事例研究(ミクロ経済政策・問題分析 I) - 規制産業と料金・価格制度 -

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国民所得 エンゲル係数:生活費に占める食事の割 合 所得の増加と逆に動く指数 食費:所得が増加してもそれほど増えな い なぜなら 娯楽費:所得が増加すると増加する このエンゲル係数を国際比較すれば、各国の生活水準を比べることができ る しかし ある国の衣服費だけ上昇したとする 生活費は上昇する、が、食費は上昇しないエンゲル係数は低下する.
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事例研究(ミクロ経済政策・問題分析 I) - 規制産業と料金・価格制度 - (第1回 – イントロダクション) 2014年 4月11日 戒能一成

0. 非常勤講師概要 戒能 一成 (カイノウ カズナリ) 学歴; 東京大学工学部卒 (資源開発工; 再編済) 職歴; 1987 通商産業省入省(Ⅰ種技官) (~人事院・外務省に併任) 現職; 2002- (独)経済産業研究所 研究員 兼 2006- 大阪大学 RISS 特任教授 兼 2011- 原子力損害賠償支援機構 参与 兼 2011- 国連CDM理事会付属書1国 理事 HP・著作物; Google で「戒能一成」を検索 E-mail; kainou-kazunari@rieti.go.jp kaixjapan@yahoo.co.jp

「規制産業と料金・価格制度」概要   1-1. 概 要 問題設定 - 規制産業の価格・料金制度分析   テーマ - 自由選定 ( 中間報告迄変更可 ) 日程概略 - ~5月: 基本的情報提供・解説              (この間に「予察」・テーマ選定)          5月中: 中間報告 (作業計画) ~6月: ノウハウ提供・支援      (中間~最終報告迄に作業)          ~7月: 夏学期 最終報告        ←(冬学期履修者は引続き応用分析へ) ※ 入念に「予察」をしてからテーマを選ぼう! 

予備知識 - 前提とせず; 特に計量の履修不問 必要知識・ノウハウのリクエスト歓迎 夏期・冬期 - 通期でのテーマ選定を推奨するが 「規制産業と料金・価格制度」概要   1-2. FAQ 予備知識 - 前提とせず; 特に計量の履修不問 必要知識・ノウハウのリクエスト歓迎 夏期・冬期 - 通期でのテーマ選定を推奨するが           単期完結も可 採点基準 - 以下の 4つ - テーマ選択と分析手法の「整合性」 - 作業計画・内容の「合理性」 - シミュレーション・分析の「妥当性」 - 結果の評価分析と解釈の「的確性」 相談・質問 - 戒能メールアドレス宛 24時間可 

2. 概況説明 2-1. 「規制産業と料金・価格制度」とは 規制産業とは - 何らかの理由から不完全競争状態 を前提としなければならない時に 政府が規制によって経済厚生を 改善しようとしている産業 - 本講では「経済的規制産業」が対象 料金・価格制度とは - 規制産業の料金・価格を決める制度 - 主に「家計」を対象とするもの多し

2. 概況説明 2-2. 料金・価格制度 料金・価格制度の法的形態 法定・条例料金 - 料金を国・地方公共団体が 直接制定 認可料金 - 料金を定める場合、国(所 管大臣)の事前認可が必要 届出料金 - 料金を定める場合、国(所 管大臣)に届出が必要 ← 近年は「事後チェック型届出」など制度が多様化 6

2. 概況説明 2-3. 料金・価格制度の例 料金・価格制度の具体例(現状) (法定料金) - 診療報酬、介護報酬(→別講推奨) (条例料金) - 水道・下水道料金、粗大ゴミ料金 (認可料金) - 電気・都市ガス料金 - 鉄道・バス運賃、高速道路料金 (届出料金) - 電気通信料金、国内航空運賃 - 郵便料金(一部認可制) ※ 公租公課(ex. 租税、社会保険料・NHK)など 財サービスの直接的対価でないものは別 7

2. 概況説明 2-4. 料金・価格制度の現状(2009・家計調査) (法定) 保険医療費 \ 76,462 (対総支出 2.51%) 2. 概況説明   2-4. 料金・価格制度の現状(2009・家計調査) (法定) 保険医療費 \ 76,462 (対総支出 2.51%) (条例) 上下水道料 \ 49,213 (対総支出 1.62%)   (認可) 電気代     \ 98,527 (対総支出 3.24%)       都市ガス代 \ 34,992 ( 1.15%)     鉄道運賃  \ 38,190 ( 1.25%)      有料道路料 \ 7,329 ( 0.24%) (届出) 移動電話料 \ 79,986 (対総支出 2.63%)      固定電話料 \ 31,418 ( 1.03%) 航空運賃  \ 5,879 ( 0.19%)       郵便料   \ 4,572 ( 0.15%) .    合計(含その他) \ 329,210 ( 10.08%) 8

