職業に起因する疾病3 甲田.

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職業に起因する疾病3 甲田

GIO 物理的要因による健康障害について説明できる。

SBO 1. 騒音による健康障害について説明できる。 2. 振動による健康障害について説明できる。 3. 温熱による健康障害について説明できる。 4. 気圧による健康障害について説明できる。

本講義で使用する写真の撮影に当たって協力いただいた労働現場の皆様に感謝いたします。 本講義で使用する労働現場の写真についてはプライバシーや企業秘密等の保持のため自己学習上のHPには掲載しません。 映像は講義の際に脳裏に焼き付けてください。

騒音

音の3要素 周波数は音の高低、単位としてヘルツ(Hz) 音圧は音の大小、単位にはデシベル(dB) 波形は音色

騒音の発生源 工場、建設工事現場 飲食店(カラオケ等の深夜騒音)、小売店(拡声器の使用) 一般生活(ヘッドホン、ピアノ)、道路交通など

騒音の人体影響 疲労の増大 心理的不快感、イライラ、精神集中の困難 3) 吐き気、嘔吐 4) 胃の分泌液の減少、収縮運動の減少 3) 吐き気、嘔吐 4) 胃の分泌液の減少、収縮運動の減少 心血管系への影響、特に血圧の上昇 6) 唾液分泌の減少 7) 自律神経、内分泌系への影響 8) 睡眠妨害

騒音性難聴 騒音に慢性的に曝露されているうちに次第に進行する難聴。 産業現場には多くの騒音発生源があり、その結果生じた難聴は職業性難聴とよばれる。 高音圧レベル、高周波数、長時間暴露であるほど発生率が高い。 コルチ器の有毛細胞の障害であり、感音性難聴に分類。

騒音性難聴の経過 4000Hzを中心とした高音域の聴力損失が最初に現れる。 ピアノの一番右端(5)の「ド(C)」の音(C5)。 ドイツ式の音名をとって「C5-dip」と呼ばれている。

騒音性難聴の自覚 日常会話音域は500から2000Hzであるため、早期の聴力低下は自覚がない。 騒音曝露が持続すると4000Hzのみならず2000Hz、1000Hzにおける聴力も低下する。 非可逆的で治療に反応しない。 耳鳴りも伴う。

騒音防止対策 ① 音源対策 ② 伝播経路対策 ③ 受音対策

騒音障害防止のためのガイドライン(H4労働省)

第Ⅰ管理区分 難聴になる危険は大きくない。 当該場所における作業環境の継続的維持に努める。 A測定の平均、B測定ともに85dB未満

第Ⅱ管理区分 施設、設備、作業工程や作業方法をみなおす。 当該場所を標識によって明示する。 必要に応じて防音保護具を着用する。

第Ⅲ管理区分 A測定の平均、B測定のいずれかが90dB以上になる。 施設、設備、作業工程や作業方法をみなおす。 当該場所を標識によって明示する。 必ず耳栓などの防音保護具を着用する。

聴覚管理 6か月以内ごとに1回健康診断を行う。 健康診断には、雇入れ時等検査、定期検査、 離職時等検査がある。

健康診断の内容 騒音の曝露歴、現在の騒音作業の内容 騒音レベル、作業時間の調査 耳栓・耳覆い(イヤマフ)など保護具の使用状況 現在の自覚症状としての耳鳴り・難聴の有無 最近の疾患 オージオメーターによる聴力検査 聴力低下者は騒音作業時間の短縮や配置転換措置をおこなう

振動

全身振動 局所振動による障害とは区別 身体は低周波の振動に鋭敏 動揺病(車や船酔い)は低周波の全身振動による一過性の自律神経機能失調状態 バス・トラック等の職業運転手では腰痛や脊椎変形等の筋骨格系疾患、胃・十二指腸潰瘍、月経障害などが指摘

局所振動を発生させる工具 ピストン内蔵工具(打撃工具): 削岩機、エアハンマー、電動ハンマーなど エンジン内蔵工具(可搬式のもの):      削岩機、エアハンマー、電動ハンマーなど エンジン内蔵工具(可搬式のもの):      チェーンソー、刈払機、エンジンカッターなど 振動体内蔵工具:   タイタンパー、バイブレーター、振動シャーなど 回転工具:     スインググラインダー、グラインダー、     カッター 類など 締付工具:     各種エアレンチ

手指末梢血管の収縮(レイノー現象) 寒冷期の早朝、作業の休憩中、また冷雨に濡れるとかにより全身が冷却された時に発作的に手指が蒼白になる。 持続時間は個人により様々だが、多くの場合は5分から15分持続。 発作時には無感覚となり、レイノー現象の消退時に、しびれや疼痛が指に生じる。

