3K10 保育園での宇宙の話 富田晃彦(和歌山大学) 第53回 宇宙科学技術連合講演会 2009年9月11日、京都大学吉田キャンパス.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
第 4 課 写真をとっ てもいいですか?. 目的 許可に関する表現が聴き取れる。 聴く前に ( 1 )聴解に使う音声的知識について学 ぶ。 ー 外来語( 2 ) ( 2 )絵を見て許可を求めたり許可をし たりする。
Advertisements

G G プロフの特性 を調べよう. メディつき授業パッケージ プロフィール帳 PROFILE 誕生日 星座 けつえきがた 趣味 / 特技 住所 名前 電話番号 メールアドレ ス モテモテ やさしさ オシャレ おわらい 将来の夢を教えて 今ハマっていること は ?
1 Travel Memory's Map ~咲いた草花は地域への想い~ 大学生になると、サークルやアルバイトで出会った友達と旅行に行く機会が多くなる。 無計画の旅はそれなりに楽しいかもしれないが、事前に地域の魅力や情報を知っていたら、より充実した旅になるであろう。 一方、旅に来てもらう側では、訪れる人が少ないと地域経済が停滞し、地域社会が衰退する結果になってしまうので、積極的に地元の魅力.
「環境教育概論」資料置き場 幼児期における環境教育 里山保育・「森のようちえん」 西村仁志 広島修道大学「環境教育概論」
「環境教育概論」資料置き場 *昨年度の講義資料(予習したい人)
「環境教育概論」資料置き場 幼児期における環境教育 里山保育・「森のようちえん」 西村仁志 広島修道大学「環境教育概論」
コンテンツ・クリエイティビティ・ビジネス
和歌山大学全学FDワークショップ「授業改善に向けた私の工夫」
こども建築教室 私たち建築家が、子供たちに何かを伝えたい。 そんな思いから、小学校・中学校に出かけて行って 建築教室に取り組み始めて
保育園での 天文分野の アウトリーチ 富田晃彦*(天文学) 嶋田由美(音楽科教育) (和歌山大学教育学部)
2007年6月15日(金) 瀧川 光治(樟蔭東女子短期大学)
子ども達への科学実験教室の運営方法論 -環境NGO「サイエンスEネット」の活動事例をとおして- 川村 康文
私達のふるさと、NICU 第1回NICU同窓会へのメッセージ.
  校内研修会 学級・学年懇談会で生かす 構成的グループエンカウンター.
ジャーナリズム論 第8回 ニュースとは何か 担当:野原仁.
デザインと感性 第1講 担当:伊藤.
19課 意見を述べる.
標語を作って 中学生にネット・ケータイの 安全利用を呼びかけよう!
クイズ 「インターネットを使う前に」 ネチケット(情報モラル)について学ぼう.
重点目標 ことばを 大切にし  共に高まろう 受信→熟考→発信.
さかえ小卒業までに、子どもたちに、身につけさせたいこと
9.保育環境 瀧川 光治.
神栖市家庭教育学級運営委員研修会 「思春期講座」
家事屋通信 ☆ご利用頂いた方のお声をご紹介します☆ Vol.2 家事屋コラム 『モノを捨てるために”捨てる“べきこと』 体力的に大変でした。
全天モニターの ソフトウェア開発と データ活用の研究
保育園での天文アウトリーチ活動の試行 富田晃彦 (Tomita Akihiko) 講演番号A7 (和歌山大学教育学部)
情報学部のWebサイトを考える 2007年5月14日 石上隆達.
「大阪府南部と和歌山市の中学校・高等学校の地学(天文分野)に関する意識調査、 およびその考察」
あなたのお店をもっと 「ブランディング」して、 あなた自身の時間を作るために 業務を「自動化」しよう!
東大・理・天文 平松 正顕 ○東大・理・天文 高梨 直紘
幼児期における環境教育 里山保育・「森のようちえん」
環境の世紀17  第13回 駒場の電気を考える.