→ 「規制緩和・改革」政策の進展に伴い’90年代 中盤から殆どの制度で「制度変更」を実施 2. 概況説明   2-5. 料金・価格制度と規制改革    → 発端は「内外価格差の深刻化」    → 「規制緩和・改革」政策の進展に伴い’90年代      中盤から殆どの制度で「制度変更」を実施    → 電力・都市ガスの場合大きく2段階 (‘94, ’99)                  電気事業  都市ガス事業 ヤードスティック査定化 ‘95 ‘94  発電部門入札化     ‘95  ---  部分自由化(小規模) ‘95(特定)   (’94)  部分自由化(大規模) ‘99(特高) ‘94  部分自由化(再拡大) ‘03-05 ‘99 9

1) 規制価格・料金の政策・制度変更の影響評価 ((部分)自由化政策, 料金規制緩和など) 2) 政府サービス価格・料金制度変更の影響評価 「予察」の進め方  3-1. テーマ案 1) 規制価格・料金の政策・制度変更の影響評価    ((部分)自由化政策, 料金規制緩和など) 2) 政府サービス価格・料金制度変更の影響評価 (有償・無償化, 料金体系変更など) 3) 特定政策目標のための価格・料金制度の評価    (ピークロード・プライシング, 補助制度など) 4) 完全独占事業体と料金・赤字補填問題 (地方公営企業, ○○公団・協会問題) ← これらのテーマはあくまで「例示」, 相談可 10

1) 規制価格・料金の政策・制度変更の影響評価 ((部分)自由化政策, 料金規制緩和など) 過去の事例; - 家庭用電気料金自由化の影響評価 「予察」の進め方 1) 規制価格・料金の政策・制度変更の影響評価    ((部分)自由化政策, 料金規制緩和など)  過去の事例; - 家庭用電気料金自由化の影響評価 - 航空運賃・貸切バス運賃・タクシー運賃の規制緩和影響評価   - 食糧管理制度段階廃止による影響評価 - 薬価基準改定による価格影響評価 - 生命保険規制緩和の影響評価 - 灰色領域金利廃止とサラ金業への影響評価 11

2) 政府サービス価格・料金制度変更の影響評価 (有償・無償化, 料金体系変更など) 過去の事例; - 京都市ゴミ袋有償化の影響評価 「予察」の進め方 2) 政府サービス価格・料金制度変更の影響評価    (有償・無償化, 料金体系変更など)  過去の事例; - 京都市ゴミ袋有償化の影響評価 - 東京湾アクアラインの料金割引社会実験の結果評価   - 国際商用ロケット市場の経済厚生分析 12

3) 特定政策目標のための価格・料金制度の評価 (ピークロードプライシング, 補助制度変更など) 「予察」の進め方 3) 特定政策目標のための価格・料金制度の評価   (ピークロードプライシング, 補助制度変更など)  過去の事例; - 東京湾アクアラインの料金割引社会実験の結果評価(再掲)   - 鉄道運賃によるピークロード料金制度の影響評価 - 家庭用太陽光発電固定価格買取制度の分析 - 家計ガス消費の所得効果・価格効果の推計 13

- 京阪神市バスの「管理受委託」による影響評価 - 東京湾アクアラインの料金割引社会実験の結果評価(再掲) 「予察」の進め方 4) 完全独占事業体と料金・赤字補填問題    (地方公営企業, ○○公団・協会など)  過去の事例; - 京阪神市バスの「管理受委託」による影響評価 - 東京湾アクアラインの料金割引社会実験の結果評価(再掲) 14

「予察」の進め方 3-2. 何をしたら「評価」したことになるか - 価格・料金制度の評価上の着目点は 「費用・便益がどう変化したか」  3-2. 何をしたら「評価」したことになるか - 価格・料金制度の評価上の着目点は        「費用・便益がどう変化したか」 実質費用・便益 便 益 追加的便益 政策による費用便益差 追加的費用 費 用 時 間 (政策実施前) 政策実施後 15

「予察」の進め方 3-3. 部分均衡による余剰分析 定量化可能 - 費用・便益の変化は部分均衡による余剰分析で 実質価格・費用  3-3. 部分均衡による余剰分析     - 費用・便益の変化は部分均衡による余剰分析で     定量化可能 実質価格・費用 + 消費者余剰 CS 社会的余剰 SS = 消費者余剰 CS + 生産者余剰 PS X0 平均費用 AC 規制料金・価格  P0 + 生産者余剰 PS 需要 D 16 数 量 Q0

3-4. 部分均衡による余剰分析を用いた「評価」 「予察」の進め方  3-4. 部分均衡による余剰分析を用いた「評価」 実質価格・費用 便益 (不変) 費用 (低下) 時 間 (政策実施前) 政策実施後 実質価格・費用 社会的余剰 SS 社会的余剰 SS 変化 = 政策の実施効果 X0 平均費用 AC X1 (=X0) P1 平均費用AC(低下) C0 C1 需要 D 需要 D Q0 Q1 (=Q0) 数 量 数 量 17

