@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

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Presentation transcript:

@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD 地域における 慢性腎臓病の包括的評価方法 A methodology for evaluating local care and preventing the progression of chronic kidney disease 若杉 三奈子1,2、風間 順一郎3、成田 一衛2 新潟大学 教育研究院 医歯学系 臓器連関研究センター1,2 新潟大学医歯学総合病院 血液浄化療法部3 新潟大学大学院 医歯学総合研究科 腎膠原病内科学分野2 @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD 背景 慢性腎臓病(CKD)は、わが国成人の約8人に1人と 有病率が高く(Imai E et al. Clin Exp Nephrol 2009;13:621-30)、     その対策には医療側からのみでは限界があり、   公衆衛生からのアプローチも不可欠である。 公衆衛生の視点からCKD戦略を立案するためには、地域の現状を評価する必要がある。 @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

CKD有病率と末期腎不全発症率との関係は 単純ではない Hallan SI, Vikse BE. Curr Opin Nephrol Hypertens. 2008 ;17:286-91.より一部改変 CKD有病率(%) @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

CKD有病率と末期腎不全発症率との関係は 単純ではない Hallan SI, Vikse BE. Curr Opin Nephrol Hypertens. 2008 ;17:286-91.より一部改変 末期腎不全の発症率 (1,000,000人年) @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

CKD有病率と末期腎不全発症率の 両者を評価する必要がある 地域における新規透析導入率の評価方法 (性年齢補正を行い全国平均と比較する) (Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67) 地域におけるCKD有病率の評価方法 (Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54) @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD 地域におけるCKD評価方法:2つ  地域における新規透析導入率の評価方法 (性年齢補正を行い全国平均と比較する) (Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67) 地域におけるCKD有病率の評価方法 (Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54) @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

地域における新規透析導入率の評価方法 透析導入時 年齢 男性 透析導入 患者数 男性人口 (全国) 透析導入率 (地域) (歳) 男性 透析導入 患者数 男性人口 (全国) 透析導入率 (10,000人年) (地域) 予測透析導入患者数(地域) <5 8 2 740 000 0.03 48 263 0.1 5-9 3 2 942 000 0.01 53 412 10-14 7 3 040 000 0.02 58 630 15-19 25 3 114 000 0.08 61 681 0.5 20-24 67 3 536 000 0.19 57 125 1.1 25-29 99 3 767 000 0.26 60 973 1.6 30-34 247 4 467 000 0.55 76 029 4.2 35-39 464 4 775 000 0.97 78 666 7.6 40-44 663 4 167 000 1.59 72 436 11.5 45-49 954 3 853 000 2.48 71 954 17.8 50-54 1 468 3 862 000 3.80 80 136 30.5 55-59 2 706 4 828 000 5.60 98 195 55.0 60-64 3 080 4 345 000 7.09 83 423 59.1 65-69 3 413 3 825 000 8.92 71 461 63.8 70-74 3 791 3 199 000 11.85 64 435 76.4 75-79 3 510 2 464 000 14.25 55 286 78.8 80-84 2 426 1 562 000 15.53 38 350 59.6 85-89 950 643 000 14.77 16 070 23.7 90-94 229 235 000 9.74 5 749 5.6 95+ 61 000 4.10 1 485 0.6 Total 24 135 61 424 000 3.93 497.7 Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67

(Nakai S, et al., Ther Apher Dial 2010;14:505-40 ). 地域における新規透析導入率の評価方法 性年齢階級別 透析導入患者数は 日本透析医学会の 論文データから抽出 (Nakai S, et al., Ther Apher Dial 2010;14:505-40 ). 透析 導入時 年齢 (歳) 男性 透析導入患者数 (全国) <5 8 5-9 3 10-14 7 15-19 25 20-24 67 25-29 99 … Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67

TABLE 5. Number of new patients started on dialysis in 2008 according to age and gender Ther Apher Dial 2010;14(6):505–540

