メディア社会文化論 2013年10月03日.

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メディア社会文化論 2013年10月03日

1.メディア論と、コミュニケーション論資料論 メディア(論)とコミュニケーション(論)との関係 メディア(論)と資料(論)の関係

1.1 メディア(論)とコミュニケーション(論)① 1.1 メディア(論)とコミュニケーション(論)① メディア論とコミュニケーション論 生地の縦糸と横糸のような関係 送り手→受け手    この流れに着目・・・コミュニケーションモデル このそれぞれの項に着目・・・メディア論

1.1 メディア(論)とコミュニケーション(論)② 1.1 メディア(論)とコミュニケーション(論)② 「送り手、受け手そのものは、自明の存在であろうか。 つまりそれらは実体として固定的に捉えられるものであろうか。 あるいは両者の中間にあるもの(普通の意味でのメディア)と、端にある送り手・受け手とを、明確に分けることができるであろうか」

1.1 メディア(論)とコミュニケーション(論)③ 1.1 メディア(論)とコミュニケーション(論)③ ←この記載への思い・・・ 現実的に分かれている でも連続的な部分もあり、明確には分け得ない 分け得ないという視点から、双方向性への道も開かれうる。

1.1 メディア(論)とコミュニケーション(論)④ 1.1 メディア(論)とコミュニケーション(論)④ さらに 「媒介」という言葉の二重性 媒介=メディア・・・固定性に着目 媒介すること=メディエート・・・流動性に着目 メディウム、ミッテル・・・モノ、コトの違い

1.1 メディア(論)とコミュニケーション(論)⑤ 1.1 メディア(論)とコミュニケーション(論)⑤ 実体概念と機能概念(中井正一) ▽イデア論との対比 ▽実体概念としての図書館から機能概念としての図書館へ 「メディアはメッセージ」(マクルーハン) ▽メディア概念の重層性

マーシャル・マクルーハンhttp://en.wikipedia.org/wiki/Marshall_McLuhanより

1911-1980 カナダの英文学者、メディア論研究者 代表作 『グーテンベルクの銀河系』(1962) 『メディア論-人間拡張の諸相』(1964)

中間(途中)にあるものとは?① (1.1.②の補足として) 中間=送り手受け手の途中にあるものとほぼいえる・・・空気、電波、本、紙、CD 途中にあるものといえるの?・・・補聴器、眼鏡・・・途中といえば途中。でも、我々の一部、あるいは感覚器官の延長? 「人間拡張の原理」(マクルーハンの著書の題)?

中間(途中)にあるものとは?② 情報機器・・・ダウンサイジング→モバイルのようにポータブルに→我々の身体に密接不可分に コンピュータやネットワークを脳や神経組織の一部のように 携帯依存症、ネット依存症

中間(途中)にあるものとは?③ 途中にはないものといえるの?・・・我々の感覚器官(皮膚、眼、耳、舌) 我々の一部なのか、途中のネットワークなのか曖昧(メガネは体の一部ですという考え方のある意味逆に、眼は体の半ば外側) →途中と終点を分ける見方は相対的

伝えられる先は? 脳? 脳の中枢? 中枢でも部分が相互に連携しあう→神経伝達物質が脳神経のなかで、情報伝達 伝えられる先は実体視できない

「メディア」で伝えられるモノの多面性 メディアは情報を伝えるのか メッセージを伝えるのか 意味を伝えるのか 思い、人柄を伝えるのか ウェーバーの行為の類型(場合によって支配の類型)にも照応 それらすべてを広い意味での「情報」と考えることはできるが

情報の二義性 広い意味での「情報」 ①伝えられることを、伝達者が意図した情報 ②伝えられることを伝達者が意図していずに(あるいはそもそも伝達者という明確な主体の存在しない)情報 ②・・・コミュニケーションモデル、妥当せず

