政府の勘定 プライマリー・バランス ドーマー条件 専修大学 経済の世界 作間逸雄
一般政府 国民経済計算では、「一般政府」(general government)という言葉を使う。 一般政府は、中央政府、地方政府、社会保障基金 からなる。公的法人企業(および、それに準じる公 的準法人企業)は除外されている。 一般政府は、政府サービスを自分で生産して自分 で消費する。その政府サービスの価値は費用で推 計する。
生産勘定 中間消費 固定資本減耗 純付加価値 (所得・支出勘定へ) 産出額
所得・支出勘定 第1次所得の支払 その他の経常移転の支払 最終消費支出 貯蓄 純付加価値 第1次所得の受取 その他の経常移転の受取 (蓄積勘定へ) 純付加価値 (生産勘定より) 第1次所得の受取 その他の経常移転の受取
蓄積勘定 総固定資本形成 在庫増 土地の純購入 非金融無形資産の純購入 金融資産の購入マイナス処分 貯蓄 固定資本減耗 資本移転純受取 (所得・支出勘定より) 固定資本減耗 (生産勘定より) 資本移転純受取 負債の発行マイナス償還
蓄積勘定 総固定資本形成 在庫増 土地の純購入 非金融無形資産の純購入 金融資産の購入マイナス処分 ー負債の発行マイナス償還 貯蓄 (所得・支出勘定より) 固定資本減耗 (生産勘定より) 資本移転純受取 負債の発行マイナス償還 純貸出
3つの勘定を連結する。 中間消費 第1次所得支払 その他の経常移転支払 最終消費支出 総資本形成 土地の純購入 非金融無形資産の純購入 純貸出 産出額 第1次所得受取 その他の経常移転受取 資本移転純受取 その他の経常移転純受取
単純化された政府の勘定 G R D- Tx D+ 公債償還 税収等 政府購入 公債の新規発行(公債金収入) 公債利子 公債費=(D-)+R 歳出 歳入 公債利子 公債費=(D-)+R L=純貸出= (D-)-(D+) と単純化する。 政府購入には、中間消費、資本形成、公務員に対する雇用者報酬が含まれる。
基礎的財政収支(プライマリー・バランス) ●財政の持続可能性に対する考え方(平成17年度『経済財 政白書』より) 2002年度以降、財政赤字は縮小の方向に向かっているが、 その水準は依然として高い。財政の持続可能性に関する判 断基準としては、公債残高の対名目GDP比が将来に向けて 発散しないという基準が幅広く認識されている。名目金利と 経済成長率(名目GDP成長率)の関係によって、この基準を 満たすために必要な基礎的財政収支(プライマリー・バラン ス、対名目GDP比)の大きさを計算することが可能であるが、 特に、名目金利と経済成長率が等しいとの条件の下では、 基礎的財政収支を均衡させることによって、公債残高の対 名目GDP比はその水準に保たれ、将来に向けて発散するこ とが避けられる。
基礎的財政収支(プライマリー・バランス)とは? 基礎的財政収支とは、「借入れを除く税収等の歳 入」と「過去の借入れに対する元利払いを除いた歳 出」との差額。 「借入れを除く税収等の歳入」と「過 去の借入れに対する元利払いを除いた歳出」とが 均衡している状態が「基礎的財政収支の均衡」、す なわち、過去の借金の元利払い以外の歳出は、そ の年度の税収等でまかない新たな借金によらない、 ということである。
プライマリー・バランス Dtをt期末の公債残高とする。 当期の公債利子支払いRは、利子率をrとすると、 R=(Dt-1)×r プライマリー・バランスPは、 P=Tx-G=(D-)+R-(D+) ∵「単純化された政府の勘定」のスライドを参照。 =L+R=公債費-公債金収入 Dt - (Dt-1)= (D+)- (D-)より Dt - (Dt-1) + Pt = (Dt-1)×r だから Dt+Pt= (Dt-1)×(1+r)
公債残高のGDP比が発散しないために(1) t期のGDPをGtとして比を取ると ここで、gはGDPの名目成長率。 上記関係式から、名目金利と名目GDP成長率が等 しく(r=g)、基礎的財政収支が均衡している(Pt= 0)場合、 今期の公債残高は前期の公債残高と等しくなる。
公債残高のGDP比が発散しないために(2) すべてのtについてPt/Gt≧-cおよび g>r≧0(ドーマー条件)が満たされるならば、 数列 D0/G0,D1/G1,D2/G2,・・・, Dt/Gt,・・・ は発散しない。 (証明)前スライドの式からすべてのtについて 次式が導ける。
式の展開