平成29年2月度FP塾 保険にまつわる 『所得税(住民税)』 所得税の基礎 講 師:株式会社シャフト 吉光 隆 講 師:株式会社シャフト 吉光 隆 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 平成29年2月4日現在の資料です
所得税(総合課税)の計算手順 - = - = × = 税率 ①所得の算出 ②課税所得 ③算出税額・納付税額 ー 速算控除 ― 必要経費 収 入 必要経費 所得金額 ②課税所得 所得金額合計 - = 各種所得控除 課税所得金額 ③算出税額・納付税額 課税所得金額 × = 税率 算出税額 納付税額 ― 税額控除 ー 速算控除 +復興税 住民税(地方税)は課税所得金額※に一律10%を乗じる。 ※(注)所得税とは異なる
① 所得税の種類 - = ①所得の算出 必要経費 所得金額 収 入 ●申告分離課税の対象となる所得 ●総合課税の対象となる所得 ・退職所得 ① 所得税の種類 ①所得の算出 - = 収 入 必要経費 所得金額 ●総合課税の対象となる所得 ・配当所得 (「源泉分離課税対象の配当」・ 「上場株式で申告分離課税を選択したもの」を除く) ・事業所得 ・不動産所得 ・給与所得 ・譲渡所得 (不動産等及び株式等の譲渡を 除く) ・一時所得(金融類似商品は 除く) ・雑所得 ●申告分離課税の対象となる所得 (確定申告により申告納税を行う方法) ・退職所得 ・山林所得 ・譲渡所得(不動産・株式などの譲渡) ・先物取引に係る雑所得など ・配当所得(上場株式で申告分離課税を選択したもの) ●源泉分離課税の対象となる所得 (源泉徴収で納税が終了) 税率:20.315%(所得税15.315%・地方税5%) ・利子所得(国内で支払を受けるもの) ・配当(私募公社債等運用投資信託等の収益の分配) ・一時所得(金融類似商品=定期積金の給付補てん金、 抵当証券の利息、期間5年以下の一時払養老保険の差益など) 一覧表 参照
【後述】:『生命保険にまつわる所得税』参照 生命保険にかかわる所得の種類 ①所得の算出 - = 収 入 必要経費 所得金額 【総合課税の対象】 給与所得・・・給与課税形態の生命保険契約 雑所得・・・個人年金保険の年金、年金受け取りの死亡保険金など 一時所得・・・保険料負担者が受け取る、 死亡保険金・満期保険金・解約返戻金など 【後述】:『生命保険にまつわる所得税』参照 【分離課税(源泉分離課税)の対象】 金融類似商品・・・一時払養老保険などで、保険期間等が5年以下のもの又は保険期間等が5年を超えるもので保険期間等の初日から5年以内に解約されたものの差益 【申告分離課税の対象】 退職所得・・・退職に伴う生命保険の名義変更(解約返戻金相当額) 【所得税法上の非課税対象】 身体の障害に基因する保険金・給付金など
総合課税における所得ごとの必要経費の計算 - = 収 入 必要経費 所得金額 収入を得るために直接必要な費用 ・事業所得 ・配当所得 株式などを取得するための借入金の利子 ・不動産所得 不動産収入を得るために直接必要な費用 売上原価・給与、賃金・地代、家賃・減価償却費 固定資産税・損害保険料・ 減価償却費・修繕費など ・給与所得 給与所得控除 (公的年金) 公的年金等控除 ・雑所得 収入を得るために支出した金額 ・譲渡所得 (不動産・ 株式以外) 短期譲渡所得(所有期間5年以下) 取得費+譲渡費用 長期譲渡所得(所有期間5年超) 特別控除50万円 ー ・一時所得 総合課税される一時所得金額 × 1/2
【参考】 分離課税における必要経費と税額の計算 【参考】 分離課税における必要経費と税額の計算 - = 収 入 必要経費 所得金額 × 税率 ( ) 収入 - 退職所得控除※ ・退職所得 × 1/2 税率 ※ 退職所得控除額の計算表 勤続年数(=A) 退職所得控除額 20年以下 40万円 × A (最低80万円) 20年超 800万円 + 70万円 × (A - 20年) ・譲渡所得 (不動産・株式) 短期譲渡所得(所有期間5年以下) 収入-(取得費+譲渡費用) ー 特別 控除 × 30% 長期譲渡所得(所有期間5年超) 15% 39.63% (+住民税9%) 20.315% (+住民税5%) (イ) 収用等により土地や建物を譲渡した場合 ・・・ 5,000万円 (ロ) マイホームを譲渡した場合 ・・・ 3,000万円 (ハ) 特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合 ・・・ 2,000万円 (ニ) 特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合 ・・・ 1,500万円 (ホ) 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合・・・1,000万円(長期譲渡のみ) (ヘ) 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 ・・・ 800万円 特別控除
