エンドオブライフケアにおける 症状マネジメント End-of-Life Nursing Education Consortium Japan クリティカルケアカリキュラム モジュール 3 エンドオブライフケアにおける 症状マネジメント
モジュールの概要 このモジュールでは、疼痛以外に クリティカルケア領域でよくみられる 症状とそれらの症状マネジメントを 行う際のクリティカルケア看護師の 役割について理解する 2
目標 1 2 3 4 クリティカルケア領域におけるエンド・オブ・ライフにある患者に生じる症状の特徴を理解することが できる クリティカルケア領域におけるエンド・オブ・ライフにある患者に生じる症状の特徴を理解することが できる 主観および客観的な情報を用いて症状をアセスメントするために必要な項目を説明することができる エンド・オブ・ライフにある患者の症状を緩和する ための効果的な治療とケアを理解することが できる 多職種と連携をはかり、症状マネジメントに 取り組む際の看護師の役割について理解する ことができる 2 3 4 3 3
講義内容 クリティカルケア領域における 症状マネジメントの考え方 身体面の症状 精神面の症状 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. 4 4
エンド・オブ・ライフでよくみられる症状 非悪性腫瘍患者のエンド・オブ・ライフでは 疼痛よりも呼吸困難や浮腫の症状が多く認められる 死亡前の2週間における主な身体症状 症状 非悪性腫瘍患者(n = 656) 悪性腫瘍患者(n = 183) 呼吸困難 479 (73.0) 107 (58.5) 浮腫 234 (35.7) 59 (32.2) 疼痛 198 (30.2) 118 (64.5) 咳嗽 194 (29.6) 43 (23.5) 疲労感 164 (25.0) 117 (63.9) 食欲不振 133 (20.3) 88 (48.1) 腸管障害 107 (16.3) 錯乱 97 (14.8) 56 (30.6) 悪心/嘔吐 69 (10.5) 51 (27.9) 人数(割合) (Lau et al,2010)より一部抜粋 非悪性腫瘍患者のエンド・オブ・ライフでは 疼痛よりも呼吸困難や浮腫の症状が多く認められる 5 5
重症度の高いICU患者のエンド・オブ・ライフでみられる症状 (%) (KA Puntillo et al, 2010b)を一部改変 n=171 クリティカルケア領域における患者もエンド・オブ・ライフには 倦怠感や口渇などの不快な症状を経験している 6 6
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●腹部膨満感 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 7 7
クリティカルケア領域における エンド・オブ・ライフの患者の特徴 ■多くの場合症状や苦痛を伝えられない ■症状に伴う苦痛は交感神経を活性化し、循環系 の負担になりうる ■鎮静により交感神経活動が減弱して血圧 低下を起こす危険性がある ⇒症状緩和が呼吸や循環系に影響を及ぼす こともある (立野他,2014) (池松,2008a) (人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン http://square.umin.ac.jp/jrcm/contents/guide/page03.htmll) 8 8
症状マネジメントで大切なこと ■患者の表情やバイタルサインなど客観的な 情報からその変化をとらえて介入する ■患者が症状を訴えられる場合は患者と症状 マネジメントの目標を共有する ■薬物治療、非薬物療法を適切に用いる ■多職種で協働して終末期医療に取り組む ■継続的アセスメントや根拠に基づいた治療や ケアを行う (立野他, 2014) (内布, 2010) (Nelson et al, 2001 : McAdam et al, 2010) (安井, 2013) (K Puntillo et al, 2010a) 9 9
各症状についての展開 ■症状の定義と患者に与える影響 ■症状の原因 ■症状のアセスメントの視点 ■症状に対する主な治療 ■症状に対するケア
講義内容 クリティカルケア領域における 症状マネジメントの考え方 身体面の症状 精神面の症状 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. 11 11
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●腹部膨満感 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 12 12