②の情報のモデル 「送り手→受け手」モデル × 「行為する存在+その脇にいる観察者モデル」○ 「送り手→受け手」モデル  × 「行為する存在+その脇にいる観察者モデル」○ 犯人の足跡・・・情報・・・しかし犯人は送り手たろうとしない。情報を送る意図はない。

天気の変化 雲や前線や高気圧・・・情報の送り手? 気象予報士が情報として読みとるのみ 枯れ葉 人は秋やもの悲しさを感じる 葉が情報発信しているわけではない(たぶん)

⇒送り手のいない    送り手のはっきりしない   情報発信    送り手の人でない ・・・多分に妖精その他、擬人的存在を過去に人が好んできた理由かも。 →擬人化できにくい現代・・・別のコミュニケーション・ モデルの必要

受け手の不明確な情報発信① メールの受信の場合・・・受け手はメールサーバ?個々のメールソフト?読み手?読み手の眼?読み手の脳?脳の受け取り方にも濃淡はないの?受け取っても忘れるものと憶えているものあるのでは? 文系の研究者の論文・・・読者平均1.5人 理系の論文・・・ダウンロードは多いが・・・

受け手の不明確な情報発信② 昔の文字・・・後世の人に向けられる・・・石に書く(神話や預言=物語で後世の人の像が見えていた) お経の受け手・・・仏?死者?葬式・法事の参列者?死者は聞こえぬ。他方、参列者は経の意味、分かる?

情報メディアの二面性 情報メディア 記録媒体の面(固定性)・・・メディウム性・・・① 伝送(伝達)媒体の面・・・ミッテル性・・・② しかし①にも未来への伝送の面 ②にも微少な記録の面はある

送り手-受け手モデルの連鎖で 通常のコミュニケーションモデルにおける送り手と受け手のあいだに 様々なプロセスで人以外も含めた多くの小さな{送り手-情報-受け手}のプロセスの連鎖

1.1のまとめ コミュニケーションモデル・・・意図した情報伝達が中心 メディア論(情報媒体論)・・・意図せざる情報伝達を含む

1.2 メディア論(メディア)と資料論 資料とは① 1.2 メディア論(メディア)と資料論 資料とは① 資料論 専門資料論、図書館資料論・・・旧・司書科目 資料とは何かという分野は当然、研究分野としても、ありうる →(図書館資料論→)選書論、コレクション形成論(専門資料論→)学術情報流通論

資料とは② 資料とは?(メディアとの関係において) 2つの考え方 ①資料⊆メディア(後述) ②資料=メディア

資料=メディアについて① ②の資料=メディアについて 印刷資料以外の資料を捉える際、メディアという用語を用いるのが好都合  印刷資料以外の資料を捉える際、メディアという用語を用いるのが好都合 「こうした現状を踏まえ,本章では知識・情報を伝達するあらゆる装置,仕組みを広く取り上げようとする主旨から,印刷資料のみならず,多様な非印刷資料等も含む各種の資料を総称する意味でメディアということばを用いることにした」(長澤雅男1988 247)

資料=メディアについて② 資料をメディアという例 図情図書館プリントメディア部門 同ディジタルメディア部門 資料→メディアと呼び換える 並行して 図書館→インフォメーションセンターと呼び換えるべき

資料=メディアについて③ 境界線の曖昧なもの・・・資料という語感に馴染まない 某大学湘南藤沢キャンパスに10年前行った際・・・。

メディアの分類① 1)伝送(伝達)と記録という観点から分類 ①情報を伝送(伝達)のみするもの・・・空気、電波、電話線 ②情報を記録のみするもの・・・レコード、音楽CD、DVD ③情報を伝送(伝達)し、さらに記録するもの・・・新聞紙 →しかし本当にこうなるの?という感じはある・・

メディアの分類② 2)また、上記②(および③)でも ②(Ⅰ)記録される能力があり、実際には記録されていないものと、 ②(Ⅱ)記録される能力があり、実際に記録されているもの   とに、分けられる。 なお、「資料」=記録された情報ゆえ ②(Ⅰ)は、メディアであるが、資料ではない。 (資料⊆メディア)

