中地 重晴 化学物質政策基本法を求めるネットワーク

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 ( 様式8 ) 提案書雛型イ 資料2 - 1 (提案者名を記載) ○○○○ 受付番号 イ.ⅠT活用等による介護事業者の経営効率化、安定化に資する 調査 平成 23 年度医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出実証事業 ( IT 等を活用した医療・介護周辺サービス産業創出調査事業) 提案書 (提案事業のタイトルを記載:
Advertisements

1 ( 様式8 ) 提案書雛型ア 資料2 - 1 (提案者名を記載) ○○○○ 受付番号 ア.地域見守りサービス創出における調査 平成 23 年度医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出実証事業 ( IT 等を活用した医療・介護周辺サービス産業創出調査事業) 提案書 (提案事業のタイトルを記載:
ESH DATABANK 1 環境関連法令. ESH DATABANK 2 法の体系 憲 法 行政法 民事法 刑法 公害犯罪処罰法 民法 民事特別法 国の法令 自治体法令 国際法 法律 政令 省令 条例 規則 告示 条約・議定書 国際宣言・憲章.
(社)日本画像医療システム工業会 会長 桂田 昌生
交通バリアフリー法 -戦略と注意点-   近畿大学理工学部土木工学科 三星昭宏.
PCBに関する台湾の報告 ロバート ・ リン  林 学淵 台湾環境保護連盟.
居宅介護支援事業所.
(財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン) 自然保護室 村田幸雄
これまでの議論・府域の状況を踏まえた考え方の整理
証券取引所の再編方法のあり方について 立教大学北原ゼミナール 新井・村杉・工藤・野村.
事業用自動車による事故は増加・高止まり、走行キロ当たり事故件数も近年増加
リスク評価 ・管理技術開発 有害性評価手法 暴露評価手法 リスク評価手法 リスク管理手法 化学物質総合管理分野のロードマップ(1) (目標)
スウェーデンの多国籍企業による 環境経営 総合政策学部四年 井上まゆ.
【資料5】 条例の基本的な方向性について 平成28年8月30日 福岡市障がい者在宅支援課.
社内使用禁止物質の 事前チェック.
4 第3次障害者基本計画の特徴 障害者基本計画 経緯等 概要(特徴) 障害者基本法に基づき政府が策定する障害者施策に関する基本計画
1.環境汚染の防止と改善 2.産業廃棄物の処理と健康
児童労働問題とILOの取り組み ー条約の重要性ー
化学物質の使用前 事前チェック.
化学物質リスク総合管理技術研究イニシャティブの枠組み
PCT規則改正(2012年7月1日発効).
第2次総合計画 【H22~H26】 ~本市の基本的な計画
第三章 会社のグループを形成する.
資料3 地独法人 大阪健康安全基盤研究所 (平成26年4月設立予定) ➣公衆衛生領域における公的な科学的・技術的中核機関(地衛研)
政策争点分析プロジェクト 2008年1月13日 G-SEC.
平成21年5月1日から 介護保険法が変わります 1 業務管理体制の整備・届出 介護サービス事業者の皆様が、これまで以上に適切な事業の
ボンドの効果 ―法と経済学による分析― 桑名謹三 法政大学政策科学研究所
現代の経済学B 植田和弘「環境経済学への招待」第3回 第7章 環境制御への戦略と課題 京大 経済学研究科 依田高典.
食品の機能性表示に取り組む事業者の方へ 食品の機能性表示制度とは 支援員の活動内容について 機能性表示のご相談について
国際的な情報セキュリティへの取り組み 各国の対応とサイバー犯罪条約 インターネット時代のセキュリティ管理.
「沖縄におけるスポーツサイエンスの拠点化に向けた
トレーニングの際はスライド, ノートの両方を確認してください
付属書Ⅰ.5 ハザード分析と 重要管理点 (HACCP).
ソーシャルワークの価値と倫理 ~国際ソーシャルワーカー連盟の議論を踏まえて~
輝いて、自宅で ~終わりよければすべてよし~
長期滞在型テレワークの誘致及び導入検討調査
平成29年度 WPI新規拠点公募のポイント (採択数・支援規模・ホスト機関の要件 等) (研究領域) (ミッション) (その他) 1
GHSラベルの読み方の基本 【○○部○○チーム】(所属等) 社内安全衛生教育用資料 ○○(名前) 【教育担当者さまへ】
平成21年5月1日から 介護保険法が変わります 1 業務管理体制の整備・届出 介護サービス事業者の皆様が、これまで以上に適切な事業の
(社) 建設コンサルタンツ協会 技術委員会/照査に関する特別WG
? 中小企業向け環境経営体制構築支援事業(エコクリップ)
「沖縄におけるスポーツサイエンスの拠点化に向けた
生物多様性保全推進支援事業 1.地域における生物多様性の保全再生に資する活動への支援
建築物の環境配慮のあり方について 資料2-2 1.国際的な動き 4.大阪府域の状況 2.国の動き 5.検討内容とスケジュール
(提案事業のタイトルを記載:80文字以内) ○○○○○○○○○○○○ (提案者名を記載) ○○○○
「地域経済産業活性化対策調査(沖縄市が整備するアリーナ施設を核としたまちづくり等に関する基礎調査)」
研究開発名称 対象とする技術のイラストや図 【事業番号:001】 提案者:◯◯株式会社 研究開発の概要 年度毎概算経費
環境・エネルギー工学 アウトライン 序 章 環境・エネルギー問題と工学の役割 第1章 バイオ技術を使った環境技術
第11回 内部統制.
~求められる新しい経営観~ 経済学部 渡辺史門
事業区分: 課題調査事業 コンソーシアム等名称: ○○ 事業名: △△ 代表団体名: □□ 参加団体: ▲▲、■■ 協力団体: ●●、◎◎
地方公共団体オープンデータ推進ガイドラインの概要
資料2-1 地球温暖化対策実行計画の改定について 1 地球温暖化対策実行計画の改定の必要性について 3
SDSの提出依頼 人事部 安全衛生管理室.
【バリアフリー対応のバス(リフト付バス)】
地方創生に向けた自治体SDGs推進事業 平成30年度予算案5億円(平成30年度からの新規事業) 実施期間:平成30年度~(新規)
資料2 立地推進体制について(案) 平成23年7月26日.
(平成25年6月25日 各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)
<限定地域での無人自動運転移動サービス>
代表的なフロン類の特徴 フロン類の概要 ウレタン発泡用途は2003生産中止 スチレン発泡は2010生産中止
生物多様性条約とは何か 森林を取り巻く様々な国際的取り決めと生物多様性条約 生物多様性条約の課題 藤原敬
英国のEU離脱 平成30年2月 在英国日本国大使館.
(別紙1) 提案書雛型 令和元年度 沖縄型テレワーク実装推進調査 ー提案書ー                        (日付)                        (企業名)                        (連絡先等)
食品の機能性表示に取り組む事業者の方へ 食品の機能性表示制度とは 支援員の活動内容について 機能性表示のご相談について
調査項目:(事業環境/健康投資/品質評価から選択) コンソーシアム等名称:
環境学 第9回目 (H ) 環境法と循環型社会 p.68~
府営公園における収益事業の考え方について
大阪府生活環境の保全等に関する条例に基づく水銀の大気排出規制のあり方について
○ 大阪府におけるHACCP普及について S 大阪版 評価制度を設ける 大阪府の現状 大阪府の今後の方向性 《従来型基準》
生物多様性保全推進支援事業 1.地域における生物多様性の保全再生に資する活動への支援
Presentation transcript:

