2 経済学者らしく考える
経済学者らしく考える どの学問分野にも独特の用語がある。 数学 心理学 法学 経済学(Economics) 積分 公理 ベクトル空間 自我 イド 認知的不協和 (cognitive dissonance) 法学 禁反言(estoppel) 私犯(torts) 裁判地(venues) 経済学(Economics) 供給(supply) 機会費用(opportunity cost) 弾力性(elasticity) 消費者余剰(consumer surplus) 需要 (demand) 比較優位(comparative advantage) 死加重 (deadweight loss)
経済学者らしく考える 経済学は君たちを以下のように訓練する. . . . 代替案と比較して考えるようになる。 個人的な選択及び社会としての選択の費用(cost)を評価するようになる。 ある事柄と別の事柄がどんなふうに関係しているかを検討し理解するようになる。 2
科学者としての経済学者 経済学的な考え方は. . . 分析的な思考、客観的な思考を含んでいる。 そして、科学的な方法を利用する。 3
複雑な現実世界がどのように働いているかを説明するのに、抽象的なモデル(模型)を利用する。 科学的方法: 観察、理論、そしてまた観察 複雑な現実世界がどのように働いているかを説明するのに、抽象的なモデル(模型)を利用する。 理論を作り出し、そして理論を評価する為にデータを集めて分析する。 4
仮定の役割 経済学者は世界をより簡単に理解するためにいくつもの仮定を立てる。 科学的思考の腕のみせどころは、どんな仮定を設けるかである。 経済学者は、異なる質問を答えるためには異なる仮定を利用する。
経済学者は現実世界の理解を進めるために現実を単純化したモデル(模型)を利用する。 二つのもっとも基本的な経済モデルは、 フロー循環図(The Circular Flow Diagram) 生産可能性フロンティア(The Production Possibilities Frontier)、である。
第一のモデル: フロー循環図 フロー循環図( circular-flow diagram) とは、視覚的な経済モデルであり、お金のフローがどのように家計と企業の間を流れているかを示している。 6
図2-1 フロー循環図(教科書 35頁) 企業は売り手 家計は買い手 財・サービス の市場 売上 支出 購入された 財・サービス 販売された 図2-1 フロー循環図(教科書 35頁) 企業は売り手 家計は買い手 財・サービス の市場 売上 支出 購入された 財・サービス 販売された 財・サービス 企業 財・サービスを生産し 販売する 生産要素を雇用し 使用する 財・サービスを購入し 消費する 生産要素を所有し 販売する 家計 家計は売り手 企業は買い手 生産要素市場 生産へ の投入 労働・土地 ・資本 賃金・賃貸料 ・利潤 所得 = 財・サービスの 流れ = お金の流れ Copyright © 2004 South-Western
第一のモデル: フロー循環図(教科書 35頁) 企業(Firms) 家計(Households) 財・サービスを生産して販売する 第一のモデル: フロー循環図(教科書 35頁) 企業(Firms) 財・サービスを生産して販売する 生産要素を雇用して利用する 家計(Households) 財・サービスを購入し消費する 生産要素を所有し販売する 7
第一のモデル: フロー循環図(教科書 35頁) 財・サービスの市場 企業は売り手 家計は買い手 生産要素市場 家計は売り手 企業は買い手 7
生産要素(Factors of Production) 第一のモデル: フロー循環図(教科書 35頁) 生産要素(Factors of Production) 財・サービスを生産するための投入物(Inputs) 土地、労働、そして資本 7
第二のモデル: 生産可能性フロンティア 生産可能性フロンティア ( production possibilities frontier) とは、利用可能な生産要素と利用可能な生産技術が与えられている(もうすでに決まっている)場合に、その経済が生産することができる生産物のさまざまな組み合わせを描いたグラフ。 14
図2-2 生産可能性フロンティア(教科書 38頁) コンピュータ の生産台数 3,000 D C 2,200 600 A 700 2,000 図2-2 生産可能性フロンティア(教科書 38頁) コンピュータ の生産台数 3,000 D C 2,200 600 A 700 2,000 生産可能性 フロンティア 1,000 300 B 自動車の 生産台数 1,000 Copyright©2003 Southwestern/Thomson Learning
生産可能性フロンティアによって説明されている概念(Concepts)とは、 第二のモデル: 生産可能性フロンティア 生産可能性フロンティアによって説明されている概念(Concepts)とは、 効率性(Efficiency) トレードオフ(Tradeoffs) 機会費用(Opportunity Cost) 経済成長(Economic Growth) 21