「三月三日」 08210066.
問題解決技能トレーニング オリエンテーション資料
ケータイの使い道に関心を 子どもがケータイをどのように使っているかご存知ですか?
ひかり保育園での天文アウトリーチ活動 和歌山大学教育学部 河野明里 2008年2月15日 和歌山大学.
電波望遠鏡による銀河系地図作製 和歌山大学 教育学部 天文ゼミ 菊池かおり
案内人になってから(3段ロケット) ~星空案内人®制度シンポジウムの報告~
宮城教育大学 情報数理専攻 鵜川研究室 菊池由希子
ワークシート 高校生向け Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 自然・環境 サンゴは海の中でどんな役割を担っていますか?
うちゅうのおはなし を通して子どもに伸ばしてほしい 科学の芽
夏のコンピューター学習会 WEBコンテンツ デジタル教科書 活用講座.
データからいろんなことを学ぼう! このスライドでは、順に、こんなことを説明します。 「データ」って、どんなもの? 「データ」を集めてみよう
自由席にしています。 資料のある席へお座りください.
インターネット上のコミュニケーションの 特徴について 正確な情報伝達が可能 気持ちが伝わりづらいという欠点も まとめ
山形発の資格制度「星のソムリエ」 と NPO法人小さな天文学者の会の活動 今後推進したい項目 #
投稿: 投稿前に考えよう レッスン#2:投稿 - 投稿する前に考えよう!
わたがし を食べちゃった 早坂キャスター ベテルギウス 三ツ星 宇宙に浮かぶ雲 オリオン座の東側の写真(学芸大学、土橋先生提供)
’98「愛」ネットワーク ボランティア団体 レポート 【当日の様子】 活動紹介 ■ボランティア団体探検ツアーではこんなことをしました。
ゲームの秘密を探ろう 第1時 小学校 学年 ひみつ さぐ ぼくはミクシって いうんだ。 いっしょにゲームのことかんがえようね
中級日本語 第 10 課  天気のことわざを考える 吉林華橋外国語学院 日本語学部 製作.
黒はいや!   白のパンダにして!.
日本の高校における英語の授業は 英語がベストか?
インターネットの 長時間利用について 考えよう!
保育園児とそれを見守る大人への科学の話しかけ
企画 協力 制作 画像提供:JAXA/NASA 高学年用.
保育園、幼稚園、学童保育での 「うちゅうのおはなし」 富田晃彦(とみた あきひこ) 和歌山大学教育学部
平成12年3月10日 情報処理振興事業協会(IPA) 財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)
ワークシート 中学生向け Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 自然・環境 サンゴは海の中でどんな役割を担っていますか?
Cisco Spark & Spark Board による大学教育現場の 新たなコラボレーション スタイル ― 東洋大学
たくさんのことを学んだよ! 2年生職場体験学習 平成17年9月27~29日.
今日は広告のポスターを調べます。.
子どもの幸せ 社 社会を動かす! 質問1: あなたが幸せだと感じる瞬間は? 質問2: 友だちの話をじっくり「聴いた」とき、
自由席にしています。 資料のある席へお座りください.
研究者情報発信活動推進モデル事業 (科学技術振興機構) 星空案内のガイドさんの資格制度がスタートします
星のソムリエTM資格制度の全国普及モデルの開発
『Tsuku-場 第10回イブニング・レクチャー』アンケート集計結果
1月 やぎざのおはなし ひかり保育園での天文アウトリーチ活動 和歌山大学 教育学部 河野明里 保育園で天文アウトリーチ活動を行っています
映像を用いた 「からだ気づき」実習教材の開発
○○研修会.
Presentation transcript:

