エレベーター保守契約についての マネジメント的考察 正会員 増永久仁郎 (マンション管理士 管理組合のマネジメントを研究する会) 同 北井秀夫 同 桝谷雄三 (管理組合理事長 管理組合のマネジメントを研究する会)
1)エレベーターの構造
2)エレベーターの保守契約とは? POG契約:下記の消耗品以外の部品の取替えは有償 カーボンコンタクト、フィンガー、 カーボンコンタクト、フィンガー、 回転カーボンブラシ、ヒューズ類、リード線、 ランプ類、補充用油、脂類、ウエス FM契約 :下記以外の部品の交換は無償 巻上機の一式取替え、ギアケースの取替え、 制御盤等の一式取替え、キャビネット取替 ★FM契約は中低額の部品の交換を対象にしていることが解る。
3)エレベーター保守契約とは? POG(点検費用) + 部品交換・修理費用 = FM(フルメンテナンス)
4)4件の事例 差額 = 9,995千円 ①Sマンション (竣工1984年11月、共同住宅69戸 14F建て) (竣工1984年11月、共同住宅69戸 14F建て) FM契約の31年間の保守費用合計 =28,427千円 POG契約の31年間の保守費用合計 = 10,044千円 部品交換・修理の合計金額 = 18,388千円 差額 = 9,995千円
差額 =7,609千円 ②Rマンション(竣工1978年3月 11F建て ) ※当マンションは当初からFM契約であったが、 ②Rマンション(竣工1978年3月 11F建て ) ※当マンションは当初からFM契約であったが、 竣工24年目にエレベーターの更新工事を行い、 その後はFM契約からPOG契約に切り替えた。 FM契約の16年間の保守費用合計 =17,169千円 POG契約の16年間の保守費用合計 = 5,723千円 部品交換・修理の合計金額 = 3,837千円 差額 =7,609千円
差額 = 12,521千円 ③Rマンション (竣工2000年11月 共同住宅181戸 7F建て) (竣工2000年11月 共同住宅181戸 7F建て) FM契約の16年間の保守費用合計 =29,160千円 POG契約の16年間の保守費用合計 =11,664千円 部品交換・修理の合計金額 = 4,975千円 差額 = 12,521千円
差額 = 1,778千円 ④Gマンション (竣工1996年3月 共同住宅47戸 7F建て) FM契約の保守費用合計 =4,482千円 (竣工1996年3月 共同住宅47戸 7F建て) FM契約の保守費用合計 =4,482千円 POG契約の保守費用合計 =2,203千円 部品交換・修理の合計金額 = 500千円 差額 = 1,778千円
日立 東芝 フジテック OTS 5)エレベーター保守会社 ①大手5社 三菱 ★大手5社は他のメーカーの保守契約は受託しない。 5)エレベーター保守会社 ①大手5社 三菱 日立 東芝 フジテック OTS ★大手5社は他のメーカーの保守契約は受託しない。 ②多くの独立系があり、 タワーマンションなどの高機能エレベーターを除いてほとんどの保守業務は受託する。
6)エレベーター保守業界の現状 ①FM契約とPOG契約の保守料金の明確な 算出根拠は不明である。 ②メーカー系はFM契約を薦める傾向が強い。 ③竣工時は1年間のメーカー保証があるにも 関わらずFM契約になっている。 ④メーカー系保守業者はPOG契約のデメリットを 強調する傾向が強い。 例:総会承認の必要性や故障時の部品の 納入遅れの可能性 ⑤独立系の経営者はメーカー系の退職者が多い。
締結が有効 7)提言 ①エレベーター管理会計の創設 ※部品交換・補修費用を管理組合で備蓄 (管理組合の財政基盤の強化) 7)提言 ①エレベーター管理会計の創設 ※部品交換・補修費用を管理組合で備蓄 (管理組合の財政基盤の強化) 緊急の部品交換や補修は管理費で処理することで即応性が生まれる。 ②エレベーターの長期修繕計画(部品交換表)の入手 ③FM契約からPOG契約の切り替えが15年以内であれば ライフサイクルコストが安くなる可能性が高い。 ④POG契約は竣工25年以内で更新工事をする方が効率的である。 ※FM契約の場合はできるだけ更新時期を遅らせる方が得である。 ⑤POG契約の故障リスクを保証する「機械保険」の 締結が有効