メディアの分類③ 3)さらに、「伝送(伝達)」と「記録」は実体的に分けられない。・・・1)の分類は便宜的なもの 例 紙=記録媒体 紙切れに書いたメモを渡す・・・(記録を)伝送する媒体 パソコンのハードディスク=基本は記録媒体として機能しているイメージであるが、メールソフトその他送信機能の中枢のアプリも入れてある

メディアの分類④ 本・・・記録媒体←読者が読む・・・伝送媒体に 音、空気・・・基本、伝送媒体。   ただし、空気の揺れの記録(まとまり・単位)が伝えられる側面も。・・・微少に記録媒体でもある。

メディアの分類⑤ よって、媒体というもの(実体)と、それの機能とを分けて考えよう。 ①「記録媒体」といわれるものも、ある程度時間を隔てた情報の伝送という意味で、伝送媒体の機能を果たす。 ②「伝送媒体」といわれるものも、微少な記録の繰り返しによって伝送を果たすという意味で、記録媒体の機能も有する。

1.3 情報とメディアと資料の定義 1.3.1 情報の定義① 1.3 情報とメディアと資料の定義 1.3.1 情報の定義① 『コミュニケーション論』(後藤将之著、中公新書、1999,p.45)での定義 もっとも広義の情報・・・物質やエネルギーが構成するなんらかのパターン、あるいはそれが持つ一定の秩序性 その上で二種類の情報 ①それが当初は人為によって構成されたような情報 ②当初は少なくとも人為によって構成されてはいなかった情報

情報の定義③ 後藤将之の定義の「物質やエネルギーが構成するなんらかのパターン、あるいはそれが持つ一定の秩序性」について 「パターン」「秩序性」・・・認識する主体を要する。ただし情報のできはじめる当初から「パターン」を要する訳ではない。 「パターン」を機械に教え込めば、機械も「パターン」を「認識」できるように。 しかも機械(コンピュータ)の情報の送受信そのもののみとりあげるなら・・・パターンの認識も不要かも

物財の情報性① 「情報を専門的に担うのは、情報媒体(情報メディア)ですが、情報媒体として意図されていない存在物であっても、そこに多くの情報や意味が結果的に担われていることは多々あります」(後藤将之p.52) →物財の情報性への着目 配付資料の15の「情報の二義性」のうちの 「②伝えられることを伝達者が意図していずに(あるいはそもそも伝達者という明確な主体の存在しない)情報」に相当

物財の情報性② しかし物財の情報性は、「情報媒体として意図されていない存在物」の専有物? 形態書誌学等は? 昔の本=写本。  昔の本=写本。 奥付なし、一冊、一冊違う  形態から年代や発行地を推定

1.3.2 メディアの定義① 「メディア」英語のmediateの名詞形 1.3.2 メディアの定義① 「メディア」英語のmediateの名詞形 mediate 「媒介する、仲介する、取り次ぐ、取り持つ、介在する、中間にある、連結の役をする」 名詞形の単数がmedium、複数がmedia 太鼓持ち、仲人、くっつけるもの 弁証法の「媒介」

粉川哲夫のメディアの定義① 『社会学事典』(弘文堂,1989)「メディア」(粉川哲夫) 「「中間」「媒介」などを意味するラテン語mediumの複数が語源であることからも分かるように、伝達を「媒介」するもののこと」 従来のメディア・・・「透明な媒体」を理想・・・自らの存在感を極小化(例。ノイズの減ってくる録音画の歴史、SP→モノラル→ステレオ→アナログ→デジタル) →電子メディアに

粉川哲夫のメディアの定義② 透明性の逆説・・・透明性が増すと、「「送り手」のメッセージがそのまま「受け手」に伝わるわけではないという逆説」 ←例えばレコードは生演奏の際限ではなく、一度も存在しない音を作り出す。 では「透明性」の増す時代のメディアとは?「コミュニケーションそのものを成り立たせる「場」であって、単なる通路ではない」。