呼吸困難とは <呼吸困難の定義> ■「呼吸時の不快な感覚」という主観的な症状 「動脈血酸素分圧≦60Torr」と定義される呼吸不全とは必ずしもイコールではない <患者に与える影響> ■緩和されるべき最大の症状である ■QOLや不安・抑うつなどの精神症状と関連する (中島,2013) (Truog et al,2001) (田中,2013) 13 13
呼吸困難の原因 ●喘息、ARDS、気管支障害、COPD ●嚢胞性線維症、間質性肺病変、肺癌 ●肺炎、気胸、肺塞栓症 ●患者/呼吸器の非同調 ●肺炎、気胸、肺塞栓症 ●患者/呼吸器の非同調 呼吸器系 ●貧血、先天性心奇形 ●体液過負荷、心不全、上大静脈症候群 循環器系 ●筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、 多発性硬化症、重症筋無力症 ●呼吸筋力低下(デコンディショニング) 神経筋系 心因性 ●不安、恐怖、抑うつ (Campbell,2004)を一部改変 14 14
呼吸困難のアセスメントの視点 ■主観的な指標 ● NRS、VAS、フェイススケール ●自覚する息苦しさと程度 ●呼吸困難による動作の制限 ■主観的な指標 ● NRS、VAS、フェイススケール ●自覚する息苦しさと程度 ●呼吸困難による動作の制限 ■客観的な指標 ●フィジカルイグザミネーション、モニタリング ●診断検査 血液データ、血液ガス検査、胸部X線、CT 経皮的酸素飽和度(SpO2) (Powers et al,1999; Campbell,2007;Kuebler,2004) 15 15
呼吸困難に対する主な治療 原因の治療 薬物療法 ●臓器不全、悪性腫瘍に対する標準的で適正な治療 ●モルヒネを中心としたオピオイド 原因の治療 ●臓器不全、悪性腫瘍に対する標準的で適正な治療 薬物療法 ●モルヒネを中心としたオピオイド ●抗不安薬を中心とした抗精神薬 ●副腎皮質ステロイド薬、気管支拡張薬 非薬物療法 ●重度の心嚢液や胸水に対する適切な排液 ●低酸素血症に対する酸素投与 換気サポート(人工呼吸、NPPV) (平原他,2011;Kuebler,2004;Campbell,2004;中島,2013;竹川,2011) 16 16
呼吸困難に対するケア ■安楽な姿勢(ポジショニング) ■呼吸法・呼吸介助法 ■排痰を促すケア ■傍にいて声をかけたりタッチングを行う ■酸素消費量を抑えるための工夫 ■イメージ法などのリラクセーション ■室温・風向設定 (中島,2013; 田中,2005a;Kuebler,2004;高田,2014) 17 17
気管吸引について ■体位:排痰体位を効果的に利用 ■タイミング:必要時に実施 ■吸引圧:150mmHg(20kPa)未満 ■時間:15秒以内(可能な限り短時間で) ■深さ:気管分岐部に当たらない位置まで ■カテーテルの太さ: カテーテル外径が挿管チューブ内径の1/2以下 (American Association for Respiratory Care, 2010;中根 正樹, 2013) 18 18
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●腹部膨満感 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 19 19
全身倦怠感とは <定義> ■疲労、衰弱、活力喪失の主観的感覚 <患者に与える影響> ■全身倦怠感は、背景となる疾患ががんで あっても、非がんであっても、患者のQOLに 大きな影響を及ぼす ■過小評価や過小治療となりやすい (European Association for Palliative Care,2008) (佐藤.,2013) 20 20
全身倦怠感の分類 一次性倦怠感: 二次性倦怠感: 疾患そのものが原因 ● 貧血 ● 感染 ● 悪液質 ● 代謝障害 ● 内分泌異常 ● 末梢組織でのエネルギーの減少・枯渇 ● 中枢神経でのセロトニン代謝の変化 ● 視床下部-下垂体-副腎系の調整異常 ● サイトカインの増加 二次性倦怠感: 疾患に付随する 病態や治療が原因 ● 貧血 ● 感染 ● 悪液質 ● 代謝障害 ● 内分泌異常 ● 脱水・電解質異常 ● 臓器不全 ● 薬剤 ● 精神的苦痛 前滝,2010 (佐藤,2013.一部改変) 21 21
全身倦怠感のアセスメントの視点 ■全身倦怠感の原因 ■全身倦怠感の原因からもたらされる症状の有無 ●疼痛、呼吸困難、不眠、悪心・嘔吐、下痢 ●疼痛、呼吸困難、不眠、悪心・嘔吐、下痢 ■症状の経過と程度 ●発症時期、どのように感じ始めたか、経時的変化、 ●緩和因子、増悪因子、日常生活への支障の有無、 ●全身倦怠感の程度(NRS/VAS) (佐藤, 2013)を一部改変 22 22