② 所得控除の種類と控除額 - = ②課税所得 所得金額合計 課税所得 各種所得控除 ・雑損控除 ・医療費控除 生命保険にかかわる所得控除 ② 所得控除の種類と控除額 ②課税所得 所得金額合計 - = 各種所得控除 課税所得 ・雑損控除 ・医療費控除 ・社会保険料控除 ・小規模企業共済等掛金控除 ・生命保険料控除 ・地震保険料控除 ・寄付金控除 ・障害者控除 ・寡婦控除・寡夫控除 ・勤労学生控除 ・扶養控除 ・基礎控除 ・配偶者控除 ・配偶者特別控除 生命保険にかかわる所得控除 平成24年1月1日以後に締結した保険契約等に係る保険料と平成23年12月31日以前に締結した保険契約等に係る保険料では、生命保険料控除の取扱いが下図のように異なる 一覧表 参照 平成29年度税制改正項目
③ 算出税額と納付税額 × = 税率 ③算出税額・納付税額 ー 速算控除 ― 算出税額 課税所得 納付税額 税額控除 +復興税 ③ 算出税額と納付税額 ③算出税額・納付税額 課税所得 × = 税率 算出税額 納付税額 ― 税額控除 ー 速算控除 +復興税 ・配当控除 ・外国税額控除 ・住宅借入金等特別控除など ※復興税 上乗せ分=所得税額×2.1% (平成25年から25年間) 所得税の速算表 課税される所得金額 税率 控除額 195万円以下 5% 0円 195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円 330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円 695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円 900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円 1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円 4,000万円超え 45% 4,796,000円 シミュレーション参照
生命保険にまつわる所得税 保険金・年金を受け取った時の所得税
死亡保険金を受け取った時 死亡保険金の課税関係 契約者 (保険料の負担者) 被保険者 保険金受取人 税金の種類 A B 相続税 C 贈与税 所得税 原則、所得税が課税されるのは、保険料の負担者と保険金受取人とが同一人の場合 死亡保険金が一時金の場合 一時所得として課税 {受取死亡保険金 - 既払込保険料総額 - 特別控除(50万円)} × 1/2 死亡保険金が年金で、保険料負担者本人が受け取る場合 (公的年金以外の) 雑所得として課税 (受取年金 -その年金に対応する保険料の額)が25万円未満は源泉徴収なし
満期保険金・解約返戻金を受け取った時 満期保険金・解約返戻金の課税関係 契約者 (保険料の負担者) 被保険者 保険金受取人 税金の種類 A ー B 贈与税 ― 所得税 原則所得税が課税されるのは、保険料の負担者と保険金受取人とが同一人の場合 満期保険金・解約返戻金が 一時金の場合 一時所得として課税 {満期保険金・解約返戻金 - 既払込保険料総額 - 特別控除(50万円)} × 1/2 満期保険金・解約返戻金が 年金で、保険料負担者本人が受け取る場合 (公的年金以外の) 雑所得として課税 (受取年金 -その年金に対応する保険料の額)が25万円未満は源泉徴収なし
