実践的な防災訓練 パターン化した防災訓練からの脱却

Slides:



Advertisements
Similar presentations
個人情報を守る学習指導 柏市立土南部小学校 教諭 西田 光昭
Advertisements

1 課題の洗い出し. 2 1.本日の日程 ①開会の挨拶 日程説明 ( 5 分) ②自己点検 ( 10分) ③情報モラル指導の必要性(プレゼン) (20分 ) ④課題の洗い出し ( 10分) ⑤全体計画についての協議Ⅰ (15 分) ⑥全体計画についての協議Ⅱ (20 分) ⑦全体計画についての協議Ⅲ.
緊急地震速報対応行動訓練 地震避難訓練 平成 ○○ 年 ○ 月 ○ 日 ○○ 市立 ○○ 中学校.
10 分で防災 -地震・津波-. 防災とは ⇒災害を防ぐこと 災害とは ⇒大雨・暴風・地震・津波・火山など によっておきる被害 防災の目的 ⇒自分の命を守ること まわりの人の命を守ること 防災について考える.
緊急地震速報対応行動訓練 地震避難訓練 平成 ○○ 年 ○ 月 ○ 日 ○○ 市立 ○○ 中学校.
防災訓練について 0 / 17 活用に当たって このプレゼンテーションは,「表示」を「ノート 」にする ことで,講義を進める際の進行要領例 (読み原稿)を 見ることができます。 学校の実態に合わせてスライドや進行要領例を加 除修正してご活用ください。 そのまま使う際は,別ファイル( PDF) にある進行.
1.情報教育について 2 情報教育. 情報教育とは 児童生徒が自ら考え、 主体的に判断・表現・行動 児童生徒は主体的に学ぶ 「情報活用能力」を育成する教育.
平成19年度 「長崎県国語力向上プラン」 地区別研修会
平成19年度長崎県国語力向上プラン地区別研修会
日本の英語教育 c 奥田波奈.
平成25年校務分掌表 校長 教頭 職員会議 運営委員会 総務部 教務部 教科部 専門部Ⅰ部 専門部Ⅱ部 学年部 各委員会 4組 3組 2組
子どもが主役となる明るく元気な学級づくり
情報モラル.
子ども達への科学実験教室の運営方法論 -環境NGO「サイエンスEネット」の活動事例をとおして- 川村 康文
宮城県総合教育センター 平成25年度防災教育グループ
緊急地震速報活用プログラム 活用案編 ~ 平成25年度実践的防災教育総合支援事業 ~.
柏市立中原小学校 西田 光昭 教育におけるタブレット活用の             課題と展望 柏市立中原小学校 西田  光昭
 テーマ別解説 情報モラルの5つの領域 岐阜聖徳学園大学 教育学部 准教授 石原 一彦.
地震発生時の児童生徒の安全確保のために -あらゆる事態を想定してー
平成26年度 鶴ヶ島市立新町小学校グランドデザイン めざす学校像 一人ひとりが輝き、確かな学力が獲得できる学校
ICT活用指導力向上研修会 ~児童生徒の情報活用能力を高める指導方法~
大分県立宇佐支援学校 グランドデザイン (平成28年度版)
教育研修センター通信 ☆情報教育夏季研修☆(7/23,24 8/22実施) ☆人権教育研修☆(7月25日実施)
○○市△△町□□地区 津波避難訓練及びワークショップ 日時: 平成●年●月●日( ● ) 午前9時~12時 場所:□□□□□□
柏市立教育研究所 指導主事 西田 光昭 ネットワーク活用へ向かう 柏市の情報教育 柏市立教育研究所 指導主事 西田 光昭
緊急地震速報活用プログラム 指導案編 ~ 平成26年度実践的防災教育総合支援事業 ~.
教師教育を担うのは誰か? 日本教育学会第70回大会ラウンドテーブル 2011年8月24日 千葉大学 2108教室
決して他人事ではありません。毎年大きな地震が来ています。
学校保健委員会 安全主任 羽鳥恵輔.
平成29年度 大阪の子どもを守るネット対策事業(文部科学省委託事業)
地震が発生したら 『助け合って守る』 『自分の身は自分で守る』 行動するのは 『みなさん』です.
学校安全における 防災教育の位置付けについて
<校訓> つよく・あかるく・たくましく 【目指す宇佐支援学校の児童生徒像】
◆災害ボランティア・リーダートレーニング◆
防災に備えて体験学習プラン 体験型学習・訓練施設 ご提案.
アスッペンくん 奈良市立飛鳥中学校.
前回の振り返り 資料6 2日目のカリキュラムに入る前に、1日目を簡単に振り返ります。
災害時に備えて 今できること こんな不安はありませんか? 災害時に助かるために!! 1つでも不安があれば、 中をご覧ください。
地域における危険性の確認 資料4 前の時間で気象や土砂災害に関する知識を学びました。
地域における危険性の確認 資料3 前の時間で地震・津波に関する知識を学びました。
深浦町地域包括ケアセンター 保健師 阿部 丈亮
ICT活用指導力チェックシート(小学校版)
●校内研修(自立型研修)での活用 自立型研修での活用について紹介します。 研修の中でも最も身近なものとして、校内研修があげられます。
スライド資料 B3 ICT機器の活用 ③タブレット端末 兵庫県版研修プログラム.
2013年度 授業の構成とねらい 新宿山吹高校 定時制 理科 松本隆行.
竜巻から自分の身を守ろう! 教室 廊下 体育館 校庭 通学路 1. 竜巻から自分の身を守ることができるか、考えてみましょう。
竜巻防災教育プログラム 『単元構成』 ステップ1 ・・・ 事前学習1 ステップ2 ・・・ 事前学習2 ステップ3 ・・・実践訓練・事後学習
教育センターにおける エネルギー環境教育講座実施の実態 ( 川村先生)
学校安全における 防災教育の位置付けについて
知る・見る・考える掃除 ダスキン掃除教育カリキュラム.
火山防災教育プログラム 『単元構成』 ステップ1 ・・・ 事前学習1 ステップ2 ・・・ 事前学習2(地図学習) ステップ3 ・・・体験学習
計 画 支 援 要 請 支 援 平成21年度の研修支援 「『大阪の教育力』向上プラン」に基づく府内全公立小中学校への訪問
校内研修・導入編 【10分】 ① ② ☞研修例=研修の導入として10分程度,情報セキュリティに関する基本的な
地域の助け合い 中学校用.
東京女子大学 現代社会学部 コミュニケーション特論C(社会) 災害情報論 第5回 東海地震・首都圏直下型地震と避難行動
資料「裁判例に見る体罰」を引用した 体罰事故防止研修 埼玉県教育委員会
平成17年度鈴木研究室ゼミ発表 2005/8/7 教育情報システム学講座4年 :継田 優子 2019年5月5日(日)
避難訓練 資料10 最後に、避難訓練について説明します。
4人班を作りましょう! 4人班を作りましょう。.
子どもたちを携帯電話の持つ危険性から守るための対応
1 はじめに 2 防災主任配置に至る経緯 3 防災主任の役割 4 具体的な業務の例 5 教職員の連携・役割分担 6 おわりに
第一避難場所に避難の指示をする。(生徒へ)
宇佐支援学校 学校評価実施計画 改善 教職員自己評価 自分らしく 生活する 子ども 保護者・ 地域から 愛される 学校 のびのびと 過ごせる
福岡県教育センター ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 研修担当の先生へ ※ ※ ※ ※ ※ ※
共助について考えよう!.
一般社団法人 ピースボート災害ボランティアセンター ☎
基礎情報の収集・・・前年度の出欠席状況、配慮の必要性、長期欠席経験者への対応
学校における教育の情報化の推進と校内研修の企画運営
特別支援教育総合推進事業 特別支援教育 推進員 高等学校 1(新)特別支援教育総合推進事業【4,752千円】 県教育委員会 特別支援学校
「岩手の教育」を実現するため、     教員の指導力向上を図る研修・支援・研究を推進する.
Presentation transcript:

