下流汚染蓄積型湖沼の 窒素汚染問題 茨城大学農学部 黒田久雄.

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運動の重点推進事項(期間:10年間) (1)普及啓発 (2)資源循環システムづくり (3)土壌診断の実施 (4)環境にやさしい農業技術の実証・普及 (5)「有機の郷づくり地域」の拡大 1.
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7班 松本蛍都 村辻千絵美 山下裕大 山田怜史 山中望
P19-5 家畜ふん堆肥の窒素肥効の遅速に基づく評価法 第13報 普及現場に対応した家畜ふん堆肥施用支援ツール
北海道情報大学 情報メディア学部 情報メディア学科 新井山ゼミ 瀬戸 裕
ビタミン (2)-イ-aーJ.
飼料中の放射性セシウムに関する 暫定許容値が変わりました
環境衛生(environmental hygiene)
土壌の酸性化: 「強度因子である土壌pHの低下、あるいは容量因子である酸中和量(Acid Neutralization Capacity)あるいは緩衝能の減少」として定義される.
環境保全学 1.地域的な環境問題と資源循環 1.1 下水道処理と汚泥の緑農地利用 1.2 有機性廃棄物のリサイクル
水の話 水分子の特徴 小さい分子なのに常温で液体 水(液体)から氷(固体)になると 体積が大きくなる。 電気陰性度が大きい原子は 分極
水の話 水分子の特徴 水分子は分極している 常温で液体である NH3やCH4と比較して沸点高い 水から氷になると 体積が大きくなる
リスク評価 ・管理技術開発 有害性評価手法 暴露評価手法 リスク評価手法 リスク管理手法 化学物質総合管理分野のロードマップ(1) (目標)
脂肪の消化吸収 【3】グループ   ~
平成17年度 卒業論文発表資料 ゼロエミッションをめざした 産業ネットワークの形成に関する研究
1.環境汚染の防止と改善 2.産業廃棄物の処理と健康
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緩衝作用.
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消費者は食品の安全性についてどのように感じているのか?
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食糧自給率低下によって 日本が抱える危機とその対策
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水質調査の現地観測手法について 茨城大学農学部 黒田 久雄.
静岡大学システム工学科 前田研究室4年 50113006 阿部 茂晴
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中学校理科・社会・総合的な学習の時間  環境問題について .
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2001年度 花木研 卒論題目 (花木・長谷川 担当分) 1)自然水系の窒素汚染に対する好気性脱窒を用いたバイ オレメディエーションの検討
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図3 地球環境変動の中核的課題と動向 自然圏(Natursphäre) 人類圏(Anthropophäre) 生物圏 大気圏 水文圏 土壌圏
家畜ふん堆肥の肥料成分量 窒素 リン酸 カリ 家畜ふん堆肥の肥料成分量 畜産環境整備機構「堆肥の品質実態調査報告書」(2005)より作成
日本学術会議主催 学術フォーラム 巨大災害から生命と国土を護る 災害に強い農業生産基盤の整備と国土保全 公益社団法人農業農村工学会 塩沢 昌.
「食料自給率」について知ろう 食料自給率って、 聞いたことある? 出典(データは次の資料を参考にしました)
× 農業 都市の緑化 生物界の共生 (生物は単独では生きられない) 都市の共生 (ヒトはひとりでは生きていけない) 捕食関係 寄生関係
堆肥を使用する際にはご留意ください! 〇 耕種農家・育苗業者の皆様へ 〇 輸入飼料を給与した牛に由来する 被害を未然に防止するために
堆肥を販売・譲渡・施用する際にはご留意ください!
堆肥を使用する際にはご留意ください! 〇 耕種農家・育苗業者の皆様へ 〇 輸入飼料を給与した家畜に由来する 被害を未然に防止するために
Environment Risk Analysis
居住環境計画学第2回シンポジウム 2050年の地域性
日本の食料自給率について 応用生命学科 石渡隆之 森林科学科 大島渉.
植物と大気汚染 ー研究の概略ー 1)大気汚染のバイオモニタ  リングへの利用 2)大気汚染物質の分解除去.
牛ふん堆肥、豚ぷん堆肥の無機・有機成分と窒素肥効 鶏ふん堆肥(副資材なし)の無機・有機成分、分析方法と窒素肥効
肥料・燃油高騰対応緊急対策事業 のポイント (肥料対策) ○○県○○協議会 対策の内容 支援の対象となる肥料 支援の対象者
ジャストインタイム農業システム (JITAS; Just In Time Agriculture System)
アミノ酸の分解とアンモニアの代謝 タンパク質やアミノ酸はどこにでもあるありふれた食材ですが、実は分解されるとアンモニアという、体に非常に有害な物質を産生します。これは、普段われわれが何も気にせずに飲んでいる水が、実はH+(酸)とOH-(アルカリ)で出来ているのと似ているように感じます。今回、アミノ酸の分解に伴って産生されるアンモニアを、生体はどのようにして無毒化しているかを考えましょう。
環境・エネルギー工学 アウトライン 序 章 環境・エネルギー問題と工学の役割 第1章 バイオ技術を使った環境技術
省CO2かつ低環境負荷なバイオマス利活用モデルを確立し、低炭素社会と循環型社会の同時達成に貢献
書評報告 “トウモロコシ”から読む世界経済 光文社新書  江藤隆司著 06A2100H 谷澤 佑介.
牛ふん堆肥、豚ぷん堆肥の無機・有機成分と窒素肥効 鶏ふん堆肥(副資材なし)の無機・有機成分、分析方法と窒素肥効
硝酸態 窒素 AD可溶有機物量が 250mg/g・乾物未満の豚ぷん堆肥での測定例
2013/5/25 3.人による自然の利用(世界).
主要穀物の 需要と生産状況 7班 07A024 奥藤智代 07A043 小西郁里 07A052 坂田秋沙 07A053 坂本典子
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)について
小規模水源池における 植物による水質浄化に関する研究
堆肥からの窒素供給量(kg/t・乾物) 緑: 牛ふん堆肥 青: 豚ぷん堆肥 紫: 鶏ふん堆肥
堆肥を販売・譲渡・施用する際にはご留意ください!
家畜ふん堆肥の肥料成分活用法 家畜ふん堆肥には、 多量の肥料成分が含まれています その量は、個々の堆肥で大きく異なっています 窒素 リン酸
環境学 第2回 (H ) 講義HP: cc. yamaguchi-u. ac
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環境学 第9回目 (H ) 環境法と循環型社会 p.68~
沿道植物中のEROD活性による 大気汚染のバイオモニタリング ー研究の概略ー.
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下流汚染蓄積型湖沼の 窒素汚染問題 茨城大学農学部 黒田久雄