所得補償の保険金を受け取った場合 いわゆる所得補償保険とは、被保険者が病気やけがにより勤務又は業務に 従事することができなかった期間の給与又は、収益の補てんとして保険金を 支払う損害保険契約のこと。 このような所得補償保険の保険金は、身体の傷害に基因して支払を受ける 保険金に該当するので非課税とされている。 ※なお、事業主が自己を被保険者とした所得補償保険の保険料を支払ったとしても、 その保険料は家事費であり「業務について生じた費用」とはいえないので、所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。 【参考】 所得税施行令30条 (非課税とされる保険金、損害賠償金等) 第三十条 (非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金は、次に 掲げるものその他これらに類するものとする。 一 損害保険契約に基づく保険金、生命保険契約又は旧簡易生命保険契約に基づく 給付金及び損害保険契約又は生命保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を 受ける慰謝料その他の損害賠償金
年金支給初年は全額非課税、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法 遺族が支払いを受ける個人年金 遺族が受け取る年金の課税関係 保険料の負担者 (年金受取人) 被保険者 年金受給権の 取得者 税金の種類 A B ① 相続税 C ② 贈与税 ① 死亡した人が 保険料負担者の場合 年金受給権は相続により 取得したものとみなす 以降の年金は(公的年金以外の) 雑所得として課税 年金支給初年は全額非課税、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法 ② 被保険者・受給権取得者が 保険料負担者でない場合 年金受給権は贈与により 取得したものとみなされる 年金支給初年は全額非課税、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法 以降の年金は(公的年金以外の) 雑所得として課税 相続又は贈与等に係る保険年金(一定の基準に該当するものに限る。以下「相続等保険年金」と言う。)に対する源泉徴収については、平成25 年1月1日から廃止。
年金払生活保障保険 二重課税問題の検証
年金払収入保障特約(生活保障特約)の 二重課税にかかる訴訟の経緯 判決日時 裁判所 判決結果 概 要 平成18年 11月7日 (第1審) 長崎 地方裁判所 請求容認 年金払収入保障特約の 死亡年金は、二重課税と 認定。原告勝訴。 平成19年 10月25日 (第2審) 福岡 高等裁判所 原判決取消 第1審の判決を取り消し。 二重課税とは認められない。 国側の勝訴。 平成22年 7月6日 最高裁判所 破棄自判 原判決(第2審)を破棄。 第1審の判決を是認し、 国の控訴を棄却。原告勝訴。 15
一時金で支給(最高裁の判決文では この部分は触れていない) 年金二重課税裁判の概要 年金で支給 死亡 収入保障特約 230万円×10回 死亡保険金 4,000万円 一時金で支給(最高裁の判決文では この部分は触れていない) 長崎税務署長より、源泉徴収後の 1回目の年金額220万8,000円を収入に算入して税額(還付)を計算する 処分を下した 1回目の年金額 230万円 源泉徴収税額 22万800円 所得税の還付申告 二重課税 問題勃発! 相続財産に加えられた 死亡保険金(一時金) 4,000万円 年金受給権 1,380万円(2,300万円×0.6) 相続税の申告 + 16
(参考)判例における支払い保険料の内訳 死亡 収入保障特約 230万円×10回 死亡保険金 4,000万円 収入保障特約部分の保険料 (参考)判例における支払い保険料の内訳 収入保障特約 230万円×10回 死亡保険金 4,000万円 死亡 収入保障特約部分の保険料 死亡保険金部分の保険料(定特+終身) 195万1,291円× 230万円×10回 ≒ 72万1,977円 4,000万円+230万円×10回 195万1,291円-72万1,977円=122万9,314円 死亡時までの 総支払保険料 195万1,291円 17
(参考)判例における年金の必要経費と源泉徴収税額 230万円 ・ 年金額 230万円に対する必要経費は? 【年金額における必要経費部分の計算】 年金年額× 支払保険料総額 ≒ 9万2,000円 年金の支払総額または見込額 =230万円× 72万1,977円 230万円×10回 ※小数点第3位以下を切り上げ 源泉徴収税額 230万円-9万2,000円=220万8,000円 (雑所得金額) 220万8,000円×10%=22万800円 (所得税施行令207条~208条) 18