実践的な防災訓練 パターン化した防災訓練からの脱却 山梨大学地域防災・マネジメント研究センター 准教授   秦 康範

本ビデオの目的 実践的な防災訓練の必要性 地震避難訓練 防災訓練への「認識」を改める

山梨県内での取り組み(アドバイザーとして関与) 2011年 管理職研修・教頭研修会 2012年 実践的防災教育推進事業 甲府市 貢川小学校,富竹中学校 道志村 道志小学校,道志中学校 防災教室 全小中学校の防災担当教員 指導主事研究(総合教育センター) 2013年 身延町 下部小学校,下部中学校 忍野村 忍野小学校,忍野中学校 全小中学校 2014年 実践的防災教育推進事業 山梨市 牧丘第一小学校,笛川中学校 昭和町 西条小学校、押原中学校 防災教室 全小中学校 初任者研修 2015年 甲斐市 敷島北小学校,玉幡中学校 実践的防災教育推進事業  7市町村14小中学校

学校における防災教育の問題点 一般的な災害の知識、防災の知識を学習 しかしながら、 地域の災害リスクについて学ぶ機会がない 防災訓練が実際的、実践的でない

防災訓練の目的 ・誰のため、何のためにやるのか? ・訓練を行う事が目的になっていませんか? ・子ども達の危険を予測し回避する能力を高めることが可能でしょうか?