中地 重晴 化学物質政策基本法を求めるネットワーク 化学物質審査規制法改正案の問題点 中地 重晴 化学物質政策基本法を求めるネットワーク

化学物質の安全性を確保する社会のしくみ 日本の法規制は分野ごとにあり、統一性を欠く 労働現場では労働安全衛生法による規制 環境面では排出規制と環境基準の設定 化学物質審査規制法(化審法) 化学物質排出把握管理促進法(化管法) PRTR制度(環境汚染物質排出移動登録) WSSDの2020年目標に関する認識が希薄 SAICM国内実施計画は未決定

化学物質の管理に係る我が国関係法令 化学物質の管理にかかる我が国関係法令 曝露 戦争テロ 労働環境 消費者 環境経由 有害性 排出・ストック汚染 廃棄 急性毒性 毒 劇 法 労 働 安 全 衛 生 法 農 薬 取 締 有 害 家 庭 用 品 規 制 法 薬 事 建 築 基 準 食 衛 生 毒 劇 法               水 質 汚 濁 防 止 法 大 気 染 土 壌 対 策 廃 棄 物 処 理 法 等 化学兵器禁止法 人の健康への影響 化学物質排出把握 管理促進法 農 薬 取 締 法 農 薬 取 締 法 長期毒性 化学物質 審査 規制法 化学物質の管理にかかる我が国関係法令 今日、紹介するのは、私の課はこのうち、化審法、化管法、化学兵器禁止法、オゾン層保護法、フロン回収破壊法の5つに責任を負っている。 本日は、その中の主要な動向を、関連の国際動向とともに紹介したい。 生活環境(動植物を含む)への影響 環境への影響 オゾン層 破壊性 オゾン層 保護法 ※ ※:フロン回収破壊法等に基づき、特定の製品中に含まれるフロン類の回収等に係る措置が講じられている。

