旧高野家常時微動調査 07TC040 小山梨紗 07TC076 本郷博之.

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旧高野家常時微動調査 07TC040 小山梨紗 07TC076 本郷博之

研究内容 木造建造物の常時微動計測 データをフーリエ変換し、観測波形の解析 常時微動とは・・・ 平常時に起こる微小な振動(風、道路の振動など) 地震時の構造物の挙動を推測できる 研究内容は~です。得られる観測波形は速度と時間の関数ですが、フーリエ変換を用いて振動数とスペクトルの関数に変換することで、構造物の挙動を調べることができます。また、常時微動とは~という利点があります。

常時微動計測 計測は、 (A)地盤の測定、(B)木造構造物の測定、の2種類を行った。 (A)土間においてH/Vスペクトル (B-1)振動計を1階に2つ(1,2ch)、2階に4つ    (3~6ch)設置し、同時計測 (B-2)振動計を1階に2つ(1,2ch)、2階に2つ (3,4ch)、屋根下に2つ(5,6ch)設置し、 同時計測 計測は(A)地盤の測定、(B)木造構造物の測定の2種類行います。(A)では振動計を土間に設置し水平動と上下動のスペクトル比、(B)では振動計を1階に2つ、2階に4つ設置する方法と、1階に2つ、2階に2つ、2階の屋根下に2つ設置する方法で、同時計測を行いました。

微動計 センサーをつなぎ観測地点での微動をグラフ化する こちらが、計測に使用した微動計で、センサーをつなぎ観測地点での微動をグラフ化するものです。最大で6ch(6方向)の同時観測が可能です。 4

調査地:旧高野家住宅(店舗) 特徴 建築年代:江戸時代末期 出桁造り 茅葺屋根 浦和宿から移築の際・・・ 瓦屋根から茅葺屋根に変更 施設名 : 浦和くらしの博物館民家園 (さいたま市緑区下山口新田1179-1) 特徴 建築年代:江戸時代末期 出桁造り 茅葺屋根 浦和宿から移築の際・・・ 瓦屋根から茅葺屋根に変更 べた基礎へ変更  調査地は、さいたま市緑区にある浦和くらしの博物館民家園という施設にある旧高野家住宅です。 この建物は旧中山道の浦和宿にあったお煎餅屋さんで、江戸時代末期の典型的な浦和宿の商家としてさいたま市指定有形文化財とされ、平成12年に解体・保存、平成17年度に移築・復元されました。 特徴としては、建築年代が江戸時代末期と非常に古い建物であること、出桁作り(だしげたづくり)で茅葺屋根(かやぶきやね)であることが挙げられます。 また、浦和宿から移築の際に、茅葺屋根から瓦屋根に修復してあったものを、茅葺屋根に戻し、移築する地域が非常に軟弱地盤なため、べた基礎に変更されました。 6

(A)地盤の固有振動数 2ch 1ch 3ch 1F平面図 非常に柔らかい地盤 まず、初めに地盤動の計測を行いました。左の図のように振動計を設置し、1chと2chで水平動を3chで上下動を計測しました。X軸を振動数、Y軸をスペクトル比としてグラフに表してみると、1.0Hz付近でグラフが卓越していることがわかります。このことから、地盤の固有振動数は約1.0Hzで、埼玉大学付近と同じくらいであることがわかりました。また、洪積台地の地盤は約3.0Hz程度かそれ以上を示すことが一般的なので、調査地と埼玉大学付近の地盤は非常にやわらかい地盤であるといえます。 非常に柔らかい地盤 7

(B-1-1)木造構造物の測定 (桁行方向) 6ch 4ch 5ch 3ch 2ch 1ch 2ch 4ch 6ch 1ch 5ch 3ch まずは、桁行方向に微動計を設置して観測します。その観測された波形は次のようになります。 5ch 3ch 1F平面図 2F平面図

建物の速度波形(桁行方向) 1ch 3ch 5ch 2ch 4ch 1F平面図 2F平面図 6ch この図は、観測した波形の一部を表したものです。横軸を時間(s)、縦軸を微動の速度(cm/s)で表しています。 このグラフは桁行方向のみを表したもので、梁間方向は次のグラフになります。

建物の速度波形(梁間方向) 1ch 2ch 5ch 3ch 4ch 6ch 1F平面図 2F平面図

スペクトル比 固有振動数 桁行方向(3ch,5ch) 3.3Hz 梁間方向(4ch,6ch) 3.3Hz 3.3Hz 2F平面図 3ch

(B-1-2)木造構造物の測定 (梁間方向) 4ch 3ch 2ch 1ch 5ch 6ch 3ch 5ch 6ch 4ch 2ch 1ch 次にスライドで示されているように、梁間方向の位置に微動計を設置して同様の計測を行いました。 1F平面図 2F平面図

