Astro-E2衛星搭載用X線CCDカメラ(XIS)の軟X線領域における較正

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Presentation transcript:

Astro-E2衛星搭載用X線CCDカメラ(XIS)の軟X線領域における較正 勝田 哲、林田 清、鳥居研一、並木雅章、 東海林雅幸、松浦大介、宮内智文、 常深 博(阪大理)、幸村孝由(工学院大)、 片山晴善(JAXA)、他Astro-E2 XISチーム

XIS(X-ray Imaging Spectrometer) Astro-E2衛星 太陽電池 ~30cm ~4.5m ~1680kg http://www.astro.isas.ac.jp/astroe/gallery ●XIS: Astro-E2衛星に搭載されるCCDカメラ。(5台のX線望遠        鏡のうちの4台の焦点面検出器) ●CCDの大きさ: 24mm×24mm(18分角×18分角に対応) ●特徴: 撮像と同時にX線光子1つ1つについてエネルギーを        測定できる。  ●構成: EU1台、FM6台(4台のFI-CCDと2台のBI-CCD) こちらの絵は来年初夏に打ち上げ予定のX線天文衛星Astro-E2衛星の打ち上げ後のイメージ図ですが、このように5台のX線望遠鏡が搭載されています。そのうち4台の焦点面検出器としてこの(絵を指して)X線CCDカメラXISを搭載します。XISのCCDの大きさは一辺が24mmの正方形で、18分四方をカバーしています。特徴としては、普通のCCDカメラのように撮像をするだけでなく、光子1つ1つのエネルギーを測定できるのでスペクトルが得られるというところです。また、CCDの裏面からX線を照射する裏面照射型CCDを搭載します。XMM、チャンドラでもBICCDは搭載されてきましたが、エネルギー分解能がFICCDより悪いという欠点がありました。しかし今回のBICCDは表面の特殊加工によって、飛躍的にエネルギー分解能を向上させることに成功しています。XISは、エンジニアリングユニットと呼ばれる非フライと品1台と、フライトモデル6台から構成されています。フライトモデルはFICCD4台と、BICCD2台がありますが、このうち衛星に搭載するのはFI3台、BI1台です。

XISの較正試験 低エネルギー側(0.2-2.2 keV)を大阪大学、高エネルギー側(1.5-15 keV)を京都大学が担当。 2003.12~2004.7 阪大での較正試験 (7台のXIS) 2004.7 衛星に組み込んでの試験 2004.8 熱真空試験 2005 夏 打ち上げ 今回の話の内容 真空チェンバー XISのエネルギーの関数としての検出効率 データ処理の際の補正 X線発生装置 XISの較正試験は、0.2-2.2keVの低エネルギー側を我々大阪大学、1.5-15 keVの高エネルギー側を京都大学が担当しています。我々大阪大学では、2003年12月から2004年9月にかけて全てのXISの較正実験を行いました。本発表では、XISの量子効率とデータ処理の際の補正について報告します。この2番目のデータ処理の際の補正と言うのは衛星から送られてくるデータに対してイベント選択、PH合成と言ったデータ処理をするとき行う補正のことです。こちらの写真は阪大での実験装置ですが、我々はX線発生装置から放射されるX線を回折格子で分光し、分散X線をこの真空チェンバーに設置したXISに照射するようにしています。 衛星からのデータ データ処理 解析に使うデータ ~3m イベント選択 PH合成 グレーティング

分散スペクトル projection エネルギー 分散方向 検出イベント数 イベント抽出した画像 O-Kα(0.53keV) FWHM~5eV O-Kα(0.53keV) こちらがCCDで得られたX線画像です。分散X線が上下方向に当たっています。低エネルギーほど下に分散されていまして、CCDのこの方向の位置とエネルギーは1対1に対応しています。このような明るい筋は、特性X線に対応しています。これをこの方向にプロジェクションしたのがこちらの図です。このようにして得たエネルギースペクトルは、CCDで得られるスペクトルよりもはるかに優れたエネルギー分解能のスペクトルになっています。このスペクトルを我々は分散スペクトルと呼びます。以降、この分散スペクトルをもとに解析を行いました。 C-Kα (0.28keV) 分散方向 検出イベント数

