名古屋大学 エコトピア科学研究所 情報・通信科学研究部門 (大学院 工学研究科 電子情報システム専攻 兼担) 片山 正昭

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名古屋大学 エコトピア科学研究所 情報・通信科学研究部門 (大学院 工学研究科 電子情報システム専攻 兼担) 片山 正昭 日本テクノセンター 2011.08.05 無線通信の高信頼化技術 多様な無線通信チャネルと適応通信技術 名古屋大学 エコトピア科学研究所 情報・通信科学研究部門 (大学院 工学研究科 電子情報システム専攻 兼担) 片山 正昭

適応通信技術 通信品質の向上を図るため 通信環境を認識し,それに適応した通信を行う. 通信品質とは 通信環境とは 適応とは

適応通信技術 通信品質の向上を図るため 通信環境を認識し,それに適応した通信を行う. 通信品質とは 占有帯域幅 通信速度 (平均,最大,最低) 誤り率   (平均,最大) 伝送遅延 (平均,最大) etc.

アナログとディジタルと Analog System Digital System

誤り率の最小化 受信側:最適受信 1:1 Mapping D: データ系列候補集合 S : 信号波形候補集合 1:1 (de)Mapping Modulator Demodulator Detector Decoder D: データ系列候補集合 S : 信号波形候補集合 1:1 (de)Mapping

最適受信における信号探索範囲 最適受信 もし ならば 探索範囲は, . 時間軸 周波数軸 符号軸 シンボル パスマージ サブキャリア もし                    ならば 探索範囲は,   . 時間軸 シンボル パスマージ 周波数軸 サブキャリア 符号軸 直交系列展開

信号のベクトル表現と最適受信 もし信号が基底関数で      のように直交展開可能なら   のように最適受信はベクトル表現可能

AWGNチャネルにおける最適受信 加法性雑音 受信信号・ 候補信号間距離(雑音エネルギ考慮) 対数 受信信号・ 候補信号間相関(信号エネルギ考慮) (雑音エネルギ考慮)

最適受信 :チャネルの性質  (伝送特性,雑音特性,干渉特性) :事前確率=外部情報

適応受信技術 通信品質の向上を図るため 通信環境を認識し, それに適応した通信を行う. 誤り率の最小化を行うために 通信路の統計的性質と送信信号の発生確率を 推定し 最適受信(最尤推定)を行う.

通信路の性質

etc. 通信チャネルの統計的性質 通信チャネルは確率過程 インパルス応答 (フェージング・シャドウイング) 雑音 干渉  (フェージング・シャドウイング) 雑音 干渉 etc. これらの統計が わかれば が記述可能.

非線形特性(送信機内HPA) 非線形増幅は確定変換,1対1変換ではない. 歪の影響 Inter Symbol Interference Inter Subcarrier Interference Inter Code Interference 

非線形特性(受信機内ADC) 信号+雑音の非線形増幅出力は確率過程 歪の影響 Inter Symbol Interference Inter Subcarrier Interference Inter Code Interference   最大振幅制限  量子化雑音

ドップラーシフト 地上系ではドプラシフトは,予測困難. チャネル特性は確率過程. マルチキャリア信号ではサブキャリア 間の直交性が崩れる.  地上系ではドプラシフトは,予測困難.   チャネル特性は確率過程.  マルチキャリア信号ではサブキャリア   間の直交性が崩れる.  低軌道衛星では,衛星位置と地上位置   より推定可能.

時変人工雑音の例(電力線)

クラスAインパルス雑音

クラスAインパルス雑音下での最適受信機の性能

電力線雑音の 時間周波数分布例

特性改善技術の例 雑音の瞬時電力の推定値を利用した最適受信 人工雑音は時間方向や周波数方向で雑音に相関が存在 OutbandよりCommunication bandの瞬時電力を推定 受信側で復号に利用 特許3993556号 雑音環境適応デジタル受信装置 Communication Band (通信で用いる帯域) Outband (通信で用いない帯域)

適応送信技術

チャネル容量 与えられたチャネルを複数のサブチャネルに分離(時間,周波数,符号,空間...) 電力を帯域幅と雑音電力に応じて分配 電力分配ベクトル  ただし上式は ガウス雑音 理想的な符号化(情報の信号空間への写像)   を想定