3K10 保育園での宇宙の話 富田晃彦(和歌山大学) 第53回 宇宙科学技術連合講演会 2009年9月11日、京都大学吉田キャンパス

この研究は: ひかり保育園というところに毎月訪問し、 「うちゅうのおはなし」を行っている。 何を期待して訪問しているのか?  ひかり保育園というところに毎月訪問し、  「うちゅうのおはなし」を行っている。  何を期待して訪問しているのか?  どうやって自己評価しているのか? 報告 議論

なぜ? 科学の教育普及活動のひとつとして、 保育園で、宇宙・空の話をしている。 科学の方法、見方* を、多くの人と共有したいから あとで議論 * 園児に対して、どう考えるか:   直接体験はもちろん、それだけにとどまらず、もっと大きく世界を感じる。   感じる。感じたことを表現する。そして伝えあう、試す。 あとで議論 多くの人と「資産」を持ち合いたい 教育普及活動に出かける際、その大義名分を何とするか?  色々な考え方がある。

なぜ? 科学の教育普及活動のひとつとして、 保育園で、宇宙・空の話をしている。 a, b 両方にアプローチできる場所:保育園(および幼稚園)  なぜ「b」? → 「b」の「a」への影響 そして、「b」の対象としての興味

なぜ? 科学の教育普及活動のひとつとして、 保育園で、宇宙・空の話をしている。 子どもにも大人にも、宇宙は人気分野 (宇宙 = 頭の上、雲と雲の向こう) 頭の上は、誰にでも手に入る大自然 (しかも、よく見れば、いろいろ見える) おとぎの世界へも接続 (天文屋にとって、これは幸運なことである。)

いつ どこで だれが なにを なにで ほぼ毎月1回、毎回30分程度 ▶ 2006年12月開始、2007年11月より毎月訪問  ▶ 2006年12月開始、2007年11月より毎月訪問 ひかり保育園(大阪府藤井寺市、地域の中核的な園)  ▶ 3,4,5歳児(80人)対象に、一斉に  ▶ 単発渡り歩き型ではなく、一ヶ所継続型 富田(専門:天文学)と学生(教員養成の課程)  ▶ ゲストとして → 園全体からの協力を頂く うちゅうのおはなし (星座、地球史、雲、空、惑星) おはなし+しつもん (大道具の類は、なし)

せいざのおはなし 黄道十二宮の神話をもとに、話と絵をアレンジ(河野明里、2009年4月より小学校教員が担当)。今晩見る星空との関連が強いわけではないが、毎月の星座巡りという形になっており(お誕生会と関連)、おとぎ話の世界と関連している(劇で使った童話との関連)。

くも 雲の十種の形を中心に12ヵ月で空巡りをした。十種の形に加え、飛行機雲、青空で12回。「うろこ…は、わからないな」「ひつじ、知ってる!」「綿はこんなお花が咲くよ」と話が弾み、天気の変化にも興味が出てきている。

これは なんだ? 小さな水の粒は買い物中にも 顔を出すぞ! 虹は部屋の中にもあるぞ! 虹は、水や光をうまく料理すると台所でも作り出せる。CDなどを斜めから見ても見える。湯気や露などはコンロ、冷凍庫などで見ることができ、雲の正体でもある。天上界と台所がつながっていることを(科学という乗物で、頭が空を飛ぶ)伝えようとした。 わた雲といえば、綿 (見たことある?) これは なんだ?

うちゅうのたび 毎回1つ天体を取り上げ、JAXA/NASAなどで公開さ れている写真の投影も利用しながら、案内をする。 “風景画”をじっくり見てもらい、その世界を想像し、普 段の生活とのつながりと“断絶”を楽しんでもらう。 「おとぎの世界とつながる宇宙・空への想い」、「空想力 で、時・空間の旅を楽しむ」面をもっと引き出す。 投影した写真の何枚かを大判に印刷し、「敷物」にして じーっと見てもらう。その星に「行って」もらう。   →スライド投影だと、いまいちよそよそしい。

事前・事後の活動、園児の観察法 担任の先生は当日、事前に「どんなかな」、 事後に「どうだったかな」の時間を持って下さる。 当日の実践後、担任の先生、園長、主任の先生方から、園児の様子を詳しく教えてもらっている。 →これが評価のための一番の資料 園児の観察は普段接している先生方が一番よくご存じ。   富田は直接の現場経験がない者なので、園児の観察がしっかりできない。   訪問時の短い時間だけでは、園児の様子をつかみようがない。   特別な環境下での園児の様子だけ見ても、その園児を知ったことにならない。

失敗例が多い(結構落ち込んでいる) 自己評価 天文屋がやりそうな失敗を、私は繰り返してきた: しかし保育園の方々は暖かく見守ってくださり、また気長に私の成長を待って下さる(私の学生教育でも参考にせねば) 天文屋がやりそうな失敗を、私は繰り返してきた: そんなつもりはないが、どうしても知識流し込み型の癖がついている。 確かに、知識量は多ければ越したことはない。しかしまず、人間は宇宙という「環境」を知りたがっている、その好奇心を強く持っている、あれこれと考えを巡らせる活動を楽しんでいる、ということを伝えたい。園児の考えで「誤概念」に見えるものがあっても、それ自体はここでは問題にならない。