地域における新規透析導入率の評価方法 性年齢階級別 全国人口は、 国勢調査より抽出 透析 導入時 年齢 (歳) 男性 透析導入患者数 (全国) 男性人口(全国) <5 8 2 740 000 5-9 3 2 942 000 10-14 7 3 040 000 15-19 25 3 114 000 20-24 67 3 536 000 25-29 99 3 767 000 … Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67

地域における新規透析導入率の評価方法 男性透析導入患者数(全国) 男性透析導入率(全国) = 男性人口(全国) 透析 導入時 年齢 (歳) <5 8 2 740 000 0.03 5-9 3 2 942 000 0.01 10-14 7 3 040 000 0.02 15-19 25 3 114 000 0.08 20-24 67 3 536 000 0.19 25-29 99 3 767 000 0.26 …             男性透析導入患者数(全国) 男性透析導入率(全国) =                 男性人口(全国) Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67

地域における新規透析導入率の評価方法 透析 導入時 年齢 (歳) 男性 透析導入患者数 (全国) 男性人口(全国) 透析導入率 男性人口 (10,000人年) 男性人口 (地域) <5 8 2 740 000 0.03 48 263 5-9 3 2 942 000 0.01 53 412 10-14 7 3 040 000 0.02 58 630 15-19 25 3 114 000 0.08 61 681 20-24 67 3 536 000 0.19 57 125 25-29 99 3 767 000 0.26 60 973 … 地域における性年齢階級別 男性人口は 都道府県の 統計データ より抽出 Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67

地域における新規透析導入率の評価方法 男性予測透析導入患者数(地域) = 男性透析導入率(全国)× 男性人口(地域) 透析 導入時 年齢 (歳) 男性 透析導入患者数 (全国) 男性人口(全国) 透析導入率 (10,000人年) 男性人口 (地域) 予測透析導入患者数 <5 8 2 740 000 0.03 48 263 0.1 5-9 3 2 942 000 0.01 53 412 10-14 7 3 040 000 0.02 58 630 15-19 25 3 114 000 0.08 61 681 0.5 20-24 67 3 536 000 0.19 57 125 1.1 25-29 99 3 767 000 0.26 60 973 1.6 … 男性予測透析導入患者数(地域) = 男性透析導入率(全国)× 男性人口(地域) Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67

地域における新規透析導入率の評価方法 Total 497.7 276.7 774.4 男性予測 透析導入患者数と 女性予測透析導入患者数を 透析導入時 年齢 (歳) 男性 予測透析導入 患者数(地域) 女性 予測 透析導入患者数(地域) <5 0.1 0.3 5-9 10-14 0.5 15-19 0.8 20-24 1.1 1.6 25-29 2.7 30-34 4.2 2.2 6.4 35-39 7.6 3.6 11.2 40-44 11.5 4.7 16.3 45-49 17.8 7.8 25.6 50-54 30.5 12.5 42.9 55-59 55.0 21.8 76.8 60-64 59.1 23.5 82.6 65-69 63.8 29.9 93.7 70-74 76.4 41.2 117.6 75-79 78.8 50.0 128.7 80-84 59.6 45.2 104.7 85-89 23.7 49.3 90-94 5.6 5.8 11.4 95+ 0.6 0.9 1.5 Total 497.7 276.7 774.4 男性予測 透析導入患者数と 女性予測透析導入患者数を 合計します Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67

この地域は、新規透析導入患者数が全国平均と比べ26%少ない 標準化透析導入率比(SIR)の計算 透析導入時 年齢 (歳) 男性 予測透析導入 患者数(地域) 女性 予測 透析導入患者数(地域) 実際の <5 0.1 0.3 5-9 10-14 0.5 15-19 0.8 1 20-24 1.1 1.6 2 25-29 2.7 30-34 4.2 2.2 6.4 9 35-39 7.6 3.6 11.2 6 40-44 11.5 4.7 16.3 14 45-49 17.8 7.8 25.6 19 50-54 30.5 12.5 42.9 36 55-59 55.0 21.8 76.8 60 60-64 59.1 23.5 82.6 58 65-69 63.8 29.9 93.7 68 70-74 76.4 41.2 117.6 94 75-79 78.8 50.0 128.7 101 80-84 59.6 45.2 104.7 66 85-89 23.7 49.3 29 90-94 5.6 5.8 11.4 95+ 0.6 0.9 1.5 Total 497.7 276.7 774.4 572 実際の透析導入患者数   572 標準化透析導入率比 =      = (Standardized incidence ratio, SIR) 予測透析導入患者数     774.4 = 0.74 この地域は、新規透析導入患者数が全国平均と比べ26%少ない