全身倦怠感に対する主な治療 原因の治療 ●貧血、脱水、電解質・血糖値補正 ●感染症のコントロール ●不安、抑うつ、不眠への対応 原因の治療 ●貧血、脱水、電解質・血糖値補正 ●感染症のコントロール ●不安、抑うつ、不眠への対応 ●原因となる薬物の検索 薬物療法 ●副腎皮質ステロイド (佐藤, 2013) 23 23
全身倦怠感に対するケア ■エネルギーの温存 ■安楽なポジショニング ■睡眠の確保 ■快の感覚を高めるケアの提供 ●温罨法・冷罨法 ●マッサージ ●温罨法・冷罨法 ●リラクセーション ●清潔ケア など (佐藤,2013;前滝, 2010; National Comprehensive Cancer Network HP) 24 24
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●腹部膨満感 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 25 25
浮腫とは <定義> ■組織間隙に過剰な水分が貯留した状態 <患者に与える影響> ■ 浮腫は日常生活動作だけでなく心理社会的な 面で患者およびその家族に負の影響を及ぼす (大橋, 2003) 大橋, 2003 ■浮腫は重だるさなどの身体的苦痛を生じ させるだけでなく、ボディイメージの変容から死が間近に迫っているという精神的な不安をもたらす 森田 他, 1998 (蘆野, 2013) 26 26
浮腫の原因 全身性浮腫 局所性浮腫 ● 栄養障害(低蛋白) ● 過剰輸液 ● 肝不全、腎不全、心不全 ● 貧血 ● 薬剤 ● 甲状腺機能低下症 局所性浮腫 ● リンパの遮断/破綻 手術・放射線治療、感染など ● 静脈閉塞 深部静脈血栓、上・下大静脈閉塞 ● リンパ静脈性浮腫 活動低下、神経障害による局所の脱力 (蘆野,2013)を一部改変 27 27
浮腫のアセスメントの視点 ■ 浮腫の部位 ■ 浮腫の程度 ■ 浮腫の原因・誘因 ■ 検査データ ■ 随伴症状の有無と程度 ■ 日常生活動作への影響 ■ 衣類、下着や履物による締めつけの有無と程度 ■ 浮腫に対する患者・家族の思い 28 28
浮腫に対する主な治療 原因の治療 薬物療法 ●全身性か局所性なのかを判断し対応する 全身性浮腫: 原因の治療 ●全身性か局所性なのかを判断し対応する 全身性浮腫: 低タンパク血症、心疾患、腎疾患、薬剤性 など 局所性浮腫: 静脈血栓、蜂窩織炎、リンパ浮腫 など 薬物療法 ●水分出納の調節、利尿剤の投与 ●血漿タンパクの補充(アルブミンの投与) ●急性感染症炎症(蜂窩織炎など)に対する抗菌薬 の投与 29 29
浮腫に対するケア ■体位の工夫 ■スキンケア ことが目標である ■弾性ストッキング、弾力包帯の着用の検討 ●枕やクッションなどの寝具を工夫する ■スキンケア ●皮膚の清潔、保湿の保持、感染を起こさない ことが目標である ■弾性ストッキング、弾力包帯の着用の検討 ●圧迫が身体の負担になることもあるため、 注意が必要 ■精神面のケア ●患者および家族の思いを傾聴し、支持する (奥, 2008)一部改変 30 30
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●腹部膨満感 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 31 31
口渇・口腔内乾燥とは <定義> ■口渇:水分を摂取したいという欲望(看護大辞典第6版) ■口腔内乾燥症:唾液の分泌が低下して口が乾いた状態。口が乾いていると自覚する症状すべて (日本口腔外科学会) <患者に与える影響> ■痛み、粘膜の外傷、咀嚼障害、嚥下障害など ■ネバネバ感、ひりひりする、う蝕、歯垢の増加、 口臭が強くなる (Walker,2011b.篠原,2012) (日本口腔外科学会) 32 32
口渇・口腔内乾燥の原因 唾液の 分泌減少 乾燥を助長 唾液分布 異常 ●唾液腺の機能は正常 禁食:静脈栄養、経管栄養 禁食:静脈栄養、経管栄養 咀嚼障害:歯痛、義歯不適合など 脱水:下痢、嘔吐、発熱、高血糖など 薬剤の副作用 ●唾液腺の機能低下 唾液の 分泌減少 ●口呼吸、開口状態、挿管 ●発熱、低湿度環境 乾燥を助長 ●攪拌力低下 ●保水困難:糸状乳頭消失(平滑舌) 唾液分布 異常 (長坂,2012.寺岡,2008.)を一部改変 33 33
口渇・口腔内乾燥のアセスメントの視点 ■ 緩和因子 ■ 口腔内の観察 ●口腔周囲の状態(潰瘍、口唇の裂創、乾燥) ■ 原因についての情報収集 ■ 口渇の自覚の程度、生活への影響 ■ 緩和因子 ■ 口腔内の観察 ●口腔周囲の状態(潰瘍、口唇の裂創、乾燥) ●舌の状態と動き(舌苔、乾燥、萎縮、汚染) ●歯肉の状態(頬、口蓋、口腔前庭、口底) ●歯の状態(う歯、ぐらつき) ●開口量、口臭、嚥下障害 (露木,2011)
