磯部直樹 (ISAS/JAXA) & MAXIミッションチーム 全天X線監視装置(MAXI) 磯部直樹 (ISAS/JAXA) & MAXIミッションチーム
全天X線監視装置 MAXI (Monitor of All Sky X-ray Image) 国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」の曝露部の初期利用ミッションである。 90分周期(宇宙ステーションの軌道周期)で全天をX線で監視し、変動天体の速報を行う。 2種類の観測装置を搭載している。 Gas Slit Camera (GSC) : ガス比例計数管 Solid-state Slit Camera (SSC) : X線CCD X線監視装置として史上最高の感度を持っている。 2008年度にH2Aロケットで打ち上げ予定である。 観測期間は2年を想定している。 JAXA, 理研, 大阪大, 東工大, 青学大, 日大 などが開発に参加している。
(Japan Experiment Module) 国際宇宙ステーション(ISS) アメリカ,ロシア,日本,欧州,カナダなど15カ国が参加する宇宙の巨大有人実験室。 1998年11月に建設が始まり、2008年に完成する予定。 完成すると、サッカー場程度の大きさになる 高度 330 ~ 480 km, 軌道傾斜角51.6度, 軌道周期約90分 である。 現在 3人の宇宙飛行士が滞在している 日本実験棟「きぼう」, JEM (Japan Experiment Module) 進行方向
日本実験棟「きぼう」(JEM) 与圧部 曝露部 MAXI SMILES (P1-77,P1-78)
MAXIの構造 曝露部 電気 通信 冷媒 Gas Slit Camera (GSC) Solid-State Slit Camera 185 cm 80 cm 77 cm 全重量 約 500 kg 曝露部 電気 通信 冷媒 Solid-State Slit Camera (SSC) Gas Slit Camera (GSC)
X線源の位置検出原理 1次元位置検出器 スリット 進行方向 地球 天頂 天頂視野 前方視野 コリメータ
MAXIの感度 史上最高の感度である。 系外の天体(活動銀河核、銀河団) まで監視できる。 全天で 1000個以上の天体を検出できる。 天体のX線強度 [mCrab] 天体までの距離 [light year] 時間 [ days ] 天体のX線強度 [mCrab] 100 200 1 101 102 104 105 103 RXTE ASM 1周回 X線新星出現 ! 1日 1周回 1週間 1週間 史上最高の感度である。 系外の天体(活動銀河核、銀河団) まで監視できる。 全天で 1000個以上の天体を検出できる。 (Tanaka et al. より)
MAXIによる観測のシミュレーション (5ヶ月分の観測) 銀 河 面
ガススリットカメラ(GSC) 12台の1次元位置検出型比例計数管を使用 前方に3ユニット、天頂方向に3ユニットで全天を監視 (1 ユニット = 比例計数管 2 台) 視野 : 1.5 x 80 deg (1ユニット) 1.5 x 160 deg (3ユニット) 位置決定制度 : 0.1 deg エネルギー帯域 : 2 ~ 30 keV エネルギー分解能 : ~ 20 % (Mo-Ka) 面積 : ~ 5400 cm2 (6ユニット)
ガススリットカメラ(GSC) A4 Paper 程度 1次元位置検出型比例計数管 HETE II WXMの改良版 Xe + CO2 (1%) ガス 10 mm 炭素芯線 6本 100 mm厚の Be 窓 Metorex社製 L R A4 Paper 程度 Position Measure : PM = Pulse Height : PH = L + R L – R L + R 358 mm
GSCの現状 理研, JAXA, 青学大, 東工大 で開発、実験を担当している。 紆余曲折はあったが、2003年夏から比例計数管のフライトモデル(FM)の製作が始まった。現在、9台が納入済みである。理研とJAXAで特性試験を分担で行っている。 昨年度、スリット+コリメータのエンジニアリングモデル(EM)が完成した。今年度JAXAで応答測定を行った。