2011年9月13日 土浦港アオコ発生状況

人にとって必須の元素の一つ 今 なぜ窒素を問題とするのか。 Wikipediaでは窒素について下記のように記している 今 なぜ窒素を問題とするのか。 Wikipediaでは窒素について下記のように記している  生物にとっては非常に重要でアミノ酸やタンパク質、核酸塩基など、あらゆるところに含まれる。分解すると生体に有害なアンモニアとなるが、動物(特に哺乳類)は窒素を無害で水溶性の尿素に代謝している。しかし、貯蔵はできないためそのほとんどは尿として排泄している。そのため、アミノ酸合成に必要な窒素は再利用ができず、持続的に摂取する必要がある。 人にとって必須の元素の一つ

持続可能な都市とは 都市と農村の組み合わせによる健全な物質循環のシステム                           鈴木基之 放送大学:物質循環と人間活動

環境(流域)を構成する三領域 窒素循環の崩壊 → 湖沼の富栄養化 生産緑地 自然生態系保全 (農業・林地) 都市(産業) 丹保憲仁(2002) 環境(流域)を構成する三領域 自然生態系保全 生産緑地 (農業・林地) 都市(産業) 肥料・食料 環境アセスメントの領域 環境制御の領域 窒素循環の崩壊 → 湖沼の富栄養化

流域面源対策:Nitrogen Footprint と水収支の観点から 飼料輸入 食料輸入 流域面源対策:Nitrogen Footprint と水収支の観点から 窒素輸入 農業対策 畜産ふん尿 農地:食料生産 畜産 排水 灌漑 蓄積窒素化 高濃度化 水利用:流域外へ 下流汚染蓄積型湖沼 急激な富栄養化 水道 下水道 食品 高濃度化 食の欧米化  タンパク質過剰摂取  生活習慣病の発症 大都市圏 住民

茨城県取手市における地域外との窒素の出入り(kg・ha-1・年-1) 出荷農産物 56 購入食料飼料 358 販売交換 15 食料・飼料 農地             ふん尿 損失 13 購入堆厩肥 17 60 350 雨・灌漑・窒素固定・脱窒 15 化学肥料 92 12 蓄積・溶脱 65 廃棄 333 茨城県取手市における地域外との窒素の出入り(kg・ha-1・年-1)

搾乳牛の窒素フロー 生産量(MILK) 70.0 g頭-1日-1 購入飼料 259.6 g頭-1日-1 ふん 自給飼料 敷料(購入・自給)  1.8 g頭-1日-1 合計  331.9* g頭-1日-1 ふん  156.31 g頭-1日-1 尿  83.7 g頭-1日-1 合計  240.0 g頭-1日-1 吸収量  20.1 g頭-1日-1(敷料を除く) タンパク質量(45.8 kg頭-1年-1 ) *松本成夫:農業環境技術研究所報告第18号(2000)

堆肥と有機質肥料を区別する 有機質肥料 流域内農地 化学肥料 溶脱・流出 家畜排せつ物(全動物を対象に) 牛 豚 馬 鶏 有機質肥料 堆 肥 流域外へ 有機質肥料 堆 肥   液 肥   乾燥鶏糞 有機質肥料 流域内農地 蓄積分 化学肥料 必要施肥量 過剰施肥量 化学肥料 有機質肥料 溶脱・流出

農地窒素汚染問題 総投入窒素量 化学肥料+有機質肥料 蓄積窒素量 不可避溶脱 「農作物・畜産物などの生産」と 「都市の消費」の窒素循環の問題  化学肥料+有機質肥料 蓄積窒素量 不可避溶脱 「農作物・畜産物などの生産」と 「都市の消費」の窒素循環の問題 都市のライフスタイルが窒素汚染を引き起こす