運動機能障害 変形性関節症、関節炎 手関節、肘関節の変形がエックス線検査で認められる。

末梢神経障害 指のしびれや触、痛、温度知覚の低下 皮膚の知覚受容体、小神経終末および末梢神経繊維の変性による 肘関節症等のため尺骨神経等が圧迫 尺骨・正中神経麻痺を起こす 手の骨間筋、拇指球筋、小指球筋の萎縮により鷲爪手(ワシ手:claw hand)となる。

検査と予防 冷却負荷による手指末梢循環検査、手指の知覚機能検査 作業時間の短縮、休止時間の設定 検査と予防  冷却負荷による手指末梢循環検査、手指の知覚機能検査 作業時間の短縮、休止時間の設定 防振手袋、防振ハンドルカバー、身体の保温、作業時に発生する騒音対策も必要 作業前後の体操による筋緊張の軽減

温熱          

低温作業 自然環境下の屋外作業:冬季の農林、漁業、建設業 人工的な屋内作業:冷凍、冷蔵庫内の作業、ドライアイス製造、生鮮食品加工作業(近年増加)、オフィス

直接的健康障害 凍瘡(しもやけ)は四肢末端や耳介に生じるかゆみやいたみ。局所的うつ血。 凍傷は四肢末端の組織障害 凍死

間接的健康障害 直接的障害よりも間接的障害が多い。 女性は男性よりも寒冷の影響を受けやすい。 腰痛、気管支炎、神経痛、高血圧、関節リウマチ、レイノー症状

高温作業 金属やガラスの溶解・加工作業、坑内作業、夏季の野外作業等で健康障害が発生。 障害の大きさは、気温だけでなく気湿、気流、輻射熱、さらに代謝による産熱にかかわる作業強度に影響される。

作業環境の指標 湿球黒球温度指数(WBGT指数:wet bulb-globe temperature index )が用いられる 気温、気湿、気流、輻射熱が考慮 太陽直射のある屋外      WBGT=0.7Tw+0.2Tg+0.1Ta 室内     WBGT=0.7Tw+0.3Tg      wは湿球温度、gは黒球温度、aは乾球温度

熱中症 高温や高湿の環境下で起こる全身の熱障害を熱中症といい、暑熱環境に馴化していない時期に多い 。

熱痙攣 電解質を補給しないまま水分だけを摂取することでナトリウムの欠乏状態が生じ、それによって下腿、大腿、腹部などの筋肉の痙攣が起きる。 痛みを伴った筋肉の痙攣。体温の上昇はわずか。処置は、スポーツドリンクなど電解質を加えた飲み物の補給など。

熱虚脱 発汗による脱水と皮膚血管の拡張により循環する血液の量が減少 一時的な脳の虚血状態。 頻脈・血圧低下は認められるが、体温上昇はほとんど無い。

熱射病 体温調節機能が破綻した状態。 異常な体温上昇と興奮、錯乱、痙攣、昏睡などの意識障害。 発汗の停止によって皮膚は乾燥。 手当が遅れればショックや細胞・臓器障害に陥り、死亡する。 一刻も早く医療機関へ搬送する。待機の間、体温を下げるための全身アイシング、バイタルをモニター。

気圧

スクイーズ(締め付け障害) 風邪で耳管狭窄があるときに耳抜きが出来ない場合、外圧が高まるにつれて中耳腔が相対的陰圧となり、鼓膜損傷をおこす。 鼻腔と副鼻腔が何らかの原因で断たれた場合にもおこる。

窒素酔い 高圧では体内への窒素の溶解がすすみ、窒素の麻酔作用が生じる。 判断力が鈍り、更に気圧が上昇すると意識を失う 。 窒素の麻酔作用は、笑気ガス(亜酸化窒素・N2O)が手術時の麻酔に利用。

減圧症(潜函病) 高水圧の潜水作業などから常圧に戻る際に発生 溶解した窒素が急速な減圧に伴ってガス化 小血管内で空気塞栓を生じる 急性と慢性に分けられ、急性を減圧症と呼ぶ。    四肢の関節痛、関節周囲の筋肉の痛み(ベンズ)    脳、脊髄障害、肺障害、胸痛、内耳前庭障害    皮膚の丘疹(皮膚ベンズ)

航空中耳炎 耳管狭窄があるときに飛行機の降下によって、相対的に中耳気圧が下がり生じる。

形成評価試験 1. 騒音性難聴では2000Hzを中心とした聴力損失が最初に現れる。 2. 慢性の騒音による難聴は可逆的である。 3. 騒音レベルが88dBの場合は第Ⅰ管理区分である。 4. 全身振動による健康障害は低周波によるものが多い。 5. 局所振動による障害は末梢循環障害がある。 6. 上肢の局所振動による障害として尺骨神経麻痺がある。 7. 温職場の作業環境管理には湿球黒球温度が用いられる。 8. 女性は男性よりも低温作業に適している。 9. 熱射病では体温は正常である。 10. ベンズは潜水による急速な加圧で生じる。