粉川哲夫のメディアの定義③ 「「今や「メディアがメッセージ」を作るのであり、「送り手」「媒介」「受け手」という発想そのものを無意味にしているのである」。 「 「メディアがメッセージ」 を作る」・・・マクルーハン「メディアはメッセージである」 「送り手」「媒介」「受け手」の無効化・・・前回、申し上げたようなそれらの相対化の必要性を裏付ける

2.マクルーハンのメディア論とそこから発展させた議論 2.1 マーシャル・マクルーハンの略歴 マクルーハン(1911-1980)「カナダの社会学者・文明批評家。「メディアはメッセージである」とするメディア論を展開。著「グーテンベルグの銀河系」「メディアの理解」など」(広辞苑)  主著 『グーテンベルグの銀河系』(1962)邦訳みすず書房 『メディア論(人間拡張の原理)』(1964)邦訳みすず書房  多分、歴史上最も著名で、批判も賛美も含め(毛嫌いする人も多い)最も言及されるメディア論の学者

Marshall McLuhan 左http://jackiebreckenridge. wordpress

マクルーハンの代表的著作の邦訳書 http://ecx. images-amazon. com/images/I/51T62KnzDjL マクルーハンの代表的著作の邦訳書 http://ecx.images-amazon.com/images/I/51T62KnzDjL._SL500_AA240_.jpg及び http://ec3.images-amazon.com/images/I/61AjAEwz0rL._SS500_.jpgより

Marshall McLuhan (みすず書房のウェブによる略歴http://www. msz. co   1911年、カナダのアルバータ州エドモントンに生れる。マニトバ大学で機械工学と文学を学んだ後、英国ケンブリッジ大学のトリニティー・カレッジに留学。F.R.リーヴィス、I.A.リチャーズを識る。帰米後1937年、カトリックに改宗、1942年、エリザベス朝の詩人トーマス・ナッシュについての論文で博士号を取得。アメリカのウィスコンシン大学やセントルイス大学をはじめ諸大学で教鞭をとり、1946年にカナダのトロント大学教授となる。「スワニー・レビュー」や「ケニヨン・レビュー」などの諸雑誌に、数多くの文学研究論文を発表。1951年に最初のメディア論『機械の花嫁』を刊行し、この分野での独創的な研究に手を染める。   1962年、西欧文化における活版印刷の影響を扱った大著『グーテンベルクの銀河系』を、ついで1964年に『メディア論』を刊行し、現代文明論・メディア論の先駆者となる。1980年トロントの自宅で死去。

2.2 マクルーハンの 思想的バックグラウンド ①カナダ人であること ②元々は英文学者(エリザベス朝の文学研究) ③ 元来、テレビや若者文化が理解できなかった(それらの擁護者として名を売った以前) ④ プロテスタントからカトリックに改宗 ⑤著名なメディア論者オングやイニスからの影響 ⑥晩年、自己批判の書物を書く。

①カナダ人であること カナダ 1)メディアリテラシー教育の最も盛んな国 隣の大国アメリカの商業主義の影響を嫌う 2)アメリカよりもリベラルな政治文化風土(反戦、国民皆医療制度) 3)英語圏(プロテスタント)と仏語圏(カトリック)双方を抱える国(国民の 59.7%が英語・23.2%が仏語を母国語に)

②元々は英文学者(1) (エリザベス朝の文学研究) トーマス・ナッシュ(1567-1601)と共にジョン・ダン(1572-1631)などの形而上詩人やシェイクスピアのソネットを研究 (ダンの肖像はwikipedia日本版より) ダン「イギリスの形而上派 の代表的詩人・神学者。逆説 と奇想に満ちた恋愛詩と宗教 詩はマニエリスム文学の極致 とされる・・・」(広辞苑)

②元々は英文学者(2) ダンら形而上詩人を再評価したのがT.S.エリオット(1888-1965) http://nobelprize.org/nobel_prizes/literature/laureates/1948/eliot-bio.html

