2015年国勢調査結果の 精度について ―抽出速報集計を利用した 暫定的考察― 2015年国勢調査結果の 精度について ―抽出速報集計を利用した 暫定的考察― 山田 茂(国士舘大学) 2016年9月13日 経済統計学会
集計結果についての疑問 1 東京の区の半数以上は オンライン・紙並行? (萩原雅之氏の情報) 2 「住宅の所有関係不詳」は 全国で 約4000世帯 2013年住宅・土地統計では約148万世帯 少ない理由? 3 世田谷区の「居住期間」 約0.69% 他の区は 19.5%~29.7% 住基台帳情報などの利用?
1 実地調査と関連する事情 オンライン回答方式(9月20日まで)全国実施 10月20日まで 修正可能 1 実地調査と関連する事情 オンライン回答方式(9月20日まで)全国実施 10月20日まで 修正可能 項目削除:難しい「床面積」 抵抗感「教育程度」 「通勤手段」 困難化の要因 調査員確保難 個人情報提供への不安 断り易い構造の住宅 不在世帯など
オートロック 武雄市51住戸
世帯調査全般:「不詳」数の傾向 全般に増加傾向 一部では減少、増加テンポ鈍化 「不詳」率の水準:項目によって異なる 一部では減少、増加テンポ鈍化 「不詳」率の水準:項目によって異なる 高率「教育」「過去の常住地」 対象世帯数が多い調査で高い 1人世帯、集合住宅、大都市で高い ⇒継続的な傾向
実地調査のトラブル 2013年住宅・土地統計 調査員の確保難 武雄市 フェイスブック・シティ課 架空内容(51住戸) 2013年住宅・土地統計 調査員の確保難 武雄市 フェイスブック・シティ課 架空内容(51住戸) 2015年国調の実地調査 常総市 洪水⇒9月下旬 休止~ 再開:鬼怒川の西側10月・東側12月 *全国: 調査票・名簿紛失 調査票誤配布 詐取 オンライン回答用書類の不配布
2 集計結果とその精度の検討 1)公表 抽出速報集計 2016年6月 1%抽出 地域別 15表(大半) 50万人以上 2 集計結果とその精度の検討 1)公表 抽出速報集計 2016年6月 1%抽出 地域別 15表(大半) 50万人以上 1表(年齢) 20万人以上 「不詳」数の表示増加 全数集計 2016年10月~
2)総数の検討 同時点を対象時点とする推計人口と比較 推計人口の算出 前回国調結果±以後の死亡・出生・入出国 ⇒年齢層別把握度比較 同時点を対象時点とする推計人口と比較 推計人口の算出 前回国調結果±以後の死亡・出生・入出国 ⇒年齢層別把握度比較 1%抽出集計:誤差
2010年国調 事後調査 2010年11月21日現在で実施 本調査と照合 把握漏れの可能性(1.7%) 2010年国調 事後調査 2010年11月21日現在で実施 本調査と照合 把握漏れの可能性(1.7%) 0歳 15歳~20代(2.2~4.3%)と90代 未婚 外国人 オートロック単身用住宅(10.1%) 寮・病院(12.2%) ・重複把握の可能性(0.3%) 15~24歳 85歳~ 死別 AL(4.1%) 病院・施設・寮
3)「不詳」の発生状況 対象世帯:無記入+近隣から聞き取り 2015年調査抽出集計:大半の項目は増加継続 就業者の「従業上の地位」 対象世帯:無記入+近隣から聞き取り 2015年調査抽出集計:大半の項目は増加継続 就業者の「従業上の地位」 オンラインでは選択式に変更した「産業」「職業」 ⇒減少 若年層(特に男性)・単独世帯・共同建て世帯が多い地域・大都市などが高い。 「日本人」は低い
2010年国勢調査 単位 人 総数 年齢不詳 同 比率 渋谷区 神南 2丁目 17 100.0% 板橋区 高島平 6丁目 91 53 単位 人 総数 年齢不詳 同 比率 渋谷区 神南 2丁目 17 100.0% 板橋区 高島平 6丁目 91 53 58.2% 代々木神園町 220 126 57.3% 新宿区 西新宿 1丁目 417 173 41.5% 杉並区 上荻 1629 339 20.8% 井草 3丁目 2602 497 19.1% 高円寺北 5924 1126 19.0% 高円寺南 4丁目 4202 788 18.8% 6673 1230 18.4%
・「不詳」・「分類不能」 項目間の重複 「年齢不詳」の98~100%:「従業・通学地」 「5年間の移動」「居住期間」「配偶」が不詳 ・「不詳」・「分類不能」 項目間の重複 「年齢不詳」の98~100%:「従業・通学地」 「5年間の移動」「居住期間」「配偶」が不詳 「配偶関係不詳」の82%:「労働力状態不詳」 同87%:「居住期間不詳」 「居住期間不詳」の42%:「配偶不詳」 「労働力状態不詳」の29%:「配偶不詳」 「分類不能の職業」と「分類不能の産業」 9割以上重複