口渇・口腔内乾燥に対する治療とケア 治療 ■原因治療 ■セルフケアが可能な場合:洗口を促す ケア ■セルフケアが困難な場合 清拭:水で湿らせたガーゼ、水スプレー、 凍らせたスワブの使用 ■人工唾液、保湿剤の使用 ■酸素療法中の十分な加湿 (篠原,2012) ケア (長坂, 2012.K.Puntillo,2014) 35 35
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●腹部膨満感 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 36 36
腹部膨満感とは <腹部膨満感の定義> ■腹部膨満感とは、腹部膨隆によって生じる腹部の張りという感覚を指す <患者に与える影響> <患者に与える影響> ■原因と程度によりお腹が重い、腰が痛い(重い)、悪心・嘔吐、腹痛、呼吸困難、座れない、全身倦怠感などの症状につながる (岡村、2010) (西崎,2006) 37 37
腹部膨満感の原因の分類 ■腹部腫瘤の有無により分類される ●腹腔内臓器の膨大・膨満・便秘、宿便 ●腹水 ●腸閉塞 ●鼓腸 ●精神的要因 ●機能性消化管障害 (高松,1998)を一部改変
腹部膨満感のアセスメントの視点 ■自覚症状の評価 ● NRS(Numerical Rating Scale) ■自覚症状の評価 ● NRS(Numerical Rating Scale) ● VAS (Visual Analogue Scale) ●フェイススケール(Face Scale) ■ 客観的な評価 ●腹部膨満感の原因の評価 ●聴診、打診、触診 ●腹部X線、CT、腹部超音波などの画像診断 (西﨑,2006) 39 39
腹部膨満感に対する主な治療 原因病態の治療 対症療法 ●高カロリー輸液の中止、輸液の考慮、水分・塩分制限 原因病態の治療 ●高カロリー輸液の中止、輸液の考慮、水分・塩分制限 ●腹水穿刺 ●利尿剤の投与 スピロノラクトン、フロセミド ●アルブミン製剤 ●イレウス管 ●ステロイドの使用 対症療法 ● NSAIDS、モルヒネ、鎮痛補助薬(リドカイン、ケタミン) ●分泌抑制剤(オクトレオチド、ブチルスコポラミン)、制吐剤 (吉田,2005;今津,2011;西﨑,2006;伊藤他,2008) 40 40
腹部膨満感に対するケア ■安楽な体位の工夫 ■訴えの傾聴と外観・容姿の変化への配慮 ■排便コントロール ■皮膚・粘膜の保護 ■転倒防止 ■衣服や下着を緩やかにする工夫 ■食事を食べやすく少量ずつ取れる工夫 ■室温調整 (西﨑,2006; 伊藤他,2008;吉田,2005) 41 41
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●腹部膨満感 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 42 42
睡眠障害とは <定義> 入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・過剰睡眠がある <患者に与える影響> ■免疫機能の低下 ■抑うつ、不安、せん妄 ■睡眠時間、その効用及び質に対する不満足感を 反映した多様な訴え 入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・過剰睡眠がある (明智、2013) <患者に与える影響> ■免疫機能の低下 ■抑うつ、不安、せん妄 ■集中困難、疲労、疼痛耐性低下 ■循環器・呼吸器系障害 ■QOL低下、死亡率の増加 (Milagros I et al.,2009)
睡眠障害の原因 ■環境要因 ●入院環境(音、光) ● ICU環境(人工呼吸、昼夜を問わない処置、ケア) ■ 身体的要因 ●重症病態、敗血症、低酸素、疼痛、呼吸困難 ■薬剤性要因 ●麻薬製剤、鎮痛薬、抗コリン薬、抗痙攣薬、 ●心血管作動薬、ステロイド、抗うつ薬 ■精神心理的要因 ●抑うつ、不安、せん妄、ストレス (明智,2013、Xavier D et al.,2008,Milagros I et al.,2009 )
睡眠障害のアセスメントの視点 ■睡眠障害の原因、背景 ■睡眠障害のタイプ ●入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害 ■合計睡眠時間 ■不眠に随伴する症状の有無 ●日中の眠気、倦怠感、疲労感、イライラ感 ■QOL低下の有無 ■心身の変化 ●せん妄や抑うつ症状の存在 (津田,北林,2000、明智,2013、 Gabor JY et al.,2003 )
睡眠障害の治療 原因の治療 ■原因を除去する ■GABA受容体作動薬 プロポフォール ■α受容体作動薬 デクスメデトミジン塩酸塩 ■ベンゾジアゼピン系睡眠薬 ミタゾラム ■メラトニン受容体アゴニスト ラメルテオン 薬物療法