裁判所ごとの意見の違い ・ ・ 所得税 相続税 (雑所得) 相続税 所得税 (雑所得) 福岡高裁(2審) 年金受給権 長崎地裁・最高裁 相続に加えた 年金受給権と 現金は別物 長崎地裁・最高裁 所得税 (雑所得) 二重課税の判断 年金受給権 ・ 相続税 同一の 経済価値 【所得税法9条1項16号】 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの (取得したとみなされるものを含む)には所得税を課さない。・・・という根拠から、 最高裁は二重課税の判断を下す! 19
最高裁の判断 ・ ・ 相続税 将来受け取るべき年金 230万円×10回=2,300万円 相続税 所得税の非課税部分 年金受給権 1,380万円 現在価値へ引き戻し 将来受け取るべき年金 230万円×10回=2,300万円 1回目の年金は支給額と現在価値が同じ→運用益なし 年金受給権 1,380万円 相続税 ・ 年金合計-年金受給権(相続税課税分)=運用益 所得税の非課税部分 20
年金受給権が相続・贈与となる年金の課税は これまでの課税方式とは違うようになった! 年金受給権が相続・贈与となる年金の課税は これまでの課税方式とは違うようになった! 死亡年金等の課税 これまでの年金課税 運用益(雑所得の課税対象部分) 雑所得の課税対象 二重課税部分 相続税が 課税された 部分 (年金受給権) 【必要経費】 年金年額 × 支払保険料総額 年金の支払総額または見込額 対応する掛金 21
(まとめ) 一般の年金課税 雑所得部分 ・ 必要経費部分(掛金) 年金年額 - 必要経費(掛金按分) = 雑所得 25万円超は10%源泉徴収 (まとめ) 一般の年金課税 年金受給権の有無に かかわらず ・ 雑所得部分 必要経費部分(掛金) 総合課税 (所得税・住民税) 年金年額 - 必要経費(掛金按分) = 雑所得 25万円超は10%源泉徴収 22
(まとめ) 相続・贈与にかかわる年金課税 ・ 年金年額 - 相続・贈与に加算された受給権 = 運用益(雑所得) 年金受給権あり (まとめ) 相続・贈与にかかわる年金課税 年金年額 - 相続・贈与に加算された受給権 = 運用益(雑所得) 運用益(雑所得)部分 【均等ではない】 総合課税 (所得税・ 住民税) 年金受給権あり =相続・ 贈与課税 された場合 ・ 必要経費=(相続・贈与課税部分) =年金受給権部分【均等ではない】 それ以外は 従来通りの 課税 対応する掛金部分 「相続等保険年金」は平成25年1月1日より、源泉徴収を廃止 23
年金受給権などが相続・贈与となる形の 雑所得計算は複雑 (タックスアンサー) No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係 相続、遺贈又は贈与により取得した年金受給権に係る生命保険契約や損害保険契約等に基づく年金の支払を受けている方(具体的には次の1から3のいずれかに該当する方で、 保険契約等に係る保険料の負担者でない方)の、その支払を受ける年金に係る雑所得の 計算は、課税部分と非課税部分に振り分けた上で計算を行う。 具体的には、支払を受けた年金について、年金支給初年は全額非課税とし、2年目以降は 課税部分が階段状に増加していく方法により計算する。 (雑所得の金額は、課税部分の 年金収入額から対応する保険料又は掛金の額を控除して計算する) 死亡保険金を年金形式で受給している方 学資保険の保険契約者がお亡くなりになったことに伴い、養育年金を受給している方 個人年金保険契約に基づく年金を受給している方 (注1) 相続等により取得した生命保険契約や損害保険契約等に係る年金の受給権は、相続税や贈与税の課税対象となっているが、実際に相続税や贈与税の納税額が生じなかった方も対象となる。 (注2) 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の受給開始日以前に、年金 給付の総額に代えて一時金で支払を受けた場合、所得税は非課税となる(所基通9-18)。 (注3) 国民年金、厚生年金、共済年金などの遺族年金は非課税とされている(国民年金法25、厚生年金 保険法41ほか) 家族収入保障保険 子ども(学資)保険の養育年金 個人年金保険 (受取人死亡で継続年金受取り) (税制特約付)個人年金保険 相続・贈与発生後、 「年金」で受け取るタイプの一例 24
