地域の時空間予測と表現 東京大学 社会基盤工学専攻 清水英範 CSIS workshop on research agenda for spatial analysis 2003.2.22 地域の時空間予測と表現 東京大学 社会基盤工学専攻 清水英範
1.はじめに ~ 自己紹介もかねて ● 専 門: 地域計画の高度化を目標とした 地域データの調査と解析(計画分析) 1.はじめに ~ 自己紹介もかねて ● 専 門: 地域計画の高度化を目標とした 地域データの調査と解析(計画分析) ● 研究歴: 土地利用・交通モデル 衛星リモートセンシング画像解析 都市計画支援システム 時間地図(Linear Cartogram) Neural Network 画像分類 GPSによる水準測量システム 動画像による車両動態解析 古地図による旧都市景観のVisualization 空間回帰分析、空間内挿 Area Cartogram など ● 研究歴: 土地利用・交通モデル 衛星リモートセンシング画像解析 都市計画支援システム 時間地図(Linear Cartogram) Neural Network 画像分類 GPSによる水準測量システム 動画像による車両動態解析 古地図による旧都市景観のVisualization 空間回帰分析、空間内挿 Area Cartogram など
土木工学の計画分析研究を振り返ってみて ● 地図や統計データなどの地域データを作成する ● 地域データから地域の現状や問題点を探る ● その過程や結果を国民に分りやすく表現する という地域計画の基本についての技術 (地理学的な技術?) にあまり大きな関心を向けてこなかった? プロジェクト分析(需要予測/評価)への社会的要請
+ ● 近年のGISの高度化と普及 ● 地域データの流通システムの整備 ● 測位・調査技術の進展 ● プロジェクト分析への社会的要請の低下 (研究者の意識には差があろうが) 地理学的な物の見方や 研究アプローチへの回帰
2.計画分析とGIS、空間解析 ■ 計画分析の目標 地域データの調査と解析から、地域の 諸現象の因果関係を分析し、そこから 地域の問題点やその解決の方向を 論理的に導くこと 空間解析が必要不可欠な所以
■ 計画分析の最低限の目標(責務) 地域の現在、そして過去から現在まで の変遷を、多くの人々が知識として共有 できるように表現すること 地域の歴史と現状を知り、 それを他の地域と比較すること無しに、 地域の将来像を議論することはできない
GISと空間解析 地域の現在、そして 過去から現在までの変遷を、 多くの人々が知識として共有する GISと空間解析の意義は 地域計画の根底を支えるという意味で GISと空間解析の意義は 確固たるものになる
■ 私にとっての空間解析の目標 1.任意の時点、任意の地点(地区)の 地域の様子を予測する(復元する) 地域の時空間予測 GIS上の種々のデータを最大限に活用して、 1.任意の時点、任意の地点(地区)の 地域の様子を予測する(復元する) 地域の時空間予測 2.その結果や、そこから示唆される 地域の特徴を分りやすく表現する 地域の時空間表現
3.地域の時空間予測 ● 空間予測(内挿、補間) ● 時空間予測(内挿、補間) ・点データに基づく空間内挿 ・面データの集計単位の変更(面補間) ● 時空間予測(内挿、補間) ・画像(グリッド)データに基づく時空間内挿 : ・地域科学、計量経済学などの 地域分析手法 → 多くは適用可能
■ 私がいま必要だと思うこと ● GIS上のデータを最大限に活用して 地域の時空間予測を行う手法の 全体像を容易に俯瞰でき、 ● 論理的に適度に厳密で、かつ 汎用性、実用性の高い 予測の手法(体系)の提示
土木の計画分析に根付いた予測手法の代表例として ■ 交通需要予測の四段階推定法 土木の計画分析に根付いた予測手法の代表例として ● 発生・集中、分布、機関分担、経路配分という手順 → ・ 全体像が分かりやすい ● 手法: 重回帰モデル、ロジットモデルなど → ・ 知的好奇心を適度に満足させる → ・ 汎用性、実用性、操作性に富む ● 実務への迅速な普及 ● 研究の活性化 ← 科学としての弱点が明確で、 格好の研究対象、攻撃対象
■ 私のとっての時空間予測(概念)の悩み (例) ● 誤差の空間相関の表現 Kriging ・・ covariogram ← stationary 空間回帰モデル ・・ ECM → non-stationary ● (社会的距離による)空間依存関係の表現 距離は説明変数なのかパラメータなのか? 例) 予測:
■ 私の願い GISは地域の現在の姿、そして地域の 過去から現在までの変遷を私たちの眼前に 分りやすく提示してくれる道具 最低限必要なのである という考え方を社会に定着させたい。
全体像を容易に俯瞰でき、 論理的に適度に厳密で、かつ実用性の 高い時空間予測の手法(体系)が必要 多くの人に理解され、魅力的と思われ、 結果として応用研究が増える 地域計画の新展開 (開かれた計画) 理論の精緻化など 研究の活性化
GISデータは ● 4次元(x,y,z,t)空間に定義され、また ● 限定された形式によって定義された、 ● 主題をもったデータ群である 時空間予測の手法(体系)
4.地域の時空間表現(visualization) ● Distance/Area Cartogram ● 地図の感性表現 ● 景観の復元 ● 立体表現 ● 画像のスーパーインポーズ ● アニメーション(モーフィング) ● CGアニメーション(Walk/Fly-Through) 等々
■ GISを用いた表現の面白さ 奇想天外とも言えるような独創的、 画期的な表現手法はないものか? GIS上の複数のデータを巧みに利用した表現 ● Cartogram ・・ 地図+統計データ(or 距離) ● 画像のスーパーインポーズ ・・ 複数の画像 ● モーフィング ・・ 複数の画像(特に時系列) ● Fly-Throughアニメーション ・・ DEM+画像 奇想天外とも言えるような独創的、 画期的な表現手法はないものか? ・交通量、時間距離などの非対称データの表現 :
■ 地域計画への利用において重要な視点 ● 多くの人々の関心を誘う、 分りやすくて印象的な表現能力 ● 議論や合意形成を円滑化する on-demandでの迅速な表現能力 人間の知覚能力や錯覚をうまく利用する
Fly-Throughアニメーション DEM + オルソ空中写真
Fly-Throughアニメーション 明治時代DEM + 五千分一東京図原図
● 表現手法の難しさ(悩み) Area Cartogram は限界か? Cartogram 研究の面白さ Cartogram に対する評価 合致しない 社会的意義という観点からの Cartogram に対する評価
Continuous Area Cartogram by Eihan Shimizu and Ryo Inoue
2000年 市区町村別転入超過率(一都三県) 凡例 10%~ 1%~10% 0.1%~1.0% 0%~0.1% -0.1%~0% -1%~0.1% -10%~-1% ~-10% 凡例
Continuous Area Cartogram 2000 計算時間 約5時間 (1.8GHz)
Dorlingの手法 2000
清水・井上による手法
5.まとめ ① GISは情報を4次元空間に貼り付ける道具である ② 地図や統計データ等は、断片的ながらも、その地域の 特徴を端的に表す情報である ③ したがって、GISならではと思える仕事で、また力を 発揮すべき仕事は、GIS上の断片的な情報から地域の 時空間をリアルに予測する(復元する)ことであり、その 結果を分りやすく印象的に表現することである、 ④ ここに、空間解析の(社会からクリアに見える)明確な 貢献が期待され、これにより、地域計画にとっての GISと空間解析の意義は不動のものとなる。