②元々は英文学者(3) エリオット「イギリスの詩人・批評家。アメリカ生れ。宗教と伝統を重んじる。・・・詩「荒地」「四つの四重奏」、詩劇「寺院の殺人」、批評集「伝統と個人的才能」など。ノーベル賞。(1888-1965)」(広辞苑) ミュージカル『キャッツ』の原作者でもある。 マクルーハンはエリオットの詩もよく引用する。 エリオットはアメリカからイギリスに帰化し、プロテスタントからアングリカンチャーチに改宗

②元々は英文学者(4) メディアの歴史的展望は、文学史研究の一環として確かなもの。 しかし近未来への展望は、思いつきに過ぎない面もあり、という批判は多く受ける。 もっともそこが評価の高いところでもある。

③元来、テレビや若者文化が 理解できなかった アメリカのウィスコンシン大の若手教員時代 若者文化、テレビ文化理解不能 それらを批判する論文を多く書く。 →マスコミがそれらの擁護者のようにマクルーハンを祭り上げる →若者文化、テレビ文化の擁護者に自己規定

④プロテスタントからカトリックに改宗 1937年改宗 マクルーハンの活字文化批判にはプロテスタント批判の側面が強いといわれる・・・濱野保樹 エリオットのプロテスタントからアングリカンチャーチへの改宗に対応か? マクルーハンの着想にヒントを与えたとされる弟子のオングもカトリック(しかも司祭)

⑤オングやイニスの影響 オング(1) オングWalter Jackson Ong(1912-2003) 「オング神父は米国のイエズス会の宣教師にして、英文学と文化史、宗教史並びに哲学の教授である」 (http://en.wikipedia.org/wiki/Walter_J._Ongより意訳) 「彼はミズーリ州カンサスシティに、プロテスタントの父とローマ・カトリックの母の間の子供として、生をうけた」

オング(2) 「大学卒業後、印刷出版の仕事に携わり、その後1935年イエズス会に入り、46年司祭に叙任される」 「1941年にセントルイス大学に提出した彼の修士論文は、若きマーシャル・マクルーハンの指導を受けた」 →いわば英文学者マクルーハンの正規の教え子になった修道士でもあった(37-44年マクルーハンはセントルイス大の教員)

オング(3)http://en.wikipedia.org/wiki/File:Walter-ong.jpg

オング(4) オングとの相互引照(師弟が 本質的でないところで相互に言及し合っている) 「ラメ(ラムス)の研究はなかなかなされなかったが、幸いウォルター・オングがついに内容の濃い研究を発表してくれたのである」(マクルーハン『グーテンベルクの銀河系』邦訳p.221) オング『声の文化と文字の文化』(藤原書店)(1982→1991) (図情図書館801-O65) オングはマクルーハンの「地球村」にも言及する(邦訳 p.280)

⑤オングやイニスの影響 イニス(1) ハロルド・イニス(Harold Adams Innis、1894年11月5日-1952年11月8日)は、カナダの経済学者、社会学者。専門は、経済史、メディア論。 マックマスター大学卒業後、1920年、シカゴ大学で博士号取得。それ以降、トロント大学で教鞭をとる。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AD%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%8B%E3%82%B9 代表作『コミュニケーションのバイアス』1951(邦題『メディアの文明史』(新曜社))(図情図書館361.45/I-54)

イニス(2)http://en. wikipedia イニス(2)http://en.wikipedia.org/wiki/File:Harold_Innis_public-domain_library_archives-canada.jpgから

イニス(3) イニス・・・トロント大のマクルーハンの年長の同僚 代表作の著名な『コミュニケーションのバイアス』の影響を、マクルーハンは受ける。 もっとも同書の「序文」はマクルーハンが書いている。 「彼の競争者のマクルーハン同様、イニスはメディアについて深く省察したことで知られている」http://fr.wikipedia.org/wiki/Harold_Innisより意訳