年金の課税・非課税部分の振り分けイメージ 課税部分の年金収入 - 課税部分の必要経費 = 雑所得 ① 課税部分の合計年金収入 を出す 課税部分 ③ 課税部分の年金収入を出す ② 1課税単位当たりの金額を出す ④ 課税部分の必要経費を出す 非課税部分 課税部分 課税年 支払期間 経過年数 2年目 1年 3年目 2年 4年目 3年 5年目 4年 6年目 5年 7年目 6年 8年目 7年 9年目 8年 10年目9年
年金の課税・非課税部分の振り分け(新) ― = 雑所得金額 年金収入金額 必要経費 課税部分の 課税部分の年金収入額 × (保険料総額 ÷ 年金の支払総額) 1課税単位当たりの金額(※a) × 経過年数 (※a) 1課税単位当たりの金額=課税部分(※b)÷課税単位数(※c) (※b) 課税部分=年金の支払総額×課税割合(※d) (※c) 課税単位数=残存期間年数×(残存期間年数 - 1年)÷2 (※d) 課税割合=相続税評価割合(※e)により下記表から決定 (※e) 相続税評価割合=相続税評価額24条÷年金の支払総額 相続税評価割合 課税割合 50%超 55%以下 45% 75%超 80%以下 20% 92%超 95%以下 5% 55%超 60%以下 40% 80%超 83%以下 17% 95%超 98%以下 2% 60%超 65%以下 35% 83%超 86%以下 14% 98%超 65%超 70%以下 30% 86%超 89%以下 11% - 70%超 75%以下 25% 89%超 92%以下 8% 相続税評価割合が50%以下の場合の計算方法については、税務署にお問合せください
年金の課税・非課税部分の振り分け計算 (事例) 年金の課税・非課税部分の振り分け計算 (事例) (計算例) 支払期間10年の確定年金(新相続税法対象年金)を相続した方の、支払年数6年目 (経過年数5年)の所得金額の計算イメージ 年金額:年100万円定額払い、保険料総額200万円、年金の支払総額1,000万円 (新相続税法による評価額24条が900万円の場合) 相続税評価割合 : 900万円 ÷ 1,000万円 = 90% (相続税評価額) (支払総額) 課税部分(収入金額)の合計額 : 1,000万円 × 8% = 80万円 (支払総額) (相続税評価割合 90%の時の課税割合) 1課税単位当たりの金額 : 80万円 ÷ 45単位 = 1.8万円 (課税単位数) {10年×(10年-1年)÷2} 課税部分の年金収入額 : 1.8万円 × 5年 = 9万円 (経過年数) 支払開始日からその支払を受ける日までの年数 必要経費額 : 9万円 × (200万円 ÷ 1,000万円) = 1.8万円 (保険料総額) (支払総額) 課税部分に係る所得金額 : 9万円 - 1.8万円 = 7.2万円 (雑所得の金額)
生命保険にまつわる 所得税の問題点
「給与」となる保険契約には様々な問題がある ● 養老保険・個人年金保険 法人税基本通達9-3-4(2) 契約者 被保険者 満期・年金受取人 死亡受取人 経理処理 法人 役員・従業員 被保険者の遺族 給与 ● 終身保険・定期保険・逓増定期保険・長期平準定期保険など 契約者 被保険者 死亡受取人 経理処理 法人 役員・従業員 被保険者の遺族 給与 ● この他、逆ハーフタックスの1/2の給与分など 問題点 保険料で支払うため、税金分の手取りが減る 全体の役員報酬の枠に入り、超える場合は株主総会決議 給与課税分に社会保険料がかからないは 間違い! など 給与の上乗せとして所得税・住民税が課税 解約した場合、返戻金は契約者である会社が受け取る 29
名義変更後の解約(一時所得)の必要経費の取り扱い! 個人契約変更後に解約 法人契約 解約返戻金 個人契約 名義変更 総合課税される一時所得金額 = (解約時受取金 - 必要経費※ - 50万円)×1/2 ※ 必要経費は「買取り価格」を含む個人の負担した保険料のみ」となる (所得税法34条) 2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収人金額からその収入を得るために支出した金額※ (その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る) の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を 控除した金額とする ※「その収入を得るために支出した金額」の最高裁の考え方は、 「当該収入を得た個人が 自ら負担して支出した金額」の場合をいうものと解する (平成24年1月13日・1月16日最高裁両判決)
生命保険にまつわる所得税 個人契約における減額返戻金の課税は?