報告書・・・ 山梨県教育委員会2014年3月 文部科学省2014年3月 「東日本大震災を受けた防災教育・防災 管理等に関する有識者会議」 最終報告 2012年7月 山梨県教育委員会2014年3月 文部科学省2014年3月

「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」 中間とりまとめ(2011) 今後の防災教育 (1)防災教育 ~自然災害等の危険に際して自らの命を守り抜くため「主体的に行動する態度」を育成する防災教育の推進~ ①自らの危険を予測し、回避する能力を高める防災教育の推進 1)周りの状況に応じ、自らの命を守り抜くため「主体的に行動する態度」の育成 ・ 「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」 中間とりまとめ(2011)

おはしも おさない、はしらない(かけない)、しゃべらない、もどらない の災害時の避難行動原則の頭文字をとって『 おはしも(おかしも)の約束 』として現在の学校で実施される避難訓練でアナウンスされているもの。 特に、阪神淡路震災以降、消防庁による教育安全指導のガイドラインにも紹介されたことで、ここ十数年間で急速に全国に普及。 想定しているのは、地下街や映画館などで火災が発生した場合の避難行動。

児童・生徒自身が、自らの危険を予測し、回避する機会が無い 従来の防災訓練 授業時間中、事前告知 教頭先生の校内放送 机の下に隠れる→(防災頭巾)→廊下に整列→上履きで校庭→点呼 校長先生の講話のポイント 訓練参集時間 私語の注意 児童・生徒自身が、自らの危険を予測し、回避する機会が無い 「自ら考える」防災訓練

緊急地震速報システムを活用した 「自ら考える」防災訓練 いろいろな場面設定 掃除、休み時間 抜き打ちで実施 抜き打ちで訓練を実施することは知らせて良い 先生も参加 振り返り 特定の行動を覚えるのは意味が無い 気づき重視(正解があるような教え方をしない)

抜き打ち訓練:清掃時間(中学校)

抜き打ち訓練:休み時間(図書室)(小学校)

抜き打ち訓練:休み時間(2階廊下)(小学校)

抜き打ち型訓練で抽出された課題 従来の防災訓練は、「自分の教室の自分の机の下に隠れること」になっていた。 緊急地震速報を聞いても、すぐに適切な行動を取ることは難しい 状況に応じて適切な退避行動を取る応用力がほとんど養われていなかった

大学生のビデオの反応 「おはしも」を当たり前のように地震の際の基本約束として捉えていたが、よく考え直してみると、避難訓練の効率化のためでしかないということに、今日の講義を通して気付いた。 一番衝撃的だったのは、ずっと耳たこになるくらいやらされていた「おはし」の無効力さです。 避難訓練を改善すべきと思った。 私は小・中・高校時代、防災訓練をやる意味はあるのかと思っていました。というのも、教師側が訓練に対して必死でなかったり、緊張感がなかったりと、ひどいものでした。 静岡大学「地震災害」の都市災害の講義アンケートより(2013年)

良い訓練とは? 失敗しない訓練    課題が見つかる訓練

実際的な状況 停電すると校内放送は使えない 季節、天候、液状化、などによりグラウンドが使えない場合もある 土砂災害警戒区域など二次災害の危険がある場所では、その場にいることが危険な場合もある 校舎が耐震化されていれば、校庭に必ず出る必要は無い。一堂に会し、安否の確認を行うため。 保護者への引き渡し訓練のようなことは起こりえない。保護者は直ぐに来ない。来られない。 東日本大震災では、保護者に引き渡した後に、津波に遭遇し、亡くなったケースが少なくない。

緊急地震速報システムの訓練を通して 学んでほしい事柄 防災の基本は、「自らの身は、自ら守る」 適切な行動は、災害の種類、TPOによって異なる 「今、地震が来たらどうすべきか?」を日頃から考えるようになる。(猶予時間は数秒~十数秒程度) ・危険を予測し、回避する能力を高める ・周りの状況に応じ、自らの命を守り抜くため「主体的に行動する態度」を育成

おわりに 実践的な防災訓練を提案 防災教育の防災に留まらない効果 まずは、地震避難訓練のやり方をあらためる 退避行動をさせるだけのショート訓練も有効 「身の安全を守る」ことが最優先すべきこと。おはしもの約束は手段にすぎない。 「身の安全を守る」行動は、状況に応じて変わり得る。特定の場面の標語の徹底は、臨機応変な対応を困難にさせる危険がある。 防災教育の防災に留まらない効果 主体性を育む 答えの無い問いを考える 学習した知識を活用する