中地 重晴 化学物質政策基本法を求めるネットワーク 化学物質審査規制法改正案の問題点 中地 重晴 化学物質政策基本法を求めるネットワーク
化学物質の安全性を確保する社会のしくみ 日本の法規制は分野ごとにあり、統一性を欠く 労働現場では労働安全衛生法による規制 環境面では排出規制と環境基準の設定 化学物質審査規制法(化審法) 化学物質排出把握管理促進法(化管法) PRTR制度(環境汚染物質排出移動登録) WSSDの2020年目標に関する認識が希薄 SAICM国内実施計画は未決定
化学物質の管理に係る我が国関係法令 化学物質の管理にかかる我が国関係法令 曝露 戦争テロ 労働環境 消費者 環境経由 有害性 排出・ストック汚染 廃棄 急性毒性 毒 劇 法 労 働 安 全 衛 生 法 農 薬 取 締 有 害 家 庭 用 品 規 制 法 薬 事 建 築 基 準 食 衛 生 毒 劇 法 水 質 汚 濁 防 止 法 大 気 染 土 壌 対 策 廃 棄 物 処 理 法 等 化学兵器禁止法 人の健康への影響 化学物質排出把握 管理促進法 農 薬 取 締 法 農 薬 取 締 法 長期毒性 化学物質 審査 規制法 化学物質の管理にかかる我が国関係法令 今日、紹介するのは、私の課はこのうち、化審法、化管法、化学兵器禁止法、オゾン層保護法、フロン回収破壊法の5つに責任を負っている。 本日は、その中の主要な動向を、関連の国際動向とともに紹介したい。 生活環境(動植物を含む)への影響 環境への影響 オゾン層 破壊性 オゾン層 保護法 ※ ※:フロン回収破壊法等に基づき、特定の製品中に含まれるフロン類の回収等に係る措置が講じられている。
化審法見直しの内容(国の考え方) 基本的な考え方:WSSD目標を踏まえた化学物質管理 WSSD目標を踏まえ、予防的アプローチに留意し、科学的リスク評価に基づき、リスクの程度に応じた製造・使用の規制、リスク管理措置、情報伝達等を行うことを基本的な考え方とする。 法見直しの方向: 1.化学物質の上市後の状況を踏まえたリスク評価体制の構築 2.リスクの観点を踏まえた新規化学物質事前審査制度の高度化 3.厳格なリスク管理措置等の対象となる物質の扱い 2020年に向けたスケジュールと官民の役割分担
化審法の改正点(案) (環境省資料より) 現行法の区分 改正点(案) 新規化学物質 上市前審査は維持。審査に当たり製造・輸入予定量及び用途に配慮。少量新規化学物質、ポリマーにかかる規定を見直し。 既存化学物質等 一定量以上製造・輸入される物質について、製造・輸入量及び用途の届出義務を導入。 第一種特定化学物質 (難分解、高蓄積、毒性あり) 引き続き原則として製造・輸入禁止。POPs条約で認められたエッセンシャルユースに配慮。 第二種特定化学物質 (難分解、毒性あり) リスク評価の結果指定することとする。含有製品の取り扱いに関する規定を追加。 第一種監視化学物質 (難分解、高蓄積、毒性不明) 物質及び含有製品に関する情報伝達義務を追加。 難分解性はずし、良分解性もリスク評価対象に。 第二種・第三種監視化学物質 (難分解、リスク懸念) 「優先評価物質」とする。有害性・暴露情報提供提出の努力義務を導入。有害性報告義務、有害性調査指示の規定を見直し。
化審法改正案の問題点(1) (国際協調の観点から) WSSDの2020年目標を達成するためには、今回の化審法改正だけでは不十分 予防原則・代替原則・市民参加の原則が明記されていない GHSに準拠した表示が義務づけられていない 消費者にまで情報が伝達される仕組みがない
2020年目標(WSSD) 予防的取り組み方法に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順を用いて、化学物質が人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成することを目指す
第三次環境基本計画(平成18年4月閣議決定) 重点分野:化学物質の環境リスクの低減 (1)2025年頃の社会における目標の設定 ・化学物質の環境リスクに関する知見の充実・共有化 ・予防的な対策の機動的な実施 ・環境リスクに対する関係者の理解の深化とその低減 のための行動 ・国際協調を通じた企業の技術インセンティブの確保と 国際的な取組への我が国の貢献 (2)暴露・有害性情報の不足の解消に向けたスケジュール を提示 (3)多種多様な化学物質の特性に応じた環境リスク管理と リスクコミュニケーション (4)国際的な情報発信と地球規模の問題への貢献の強化 (環境省資料より)
環境省パンフレットより
化審法改正案の問題点(2) (ノーデータノーマーケット原則の観点から) 化審法の適用範囲の見直しがなされていない 事業者に毒性データ等の届出を義務づけていない 「優先評価化学物質」の概念・選定基準が明確でない 「第1種特定化学物質」の規制は緩和すべきではない 「第2種特定化学物質」の選定基準や選定プロセスが明確でない
EU とアメリカの リスクと規制に対する姿勢 欧州委員会の提案: 予防的な規制のスタイル アメリカの枠組み: 市場重視・産業寄りスタイル 小さい リスクの許容レベル 大きい 欧州委員会の提案: 予防的な規制のスタイル リスク評価に多層的アプローチ 予防的要素が大きい リスクがないことを示すのは産業側 アメリカの枠組み: 市場重視・産業寄りスタイル 現状の規制に満足 予防的要素が少ない リスクがあることを示すのは政府 出典:ユネスコ2006年6月発表報告書 『ナノ技術の倫理と政治』 UNESCO Report The Ethics and Politics of Nanotechnology Published in June 2006 Figure by Kristen Kulinowski of the Center for Biological and Environmental Nanotechnology 化学物質問題市民研究会 安間 武氏作成、(2006)
化審法改正案の問題点(3) (新技術への対応の観点から) ナノ物質について「新規化学物質」として管理することが明記されていない 国際的に安全性の評価方法が未確立であり、安全性の確保を最優先すべき
化学物質政策基本法の制定を 省庁縦割りを廃し、基本法で、総合的で一元的な化学物質管理を行うべき 8つの基本理念のもとに化学物質政策をまとめる 化学物質基盤法で全ての化学物質を一元管理し、目的ごとに個別規制法で対応する
未来世代・生態系を守るために 化学物質政策基本法 を市民・NGOの力で制定させましょう! -ご清聴ありがとうございました!!