個人契約における減額の課税関係 ● 個人が加入している生命保険を減額した場合に支払われる減額返戻金の課税は、解約と同じく一時所得の課税対象となる。この際、減額返戻金についての必要経費(その収入を得るために支出した金額)、をどのように取り扱うかが問題となる。 「その収入を得るために支出した金額」には、既払保険料×減額部分の保険金額÷ 減額前の保険金額により算出する考え方もあるが、一時所得は臨時・偶発的な所得であることから、継続的に収入があることを前提とした按分方式は、その所得計算になじまないと考えられる。 むしろ、既払保険料の金額に達するまでの精算金については、その同額を「その収入を得るために支出した金額」とするのが相当であって、一時所得の収入金額=支出金額となり、保険料が返戻金を上回るまで所得は発生しないと考えられる。 したがって、精算金のうち既払保険料を超える部分が一時所得となる。 (所法34、所令183、所基通34-1、昭53直資2-36) 同額を既払込保険料から取り崩す 減額した保険金に対応する減額返戻金 保険金 既払込保険料 課税: 減額返戻金-同額の保険料 =0 32
【参考】 法人契約における減額の処理 - = 保険金 【参考】 法人契約における減額の処理 法人が加入している生命保険を減額した場合の処理は、減額返戻金額から資産計上分(按分割したもの)を差し引いて、差額を雑収入(または雑損失)に計上 保険金 減額した保険金に対応する減額返戻金 - = 雑収入 (または雑損失) 減額部分の保険金 減額前の保険金 保険料積立金(資産計上額) × 【例】 死亡保険金を3,000万円⇒1,500万円に減額。減額返戻金が400万円 これまでの資産計上額(保険料積立金)の累計額が600万円 【ヒント】資産計上額(保険料積立金)を減額する保険金で按分して取り崩し、 減額返戻金との差額を雑収入(もしくは雑損失)とする 借 方 貸 方 現金・預金 400万円 保険料積立金 300万円 雑収入 100万円 33
【参考資料】 近年の所得税改正の ポイント
復興税制 【所得税】 (平成25年分より) 復興債の償還期間に合わせて25年間(7.5兆円)において現行の所得税額に 対して2.1%の付加税を創設 ※平成25年1月1日~平成49年12月31日までの25年間 平成25年1月1日 平成49年12月31日 25年間 (復興債の償還期間に合わせる) 上乗せ分=所得税額×2.1% 所得税を支払う人は、すべて 対象となる! 【例】 年収600万・配偶者あり 約17万円の 所得税額 3,574円 付加税 ※ 付加税とは、他の租税に付加して課税される租税のことをいいます。つまり国税や上級の地方公共団体による地方税などを課税標準とし、それらに付加して課税される租税です。
復興特別増税 【住民税】 全納税者に均等割 「1,000円」 上乗せ(平成26年分より) 復興特別増税 【住民税】 全納税者に均等割 「1,000円」 上乗せ(平成26年分より) 個人の道府県民税および市町村民税 (均等割額の上乗せ) 10年間(平成26年6月~平成36年5月まで) 道府県民税 市町村民税 1,000円 3,000円 + 4,000円 = 1,500円 (500円上乗せ) 3,500円 + 平成26年 から 5,000円 = (合計1,000円の上乗せ) 36
復興特別増税 【住民税】 退職所得に係る10%税額控除の見直し(平成25年分より) 復興特別増税 【住民税】 退職所得に係る10%税額控除の見直し(平成25年分より) 退職所得に係る個人住民税の10%税額控除を廃止 【平成25年1月1日以後に支払われる退職金から適用】 (退職金額 - 退職所得控除額) ×1/2 =退職所得金額 退職所得金額 × 税 率 = 退職金に係る税額 所得税 住民税 課税所得金額 税率 195万円以下 330万円以下 695万円以下 900万円以下 1,800万円以下 4,000万円以下 4,000万円超~ 5% 10% 20% 23% 33% 40% 45% 住民税率 10% 退職所得金額×10% =住民税額 住民税額-(住民税額×10%) =退職金に係る住民税額 廃止 37