建物の速度波形(桁行方向) 1ch 2ch 5ch 6ch 3ch 4ch 1F平面図 2F平面図

建物の速度波形(梁間方向) 1ch 5ch 6ch 3ch 4ch 2ch 1F平面図 2F平面図 この場合も先ほどと同様に、大黒柱の部分で梁がつながれていて、1本の梁で渡っていないので拘束が弱く、わずかに異なる動きをしていることが確認できた。

スペクトル比 固有振動数 桁行方向(3ch,5ch) 3.3Hz 梁間方向(4ch,6ch) 3.3Hz 3.3Hz 4ch 3ch 2F平面図 1ch 2ch 4ch 3ch 5ch 6ch 3.3Hz これはスペクトル比のグラフです。固有振動数については先ほどと同じ値が得られました。また、3chと5chでは3.3Hzの部分で大きな差がみられました。 これは5chの方が3chよりも揺れが大きいということがわかります。

3ch側 その理由として考えられるのは、5chは入り口側であり、3chの側よりも壁が少ないということが挙げられます。壁が少ないので、剛性が弱く大きく揺れる原因になります。 5ch側

(B-2)木造構造物の測定 (屋根下) 5ch 6ch 4ch 3ch 2ch 1ch 3ch 5ch 6ch 4ch 2ch 1ch 次に2階と屋根下に微動計を設置して計測しました。この計測で上に行けばいくほど揺れているかどうかがわかります。スライドに示すように微動計を設置しました。 1F平面図 2F平面図

建物の速度波形(桁行方向) 1ch 2ch 5ch 6ch 3ch 4ch 1F平面図 2F平面図

建物の速度波形(梁間方向) 1ch 5ch 6ch 3ch 4ch 2ch 1F平面図 2F平面図 梁間方向の揺れは、桁行方向の揺れよりも明らかに大きいことがわかります。しかし、先ほどのグラフよりも似たような動きをしています。

スペクトル比 梁間方向(4ch,6ch)では同程度のスペクトル 桁行方向(3ch,5ch)ではスペクトルに若干の差 4ch 3ch 6ch これは、1階のスペクトルと2階または屋根下のスペクトルとの比をとったものです。このグラフを見ると、固有周期は先ほどと同様に3.3Hz程度ですが、3ch、5chについてはスペクトル比に差が現れました。これは桁行方向について上階である5chの方が揺れが大きいということになります。 5ch 2F平面図 24

結論 地盤の固有振動数は約1.0Hzであり、非常に軟弱な地盤である。(一般の地盤は3Hz程度) 地盤の固有振動数と建物の固有振動数は一致していないので、共振の心配はない。 南側(入り口側)の方が、北側よりも開口部の影響で壁の剛性が弱く、揺れやすい。 桁行方向については、上階にいくにつれて揺れが大きくなる。 位相差の成分を考えると、より深い揺れの特性をつかむこともでき、更なる計測と解析が必要であるとわかり、今後の課題としてより深く追求していきたいと思います。

参考文献 「さいたま市指定有形文化財 旧高野家住宅移築復原事業・旧高野家離座敷修理事業報告書」(編集・発行 浦和くらしの博物館民家園) 「さいたま市指定有形文化財 旧高野家住宅移築復原事業・旧高野家離座敷修理事業報告書」(編集・発行 浦和くらしの博物館民家園) 「木造の詳細1 構造編」(発行 彰国社刊) 「木質構造 第3版」(編著 杉山英男)

謝辞 常時微動測定の実施に際してご協力,ご教示頂いた浦和くらしの博物館民家園の方々に厚くお礼申し上げます.

スペクトル、スペクトル比 通常、X軸を振動数、Y軸をスペクトル、スペクトル比で表す。 どの振動数の波が多く含まれているかを表している。 スペクトル同士の比を取ったものがスペクトル比。 車の通過による振動などの、余計な振動を排除する。 スペクトル 振動数 スペクトル比 分子chの方が揺れが大きい 振動数 ほぼ同方向の揺れ

出桁造り(だしげたづくり) 建物正面の軒の出を強調した造り。 もともとは家の軒を深く、丈夫にするための工夫であったが、家を立派に見せるための飾りとして使われるようにもなった。 商店建築に多く見られた。

べた基礎 地盤にコンクリートを一面に敷いた基礎。 地盤が非常に軟弱な場合に使われることが多い。 つか石 地盤にコンクリートを一面に敷いた基礎。 地盤が非常に軟弱な場合に使われることが多い。 ※今回の基礎では、地盤と上部構造をアンカーボルトで固定している。 土間 コンクリート アンカーボルト

玉石基礎(たまいしきそ) 地盤の上に石を置き、その上に柱を載せて建物の土台を支える基礎。 古い建造物や山荘などに用いられる。 木材