Ksバンドで見るz~1の銀河形態(途中経過)

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Ksバンドで見るz~1の銀河形態(途中経過) 2007.03.14 小西

近傍銀河のスペクトルを調べてみると、星形成史は銀河の星質量に依存していて、軽い銀河ほど星形成のピークが最近になる傾向が見られた。 背景(1):銀河の星形成史 近傍銀河のスペクトルを調べてみると、星形成史は銀河の星質量に依存していて、軽い銀河ほど星形成のピークが最近になる傾向が見られた。 →現在ある星質量の~50%はz=0-1 (~8Gyr) の間に作られたと予想される。 ではz=0-1とはどんな時代なのか? 実際にz=0-1にある銀河の星形成率を調べてみると、紫外線で見ても赤外線でも見てもz=10にかけて星形成率は減少していた。 ※それぞれの波長から星形成率を求める方法はHogg (2001) (astro-ph/0105280)。 また、宇宙全体の星形成に寄与する割合に換算すると、z>0.5では赤外線で選んだサンプルが星形成の大半を占めていた。 『赤外線で明るい銀河⇔星形成による紫外線を吸収したダストの熱放射が大きい』 Dickinson et al. (2003) Heavens et al. (2004) Hopkins (2004) Le Floc’h et al. (2005) 古い星の放射によるダストの加熱もある(Hirashita et al. [2003]) 近傍では赤外線で明るい銀河自体があまりいない(~数%)。 そこで中間赤外線データを使って、赤外線で明るい銀河をより詳しく調べてみる。 MIPS (Multiband Imaging Photometer for Spitzer)

Hopkins (2004) Heavens et al. (2004) Le Floc’h et al. (2005) LIRG UV 紫外線 [OII]輝線 Hα、Hβ輝線 X線、遠赤外線、サブミリ波、電波 LIRG UV ULIRG Le Floc’h et al. (2005)

これまでの(静止系B ~ Vバンドを調べた)研究から言われていること: 背景(2):赤外線銀河で見るz=0-1の時代 これまでの(静止系B ~ Vバンドを調べた)研究から言われていること: MIPSで検出される天体(MIPS天体)は、(24umフラックスから推測すると)そのほとんどがLIRGs、ULIRGs級の赤外光度を持っている。 z ~ 1ではLIRGsの形態は(late-type) Spiral が最も多く、次いで Interaction/Mergerが多い。(形態の定義によって割合は変わる) (z ~ 0のLIRGsはInteraction/Mergerが最も多い。) z ~ 1ではLIRGsはそうでないもの(LIR < 1011Lsun ; non-LIRGs)と比べて形態の非対称性が大きい。 z > 0.5ではLIRGsとnon-LIRGsは形態に違いが見られない。スペクトルの特徴も似ている(@ z ~ 0.7)。 Le Floc’h et al. (2005), Bell et al. (2005), Caputi et al. (2006b) Melbourne et al. (2005) Lotz et al. (2006) Wang et al. (2006) Shi et al. (2006) Bell et al. (2005) Hammer et al. (2005), Caputi et al. (2006c) z ~ 1の(星形成)銀河に対する最近の仮説 LIRGsとして観測される銀河とそうでない銀河は、別物の種族ではなく星形成の大きい時を見ているか小さい時を見ているかの違いではないか? そして星形成の大きさが形態にも反映しているのかもしれない。

激しく星形成を起こしていると、静止系Bバンドではその影響を受けて形態が違って見えているのかもしれない。 ※銀河の形態は、寿命の短い大質量星ではなく低~中質量星が形成している構造を見なくてはならない。 低~中質量星で形成される構造で比べると違いはあるのか? この答えを知るために、z ~ 0.5 - 1.5にいる銀河について   ・赤外光度(∝星形成率)   ・Ksバンド(中心波長2.1um)で見た形態 を使ってzをいくつかに区切ってその違いを調べてみる。 今回は、z ~ 0.8 – 1.2のみを対象とした。

z = 0.8-1.2は、 Ksバンド(~ 2um)  静止系Jバンド (~ 1um) zバンド(~ 0.9um) 静止系Bバンド(~ 0.45um) ①観測波長 ②宇宙年齢 [Gyr] tage = 6.6-5.0 Gyr @ z= 0.8-1.2 ③1秒角辺りの空間距離 [kpc] Redshift 1秒角 ~ 7.5 – 8.3 kpc @ z=0.8 - 1.2 ~ 8 kpc @ z~1 Redshift

使用したデータ(Ver0.6 カタログ) GOODS North領域(ハッブルディープフィールドを中心とする26 arcmin2) キットピーク天文台/MOSAIC Uバンド(公開画像データ) ハッブル宇宙望遠鏡/ACS B, V, I, zバンド(公開画像データ) すばる望遠鏡/MOIRCS J, H, Ksバンド(自前) スピッツァー宇宙望遠鏡/MIPS(中間赤外線装置) 24umバンド(公開カタログ) ハッブルディープフィールドは北斗七星の柄杓の根元辺り。 Ks(AB)<25で各ch当たり~900天体。