図2-3 生産可能性フロンティアのシフト(移動) 図2-3 生産可能性フロンティアのシフト(移動) コンピュータ の生産台数 4,000 3,000 1,000 2,100 750 E 2,000 700 A 自動車の生産台数 Copyright © 2004 South-Western
ミクロ経済学とマクロ経済学 ミクロ経済学(Microeconomics) が焦点をあてるのは、経済の個別の部分である。 具体的には、どのように家計と企業が意思決定を行い、そして特定の市場において相互に作用しあっているか。 マクロ経済学(Macroeconomics) が見ているのは経済全体である。 経済全体の現象、例えば、インフレーション、失業、そして経済成長などである。 13
政策立案者としての経済学者 経済学者が現実世界を説明しようとするときには、彼らは科学者となる。 経済学者が現実世界を変えようとするときには、彼らは政策立案者(policy advisor:政策顧問)になる。 30
実証分析と規範的分析 実証な主張(Positive statements) とは、現実世界がどのようになっているかについての主張。 しばしば、叙述分析(descriptive analysis)と呼ばれる。 規範的な主張(Normative statements) とは、現実世界がどのようにあるべきかを規定しようとする主張。 しばしば、処方的な分析(prescriptive analysis)と呼ばれる。 31
? ? ? 実証分析と規範的分析 実証的な主張か、規範的な主張か? 日本酒への税金を上げれば、日本酒の売り上げは減少する。 実証的 財政赤字をたくさん出すと、利子率は次第には上昇する。 ? ? 32
? ? ? 実証分析と規範的分析 実証的な主張か、規範的な主張か? 日本酒は害悪なので、税金を高くすべきである。 規範的 政府は、貧乏人の間のタバコに関連した病気を治療する費用をタバコ会社から集めることができるようにするべきである。 ? ? 32
ワシントンや東京におけるエコノミスト・経済学者 米国の首都ワシントンにおけるエコノミスト・経済学者は、連邦政府の三権(立法・行政・司法)において政策立案における顧問の役割を果たしている。 東京におけるエコノミスト・経済学者は、主として行政府の内外(竹中大臣、審議会、等)において政策立案における顧問の役割を果たしている。 33
東京のエコノミスト達 経済データを集め、経済政策を立案している政府の府・省・庁には、、、 内閣府(国民経済計算、景気のデータ等) http://www.cao.go.jp/ 総務省(家計調査) http://www.soumu.go.jp/ 財務省(財政のデータ、企業のデータ) http://www.mof.go.jp/ 経済産業省(企業のデータ) http://www.meti.go.jp/ 日本銀行(金融のデータ) http://www.boj.or.jp/ 33
なぜ経済学者の意見は一致しないのか 現実世界がどのように動いているかに関して対立する実証的諸理論のなかで、どの理論が妥当性をもっているかについて意見が一致しない場合がある。 経済学者自身の価値観が異なり、そのため、政策が達成すべき目標について規範的な考え方が異なっている可能性。 エセ経済学者たちの撹乱作業 35
表2-1 政策提言と経済学者の賛同率(教科書 48頁) 表2-1 政策提言と経済学者の賛同率(教科書 48頁) 家賃の上限規制は住宅供給の質・量ともに低下させる(93%) 関税と輸入割当は一般的な経済厚生を低下させる(93%) 変動為替相場制度は有効な国際通貨制度である(90%) 不完全雇用状態の経済では、財政政策(減税や財政支出拡大)には顕著な景気刺激効果がある。 連邦予算を均衡させるためには、毎年の値ではなく景気循環を通じての値を均衡させるべきである(85%) 生活扶助受給者への現金給付は、同額の現物給付よりも受給者の厚生を高める(84%) 巨額の財政赤字は経済に悪影響をもたらす(83%) 最低賃金の引き上げは、若年労働者と未熟練労働者の失業率を引き上げる(79%) 政府は社会福祉制度を「負の所得税」形式に改革すべきである。 環境汚染規制のアプローチとしては、排出税や売買可能な排出権のほうが、総量規制の導入よりも優れている(78%) Copyright © 2004 South-Western
要約 経済学者は、科学者の客観性をもって研究テーマに取り組む。 経済学者は、適切な仮定を設定し、単純なモデルを構築して、自分たちを取り囲む現実世界を理解しようとする。 二つの単純な経済モデルは、フロー循環図と生産可能性フロンティアである。
要約 経済学は二つの分野に分けられている ミクロ経済学者は、市場における家計と企業の意思決定を研究する。 マクロ経済学者は、経済全体に影響を与える要因や趨勢を研究する。
要約 実証的な主張とは、世界がどうあるかについての主張である。 規範的な主張とは、世界がどうあるべきかについての主張である。 経済学者が規範的な主張を述べる場合には、それは科学者というよりも政策顧問としての行為である。
要約 経済学者たちが政策立案者に相反するアドバイスを行うのは、科学的な判断の違いか、価値観の違いかによる。 また、経済学者が一致してアドバイスしても、政策立案者のほうがそれを無視してしまうこともある。