電力線雑音の波形例 電源電圧波形 雑音成分

OFDMの各シンボル・周波数領域をセルとする 特性改善技術の例 雑音の周期定常電力分布を利用した適応送信 Tx Rx 電力線 雑音特性 1フレーム 雑音 電力 大 frequency 小 time OFDMの各シンボル・周波数領域をセルとする セル毎の雑音電力が不均一かつ周期的 → 変調多値数,電力の最適割当 澤田直也, 山里敬也, 片山正昭 非白色・周期定常雑音を伴う電力線通信のための適応変調と電力割り当て 電子情報通信学会 通信ソサイエティ大会, A-5-2, p.89

複数地点の電力線上の雑音の相関 86% 77% 98% 直線に近く 相関 高 瞬時電圧 瞬時電力 周期的平均電力 Noise voltage at   [mV] 直線に近く 相関 高 Noise voltage at    [mV] 散布図:2変数を縦軸と横軸        にとりプロット 相関係数 各時刻の瞬時電圧にさえ相関が存在 瞬時電圧 86% 77% 瞬時電力 98% 周期的平均電力 電子情報通信学会論文誌(A) 掲載予定

複数地点の雑音の相関性の活用 Tx Rx 送信端: 受信端: シンボル判定に利用 信号割当に利用      と     は雑音の 周期性により既知とする

MIMO: 多端子通信路 Multi-Hop: 中継通信路 多様なチャネル形状 MIMO: 多端子通信路 Multi-Hop: 中継通信路

MIMO (空間ダイバシチ) 時空間符号化前の信号を入力とし, 各受信アンテナ入力を一括して出力ベクトルとする チャネルと見なせる. 送 信 機 受 信 機 時空間符号化前の信号を入力とし, 各受信アンテナ入力を一括して出力ベクトルとする チャネルと見なせる.

複数経路を持つ多段中継 ~マルチホップネットワーク~ 複数経路を持つ多段中継   ~マルチホップネットワーク~ 最適経路を選択 切り替えダイバシチ 経路次元符号化 合成ダイバシチ

中継手法の分類1 ~入出力の分離~ 中継器入出力の分離 中継器入出力の分離不要 中継器入出力の双方の利用 周波数分割 時間分割 符号分割 中継手法の分類1  ~入出力の分離~ 中継器入出力の分離 周波数分割 時間分割 符号分割 中継器入出力の分離不要 同時・同一周波数(SFN) 中継器入出力の双方の利用 パスダイバシチ効果 relay relay relay

中継手法の分類2 ~再生・非再生(1/2)~ 非再生中継 再生中継 受信信号を増幅,再送信 遅延:小 中継による劣化:大(雑音重畳) 遅延:小  中継による劣化:大(雑音重畳) 再生中継 受信信号を一旦復調,復号,再符号化,再変調,再送信 遅延:大  中継による劣化:小 coder decoder coder decoder data modulator demodulator modulator demodulator data

中継手法の分類2 ~再生・非再生(2/2)~ 簡易再生中継 受信信号を一旦復調,復号,再符号化,再変調,再送信 遅延:中  中継による劣化:中(誤り伝播) modulator demodulator modulator demodulator data coder decoder coder decoder data

簡易再生中継のための送受信機構成 soft error-detection Error detecting encoder Turbo Inter- lever bit detecter modulator soft Turbo decoder De-Inter- lever Reliability decision error-detection

Decision of Error-Detected Reliability 0 0 1 1 1 1 1 0 0 0 1 1 code block 0 1 1 0 0 1 0 1 1 1 0 1 interleaved parity-check encoding 0 1 1 0 0 0 1 0 1 0 1 1 0 1 1 corrupted by error 0 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 1 0 1 1 0:+1; 1:-1 0 1 1 0 0 0 0 1 1 1 0 1 error detection: good and bad state g g g g b b b b g g g g de-interleaved +g -b -g +g +b +g +g -b -g -g +b -g