イニス(4) 「イニスの同僚にして知性面での弟子でもあるマーシャル・マクルーハンはイニスが夭折したことを人間知性の災害的な損失と痛く悲しんだ」 http://en.wikipedia.org/wiki/Harold_Innisより直訳 「イニスはトロント大学経済学部長として、英米の大学出身の、カナダの歴史や文化を知らない人物にあまり頼らなくて済むよう、カナダの研究者の幹部を作ることに奔走した」 http://en.wikipedia.org/wiki/Harold_Innisより大意

⑥晩年、自己批判の書物を書く 彼の有名な「地球村」などの発想を自己批判する著作を晩年に記す。 しかし仏語 紹介されず(濱野保樹) →大活躍した1950-1960年代のマクルーハンの文章のみがもて囃される

2.3「メディアはメッセージである」①・・・メディア概念の重層性の議論 「メディアはメッセージである」・・・マクルーハンの最も有名な言葉 メディア・・・外側・乗り物、 メッセージ・・・内側・乗せられる物、情報 →「外側は内側で(も)ある」??  「乗り物は乗せられる物で(も)ある」??

「メディアはメッセージである」② メディアと情報の区分を相対化ないしは無効化 本講義のスライドの前の方での議論と同様。 実体ではなく機能で分ける(中井正一の発想に近い)

「メディアはメッセージである」③ 具体的局面で考えると ラブレターを藁半紙のような再生紙にワープロで印字して渡しても、効果があるか? 情報は無色透明、中立であるか否か 同じ発言でも誰が言うかで、捉えられ方は異なる。 真理性よりも真実性

「メディアはメッセージである」④ 【マクルーハン以前の普通の考え方】 情報と媒体の二元論・・・情報(メッセージ)と媒体(メディア、乗り物)とは、別個のもの、全く切り離されたものという考え方 【マクルーハンの考え方】 メッセージ性のない、無色透明な媒体そのものというものはない。媒体そのものが何であるかということ自体にメッセージ性がある。情報媒体それ自体が情報を発信している。

「メディアはメッセージである」④ 「メディアはメッセージである」・・・メディア概念が無限に広がる →メディア概念の重層性(吉見俊哉)

メディア概念の重層性① メッセージ1VSメディア1 ↓ 〔メッセージ2VSメディア2〕 ↓ 【〔メッセージ3〕VSメディア3】 ↓ 【メッセージ4】VSメディア4

メディア概念の重層性② 含まれるものと含むものと関係が無限に連鎖する。 「電気の光というのは純粋なインフォメーションである.それがなにか宣伝文句や名前を描き出すのに使われないかぎり,いわば,メッセージをもたないメディアである.この事実はすべてのメディアの特徴であるけれども,その意味するところは,どんなメディアでもその『内容』はつねに別のメディアである,ということだ」(McLuhan 1964=1987 8)

メディア概念の重層性③ メディアと内容とは,関係性のなかで把握される メディアは実体的にメディアであるわけではない。内容も固定的に内容であるのでもない 関係性のなかで相対化される.

メディア概念の重層性④ 「書きことばの内容は話しことばであり,印刷されたことばの内容は書かれたことばであり,印刷は電信の内容である.もし『話しことばの内容はなにか』と問われたら,『実際の思考のプロセスで,それ自体は非言語的なもの』ということにならざるをえない」(McLuhan 1964=1987 8) このマクルーハンの議論を延長すると・・・

メディア概念の重層性⑤ 「印刷は電信の内容である」(上記の引用)→ 《印刷は電信,出版物,新聞といったメディアの内容である》.さらにこれを拡張する.《電信,出版物,新聞は,電話線・電話会社,出版社,新聞社といったメディアの送信される内容である》.さらに《出版物,新聞は図書館というメディアの選別される内容である》.

メディア概念の重層性⑥ この捉え方のメリット スライド25の以下の矛盾も解消に ①資料⊆メディア(後述) ②資料=メディア 記録されざるメディア(媒体材料)、資料、 マスメディアまでを統合的に見られる