なんか質問ないですか? で質問は一応来る。しかし、よそよそしい感じもある。  きれいな写真を出せば、臨場感があると考えてしまう。 その写真を見て、色々と想像できるのは、数々の経験・知識あってのこと(これは宇宙の分野に限らず、ものごと一般に)。科学的に臨場感抜群の写真が多数手に入るようになっただけに、それに頼りすぎる。そこで、直接園児に感じてもらえる絵を描いてみることにした。 なんか質問ないですか? で質問は一応来る。しかし、よそよそしい感じもある。 園児にもみくちゃにされて、わーわー話し合うことをしている。汗まみれの頭をかきむしられるし、腕時計のスイッチは押しまくられるし、顔と顔がこっつんこするし、一斉に抱きついてくるし、その中で“新説”を次々にひねり出してくれる。

印象的な、園児さんのようすの報告例 普段の園生活で、雲や虹を探すようになる。 冷凍庫を開け閉めで「白いもの」を何度も確認する。 窓に「はー」をやって、くもりを何度も作ってみる。 毎回読み切り話を、一貫した構成に作ろうとしている。 クレーターはなぜできたのか?考えて、言い合う。 水星は暑いか寒いか、理由をつけて、言い合う。 写真を見てもいろいろ気がついている。  大きさがいろいろ、色がいろいろ。  形がいろいろ、あれに似ている、など。 聞いたことをいちいち人に話したがる。 宇宙ネタは「感じる」「考える」「試す」「伝える」の興奮が起こりやすい。だから、園児は宇宙ネタが好きなのだ。 試す 試す 試す 考える 伝える 伝える 感じる 伝える

保護者参加 企画にも参加 ゲストと保護者の 信頼関係構築のために たなばたまつり での切り絵

>>> この感性こそ、宇宙・天文学が伝えられる国際感覚 <<< 新展開:ハワイの保育園との交流 国立天文台ハワイ観測所 outreach scientist 臼田-佐藤功美子さんとの連携による Kaumana Keikiland とのビデオメッセージ交換(二往復) ハワイで:(Kumikoさん)私たちはどこにいる? (子どもたち)地球!        (Kumikoさん)そう、みんなも日本のお友だちも、地球にいるよ! >>> この感性こそ、宇宙・天文学が伝えられる国際感覚 <<<

ま と め だれに: 園児、そして園児を見守る大人の層に なにを: 科学(宇宙、空、天文)ネタを、感じる、 だれに: 園児、そして園児を見守る大人の層に なにを: 科学(宇宙、空、天文)ネタを、感じる、      あれこれ考える、伝える、試す、という活動を なにで: ゲストとして「うちゅうのおはなし」で どうだったか: 3年の実践で、活動が盛り上がることを感じた       by 保育者の観察、そして協議会 どうしてそうなったか: 園児の好奇心、宇宙ネタの好奇心喚起力、  宇宙ネタの料理法、園児を見守る大人の支援と自身の興味喚起 活動継続の秘訣: この研究に大変協力的な園の存在        園長先生, 主任保育士, 担任保育士, 園を紹介下さった音楽教育教員

なぜ? 科学の教育普及活動のひとつとして、 保育園で、宇宙・空の話をしている。 科学の方法、見方* を、多くの人と共有したいから あとで議論 * 園児に対して、どう考えるか:   直接体験はもちろん、それだけにとどまらず、もっと大きく世界を感じる。   感じる。感じたことを表現する。そして伝えあう、試す。 あとで議論 多くの人と「資産」を持ち合いたい (教育学部教員# が教育普及活動に出かける際、その大義名分を何とするか、  少なくとも5種類を聞いた。)# ただし、富田が出会った範囲内。    I: 仮面をかぶるだけ、II: 科学研究にヒト・モノが来るように、    III: 理科教員ポストを増やす、IV: 趣味、V: 無邪気に “素晴らしさ“ を

なぜ? 科学の教育普及活動のひとつとして、 保育園で、宇宙・空の話をしている。 a, b 両方にアプローチできる場所:保育園(および幼稚園)  なぜ「b」? → 「b」の「a」への影響 そして、「b」の対象としての興味