複数の中継器の利用 ダイバシチ効果 分類 -------------------------------- ダイバシチ効果  送信機→中継器/中継器→受信機:中継器毎に異なる 分類 再生中継・非再生中継 -------------------------------- 各中継器は同一動作→人工的マルチパス 耐マルチパス通信方式 マルチパス活用通信方式(MIMO) 各中継器が協力 多元接続技術の活用 空間符号化技術の活用 →協力ダイバシチ しかし、従来の空間ダイバシチ手法では、複数のアンテナをお互いに十分離して設置し、それらの受信信号を同軸ケーブル等で受信機に伝送し、合成するという構成をとっています。これでは、システムの設置やブランチの追加に対して配線の変更が必要で、柔軟性が低下してしまいます。 そこで、本研究では、無線中継器を用いる方法に着目いたします。 この方法では、送信機と受信機の間に複数の中継器を設置し、それらの中継器からの信号を合成することでダイバシチ利得を得ます。これだと、有線でブランチを設置する場合に比べて柔軟な構成が可能となります。

複数の中継器の利用 中継器を分離しない 非再生中継 再生中継 送受信機間をMIMOとみなす 各中継器は共通の増幅率α増幅し再送信 複数の中継器の利用 中継器を分離しない 送受信機間をMIMOとみなす 非再生中継 各中継器は共通の増幅率α増幅し再送信 中継器の送受信は何らかの(FDM,TDM等)方法で分離 再生中継 中継器受信信号を復調・復号. 受信信号成分を推定 送信信号ベクトル推定値×チャネル推定値 しかし、もし、送受信端末が複数のアンテナを持っていれば、中継端末を全て分離する必要は無いのではないかということが考えられます。 そこで本研究では、送受信端末が複数のアンテナを持つ場合を考え、 中継端末を介した送受信端末間のチャネルを、ひとつのMIMOチャネルとみなします。 このようにみなした場合、送受信端末で工夫できるダイバシチ手法としては、送受信端末の持つアンテナの組毎にパスを分解し、合成することでダイバシチを得ることができます。

複数の中継器の利用 協力中継 協力中継(cooperative diversity) 中継器で誤り検出を行う 複数の中継器の利用 協力中継 中継器群を一つの送信機のようにみなす 協力中継(cooperative diversity) 中継器で誤り検出を行う 誤り検出無しの中継器は同じデータを共有 各中継器が協力して(空間符号化により)データを送出 しかし、もし、送受信端末が複数のアンテナを持っていれば、中継端末を全て分離する必要は無いのではないかということが考えられます。 そこで本研究では、送受信端末が複数のアンテナを持つ場合を考え、 中継端末を介した送受信端末間のチャネルを、ひとつのMIMOチャネルとみなします。 このようにみなした場合、送受信端末で工夫できるダイバシチ手法としては、送受信端末の持つアンテナの組毎にパスを分解し、合成することでダイバシチを得ることができます。

センサネットワークにおける隠れMIMO

センサネットワークにおける隠れMIMO Hidden Source

事前確率について :チャネルの性質  (伝送特性,雑音特性,干渉特性) :事前確率=外部情報

Turbo 符号・復号 同一情報を複数チャネル伝送 それぞれのチャネルの復号結果を 他方のチャネルの復号時に事前情報として利用 Encoder 1 Encoder 2 П Decoder 1 Decoder 2 -1 channel Interleaver De-Interleaver Turbo encoder Turbo decoder info. bits

相関のある情報の利用

「外部情報」 :チャネルの性質 (伝送特性,雑音特性,干渉特性) :事前確率=外部情報 狭義(通常の定義): 広義: 最適受信における事前確率情報 広義: 注目している通信システムの「外」から得た情報. 位置,速度,電源状況,温湿度,人口密度... チャネルの性質の推定にも活用. :チャネルの性質  (伝送特性,雑音特性,干渉特性) :事前確率=外部情報

Nons for future Communications 無線通信の多様性は環境の多様性 深宇宙~Body Area 光,無線周波数,超音波 ファイバー,電力線(無線?!)・空間伝送 「非」「non」環境 「非」「non」が無い通常環境より一般的. 通常環境の理解のためにも重要 非線形   非静止  - 静止 非ガウス - ガウス 非白色  - 白色 非定常  - 定常 1対1   - 多対多,マルチホップ