睡眠障害のケア ■不快な症状のマネジメント ■環境調整 ●アラーム調整、耳栓、静かな音楽 ●光を浴びる、アイマスク ●昼夜のリズムを整える ●室温、眠前の温浴 ●夜間のケアを減らす ■精神的介入 ●患者の思いを受け止める ●不安な気持ちに寄り添う ■薬剤の評価 (Kamder BB et al.,2013、尾崎,2011)
講義内容 クリティカルケア領域における 症状マネジメントの考え方 身体面の症状 精神面の症状 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. 48 48
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●腹部膨満感 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 49 49
不安・抑うつとは <定義> ■ 不安:緊張感を伴う不快感。原因もはっきりしない まま楽になれず心的エネルギーを消耗し続 ける状態 ■ 不安:緊張感を伴う不快感。原因もはっきりしない まま楽になれず心的エネルギーを消耗し続 ける状態 ■ 抑うつ:憂うつ、落ち込んだ気持ち、何もかもつまら ない、何をするにも気力がわかないといった 気分 <患者へ与える影響> ■不安・抑うつによる苦痛、 QOLの低下、自殺、 ■適切な意思決定の障害、家族の精神的苦痛 (福嶋,2004) (松本,2012) (大西, 2009. Brown, 2010. Latini,2010.Akechi,2004.Miller,2008) 50 50
不安・抑うつの原因 疾患によるもの 治療によるもの 精神医学的問題 精神的要因 ●コントロール不良な身体症状 ●代謝異常、低酸素、敗血症 ●心不全、肺障害、脳血管障害 治療によるもの ●薬物 ●人工呼吸、侵襲的な処置 精神医学的問題 ●不安障害、恐怖症の既往 ●脳血管障害の既往 精神的要因 ●社会的役割への喪失感、不確実な未来 ●他者に依存しなければならない (福嶋,2004,Szokol JW et al.,2001,Mckinley S et al.,2002 ) 51 51
不安・抑うつのアセスメントの視点 ■ 不安・抑うつの原因・誘因 ■ 精神状態 ●不安や抑うつ気分 ●不安や抑うつ気分 ●客観的な指標(コミュニケーションが取れない場合) ■ 生理的変化 ● 循環器系:動悸、頻脈、血圧変動 など ● 呼吸器系:呼吸困難、過換気症状 など ● 消化器系:悪心・嘔吐、腹痛 など ● 自律神経系:口渇、発汗、頻尿、ふるえ など ● 神経系:頭痛、めまい、耳鳴 など (Jennifer,2010) ■日常生活行動の変化 (福嶋,2004.福田,2004) 52 52
不安・抑うつに対する主な治療 ●原因を治療する ●抗不安薬、抗うつ薬などを検討する ●専門家(精神科医など)に相談する ●精神的なアプローチ ●原因を治療する ●抗不安薬、抗うつ薬などを検討する ●専門家(精神科医など)に相談する ●精神的なアプローチ ●教育的なアプローチ 原因治療 薬物療法 精神療法 (福嶋,2004) 53 53
不安・抑うつに対するケア ■原因の把握 ■身体的苦痛の緩和 ■環境調整 ■日常生活の援助 ■信頼関係の構築 ■患者の思いの傾聴 ■気分転換をはかる ■対処スキルの把握・新たな対処スキルの獲得 ■家族へのアプローチ (白井,2013.Jennifer,2010) 54 54
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●腹部膨満感 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 55 55
診断基準 (DSM-V) ※すべてを満たす場合せん妄と判断 せん妄とは <定義> 軽度から中等度の意識混濁に、幻覚、妄想、興奮などのさまざまな精神症状を伴う特殊な意識障害。低活動型、過活動型、混合型に分類 (明智,2013) 診断基準 (DSM-V) ※すべてを満たす場合せん妄と判断 A.注意障害及び環境に対する見当識の低下 B.短期間のうちに出現(数時間~数日)、1日のうちに変動し夕方や 夜間に増悪する C.認知の障害を伴う D.A.Cの障害は神経認知障害では説明できず、昏睡では起こらない E.病歴、身体診察、臨床検査所見から直接的な生理学的結果に より引き起こされたという証拠がある (American Psychiatric Association, 2013) 56 56
せん妄が患者・家族に与える影響 ■症状自体が患者・家族にとって苦痛となる ■危険行動や事故の原因となる ■家族とのコミュニケーションが困難となる ■患者の意思決定能力が阻害される ■治療選択が困難になる (鶴田,2013) 57 57