1a. 軟X線領域でのXIS検出効率較正 1. 比例計数管(PC)の検出効率 3. FMの検出効率 XIS-EU or 単色 PC XIS-FM 単色 PC 分散X線 分散X線 スリット 分散X線をスリットを通さずにXIS-CCDに照射する 斜入射較正法:垂直入射と45º入射の検出強度の比から絶対効率を求める FM-BI1 2. EU(Engineering Unit)の検出効率 XIS-EUのPCに対する相対効率測定 EU 大阪大学でのXISの較正の手順ですが、我々はまずガス比例計数管の絶対検出効率を比例計数管単独の実験で求めました。どうしたかと言いますと、分散X線にスリットを通して単色化したX線をPCに垂直に入射させた場合と斜め45度傾けて入射させた場合の2通りでX線強度を求めます。その強度比から、PCについている窓の厚さを求めます。窓を透過したX線は100%吸収されると考えているので、窓の厚みがわかればPCの絶対検出効率がわかります。次にこの比例計数管をリファレンス検出器としてXISのEUの絶対検出効率を求めました。先ほど同様、単色化したX線をPCあるいはEUに交互に当てて、相対的に検出効率を求めました。合計8点でデータを取って、このようにEUの絶対検出効率を求めました。最後にEUとFMの相互較正によりFMの絶対検出効率を求めました。このときにはスリットは使わずに分散X線をそのままCCDに照射しました。これがEUとFM-BIの分散スペクトルです。もし全く同じ分散X線がEUとFMに当たっているのであれば、この比がそのまま相対検出効率になります。 単色 XIS-EU 分散X線 ON/OFF スリット PC 連続的なエネルギーに対する検出効率の比

1b. 入射X線スペクトルの変化と 相対検出効率 同じ条件で測定した分散スペクトル エネルギーEでの相対検出効率 2004.4.5 (EU) 2004.4 (EU) K(E)倍 2004.2.4 (FM) 2004.2 (FM) 2003.12.30(EU) Counts/8sec (log) 2004.2 (EU) y=at+b y=K(E)×(at+b) E 2003.12(EU) 繰り返し同じ条件で測定 ビーム電流を1%以内に安定化させて実験したにもかかわらず、X線発生装置からのスペクトル、つまりCCDに入射するX線スペクトルは時間とともに変わってしまいます。これはデータ取得日が違う3つの同じ条件で測定して得た分散スペクトルを重ねたものです。下から2003.12.30日、 2004.2.4日、 2004.4.5日の分散スペクトルですが、強度が増加しているのがわかります。FMとEUの相対検出効率を求めるにはこの変動を補正して割り算する必要があります。我々は次のような補正を考慮に入れた相対検出効率の求め方を考案しました。繰り返し同じ条件で測定し、あるエネルギーバンドのイベント数をそれぞれの分散スペクトルで数えます。それを横軸をX線発生装置の稼働時間としてプロットしたものです。黒い点がXIS-EUで取得したデータで、赤い点がXIS-FMで取得したデータです。このように強度が変化しているのがわかります。XIS-FMでデータを取得した期間は、相対検出効率倍した強度のX線が得られます。そこでこのデータ点をXIS-EUの強度変動を表す関数とそれを相対検出効率倍した関数で同時にフィッティングして、相対検出効率を求めました。0.2~2.5keVのエネルギーバンドを適当なエネルギーバンドに区切って色々なエネルギーバンドで相対検出効率を求めました。 稼働時間 [h] X線発生装置からのスペクトルがX線発生装置の稼働時間の 滑らかな関数として変化する。

1c. XIS-EUとの相対検出効率 BI1 FI1 K(E) K(E) 系統誤差: 5%以下 ~1.1倍@0.6 keV 以上のようにして求めた相対検出効率を示します。こちらの図はFI-CCDに対する相対検出効率ですが、低エネルギー側で検出効率が1割程度高く、また酸素のK吸収端がEUに比べて浅くなっていることがわかります。1keV以上ではEUと検出効率が違っている理由はないので、この相対検出効率の1からのズレは系統的な誤差をあらわしていると考えられます。そこで系統誤差は約5%程度と言えます。BI-CCDでは0.27keVで83倍、0.5keVでも10倍と非常に高い相対検出効率であることがわかりました。 ~1.1倍@0.6 keV ~80倍@0.28 keV ~10倍@0.6 keV