「不詳」「分類不能」の重複 表側の項目=100 年齢不詳 年齢 従業・ 通学 地 居住 期間 5年 前の 常住 配偶 関係 労働 力 状態 「不詳」「分類不能」の重複 表側の項目=100 年齢 従業・ 通学 地 居住 期間 5年 前の 常住 配偶 関係 労働 力 状態 分類 不能 の 産業 年齢不詳 — 100.0 99.5 99.6 — 従業・通学地不詳 16.9 62.3 居住期間不詳 19.8 41.9 配偶関係不詳 41.2 86.8 81.8 労働力状態 不詳 28.7 分類不能 の職業 93.5
オンライン回答方式の拡大 機器利用可能・協力意向がある世帯 不注意の未記入防止←次の画面に進めない 2012年就業構造基本調査 30万人以上都市等 2013年住宅統計調査 全国対象 初回 2015年国勢調査:オンライン先行方式 9月10日~20日:1917万世帯/ 最終1972万世帯: 回答後の変動? 9月出生:8.7万人 死亡:9.8万人
2013年住調:オンライン回答高率 21%~: 千葉浦安市(23.4%) 東京稲城市(22.8%) 横浜市都筑区(21.5%) 千葉浦安市(23.4%) 東京稲城市(22.8%) 横浜市都筑区(21.5%) 茨城守谷市(21.4%) 兵庫三田市(21.2%) 16~21%:36市区町 千葉市美浜区ほか うち大都市圏外 3市区町:新潟・静岡 12~16%:116市区町 東京都中央区ほか うち大都市圏外 18市区町:北海道・宮城・栃木・ 群馬・茨城・新潟・山梨・長野・ 岐阜・静岡・広島・徳島・福岡・熊本 12%以上は157市区町
オンライン回答率が高い地域の傾向 「不詳」率は、大半の項目で共同建て住宅居住世帯率の水準にほぼ対応。 オンライン回答率が高い地域では 「不詳」率は、大半の項目で共同建て住宅居住世帯率の水準にほぼ対応。 オンライン回答率が高い地域では 共同建て比率が同程度の地域と比べて 「従業・通学地」「労働力状態」「配偶関係」の「不詳」率が低い
共同建てが多い地域は不詳が多い 地域別共同建て居住世帯率 (2013年住宅・土地統計) と 不詳率(2015年国勢調査) 地域別共同建て居住世帯率 (2013年住宅・土地統計) と 不詳率(2015年国勢調査) *地域全体での共同建て比率 その世帯が共同住宅居住
3 他の統計との結果の相違 1)2015年10月1日現在の 地域別年齢別住基台帳人口と比較 人口流出地域:年齢別住基人口の公表例は少ない。 3 他の統計との結果の相違 1)2015年10月1日現在の 地域別年齢別住基台帳人口と比較 人口流出地域:年齢別住基人口の公表例は少ない。 奈良県 男女とも20代前半を除き 国調が下回る。 人口流入地域:世田谷区 大半は国調が上回る 0~4歳 男性25~34歳・女性20代で国調が下回る。 ⇒転出先での未届けを反映
2)労働力調査 標本:約4万世帯 都道府県統計主管課・毎月 調査員の経験・意欲 実地調査の管理:相対的に容易 2015年9月末週分「不詳」との比較: 国調の「不詳」は労調のどの区分から? 国調より把握数が多い区分から発生
労働力調査との比較 *「不詳」が少ない調査の方が全般に正確 ↓ *労働力調査を基準とする 「教育程度」「年収」:抵抗感が強い項目 ↓ *労働力調査を基準とする 「教育程度」「年収」:抵抗感が強い項目 2年目の2ヶ月目の世帯だけ 「離別・死別」:調査票で区分せず
「配偶関係」 「不詳」:全年齢層の男女で国調が上回る。 「不詳」以外の区分は逆。 「未婚」:男性では30歳未満・ 「配偶関係」 「不詳」:全年齢層の男女で国調が上回る。 「不詳」以外の区分は逆。 「未婚」:男性では30歳未満・ 女性では35歳未満で国調が下回る。 「有配偶」:男女ともほぼ全年齢層で 国調が下回る。
「労働力状態」 「不詳」: 男女とも労調はごく少数。 全年齢層で国調が上回る。 ・「就業者」:男女の20代後半など若年層で 国調が下回る。 「不詳」: 男女とも労調はごく少数。 全年齢層で国調が上回る。 ・「就業者」:男女の20代後半など若年層で 国調が下回る。 「主に仕事」:男女の20代後半など若年層で 「完全失業者」=「仕事を探していた」 男性:全年齢層で国調が上回る。 女性:10代・20代で国調が上回る。 30代以上は概ね国調が下回る。
配布物 スライド 集計表 「年齢不詳」 調査票 第3次試験調査(紙) http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/shiken3/index.htm