95%信頼区間の計算 (Wolf RA. Am J Kidney Dis 1994; 24: 290-7)                    実際の人数 572 標準化透析導入率比(SIR) = = = 0.74                           予測数    774.4 95% 信頼区間 下限:          上限: =0.68 = 0.80 Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67

地域における新規透析導入率の評価方法 Total 497.7 276.7 774.4 572 透析導入時 年齢 (歳) 男性 予測透析導入 患者数(地域) 女性 予測 透析導入患者数(地域) 実際の <5 0.1 0.3 5-9 10-14 0.5 15-19 0.8 1 20-24 1.1 1.6 2 25-29 2.7 30-34 4.2 2.2 6.4 9 35-39 7.6 3.6 11.2 6 40-44 11.5 4.7 16.3 14 45-49 17.8 7.8 25.6 19 50-54 30.5 12.5 42.9 36 55-59 55.0 21.8 76.8 60 60-64 59.1 23.5 82.6 58 65-69 63.8 29.9 93.7 68 70-74 76.4 41.2 117.6 94 75-79 78.8 50.0 128.7 101 80-84 59.6 45.2 104.7 66 85-89 23.7 49.3 29 90-94 5.6 5.8 11.4 95+ 0.6 0.9 1.5 Total 497.7 276.7 774.4 572

@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD 地域における新規透析導入率の評価方法 透析導入患者数 予測数 実際の導入人数 年齢(歳) Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67 @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD 地域におけるCKD評価方法:2つ  地域における新規透析導入率の評価方法 (性年齢補正を行い全国平均と比較する) (Wakasugi M, et al. Ther Apher Dial 2012; 16(1):63–67) 地域におけるCKD有病率の評価方法 (Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54) @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

地域におけるCKD有病率の評価方法 同様の計算方法を用いて、性年齢補正を行い全国平均と地域のCKD有病率を比較 使用するデータ:特定健診および後期高齢者健診 (血清クレアチニンは健診の必須測定項目ではないが、この自治体では独自に測定) 健診受診者のeGFRを計算 eGFR = 194 × (serum creatinine -1.094) × (age-0.287) × (0.739 for females) (Matsuo S, et al. Am J Kidney Dis. 2009;53:982-92). CKDの定義は、eGFR < 60 ml/min/1.73 m2とした Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54

Table 1. Age-specific prevalence of chronic kidney disease (CKD) stages in males (Imai E et al. Clin Exp Nephrol 2009;13:621-30)

(Imai E, et al., Clin Exp Nephrol 2009;13:621-30). 地域におけるCKD有病率の評価方法 年齢 (歳) 男性 CKD有病率 (全国) (100人年) 20-29 0.12 30-39 0.92 40-49 3.97 50-59 7.48 60-69 15.84 70-79 27.75 ≥80 44.64 Total 13.99 性年齢階級別 CKD有病率は 論文データから引用 (Imai E, et al., Clin Exp Nephrol 2009;13:621-30). Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54

地域におけるCKD有病率の評価方法 健診データから性年齢階級別 健診受診者数を抽出 年齢 (歳) 男性 CKD有病率 (全国) (100人年) 健診受診者数 (地域) 20-29 0.12 82 30-39 0.92 142 40-49 3.97 175 50-59 7.48 405 60-69 15.84 1217 70-79 27.75 1408 ≥80 44.64 511 Total 13.99 3942 健診データから性年齢階級別 健診受診者数を抽出 Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54

