背景 アメリカの電力価格の高騰 電力業界再編の議論 Weiss(1975) 垂直的な再編 競争によって現在ある規模の経済性が犠牲に? ・・・規模の経済性に関する実証研究の必要性 規模の経済性の存在には疑問の余地はないがその大きさや範囲については論争がある。
研究対象 全発電量の90%以上を占めるSteam-powered generatorに限定 全生産量の77%をしめる年間歳入100万ドル以上の投資家所有の企業に限定。
規模の経済性についての議論 ほとんど無限に存在するという立場 (Hulburt) 企業の大きさが大きくなれば消失する(Johnston,Nerlove) 1955-1970 電力の生産は3倍。企業あたりの生産量も3倍。 ・・・規模の経済性を享受できる企業サイズも技術進歩によって拡大した? ・・・技術進歩による費用関数の変化が小さければ 、規模の経済性は失われている?
生産構造のモデル化 電力会社は利益最大化ではなく投入物の最適利用を考えて生産 ・・・生産関数ではなく費用関数を推定 トランスログ費用関数 生産各要素間の代替弾力性をコブダグラスの ように事前的に制限しない 規模の経済性による産出量の変化を組み入れ られる Nerloveの研究を比較検討できる。
トランスログ費用関数 これは費用関数logC(Y,p)をテイラー展開してY=p=0で評価し二次の項までとったもの ただしγij=γji C; 総費用 Y;生産量 Pi ; 生産要素価格 価格に対して一次同次 生産量を固定すればすべての価格比例的な上昇に 対して費用は比例的な増加関数 仮定からは
シェパードの補題より 対数の形で微分すると 各要素の費用シェアが 得られて シェア関数はトランスログ費用関数より 要素間の代替弾力性と 要素需要の価格弾力性は それぞれ 代替弾力性はトランスログ関数のもとで ただしCiはCをPiで偏微分したもの
*規模の経済性は総費用の産出量に対する弾力性として表現し と定義した。規模の経済性が存在すれば正の値、 規模の不経済が存在すれば負の値をとる。 *トランスログ費用関数では相似拡大的な生産、生産の一次同次性、要素間の代替弾力性の一定性これらを仮定しなくてもよいが、仮定を含んだモデルの検定も行った。 相似拡大性の仮定 生産の一次同次性の仮定 要素間の代替弾力性の一定性の仮定
各モデルの説明 モデルA 仮定なし モデルB 相似拡大性 モデルC 一次同次性 モデルD,E.F A,B,Cそれぞれに代替弾力性一定を仮定 表2;それぞれのモデルの規模の経済性指標
推定方法 Nerlove;費用関数を直接最小二乗法で推定 ・・パラメーターが多くなり多重共線性の問題 ・・パラメーターが多くなり多重共線性の問題 Berndt and Wood;シェア関数を重回帰 ・・規模による収穫一定の仮定を前提 費用関数、シェア関数を連立させて重回帰分析を行う方法を採った。 仮定;誤差項は標準正規分布に従う 企業間の相関関係はない 仮説を含んだモデルの検定;最尤推定法を用いた -2logλがカイ二乗分布に従うことを利用して仮説を検定した T;企業数 分母;仮定をおいたときの誤差相関係数行列の行列式 分子;仮定がないときの誤差相関係数行列の行列式
データ Nerlove;その企業が主として存在している州の平均価格を用いた 企業数 投入物は投入物を資本(K)、労働力(L)、燃料(F)の3つ。 燃料費 Nerlove;その企業が主として存在している州の平均価格を用いた ・・プラントごとの燃料費データを使用。 人件費 賃金、雇用者に対する年金を総計してfull-time workerは1,part-time workerは0.5のウエイトをつけて個々の企業の年間人件費を算定した データ; 1955Ⅰ;Nerloveの用いたデータ 1955Ⅱ;Nerloveの用いたデータから親会社、子会社関係にあるも のを統合したもの 1970;新しいデータ
3つのデータとも 仮定をおいたものは すべて統計学的に 棄却された。 生産要素間の代替弾力性 生産要素需要の価格弾力性 共にNerloveのデータより 低い結果であった
表7;産出量によるグループ内の中央値をとった企業の規模の経済性 同次性を仮定したモデルでは規模の経済性はどの企業サイズでも一定 他のモデルでは企業サイズが大きくなるほど規模の経済性は逓減 代替弾力性一定を仮定しても規模の経済性はあまり変わらない 相似拡大性を仮定すると規模の経済性は低くなる
表8;モデルEについNerloveの研究と規模の経済性を比較
図1;1955Ⅰデータの 平均費用曲線 C,Fは右下がり、それ以外は U字型の曲線 前の結果よりA以外のモデルに 統計的な有意性はないので
図2;モデルAにおける 平均費用曲線 Ⅰ、Ⅱのデータの平均費用曲線を比較してみるとⅡのデータの方が平坦の部分が広く、費用が低下していく企業の範囲も二倍である。 企業規模を見てみると1955年では規模の経済性を吐き出してしまっている企業はない。 Nerloveが規模の経済性を低く見積もったのは親会社子会社関係にある企業を個々の企業のように取り扱ったためであるというWeissの批判を支持している
表9の右2列;1955年に比べて1970年の方が規模の経済性が低下している。 理由;図2からも明らかで生産量は3倍に増えたのにも関わらず費用曲線の形状の変化は非常に小さかった。 平坦な費用曲線の部分で操業を行っている企業は1970年の方が1955年より増加している ・・・1970年の方が1955年に比べて規模の経済性が縮小した。
1955年には74.1%の企業が有意に規模の経済性を持っていたが1970年には48.7%と減少した。 平均費用曲線のそれぞれの場所で SCEの標準誤差の1.96倍以内なら費用曲線は‘平坦’といい 統計的に規模の経済性がないということにする 表10;有意な規模の経済性も不経済性も持たない企業、有意に規模の経済性を持つ企業、有意に規模の不経済性を持つ企業それぞれの企業数と総生産に対する割合を示す。 1955年には74.1%の企業が有意に規模の経済性を持っていたが1970年には48.7%と減少した。 ・・・電力の多くの部分が平坦な費用曲線の下に生産されている。さらに6.7%電力生産シェアを持つthe American Electric Power Compenyが有意に規模の不経済性を持っている。
まとめ 1955-70の間に電力生産にかかるコストは劇的に低下している。この現象はしばしば規模の経済性のおかげであるとか規模による技術変化のおかげであるという意見があるが、1970年の費用曲線は1955Ⅱの費用曲線を垂直に下方に移動させたものとなっている。 ・・・規模の増大には関係しない技術の変化が生産費用の低下に貢献した 企業の成長が費用の減少の程度とほとんど相関がない ・・・効率的な生産のために少数の大企業は必要ではない。 電力産業において競争促進政策は規模の経済性を犠牲にするという 見地から見ても不可欠である。 Hughesらはアメリカ電力産業の合理化の望ましいと言っている。我々の費用関数から合理化による潜在的なコスト削減をすると、1970年の時点ですべての企業での生産が平均費用曲線の最小値で生産が行われれば175.1mil$のコスト削減が可能である。3.2%の減少率である。三要素に分けると労働、資本、燃料についてそれぞれ83.8 49.6 41.7であった。現在114の企業が行っている総生産を最適水準での生産を行うと必要企業数は33企業。