危険因子である 年齢、重症度、敗血症、認知症 せん妄の原因 危険因子である 年齢、重症度、敗血症、認知症 薬物 ●オピオイド、ベンゾジアゼピン、ステロイド 神経疾患 ●脳腫瘍、脳血管障害 ●敗血症、肺炎、尿路感染、発熱 、重症急 性疾患、低酸素症、ショック、貧血、脱水、 低栄養、代謝異常 合併症 ●痛み、ICU入室、身体拘束、ストレス、 睡眠障害 環境 (日本版・痛み・不穏・せん妄管理ガイドライン,2014、鶴田,2013) 58 58
せん妄のアセスメントの視点 <客観的な視点での早期発見が重要> ■ 十分な病歴の聴取 ■ 危険因子、原因・誘因の把握 ■ 身体所見 睡眠・覚醒状況、興奮、落ち着きのなさ、妄想、幻覚 ■ 意識レベル、精神状態、コミュニケーションの程度 ■ 評価ツールの使用:客観的な評価ができる ● NEECHAM ● CAM-ICU ● ICDSC 59 59 59
せん妄に対する主な治療 原因の治療 ●原因を推定 ●原因へのアプローチ ●薬物療法 抗精神病薬:ハロペリドール、クロルプロマジン 原因の治療 ●原因を推定 ●原因へのアプローチ ●薬物療法 抗精神病薬:ハロペリドール、クロルプロマジン 非定型抗精神病薬:リスペリドン、オランザピン クエチアビン、アリピプラゾール α刺激薬:塩酸デクスメデトミジン ●専門家(精神科医師など)への相談、チーム介入 対症療法 (鶴田,2013) 60 60
せん妄に対するケア ■直接要因に対するケア ●全身状態を整える(薬剤の確実投与、人工呼吸・補助循環 ●全身状態を整える(薬剤の確実投与、人工呼吸・補助循環 管理、水分出納管理、栄養管理、感染予防、二次障害予防) ■促進要因に対するケア ●環境調整(療養環境の整備、不動化を減らすための調整) ●不安の除去(穏やかな態度で接する) ■準備要因に対するケア ●通常の患者の状態を把握、リスクファクターを意識する ■家族へのケア せん妄の症状を説明、不安を取り除く (鶴田,古賀,ICUのせん妄,金芳堂,2013) 61 61
講義内容 クリティカルケア領域における 症状マネジメントの考え方 身体面の症状 精神面の症状 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. 62 62
結論 ■クリティカルケア領域におけるエンド・オブ・ ライフの患者に生じる症状の特徴を理解する ■主観および客観的な情報を用いて症状の ライフの患者に生じる症状の特徴を理解する ■主観および客観的な情報を用いて症状の アセスメントを継続的に行う ■治療と同時にケアを効果的に取り入れ症状 緩和に努める ■多職種と連携をはかり、症状マネジメントに 取り組む 63 63
補足スライド これ以降のスライドは、必要に 応じて使用してください 64 64
呼吸障害の病態生理 ●呼吸運動の障害(呼吸中枢活動低下) ●ガスの通過障害(気道閉塞) ●肺の膨張不全(肺胞の虚脱) 換気障害 ●肺の膨張不全(肺胞の虚脱) 換気障害 ●換気血流比不均衡(肺胞換気量と血流の 割合不均衡) ● シャント(肺胞虚脱による換気量と血流の ● 死腔増加(血管への血流遮断) ● 拡散障害(肺胞と血管間距離の増大) 酸素化障害 ●混合型障害 ●酸素運搬能力障害(強度の貧血) その他 (池松,2008b)を一部改変 65 65
呼吸困難のフィジカルアセスメントの視点 ■フィジカルアセスメント ●鼻、口、咽頭、喉頭、肺、気道、胸郭、末梢・中枢 ●鼻、口、咽頭、喉頭、肺、気道、胸郭、末梢・中枢 の呼吸中枢を含めた呼吸器系 ●発症時期、随伴症状(咳、痰、喀血、発熱など) ●呼吸パターン、呼吸補助筋の使用、人工呼吸器 との同調性、胸郭の動き ●頻呼吸、頻脈、不整脈、高血圧・低血圧の有無、 チアノーゼ、発熱の有無、意識レベル ●呼吸音(呼吸副雑音の有無、種類) ●打診による鼓音、濁音の有無 (田中,2005a;Kuebler,2004) 66 66
咳とは ■咳の定義と患者に与える影響 ●生理的防御反応だが長引くと疲労と恐怖を招く ■咳の原因 ●疾患、薬物、誤嚥などさまざまである ●生理的防御反応だが長引くと疲労と恐怖を招く ■咳の原因 ●疾患、薬物、誤嚥などさまざまである ■咳のアセスメントの視点 ●湿性・乾性、慢性・急性、頻度、大きさ ■咳の治療(薬物、非薬物) ●薬物:オピオイド、鎮咳薬、ステロイド、抗生剤 ●非薬物:酸素投与、吸入・吸引、加湿 (田中,2005b;Berry,2004) (木澤,2005;Berry,2004) (田中,2005b) (田中,2005b) 67 67