役員退職慰労金に係る退職所得の見直し(平成25年分より) 5年以下の役員退職慰労金には、2分の1課税を適用しない ほとんどの中小企業経営者には影響しない 見直しの理由 ①法人役員が短期で退職金を受取る場合、2分の1課税を採る合理性が乏しい ②法人役員の平均在任期間が平均7年程度であること ③「5年以下」の短期譲渡所得については2分の1課税の適用がないこと 勤続年数が5年以下の役員退職金に係る退職所得の課税方法について、 退職所得控除額を控除した残額の2分の1とする措置を廃止 【平成25年1月1日以後に支払われる退職金から適用】 ※「役員」とは次に掲げるものをいう ①法人税法第2条第15号に規定する役員 ②国会議員および地方議会議員 ③国家公務員(特別職のうち一定の者又は一般職のうち指定職に限る) ④地方公務員(③と同じ)
相続財産を譲渡した場合の 譲渡所得・取得費の特例見直し(平成27年分より) 相続財産である土地等を譲渡した場合の特例について、当該土地等を譲渡した 場合に譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算する金額を、その者が相続した 全ての土地等に対応する相続税相当額から、その譲渡した土地等に対応する 相続税相当額とする。 相続による土地等の譲渡所得 - = 譲渡収入(売却価格) (必要経費) 譲渡所得金額 譲渡費用 取得費 (取得費が不明な場合売却価格の5%) 取得費加算 (当人のすべての土地等に係る相続税総額) 相続した土地等を譲渡 する場合、取得費加算が 減少⇒譲渡所得金額が 増加(税額の増加) 取得費加算(譲渡した土地等のみの相続税額) 39
【事例】 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例見直し 【事例】 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例見直し 【事例】 相続財産10億円。うち土地が8億円(A土地5億円、B土地3億円)。 相続人は子ども一人。相続税額4億5,820万円。 相続の申告期限から3年以内にB土地を売却した場合、改正前・後の取得費加算の比較 預貯金 2億円 土地A 5億円 土地B 3億円 土地Bが4億円で売却 改正前 改正前の取得費加算額と譲渡所得金額 4億円-(1,000万円+2,000万円+4億5,820万円×0.8※)=344万円 取得費加算 3億6,656万円 取得費2,000万円 (売却価格の5%) 譲渡費用1,000万円 ※土地の財産が 8億円÷相続財産 10億円= 0.8 預貯金 2億円 土地A 5億円 土地B 3億円 土地Bが4億円で売却 改正後 改正後の取得費加算額と譲渡所得金額 4億円-(1,000万円+2,000万円+4億5,820万円×0.3※)=2億3,254万円 取得費加算 1億3,746万円 取得費2,000万円 (売却価格の5%) 譲渡費用1,000万円 ※売却した土地の財産が 3億円÷相続財産 10億円= 0.3 40
所得税の最高税率の引き上げ(平成27年分より) 平成27年分以降の所得税から、課税所得4,000万円超について45%の税率を適用 1,000 10 20 30 40 税率%50 2,000 3,000 4,000 4,000万円超 45% 5% 195万円 330万円 695万円 900万円 1,800万円 10% 20% 23% 33% 40% 課税所得金額(万円) ※住民税(地方税)は課税所得金額に一律10%を乗じる。
空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例 (平成28年4月1日~平成31年12月31日まで) 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、 平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる。 これを、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例という。 