地域におけるCKD有病率の評価方法 予測CKD患者数(地域の健診受診者に占める) = 全国CKD有病率 * 地域の健診受診者数 年齢 (歳) 男性 CKD有病率 (全国) (100人年) 健診受診者数 (地域) 予測 CKD患者数 (地域 健診受診者) 20-29 0.12 82 0.1 30-39 0.92 142 1.3 40-49 3.97 175 6.9 50-59 7.48 405 30.3 60-69 15.84 1217 192.8 70-79 27.75 1408 390.7 ≥80 44.64 511 228.1 Total 13.99 3942 850.2 予測CKD患者数(地域の健診受診者に占める) = 全国CKD有病率 * 地域の健診受診者数 Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54

地域におけるCKD有病率の評価方法 年齢 (歳) 男性 CKD有病率 (全国) (100人年) 健診受診者数 (地域) 予測男性 健診受診者) 実際の男性 20-29 0.12 82 0.1 30-39 0.92 142 1.3 40-49 3.97 175 6.9 4 50-59 7.48 405 30.3 18 60-69 15.84 1217 192.8 165 70-79 27.75 1408 390.7 276 ≥80 44.64 511 228.1 132 Total 13.99 3942 850.2 595 健診時の血清CrからeGFRを計算して CKD患者数を求めます Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54

この地域の男性健診受診者では、CKD患者数が全国平均と比べ30%少ない 標準化CKD有病率(SRR)の計算 年齢 (歳) 男性 CKD有病率 (全国) (100人年) 健診受診者数 (地域) 予測男性 CKD患者数 (地域 健診受診者) 実際の男性 20-29 0.12 82 0.1 30-39 0.92 142 1.3 40-49 3.97 175 6.9 4 50-59 7.48 405 30.3 18 60-69 15.84 1217 192.8 165 70-79 27.75 1408 390.7 276 ≥80 44.64 511 228.1 132 Total 13.99 3942 850.2 595 実際の人数   595 標準化CKD有病率比 = = (Standardized rate ratio, SRR)  予測数    850.2               = 0.70 この地域の男性健診受診者では、CKD患者数が全国平均と比べ30%少ない Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54

95%信頼区間の計算 (Wolf RA. Am J Kidney Dis 1994; 24: 290-7) 実際の人数    595 標準化CKD有病率 = = = 0.70 (SRR)   予測数       850.2 95% 信頼区間 下限:           上限: =0.64 =0.76 Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54

地域におけるCKD有病率の評価方法 年齢 (歳) 男性 CKD有病率 (全国) (100人年) 健診受診者数 (地域) 予測男性 健診受診者) 実際の男性 20-29 0.12 82 0.1 30-39 0.92 142 1.3 40-49 3.97 175 6.9 4 50-59 7.48 405 30.3 18 60-69 15.84 1217 192.8 165 70-79 27.75 1408 390.7 276 ≥80 44.64 511 228.1 132 Total 13.99 3942 850.2 595 Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54

地域におけるCKD有病率の評価方法 患者数 予測数 実際のCKD患者数 年齢(歳) Wakasugi M, et al. Clin Exp Nephrol 2012; 16(5):749-54

@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD 考察 CKDは年齢と関連があり、年齢補正を行わずして比較はできない。 年齢補正を行う本法は、高齢化が進んだ地域でも全国平均との比較を可能にする。 評価のために、わざわざデータを集めることは時間的にも金銭的にも困難である。 日本透析医学会統計調査委員会データ、および、健診データを利用することは、継続的な評価を 可能にする。 @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD 考察 CKD有病率と末期腎不全発症率との関係は単純ではない。 CKD有病率と透析導入率の両者を評価することでCKDのどの段階に、優先的に、介入すべきかが  明らかになり、効果的なCKD戦略立案に繋がる。 Normal CKD ESRD @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD 血清クレアチニンの測定は有用である 地域における CKD評価にも 有用である 個人の CKDスクリーニングに 有用なだけではなく @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD

@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD まとめ 地域におけるCKDの包括的評価方法を提案した。 さらなる改善のため、 健診受診率の向上 比較となる全国データの更新 特定健診で血清クレアチニン測定が必須項目となること  を推奨する。 @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD