看護現場における 労務管理の法的側面① <労働法と労働契約>

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(住所を入力して下さい) 電話 03-●●●●-●●●● FAX 03-●●●●-●●●●
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看護現場における 労務管理の法的側面① <労働法と労働契約> 看護現場における 労務管理の法的側面① <労働法と労働契約> 作成:社会保険労務士 箕輪和秀

はじめに 職員 ⇔ 病院・医療施設 (契約締結) ・職員は労働力を提供 ・病院は労働力の対価として賃金を支払う    職員     ⇔      病院・医療施設         (契約締結)    ・職員は労働力を提供    ・病院は労働力の対価として賃金を支払う  職員を採用して病院や医療施設で働いてもらう為には、職員と病院・医療施設との間で雇用契約を結ぶ必要があります。  労務管理、労働法の世界ではこれを労使間(即ち労働者と使用者間)での労働契約の締結といいます。 この労働契約という契約に基づいて職員は労働力を提供し、病院や医療施設は提供された労働力の対価として賃金を支払うという仕組みになっていますので、採用や解雇のみならず時間外勤務など全ての労務に関する内容は、労働契約の内容に基づいた対応を労使双方が行う必要があります。 勿論、病院や医療施設には、労働者に対して安全に業務を行わせるための「安全配慮義務」もあることを忘れないで下さい。

労働法と労働契約 1.労働法 1-1)労働法とは ・労働基準法 ・最低賃金法 ・労働安全衛生法 ・労働者災害補償保険法 ⇒これらをまとめて  1-1)労働法とは   ・労働基準法   ・最低賃金法   ・労働安全衛生法     ・労働者災害補償保険法  ⇒これらをまとめて                       労働法           ・       ・   労働法に基づいて労働者と使用者間で労働契約を締結すると説明しましたが、では労働法とはどの様な法律なのでしょうか? 実は、労働法といっても「労働法」という名の1つの法律があるわけではなく、労働に関するたくさんの法律をひとまとめにして「労働法」と呼んでいます。 ですから労働法と呼ばれる法律の中には、「労働基準法」をはじめ、最低賃金法や労働安全衛生法 といった様々な法律が含まれています。 本レッスンでは、これら様々な法律で定められている約束事のうち、雇用する側、即ち使用者側の皆さんが知っておくべき点、果たすべき義務を中心に説明する事を主目的としていますので、これら各法律についての説明は省略し、皆さんがよく耳にされる「労働基準法」の主なポイントを簡単に解説します。

労働法と労働契約 1.労働法 1-2)労働基準法 生存権(憲法第25条1項) すべての国民は、健康で文化的な最低限度の  1-2)労働基準法   生存権(憲法第25条1項)   すべての国民は、健康で文化的な最低限度の     生活を営む権利を有する。    勤労条件の基準(憲法第27条2項)   賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に     関する基準は、法律でこれを定める。 労働基準法は憲法で定める生存権、及び勤労条件の基準を具体化した法律です。 生存権については、憲法第25条1項において「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定めています。また勤労条件の基準については第27条2項にて「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」としています。

労働法と労働契約 1.労働法 1-2)労働基準法(民法の特別法) ・弱い立場の労働者を保護する事が目的 ・労働条件の最低基準を定める  1-2)労働基準法(民法の特別法)    ・弱い立場の労働者を保護する事が目的    ・労働条件の最低基準を定める    ・違反した場合は罰則等 具体的には、労働基準法は、社会的経済的に見て使用者に対し弱い立場にある労働者を保護することを目的としています。 この為、労働条件の最低基準を定め、基準の遵守を強制しています。 保護の対象は労働者です。従って、使用者(病院、医療施設)がこれに違反した場合は、罰則が適用される規定もあります。 また、注意しなければならないのは、労働基準法は、民法の特別法であるという点です。 簡単に言うと、特別法とは一般法である民法に優先するため、例えば、労働基準法の労働契約に関する規定は、当事者が合意の上で締結した雇用契約に関する規定に優先して適用されますので、雇用契約で双方が合意しているのだから労働基準法に違反していても問題ないとはなりませんので、注意が必要です。

労働法と労働契約 2.労働契約 2-1)契約締結に当たって ・基本は双方の対等の立場での合意 ・ただし ①弱い立場の労働者を保護する必要性   2-1)契約締結に当たって    ・基本は双方の対等の立場での合意    ・ただし      ①弱い立場の労働者を保護する必要性      ②労働者の健康や安全確保の必要性 では次に、労働法に基づいた労働契約について説明します。 職員即ち労働者が提供する労働力を利用して医療活動を行うために、病院即ち使用者は労働者との間で労働契約を締結するわけですが、この際、どういう条件で労働者を使用するかといった契約内容は、基本的には使用者と労働者の合意で決定します。 但し、使用者と労働者では交渉力をはじめとする力の差があるため、弱い立場にある労働者の保護を図る必要がある事、及び労働者の契約上の義務は、病院や医療施設に対する自分自身の心身を使った労務の提供である事、労働者の健康や安全の確保を図る必要がある事などから、労働契約には他の契約にはない特色があります。

労働法と労働契約 2.労働契約 2-1)契約締結に当たって ・基本は双方の合意 ・ただし ①弱い立場の労働者を保護する必要性   2-1)契約締結に当たって    ・基本は双方の合意    ・ただし      ①弱い立場の労働者を保護する必要性      ②労働者の健康や安全確保の必要性                ↓      労働基準法において契約自由の原則を修正 この為、労働契約の締結においては、契約自由の原則を修正し、労働基準法などの法令において労働契約で定める労働条件の最低基準が定められています。 この最低基準は、罰則や行政の監督等で設定されていますので、使用者はこの基準を遵守する必要があります。 もし、労働者と使用者の双方が合意の上で労働基準法などの労働法で定められている最低基準に達しない労働契約を締結しても、労働基準法について説明した際にふれたように、労働基準法は特別法であるため、その最低基準に達しない労働契約の該当事項は無効となり、強制的に労働基準法で定められた基準と同様の定めをしているとみなされます。

労働法と労働契約 2.労働契約 2-2)労働者とは   2-2)労働者とは   労働基準法上の労働者とは、事業所等で使用者の指揮命令の下で働き、その報酬として賃金を受けとる者 次に、病院や医療施設が労働法に基づいて労働契約を締結する相手方である労働者について説明します。 労働基準法上の労働者とは、病院や診療所の業務において、病院側即ち使用者の指揮命令の下で働き、その報酬として賃金を受けとる者をいい、職種は問いません。 例え自宅で在宅勤務していても、例えば労働時間等の指揮命令があるのであれば労働者です。 この為、労働者には、雇われて働いている人全員が含まれますので、正規職員のみならず、パートタイム労働者やアルバイトも労働者に含まれますので、注意が必要です。