使用したデータ(Ver0.6 カタログ) UBVizJHKsでのSEDフィッティングによるredshiftと星質量の推定。 MIPS24umフラックスがない ⇔ F(24um) < 83uJy ~ 19.1 magAB 使用したデータ(Ver0.6 カタログ) UBVizJHKsでのSEDフィッティングによるredshiftと星質量の推定。 分光redshift vs. 測光redshift Redshift vs. 星質量 --- :Ks(AB)=25.0(天体検出率~80%) ・・・:Ks(AB)=23.0(プロファイルフィットの限界?)

※24umのフラックスを基に赤外線光度LIR(8~1000um)を推定。(Chary&Elbaz2001) Redshift vs. 赤外光度 星質量 vs. 赤外光度 ※24umのフラックスを基に赤外線光度LIR(8~1000um)を推定。(Chary&Elbaz2001) Caputi et al. (2006b)(CDF-Sという南天領域)のデータとconsistentな分布。 ULIRG LIRG F(24um) = 83uJy  LIR ~ 1011Lsun @ z~1 (今回は小さな●データのみを使う。) LIRG (Luminous InfraRed Galaxy) LIR > 1011Lsun ULIRG (Ultra LIRG) LIR > 1012Lsun 赤外線で非常に明るい

(補足)赤外光度の不定性 24umフラックスから赤外光度(LIR)へ換算するために、モデルの赤外SEDを使用する。 使うモデルによってLIRは~0.3dex程度の違いがある。違いの主要因はPAH(芳香族炭化水素)分子による寄与のモデル化にあるらしい。 F(24um)~300uJy 今回はdashed lineのモデルを使用した。 F(24um)~80uJy Chary & Elbaz (2001) Le Floc’h et al. (2005)

銀河の形態を測る Ver0.6カタログで、0.8 < z < 1.2にある銀河のKs画像(静止系Jバンド)の形態を調べる。 Graham & Driver (2005) 今回は形態を測る方法として表面輝度プロファイルのフィッティングを用いた。 観測される銀河は以下の式で表せると仮定する(Sersic [1968])。 Re ・・・ 全フラックスの半分を含む半径 Ie ・・・ 半径Reでの表面輝度 bnはnを含む係数 Index n = 1 ・・・ 指数関数的(e.g.円盤銀河) Index n = 4 ・・・ de Vaucouleurs的 (e.g.楕円銀河、バルジ)

プロファイルフィット例 ID = 202 Redshift ~ 1 Ks等級 = 19.33という銀河でフィット。 n = 1.49 Re = 7.4 kpc Ks = 19.20 Ks画像 ベストフィット 残差 ~100kpc 渦状腕はフィットされずに残った。

Ksバンドで見るz=0.8-1.2の銀河の形態 Sersic index vs. Re 24umフラックスが受かっている天体(MIPS天体)が持つ星質量の範囲(>1.5x1010Msun)にサンプルを限定してプロット。 MIPS天体はn=1-3に分布。 それに対し24umフラックスのない天体(青、non-MIPS天体)はn=1-6に広く分布。 銀河の有効半径 Re [kpc] 24umフラックスがない⇔ F(24um) < 83uJy サイズが1pixel程度なので誤差は大きい。 似たような形態を持つ所での天体数は、MIPS天体とnon-MIPS天体で同じ。 Non-MIPS天体 MIPS天体 中心から緩やかに暗くなる。 外側まで伸びない。 Sersic index (n) 中心に集中。 外側へ裾を引く。

24umフラックス有りの例(n = 1.53) 24umフラックス無しの例(n~0.86) 24umフラックス無しの例(n~4.32)

似たような形態を持つMIPS天体とnon-MIPS天体は、 『同じ進化過程にある銀河で、星形成が強いか弱いかの違い』 なのか? → まだ解析中... Ksバンドだと比較的古い星からの放射を捕らえるはずで、それらが作る構造はバルジ的(n ~ 4)なものだと予想される。 しかし画像を見てもフィッティングの結果(n ~ 1)を見ても、Ksの形態は円盤銀河的なプロファイルを示唆する。  →  形成中の円盤を見ているのか? (→円盤が先に出来るのか?バルジが先に出来るのか? もしくはダストが非常に多くて中心にあるバルジが見えていないのか? これらの点をより詳しく知るには、例えば中心部と周辺部での色やSEDの違いからそれぞれの星形成史を比べる事が必要。(現在解析中) また、z~0.5やz~1.5などで同じ解析をして直接的に形態進化を見る事も必須。(今後) (もう片chのデータ解析も今後。) おわり