化審法見直しの内容(国の考え方) 基本的な考え方:WSSD目標を踏まえた化学物質管理  WSSD目標を踏まえ、予防的アプローチに留意し、科学的リスク評価に基づき、リスクの程度に応じた製造・使用の規制、リスク管理措置、情報伝達等を行うことを基本的な考え方とする。 法見直しの方向: 1.化学物質の上市後の状況を踏まえたリスク評価体制の構築 2.リスクの観点を踏まえた新規化学物質事前審査制度の高度化 3.厳格なリスク管理措置等の対象となる物質の扱い    2020年に向けたスケジュールと官民の役割分担

化審法の改正点(案) (環境省資料より) 現行法の区分 改正点(案) 新規化学物質 上市前審査は維持。審査に当たり製造・輸入予定量及び用途に配慮。少量新規化学物質、ポリマーにかかる規定を見直し。 既存化学物質等 一定量以上製造・輸入される物質について、製造・輸入量及び用途の届出義務を導入。 第一種特定化学物質 (難分解、高蓄積、毒性あり) 引き続き原則として製造・輸入禁止。POPs条約で認められたエッセンシャルユースに配慮。 第二種特定化学物質 (難分解、毒性あり) リスク評価の結果指定することとする。含有製品の取り扱いに関する規定を追加。 第一種監視化学物質 (難分解、高蓄積、毒性不明) 物質及び含有製品に関する情報伝達義務を追加。 難分解性はずし、良分解性もリスク評価対象に。 第二種・第三種監視化学物質 (難分解、リスク懸念) 「優先評価物質」とする。有害性・暴露情報提供提出の努力義務を導入。有害性報告義務、有害性調査指示の規定を見直し。

化審法改正案の問題点(1) (国際協調の観点から) WSSDの2020年目標を達成するためには、今回の化審法改正だけでは不十分 予防原則・代替原則・市民参加の原則が明記されていない GHSに準拠した表示が義務づけられていない 消費者にまで情報が伝達される仕組みがない

2020年目標(WSSD) 予防的取り組み方法に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順を用いて、化学物質が人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成することを目指す

第三次環境基本計画(平成18年4月閣議決定) 重点分野:化学物質の環境リスクの低減 (1)2025年頃の社会における目標の設定 ・化学物質の環境リスクに関する知見の充実・共有化 ・予防的な対策の機動的な実施 ・環境リスクに対する関係者の理解の深化とその低減 のための行動  ・国際協調を通じた企業の技術インセンティブの確保と      国際的な取組への我が国の貢献 (2)暴露・有害性情報の不足の解消に向けたスケジュール   を提示 (3)多種多様な化学物質の特性に応じた環境リスク管理と   リスクコミュニケーション (4)国際的な情報発信と地球規模の問題への貢献の強化 (環境省資料より)

環境省パンフレットより

化審法改正案の問題点(2) (ノーデータノーマーケット原則の観点から) 化審法の適用範囲の見直しがなされていない 事業者に毒性データ等の届出を義務づけていない 「優先評価化学物質」の概念・選定基準が明確でない 「第1種特定化学物質」の規制は緩和すべきではない 「第2種特定化学物質」の選定基準や選定プロセスが明確でない

EU とアメリカの リスクと規制に対する姿勢 欧州委員会の提案: 予防的な規制のスタイル アメリカの枠組み: 市場重視・産業寄りスタイル 小さい リスクの許容レベル 大きい 欧州委員会の提案: 予防的な規制のスタイル リスク評価に多層的アプローチ 予防的要素が大きい リスクがないことを示すのは産業側 アメリカの枠組み: 市場重視・産業寄りスタイル 現状の規制に満足 予防的要素が少ない リスクがあることを示すのは政府 出典:ユネスコ2006年6月発表報告書 『ナノ技術の倫理と政治』     UNESCO Report The Ethics and Politics of Nanotechnology Published in June 2006     Figure by Kristen Kulinowski of the Center for Biological and Environmental Nanotechnology 化学物質問題市民研究会 安間 武氏作成、(2006)

化審法改正案の問題点(3) (新技術への対応の観点から) ナノ物質について「新規化学物質」として管理することが明記されていない 国際的に安全性の評価方法が未確立であり、安全性の確保を最優先すべき

化学物質政策基本法の制定を 省庁縦割りを廃し、基本法で、総合的で一元的な化学物質管理を行うべき 8つの基本理念のもとに化学物質政策をまとめる 化学物質基盤法で全ての化学物質を一元管理し、目的ごとに個別規制法で対応する

未来世代・生態系を守るために 化学物質政策基本法 を市民・NGOの力で制定させましょう!    -ご清聴ありがとうございました!!