高カルシウム血症 <症状> <治療> ●水分補正 ●薬物療法(骨吸収の抑制、腸管からの吸収抑制) 全身症状 脱水、全身倦怠感 など 全身症状 脱水、全身倦怠感 など 消化器症状 嘔気・嘔吐、食欲不振、消化性潰瘍 など 神経・筋症状 傾眠傾向、筋力低下、意識障害 など 尿路系症状 口渇、多飲、多尿、腎機能低下 心電図異常 QT間隔短縮 など その他 関節痛、皮膚掻痒感 など (阿部, 2008) <治療> ●水分補正 ●薬物療法(骨吸収の抑制、腸管からの吸収抑制) (深川, 2008) 68 68
副腎皮質ステロイド薬の使い方 ■予後予測が3ヵ月未満で、食欲不振、嘔気・嘔吐、全身倦怠感、呼吸困難の症状緩和を目的として、使用することがある <漸減法> ●リンデロン®4~6mg/日を3日間投与し、効果 がある場合は、効果のある最小量に減量 (0.5~4mg/日)効果がない場合は中止する <漸増法> ●リンデロン®0.5mg/日から開始し、0.5mgずつ 4mg/日まで増量する (OPTIM: 緩和ケア普及のための地域プロジェクト, 2008)を一部改変 69 69
Stemmer’s signとは ■浮腫の程度や範囲を簡単に確認するために行う、皮膚をつまみ上げる手法をStemmer’s testと呼ぶ ■通常は皮膚をつまみ上げた場合は、表皮層と真皮層が中心に持ち上がる(つまみ上げることができる)が、軽度のリンパ浮腫になると、表皮層・真皮層に高タンパク性の間質液が貯留するため皮膚をつまみ上げることができなくなる ■つまみ上げられない状態がStemmer’s sign陽性であり、つまみ上げられる状態が、Stemmer’s sign 陰性と判断する 70 70
口腔乾燥症の診断 0度 (正常) 乾燥なし(1~3度の所見がなく、 正常範囲と思われる) 1度 (軽度) 唾液の粘性が亢進している 2度 進行度 判定 0度 (正常) 乾燥なし(1~3度の所見がなく、 正常範囲と思われる) 1度 (軽度) 唾液の粘性が亢進している 2度 (中程度) 唾液中に細かい唾液の泡が見られる 3度 (重症) 舌の上にほとんど唾液が見られず、 乾燥している (柿木, 2000) 71 71
口腔アセスメントガイド (Eilers Oral Assessment Guide: OAG) ■口腔内の状態および嚥下機能を評価するもの ■下記の8項目から評価 ● 声、嚥下、口唇、舌、唾液、粘膜、歯肉、歯・義歯 ■上記項目についてそれぞれ1~3の3段階で評価 ■各項目の合計点を算出し、口腔内の状態を評価 ● 8点:正常 ● 9~12点:軽度の口腔粘膜障害 ● 13点以上:中等度から高度の粘膜障害 (近津 他, 2011)
睡眠薬の種類 分類 一般名(商品名) 作用時間 半減期 非ベンゾジアゼピン系 ・ゾルビデム酒石酸塩(マイスリ‐) ・ゾピクロン(アモバン) 超短期作用型 2hr 4hr ベンゾジアゼピン系 ・エチゾラム(デパス) ・ブロチゾラム(レンドルミン) ・ロルメタゼパム(ロラメット、 エバミール) ・リルマザホン塩酸塩(リスミー) 短時間作用型 6hr 7hr 10hr ・フルニトラゼパム(サイレース、 ロヒプノール) ・ニメタゼパム(エリミン) ・エスタゾラム(ユーロジン) ・ニトラゼパム(ベンザリン) 中間作用型 24hr 21hr 28hr ・クアゼパム(ドラール) ・フルラゼパム塩酸塩(ダルメート) ・ハロキサゾラム(ソメリン) 長時間作用型 36hr 65hr 85hr (睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン,2013)
不安・抑うつに関する重症度 悲しみ、心配 不安・抑うつ 不安障害、うつ病 通常 重症 (Massie MJ et al., 1983; Massie MJ, 1990)を参考に作成 74 74
せん妄の原因(可逆性)の同定 原因の治療が可能 (可逆性) 原因の治療が不可能(不可逆性) 治療 目標 せん妄からの回復 苦痛の緩和 原因 臓器障害のない患者において、オピオイドの過剰投与による場合 初発の高カルシウム血症による場合 など 肝転移による肝不全による場合 肺転移による低酸素による場合 など (OPTIM: 緩和ケア普及のための地域プロジェクト, 2008)を一部改変 75 75
過活動型せん妄と低活動型せん妄の特徴 過活動型せん妄 低活動型せん妄 興奮・不穏 無表情、無気力、静穏 過覚醒 傾眠、嗜眠 多い まれ 精神運動性 興奮・不穏 無表情、無気力、静穏 覚醒レベル 過覚醒 傾眠、嗜眠 幻覚・妄想 多い まれ 感情 不安、易刺激性 抑うつ 夜間の睡眠 不良 良好 脳代謝 亢進あるいは正常 全般的な低下 脳波 速波あるいは正常 びまん性の徐波化 (上村, 2013a)を一部改変
せん妄の発症要因 中枢神経疾患、臓器不全による代謝性脳症、電解質異常、治療の副作用、薬剤、感染症、貧血、栄養障害、アルコール・依存性薬物からの離脱、脱水、手術侵襲、低酸素 直接要因 環境の変化、感覚遮断、可動制限、睡眠・覚醒リズムの障害、痛み、呼吸困難、便秘、ストレス、不安 促進要因 低酸素血症 準備要因 脳血管疾患、アルツハイマー、 認知機能障害、60歳以上 準備要因 (Lipowski ZJ,1990)を一部改変 77 77
