レーザー超音波法による Wf/Wの弾性特性の測定

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レーザー超音波法による Wf/Wの弾性特性の測定 大阪大学 工学部 電子情報工学科 プラズマ生成制御工学領域 上田研究室 安藤 颯介

研究背景① 核融合炉ダイバータについて タングステン 磁力線によって導かれたプラズマの排気ポート ・・・炉内で最も高い熱負荷を受ける機器 繰り返しのパルス熱負荷で熱疲労によるき裂が問題 タングステン 高融点、低スパッタリング率    ・・・ダイバータの候補材料 DBTTが高い、延性が小さい    ・・・き裂の拡大を防げない T. Hrai “Use of tungsten material for the ITER divertor”

研究背景② 金属繊維強化材料(FRM) タングステン繊維強化タングステン ユーリッヒ研究所で開発された先進材料[1] Spark Plasma Sintering(SPS)法で作成 FRM材料 一般に靭性や硬度が高い。 fiberの向きにより特性が変化する異方性材料 fiberとmatrix間のinterfaceによって、特性が変化する問題がある。 (含浸性,fiberの劣化など)  →製造過程でfiberをコーティングする必要がある。 matrix:タングステン fiber:タングステン  interfaceコーティング:酸化イットリウム(Y2O3) fiberの方向はランダム [1] Y.Mao “Development and characterization of powder metallurgy produced multi tungsten fiber reinforced tungsten “

Spark Plasma Sintering法 個体圧縮焼結法の一種 パルス電流を直接、焼結型と材料に印加して  急速に昇温することができる。 メリット 難焼結材料の焼結が可能 複合材料、ナノ構造材料、多元系材料 短時間、低温での処理が可能 低ランニングコスト Hulbert D M, Anders A, Dudina D V, et al. The absence of plasma in “spark plasma sintering”

研究目的 先進材料であるWf/Wの弾性特性の温度依存性を測定 核融合炉の連続運転における繰り返しのパルス熱負荷に よってダイバータモノブロックにき裂が生じる可能性がある ダイバータ内部に発生する熱応力分布の解析が重要 応力集中によりき裂が拡大 材料の弾性特性の温度依存性が必要 先進材料であるWf/Wの弾性特性の温度依存性を測定 Wf/Wを用いたダイバータの熱応力解析を可能にする

縦波(L波)と横波(S波)の速度から材料の弾性特性を測定 実験方法 ・レーザー超音波法・・・非破壊、非接触、高温で測定可能 パルスレーザーで弾性波励起 試料内部に 弾性波伝搬 反対面からレーザードップラ 振動計で弾性波検出 レーザー超音波測定(真空中)実験装置図 Nd:YAGパルスレーザー特性 レーザー波長:1064nm パルス幅:~10ns エネルギー:<0.45J (レーザー波長:635nm) 縦波(L波)と横波(S波)の速度から材料の弾性特性を測定 剛性率 体積弾性率 ヤング率 ポアソン比 弾性波速度と弾性率の関係式

レーザー超音波測定について アブレーションモード 熱弾性モード ・測定精度について 高強度でレーザーを照射 照射部がアブレーションにより弾性波が発生 主に照射表面に垂直方向の応力 熱弾性モード 低強度でレーザーを照射 照射部が熱膨張により弾性波が発生 S/N比が悪い、何度も測定が可能 主に照射表面に水平方向の応力 アブレーションモード 2つ以上の反射波の時間差を測定→正確な速度を測定可能に ・測定精度について トリガー信号の立ち上がりや電気回路の遅延が発生 →初期時刻を決定するのは困難 →最初に到達する弾性波だけでは正確な速度を測定できない。 熱弾性モード

反射波を用いた弾性波速度解析 アブレーションモードでL波の第1波とL波の反射波(3L波)による変位計測 相互相関関数による到達時間差 W標準試料(4N-W) アブレーションモード (エネルギー1.5mJ ビーム径0.2mm) Wf/W(interface:1μm) アブレーションモード (エネルギー1.5mJ ビーム径0.2mm)

反射波を用いた弾性波速度解析 ・反射波相関法で求めたL波速度 ・熱弾性モードで計測したL波とS波の変位速度ピーク時間差 S波速度を解析 W標準試料 変位速度計測結果 熱弾性モード (エネルギー1.5mJ ビーム径0.2mm) Wf/W1 変位速度計測結果 熱男性モード (エネルギー1.5mJ ビーム径0.2mm)

実験結果① ・Wは密度が大きいほど弾性率が高くなる ・Wf/WはWに比べて弾性率が小さい 各試料の弾性率測定結果(室温) ・Wは密度が大きいほど弾性率が高くなる ・Wf/WはWに比べて弾性率が小さい ・Wf/Wはinterface(Y2O3)の厚さによって 弾性率に違いがある SPS法で作成したW,Wf/W試料とW標準試料の密度に対するヤング率(室温) ・・・エラーバーは測定スポットによるばらつきの標準偏差を表示

測定スポットによるばらつき ・測定精度 L波速度:0.1%程度 S波速度:0.4%程度 ・SPS法による作成精度 ・試料形状→側面での反射 W 標準試料 ・測定精度 L波速度:0.1%程度 S波速度:0.4%程度 試料 L波速度 ばらつき(標準偏差) S波速度 W標準試料 0.1% 0.4% 純W1 1.1% 0.6% 純W2 0.9% 1.2% Wf/W(1μm) 1.9% 1.4% Wf/W(2μm) 2.1% 1.3% ・SPS法による作成精度 (密度分布など) ・試料形状→側面での反射 (W標準試料:円板状 SPS試料:半円板状) ・fiberによる分散、異方性 クロススペクトル解析による評価が必要

実験結果② 温度によりfiberが与える弾性率の影響は小さい WとWf/Wの弾性率の温度依存性 高精度の測定 ・SPSにより作成した試料は多結晶Wの計算値に比べて弾性率が小さい ・WとWf/Wで温度依存性の違いは ほとんどみられなかった 温度によりfiberが与える弾性率の影響は小さい SPS法により作成したWとWf/W試料のヤング率の温度依存性 多結晶W 理論値 ・・・単結晶Wの弾性波速度の温度依存性から求めた弾性率を用いて計算した値[2] [2]Robert Lowrie “Single-Crystal Elastic Properties of Tungsten from 24℃ to 1800℃”

結論 反射波相関法を用いたレーザー超音波測定により、 0.1%以下(L波速度)の高精度な弾性特性の測定を確認。 Wf/Wの弾性率の温度依存性 ・・・W標準試料(4N-W)の測定結果のばらつきから SPSにより作成した試料 ・・・測定点により、W:約1%,Wf/W:約2%(L波速度)のばらつき 試料の作成プロセスの影響、fiberによる位相速度分散の影響 SPSの純WとW標準試料は密度と弾性率に正の相関がある Wf/Wは純Wに比べて弾性率は小さくなる interfaceコーティング厚さにより弾性率に違いがみられた WとWf/Wで温度依存傾向に大きな違いはみられなかった