセツク:チャットで状況・情報を東大局へ 同時打上げ衛星の地上局間協力 世界のアマチュア無線家に協力依頼

打ち上げ 2003/06/30 18:15:26 (現地時間) XI-IV 宇宙へ!!!

衛星捕捉 23:15 ROCKOT打上げ 0:46 衛星放出 3:00 デンマークよりCW捕捉の報 4:36 菅平局が受信(直後に本郷も受信) 以降順次手順どおりの運用進行中

アマチュア無線家の協力 Plesetsk Denmark Santa Clara CalPoly Lo-Tung Taiwan Dunedin Floridav

アマチュア無線家の協力[2] 継続的に御協力していただきありがとうございます 札幌 菅平電通大局 仙台 養父 長野 氏家 高槻 京都 上尾 和光 倉敷 山口 松戸 北九州 足立 平塚 横浜 大和郡山 宝塚 堺 東大局 厚木 奈良 大分 伊予

軌道推定 予想に反する速さでNORADがデータを取得公開 実際と周波数が完全に一致する軌道はなかなか見つからなかった。 1パス全体にわたって、周波数の計算値と観測値は一致しなくても、その差が一定になる軌道の絞込みに切り替える。 運用時はほぼ一定な周波数のオフセット値をかければ自動的に受信できるようになった。

これまでの運用結果 各種テレメトリを取得 6日4時と14時にOBCが再起動、自律的に診断後最スタート 異常な低温状態を検知するも,過発電状態によるA/D変換の基準値の変動と推定→最尤補正を検討中 6日4時と14時にOBCが再起動、自律的に診断後最スタート SEL検知による防衛機構の発動か? FM送信 日照 日陰

データ配信サービス XI-IVから取得したデータを広く一般の人に提供し,宇宙を身近に感じてもらうことを趣旨としたサービス ステータス・画像をPCあるいは携帯電話へ配信 当初の目標を大きく上回る,約1300人の方からの登録 現在も募集中! http://www.space.t.u-tokyo.ac.jp/ cubesat/mission/datadist/

画像取得ミッション ← 実際に得られた初画像 撮影時のXI-IVの位置 → 白い部分は雲? 太陽? 氷? 青いので,地球を向いたことは確か 白い部分は雲? 太陽? 氷? 青いので,地球を向いたことは確か 撮影時のXI-IVの位置 → 南極上空!!

今後の運用 過発電対策 FM受信率向上 運用・解析の省力化 次の衛星設計への還元 後期ミッション

Contact CubeSat@space.t.u-tokyo.ac.jp http://www.space.t.u-tokyo.ac.jp/cubesat