磁気リコネクション研究 における MHDシミュレーションの限界と解析的研究の展望

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磁気リコネクション研究 における MHDシミュレーションの限界と解析的研究の展望 新田 伸也 (電気通信大学/国立天文台) 解析屋が抱く素朴な疑問 ・異常抵抗はどれだけ大きい? ・シミュレーションは万能か? ・解析的研究は時代遅れか? 挑発しますが、悪意は ありません。(R30:オトナ向け)

天体リコネクション研究の特殊性 1)時間発展の最初から最後まで拡散領域を十分に解像しなくてはならない ⇄ cf. 星形成 2)無次元パラメータ値が 1から大きく離れている β〜10^-2<<1、Rem* 〜 ?>>1 ⇩ 数値シミュレーションするには とても困難な問題! 従来のシミュレーション: 本当に「意味のあるシミュレーション」になっているのか?

高磁気レイノルズ数 リコネクションの意義 MHDシミュレーションのネック: 電気抵抗はモデルで与えるしかない! ⇄ 異常抵抗の実態は未解明! 実効的磁気レイノルズ数 Rem*≡Alfven速度/磁気拡散速度 10^6-10^5×Spitzer抵抗 (Rem*=10-100 )は実現されるのか? ⇩ 高磁気レイノルズ数(Rem*>>100) でのリコネクションとは?

高磁気レイノルズ数 シミュレーションの困難 メッシュ法の宿命 拡散領域は メッシュ幅より薄くなれない! ⇩ 磁気拡散速度に下限がある 電気抵抗を小さくし過ぎると、 数値拡散が支配的になってしまう! (物理的に無意味) メッシュ法による高磁気レイノルズ数シミュレーションは不可能!

(メッシュサイズ>>カレントシート厚さ下限) 大規模シミュレーションの怪しさ カレントシート厚さ下限 〜イオンLarmor半径〜10^0[m] (現実のカレントシート厚さ?) ⇩ 大規模シミュレーションでの 解像は不可能! (メッシュサイズ>>カレントシート厚さ下限) 速いリコネクションのために 現実離れした巨大電気抵抗を導入 (単なるコンジェクチャー!) 本当の現象を記述できるのか? 高レイノルズ数リコネクションを 解析的に調べてみよう!

リコネクションの解析的研究例(Nitta 2006b) 天体現象の素過程としての 2D-MHDリコネクション・モデル シミュレーションで直観を得る! (Nitta et al. 01) ⇩ アウトフロー領域:衝撃波管近似(Newton=Raphson法: Nitta et al. 02) + インフロー領域:Grad=Shafranov法(SOR法: Nitta 04、06a) 自己相似時間発展モデル (Petschekモデルを超える新標準モデル)

MHDシミュレーション

インフロー領域(G-S方程式)の境界条件 アウトフロー領域 衝撃波管近似 各不連続を跨いでの接続条件 (22元非線形連立代数方程式) ⇩ Newton=Raphson法で解く ・各不連続両側の全ての物理量 ・各不連続の配置 インフロー領域(G-S方程式)の境界条件

インフロー領域 線形近似でのGrad=Shafranov法 + Zoom-Out座標系でのMHD方程式系 ⇩ インフロー領域の1次量に関する 0次:初期平衡(カレントシート) 1次:リコネクションによる変化 + Zoom-Out座標系でのMHD方程式系 ⇩ インフロー領域の1次量に関する 2階PDE(Grad=Shafranov方程式) ←アウトフロー領域との境界条件 SOR法で解く インフロー領域の物理量

リコネクション点付近の構造 リコネクション点の位置 x=xy xy↑ as Rem*↑ Rem* 〜15:Petschek type 15〜20:X-O-X type (mag. island) >20:Sweet-Parker type (new current sheet) Xy Rem*

Petschek type Rem*=15.63 xy=0. R=0.0504 解の変遷 (β=0.01) Petschek type Rem*=15.63 xy=0. R=0.0504 ↑ X-point

X-O-X type Rem*=16.88 xy=0.048 R=0.0489 ↑ X-point

(collapsed island+double Y-point) Sweet-Parker type (collapsed island+double Y-point) Rem*=139.8 xy=0.75 R=0.00713 ↑ X-point

リコネクションレイト 固定座標 真下に流入 相似座標 リコネクション点に斜めに流入 R Rem*

磁気エネルギー変換率 リコネクション点が二つに分離 ⇩ island/カレントシートが残る 磁気エネルギーの 一部だけが解放される 変換率 f≡解放された磁気エネルギー/元の カレントシートの磁気エネルギー f Rem*

シミュレーション:時間変化、複雑系に有利 解析的研究の重要性 明らかに絶滅危惧種 やるべき事が無くなって 廃れたのではない! ・日本の計算機環境は世界一 ・シミュレーション研究の成果は得やすい ・若手は解析研究するより早く成長できる 本来、 解析的研究向きテーマ シミュレーション向きテーマ の両方があり得る シミュレーション:時間変化、複雑系に有利 解析的研究:本質の理解、極限状況に有利 e.g. MHD風理論 遷磁気音速領域:シミュレーション有利 漸近領域:解析的研究有利

関係改善を! シミュレーションと解析は相補的 ⇄ 我が国では極端にアンバランス (シミュレーション >>> 解析) ⇩ 解析的研究の復権を! もっと解析的研究人口を増やそう! いきなりM1からシミュレーションに専念せず、D2くらいまでは解析的研究(訓練)もしよう! + シミュレーションと解析的研究の コラボレーションを! 乞う!共同研究シミュレーション屋さん コロナ磁場構造、風理論、GRB etc.