GSC FM 比例計数管の 特性 1 mm 位置決定制度 0.1 deg には、 位置分解能 1 mmが必要。 動作電圧 芯線印加電圧 位置分解能 [mm] Position Measure PM 残差 [mm] X線照射位置 [mm] 動作電圧 1 mm 1650 V 位置決定制度 0.1 deg には、 位置分解能 1 mmが必要。 Position Measure : PM = L – R L + R
GSC FM 比例計数管の 特性 ゲインマップ 位置分解能をよくするため、 芯線電圧が高い 非制限領域で動作 5 % 程度のばらつきで一様
GSC EM コリメータ ほぼ設計どおりの性能を確認 角度 q [deg] コリメータの板どうしは約0.05度以内で平行 板どうしの間隔は設計値から 3% 程度のばらつきしかない 板の歪みは許容範囲内である 角度 q [deg] -1.5 1.5
Solid-state Slit Camera (SSC) 国産のX線CCD(浜松ホトニクス社製)を搭載する。 32 素子 前方に1ユニット, 天頂方向に1ユニットで全天を監視する。 視野 : 1.5 x 90 deg 位置精度 : 0.1deg エネルギー帯域 : 0.5 ~ 10 keV エネルギー分解能 : ~140 eV 面積 : 200 cm2
Solid-state Slit Camera (SSC) カメラボディの概観 CCD Chip 30 cm Peltier 24 cm (1024 pixel) スリット 可視光を防ぐため、 表面はアルミコーティング (2000 Å)
SSCの現状 大阪大学を中心にして、開発を進めている。 EM (CCDは 8素子のみ)が完成し、評価中である。 素子の製作が完了し、FM素子の評価も終了している。 コリメータのEMが完成し、評価を行っている。
その他、FM素子などは上山 et al. によるポスター(P1-69) SSC EMの特性 Al-Ka 1.4876 Cl-Ka 2.62239 Cl-Kb 2.8156 Ti-Ka 4.51084 Ti-Kb 4.913181 V-Ka 4.95220 V-Kb 5.42729 Fe-Ka 6.4038 Fe-Kb 7.05798 Ni-Ka 7.47815 Ni-Kb 8.26466 Zn-Ka 8.63886 Zn-Kb 9.5720 Cr-Ka 5.41472 Cr-Kb 5.9467 DE = 145 eV その他、FM素子などは上山 et al. によるポスター(P1-69)
CCDの冷却 : LHPRS Loop Heat Pipe and Radiator System Condenser Lines Accumulator Evaporator Honeycomb panels Radiator CCD Peltier device LHP Evaporator CCDを-60度に冷却 Peltier カメラボディを-20度に冷却 Loop Heat Pipe and Radiator System 小さな温度差で大量の熱輸送が可能 蒸発・凝縮潜熱利用 外部駆動力なし 毛細管力による駆動力 高い熱輸送能力 気流・液流分離 蒸発部にウィックを局在→より高い性能限界 機器配置自在性を持つ 蒸気・液管は、Smooth Tube 重力の影響を受けにくい 毛細管力が強い 日本で使用した実績はない 1つの蒸発部に対し2つの放熱面 2つの凝縮部の熱環境が異なる 変動するシンク温度 昨年度に熱環境試験で実証 (永井 et al. のポスター P2-6 参照)
まとめ MAXIは宇宙ステーションに搭載される全天X線監視装置である。 史上最高の感度を持ち、銀河系外の天体ま監視することができる。 2008年度の打ち上げに向け、そこそこ順調(?) に開発が進んでいる。 本年度中に、詳細設計を完了する。 各装置の EM の性能は、ほぼ設計どおりであり、目標が達成できそうである。 一部はすでに FM の製作が始まっている。
MAXI の 今後 検出器の較正データを取得し、データベース化する。 現実的なシミュレーションを確立する。 解析ソフトウエアを作る。 観測データベース、公開システムを確立する。 多波長連携体制を構築する。 Etc...
予備
GSC の 特性
GSC の 特性 ゲイン 入射窓からの深さ 入射窓 芯線
データ中継衛星 (こだま)