中国の資金循環モデルによる 財政・金融政策の考察 中国の資金循環モデルによる 財政・金融政策の考察 張 南 経済統計学会第48回全国総会
目次 中国経済における資金循環の特徴 資金循環の理論モデル 推定結果と分析 政策シミュレーション 分析の結論と今後の課題
1.中国資金循環の特徴 貯蓄超過と相対的資金余剰 直接投資を中心とした大規模な外資の流入 経常収支黒字と資本収支黒字 外貨準備の逓増と資本逃避 資金純輸出の資金循環パターン
表1 海外部門の資金の流れ(単位:億元)
2.理論モデルの作成
表2 簡略の資金循環勘定(実物取引)
資金循環のバランス式 Σ部門別付加価値=GDP GDP+純財産所得=第1次所得 =GNI(=GNP) GNI-経常移転=可処分所得 可処分所得-最終消費=総貯蓄 総貯蓄+純資本移転-総投資 =海外資金純フロー 海外資金純フロー =国内資金供給-国内資金需要
モデルの特定化
データ: 推定方法: 中国資金循環勘定、 中国統計年鑑、IFSなど データ: 推定方法: 中国資金循環勘定、 中国統計年鑑、IFSなど 実質実効為替レート(Real Effective Exchange Rate) 世界利子率 連立方程式 3段階最小2乗法 (Three Stage Least Squares method: 3SLS)
3.推定結果と分析
政策のシミュレーション 政策シミュレーションの基本的前題: 政府支出は、2002年より6%増で2005年までに、 2005年から10%増で2010年まで継続する。 資金供給量は、2002年より14%増で2010年まで継続する。 消費者物価指数は、2002年から2005年まで3%で、2006から5%増の物価水準で2010年まで継続する。 シミュレーションの時期は1992年から2010年まで、中間乗数を計算する期間は4期間とする。
財政政策と金融政策の即時的効果
財政政策と金融政策の波及効果
財政・金融政策の総合効果
推計結果の信頼度
クラウディングアウト効果(Crowding Out Effect)
分析の結論 財政政政策の即時的効果は大きく機能していたが、波及効果はマイナスになっている。 金融政策の即時的効果も波及効果も弱く、金融政策の手段がうまく利用されていない。 人民元為替レートは、ほぼ固定レートとしており、大規模の国際資本移動が存在しているので、財政政策は有効であるが、金融政策は有効性を失う、或いは低下することになっている。 実体経済と金融経済の発展のアンバランスで、社会資金需給に構造的な矛盾が存在しており、財政政策と金融政策の協調運用がますます重要であろう。
今後の課題 統計データの充実: モデルの整備:中国経済発展の実際、特徴 フローの均衡を取り扱ってきたが、さらに資本ストックの変化がマクロ経済に対する影響、各主体の期待変化などの考察も重要であろう。