- (1) まず評価対象とする価格・料金制度の変更 などの「事象」を仮決めする; ← なるべく大きな制度上の「事象」を選ぶこと 「予察」の進め方  3-5. 手際よく進めるには - 評価の場合(1) - 価格・料金制度の評価上の着目点は        「費用・便益がどう変化したか」 - (1) まず評価対象とする価格・料金制度の変更      などの「事象」を仮決めする; ← なるべく大きな制度上の「事象」を選ぶこと - (2) 当該「事象」の前後の期間で 5年毎・15年分      程度データを予備収集し、粗く費用・便益が      「事象」によりどう変化したかを観察 (概査) 18

- (3) 「事象」前後で殆ど費用・便益の変化がない 場合・悪化した場合など、状況に応じて作業 仮説を設定し、作業計画案を立てる 「予察」の進め方  3-6. 手際よく進めるには - 評価の場合(2) - (3) 「事象」前後で殆ど費用・便益の変化がない      場合・悪化した場合など、状況に応じて作業       仮説を設定し、作業計画案を立てる  - (4) 外部要因の除去方法など作業仮説からの     「精査」の進め方や留意点については、今後 数回に分けて講師が「実例」で説明 - (5) 「概査」段階でブレが激しい場合、時系列で     のデータがない場合には早めに「方針転換」 ← 「大失敗」しないコツ         19

- 簡単なPQ図を作成すると見通しが良くなる! 「予察」の進め方  3-7. 手際よく進めるには - 評価の場合(3)   - 簡単なPQ図を作成すると見通しが良くなる!      20

- 具体的分析戦略を決めずデータ解析を続ける ;「何か見つかるだろう」と漫然と作業を続ける ← 迷走の末「時間切れ」となる可能性大! 「予察」の進め方  3-8. 典型的な「失敗する」パターン - 具体的分析戦略を決めずデータ解析を続ける ;「何か見つかるだろう」と漫然と作業を続ける      ← 迷走の末「時間切れ」となる可能性大!  - データが揃ったらいきなりSTATAで計量分析を掛ける ; 「高度な手法」を過信し概査を軽んじる      ← 高度な手法は適用範囲が限定される! - 先行研究との差異を過度に意識し過大な目標を立てる ; 「余りに遠大な作業に疲れてしまう」       ← 納期内に「手堅く纏めること」は重要!        21

4-1. 制度の概略・価格・数量などの情報源(1) - 殆どの規制産業の価格・料金制度の概略 ← 消費者庁“公共料金の窓” HP 4. 有益な情報源  4-1. 制度の概略・価格・数量などの情報源(1) - 殆どの規制産業の価格・料金制度の概略    ← 消費者庁“公共料金の窓” HP     http://www.caa.go.jp/seikatsu/koukyou/    ← 但し「鵜呑みにすべからず」 - 規制産業の価格・料金制度変更の経過・推移 ← 政策制度変更の際には必ず「審議会」が      開催されている    ← 各所管省庁の「白書類」・「審議会資料」の うち「事象」の前後年度分を探すこと      22

4-2. 制度の概略・価格・数量などの情報源(2) - 消費者物価(含規制料金・価格)の推移 ← 総務省統計局“消費者物価指数” HP 4. 有益な情報源  4-2. 制度の概略・価格・数量などの情報源(2) - 消費者物価(含規制料金・価格)の推移    ← 総務省統計局“消費者物価指数” HP      http://www.stat.go.jp/data/cpi/ - 規制料金・価格の評価対象の需給量推移 ← 各所管官庁がHP上で統計値を公開したり、      「○○統計年報」「ハンドブック」類を発行    ← 該当量がない・途切れている場合に要注意 - 一般的情報収集なら「国会図書館HP」が秀逸     http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/   23

4-3. 制度の概略・価格・数量などの情報源(3) - 規制料金・価格の評価対象の費用推移 ← 規制産業の財務諸表や決算報告書はその 4. 有益な情報源  4-3. 制度の概略・価格・数量などの情報源(3) - 規制料金・価格の評価対象の費用推移 ← 規制産業の財務諸表や決算報告書はその      殆どが一般公開されている    ← 電力・ガスなどの場合、ここから料金・価格も      推計可能    ← 財務諸表・決算報告書の読み方は少し工夫      が必要、講師が説明する実例でノウハウを      つかむこと   24

4. 有益な情報源 4-4. 過去の事例研究の報告書 - 報告書は松村先生HPからDL・閲覧可 4. 有益な情報源  4-4. 過去の事例研究の報告書 - 報告書は松村先生HPからDL・閲覧可    http://dbs.iss.u-tokyo.ac.jp/~matsumur/HPJA.html - 過去の先輩方の報告書から、量的・質的に    前期・後期にどの程度迄の作業が必要かを    推察しながら、無理のない範囲で かつ    1年の時間を掛ける意義のある事象につき テーマ選定と予察を進めること 25