被相続人居住用家屋とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、 以下の要件全てに当てはまるもの (主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限る)をいう。 イ 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。 ロ 区分所有建物登記がされている建物でないこと。 ハ 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。 (2) 被相続人居住用家屋の敷地等とは、相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に 供されていた土地又はその土地の上に存する権利をいう。 空き家 昭和56年5月31日以前に 建築した家屋及び敷地 被相続人が居住 または建物を取り壊して 土地のみ譲渡 更地 長期譲渡所得(所有期間5年超) 収入-(取得費+譲渡費用) ー 特別 控除 × 15% 土地・建物を譲渡 3,000万円 特別控除 事業の用・貸付けの用・居住の用に供されたことがないこと
給与収入が1,000万円超の人が税負担増に(平成29年分より) 100 300 65 0 220 給与所得 控除額 (万円) 1,000万円 給与所得控除(給与 における必要経費)の 引き下げによる 税負担増 平成29年分からは、給与収入1,000万円超で給与所得控除額220万円 平成29年分以降では、全給与所得者の3.78%にあたるおよそ172万人(うち役員は59万人)が増税対象に! 給与の見直しによる退職金へのシフトなどの増税対策が益々重要になってくる。 給与収入(万円)
従来の医療費控除とスイッチOTC薬控除は選択 (平成29年分より) 年間医療費 年間医療費-10万円 従来からの医療費控除分 どちらか選択 10万円 控除の 上限8.8万円 年間のスイッチOTC薬費用 -12,000円 スイッチOTC薬控除分 1.2万円 対象となるスイッチ医薬品有効成分リスト(厚生労働省平成29年1月13日時点) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000124846.pdf
所得金額1,000万円超は配偶者控除不適用 (平成30年分より) 38 36 31 26 21 16 11 6 3 ここまで38万円の控除が使える 103 配偶者の給与収入 150 201 配偶者特別控除の拡大 居住者の合計所得金額 控除額 控除対象配偶者 老人控除対象配偶者 900万円以下 38万円 48万円 900万円超 950万円以下 26万円 32万円 950万円超 1,000万円以下 13万円 16万円 1,000万円超 0円
配偶者特別控除の拡大 (平成30年分より) 900万円以下 900万円超950万円以下 950万円超1,000万円以下 1,000 万円超は 配偶者特別控除の拡大 (平成30年分より) 900万円以下 900万円超950万円以下 950万円超1,000万円以下 1,000 万円超は これまでどおり、 適用なし 配偶者の合計所得金額 控除額 38万超85万以下 38万 85万超90万以下 36万 90万超95万以下 31万 95万超100万以下 26万 100万超105万以下 21万 105万超110万以下 16万 110万超115万以下 11万 115万超120万以下 6万 120万超123万以下 3万 配偶者の合計所得金額 控除額 38万超85万以下 26万 85万超90万以下 24万 90万超95万以下 21万 95万超100万以下 18万 100万超105万以下 14万 105万超110万以下 11万 110万超115万以下 8万 115万超120万以下 4万 120万超123万以下 2万 配偶者の合計所得金額 控除額 38万超85万以下 13万 85万超90万以下 12万 90万超95万以下 11万 95万超100万以下 9万 100万超105万以下 7万 105万超110万以下 6万 110万超115万以下 4万 115万超120万以下 2万 120万超123万以下 1万
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