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●消化器症状 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 補足スライド ●消化器症状 (悪心・嘔吐) ●痙攣 78 78
消化器症状(悪心・嘔吐)とは <定義> ■悪心:「吐きたくなるような切迫した不快な自覚症状」 ■嘔吐:「胃内容物を反射的に口から出すこと」 <患者に与える影響> ■悪心・嘔吐は患者と家族がイライラし、痛みを感じ、体力を消耗する (医学大辞典) Mannix KA, 2005 (King&Tarcatu, 2010 ) 79 79
消化器症状(悪心・嘔吐)の原因 末梢 化学受容器引金帯 中枢神経(上位中枢) 前庭器 ●消化管運動の異常(例;腹水貯留) ●消化管運動の低下(例;便秘) ●消化管運動の亢進(例;下痢) 化学受容器引金帯 ●薬物(例;オピオイド、ジゴキシン) ●代謝異常(例;高Ca血症、肝不全) ●頭蓋内圧亢進(例;脳腫瘍) ●心因性(例;不安、恐怖、におい) ● 炎症(例;感染性髄膜炎) ● 放射線治療 中枢神経(上位中枢) 前庭器 ●薬物(例;オピオイド、アスピリン) ●前庭異常(例;メニエール症候群) (今井,2013.)を一部改変 80 80
消化器症状(悪心・嘔吐)のアセスメントの視点 ■ 悪心・嘔吐の原因・誘因、軽減する要因 ■ 悪心・嘔吐の頻度、程度、発生時間、持続時間 ■ 吐物の性状、嘔吐の様子 ■ 胃管のドレナージの状態 ■ 制吐剤の使用の有無と効果 ■ 食事(経管栄養も含む)や飲水との関連 ■ 排便、排尿の状態 ■ 随伴症状の有無 ■ 悪心・嘔吐に対する患者・家族の思い (小澤, 2008)を一部改変 81 81
消化器症状(悪心・嘔吐)に対する主な治療 原因の治療 ●消化管閉塞に対する消化管ドレナージ ●電解質異常への対応 ●消化性潰瘍の治療 ●頭蓋内圧亢進症状への対応 ●原因となる薬物の検索 など 薬物療法 ●ドパミン受容体拮抗薬 ●抗ヒスタミン薬 ●抗コリン薬 ●コルチコステロイド ●オクトレオチド (木澤 他, 2010a)を一部改変 (日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員会, 2011b) 82 82
消化器症状(嘔心・嘔吐)に対するケア ■ 環境調整 ■ 衣類、体位の工夫 ■ 口腔ケア ■ 排便コントロール ■ 食事の工夫 ■ 清潔の保持 ■ リラクセーション・気分転換 ■ 精神面のケア 83 83
制吐剤の種類と使い分け ドパミンD2受容体拮抗薬 抗ヒスタミン剤 抗コリン薬 コルチコ ステロイド オクトレオチド 制吐剤の種類 代表薬剤 副作用 嘔気・嘔吐の原因 ドパミンD2受容体拮抗薬 ノバミンⓇ セレネースⓇ 傾眠・認知障害・錐体 外路障害・口渇・起立性低血圧 CTZを介する(迷走神経を介する) プリンペランⓇ ナウゼリンⓇ 錐体外路症状・女性化乳房・腸管運動の促進 迷走神経を介する(一部CTZを介する) 抗ヒスタミン剤 トラベルミンⓇ ドラマミンⓇ 眠気 乗り物酔い・前庭 器官を介する 抗コリン薬 ブスコパン® 口渇・散瞳・尿閉 腸蠕動 コルチコ ステロイド プレドニンⓇ リンデロンⓇ 口腔カンジダ症・感染・出血・消化管潰瘍・ 糖尿病・満月様顔貌 脳圧亢進・腸閉塞 オクトレオチド サンドスタチン® 血糖異常・口渇 腸閉塞 (堀, 2002; 日本緩和医療学会,緩和医療ガイドライン作成委員会, 2011b)を一部改変 84 84
このモジュールで取り上げる症状 身体面 精神面 ●呼吸困難 ●全身倦怠感 ●浮腫 ●口渇・口腔内乾燥 ●消化器症状 ●睡眠障害 ●不安・抑うつ ●せん妄 補足スライド ●消化器症状 (悪心・嘔吐) ●痙攣 85 85
痙攣とは ■器質性脳障害 <定義> ■全身または限定した筋肉に急激に起こる一過性の 不随意運動 (加藤,2009) <原因> 不随意運動 (加藤,2009) <原因> ■器質性脳障害 ●感染、外傷、頭蓋内腫瘍、腫瘍頭蓋内転移 ■機能性脳障害 ●水電解質異常、薬物毒性、薬物治療からの撤退、 低酸素脳症、代謝異常:肝不全、腎不全 など (加藤,2009)
痙攣の治療とケア <治療> ■痙攣の原因に対応した治療 ■痙攣が持続している場合は薬物治療を行う ●抗痙攣薬、ベンゾジアゼピン <ケア> ●抗痙攣薬、ベンゾジアゼピン <ケア> ■患者へのケア ●痙攣によって生じる苦痛を明らかにする ●安全を守る:転落や打撲を防止する ■家族へのケア ●家族がどのように受け止めているか明らかにする ●痙攣が起こる原因を説明する (津金澤,2005,稲次,2013)