1d. XIS-FMの絶対検出効率 以上で求めた相対検出効率を用いて絶対検出効率を求めました。FICCDがこちらでBICCDがこちらです。赤が阪大のデータで、青が京大のデータです。検出効率モデルでfittingしたベストフィットモデルを緑の線で示しました。FIに関してはモデルがデータを表せていますが、BICCDに関しては、特に低エネルギー側で、検出効率が1を超えており、明らかにデータが間違っています。相対検出効率は良く求められていると考えていますので、現在リファレンスにしているPCの検出効率をいろいろと見直しています。

2a. データ処理の際の補正 d c b a 追跡ピクセル 赤線:追跡ピクセル、黒点線:先行ピクセル b a 読み出し口 先行ピクセル c PH [ADU] a b c d 読み出し口 縦転送 横転送 次にデータ処理の際の補正の話に移ります。この図は、X線が落ちたピクセルとその上下のピクセルを表しています。転送方向はこのようになっており、ここでは中心ピクセルの上のピクセルを転送の際、中心ピクセルを追うという意味で追跡ピクセルと言います。またこの下のピクセルを、転送する際中心画素に対して先行するという意味で、先行ピクセルと呼ぶことにします。これらの画素のPHの分布をCCDの領域をこのような4つの領域に区切って求めたものがこちらのグラフになります。PHを横軸に取った、PH分布を示していますが、赤が追跡ピクセル、黒が先行ピクセルの分布を表しています。ここで注目してほしいのは先行ピクセルの分布の中心がどの領域でも0であるのに対して、追跡ピクセルの分布の中心は領域が読み出し口から遠くなるほど、大きくなっていることです。これは電荷転送の際に、中心ピクセルの電荷が追跡するピクセルに漏れ出しているという可能性が考えられます。 先行ピクセル 拡大図

2b. 電荷転送回数と漏れ出し量の関係 CTI = (4.5±0.3)×10 [ /Transfer ] Mn K BI1 追跡ピクセルCenter [ADU] 1回の転送当たり漏れる電荷の量(CTI) CTI = (4.5±0.3)×10 [ /Transfer ] -6 そこで、転送回数を横軸に、追跡ピクセルの分布の中心PHを縦軸にプロットしてみると、このようにきれいに直線にのりました。1回の転送で漏れ出す電荷の量を、イベントのPHで規格化した値(CTI)は、このようにもとまりました。このCTIの式からX線の入射位置を測定すれば、追跡ピクセルに漏れ出す電荷の量がわかりますので、それを中心ピクセルに戻すことも可能です。 ⇒X線の入射位置から追跡ピクセルに漏れた電荷量がわかるので、それを中心ピクセルに戻すこと可能 縦方向の転送回数

2c. 電荷漏れ補正 補正後 補正前 補正後 下スプリットイベント (採択) 補正前 3連続イベント (不採択) PH [ADU] PH [ADU] 補正後 下スプリットイベント (採択) 補正前 3連続イベント (不採択) 実際に追跡ピクセルに漏れ出した電荷を中心ピクセルに戻しました。これは戻す前ですが、補正をしてやると、このように分布の中心値のずれがなくなりました。この補正による効果として、つぎのような効果があります。追跡ピクセルに漏れた電荷を補正する前はこのように3連続イベントで、X線イベントは1ピクセル以上に広がらないと言う理由により、イベントとして採択されていなかったイベントが、補正によってこのように、採択イベントになります。つまり、実効的な検出効率が増加します。これによってBICCDではX線エネルギーによって、実効的な検出効率が10~20%向上させることにせいこうしました。 赤線:追跡ピクセル 黒点線:先行ピクセル 結果として実効的な検出効率を10-20%(for BI-CCD)向上させることに成功した

まとめ Astro-E2衛星に搭載するX線CCDカメラ(XIS)の較正実験を行った。 検出効率を求める際重要になるX線発生装置のスペクトル変化を考慮する新たな解析方法を開発した。その結果EUとの相対値としては、統計誤差1%、系統誤差5%以下で求めた。  BI-CCDの検出効率はEUの~80倍@0.28keV、~1.3倍@1.6keV。   FI-CCDについてはEUの~1.1倍@0.5keV。 電荷転送の際の電荷の漏れ出しの補正方法を確立した。補正の結果実効的な検出効率を10~20% (for BICCD)上げることに成功した。