腎臓特異的タンパク質myo-イノシトールオキシゲナーゼ免疫測定法の開発、急性腎障害バイオマーカーの候補

Slides:



Advertisements
Similar presentations
アメフラシ属 Aplysia Aplysia californica アメフラシ(雨降らし、雨虎、雨降)は、腹足綱後鰓類の無楯類 (Anapsidea, Aplysiomorpha) に属する軟体動物の総称。 より.
Advertisements

ヘモグロビン A 1c 測定結果の信頼性を評価する ための検査法の性能特性の利用について A. Woodworth, N. Korpi-Steiner, J.J. Miller, L.V. Rao, J. Yundt-Pacheco, L. Kuchipudi, C.A. Parvin, J.M. Rhea,
Journal Club 健常人ボランティアおよび抗血小板 剤療法を毎日受けるドナーにおける、 5 つの血小板機能検査の精度および信 頼度 B.S. Karon, N.V. Tolan, C.D. Koch, A.M. Wockenfus, R.S. Miller, R.K. Lingineni, R.K.
第 2 章 : DNA 研究法 2.2DNA クローニング クローニングベクター 大腸菌以外のベクター ゲノム分子生物学 年 5 月 7 日 担当 : 中東.
生物学的製剤と小分子化合物製剤 1. Generics and Biosimilars Initiative. (2012, June 29). Small molecule versus biological drugs. Accessed
校正自動化トロンボグラムにより測定さ れた全血トロンビン生成 M. Ninivaggi, R. Apitz-Castro, Y. Dargaud, B. de Laat, H.C. Hemker, and T. Lindhout August
レニンーアンジオテンシンシステムの阻害が、 左心室機能が残存している急性冠動脈症候群 患者の血清アルドステロンの上昇を抑える:
アレルギー・アナフィラキシー 山形大学輸血部 田嶋克史.
I gA腎症と診断された患者さんおよびご家族の皆様へ
RNA i (RNA interference).
動物への遺伝子導入 hGH 遺伝子 右:ひと成長ホルモン遺伝子を 導入したラット 左:対照ラット
メタボリック症候群(MetS)の有無と、成人以降の体重増加とCKDの関連
健常労働者集団における喫煙とCKD発症の関連性 ―6年間の縦断的観察
Targeting of Receptor for Advanced Glycation End Products Suppresses Cyst Growth in Polycystic Kidney Disease The Journal of Biological Chemistry, 2014,
外科手術と輸血 大阪大学輸血部 倉田義之.
臨床検査のための代替キャリブレーション:ノルトリプチリン治療薬モニタリングへの応用
2つの抗タクロリムス抗体を使用するタクロリムスのサンドイッチアッセイ
中性シイステインプロテアーゼブレオマイシン水解酵素は、脱イミノ化されたフィラグリンをアミノ酸へと分解するのに不可欠である
埼玉医科大学腎臓内科/総合診療内科 岡田浩一
疫学概論 患者対照研究 Lesson 13. 患者対照研究 §A. 患者対照研究 S.Harano,MD,PhD,MPH.
@Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD
生物科学科(高分子機能学) 生体高分子解析学講座(第3) スタッフ 教授 新田勝利 助教授 出村誠 助手 相沢智康
生物機能工学基礎実験 2.ナイロン66の合成・糖の性質 から 木村 悟隆
* 研究テーマ 1.(抗)甲状腺ホルモン様作用を評価するバイオアッセイ系の確立 2.各種化学物質による(抗)甲状腺ホルモン様作用の検討
疫学概論 患者対照研究 Lesson 13. 患者対照研究 §A. 患者対照研究 S.Harano,MD,PhD,MPH.
聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院 救命    古澤 彩美.
裏面に新たな認定基準の一覧を掲載していますので、ご参照ください。
Quantitative Insulin Analysis Using Liquid Chromatography–Tandem
疫学概論 感度と特異度 Lesson 19. 評価の指標 §A. 感度と特異度 S.Harano, MD,PhD,MPH.
一般住民と比較した米国透析患者の標準化自殺率比(SIR) 表.一般住民と透析患者の年齢階級別死亡者数
血液型検査法 名古屋大学輸血部 山本晃士.
コンゴー赤染色 (Congo red stain) アミロイド染色
慢性腎臓病(CKD)とは 1.腎障害の存在が明らか 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在
遺伝子の機能は、どのようにしてわかるのか
健診におけるLDLコレステロールと HDLコレステロールの測定意義について~高感度CRP値との関係からの再考察~
新規経口抗凝固薬の検査室による 評価:凝固検査間の適合性や変動 性の方法
G.S. Baird 公正なスポーツ競技の探求:我々はドーピング者か? -問題点 October 2014
母体血漿DNAの全ゲノムバイサルファイトシーケンシングによる、非侵襲的胎児メチローム解析
血液ガス分析の復習.
福島県立医科大学 医学部4年 実習●班 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇
高脂血症.
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
強皮症に伴う腎障害 リウマチ・アレルギー疾患を探る p142. 永井書店 強皮症に伴う腎病変には次の3パターンがある。
研究内容紹介 1. 海洋産物由来の漢方薬の糖尿病への応用
Nature De’Pain for Animals
目的 オメガ3脂肪酸エチルは,エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)を含む魚由来の製剤で,中性脂肪低下作用を持ち,抗動脈硬化作用を持つとされている. 現在までに心血管系イベントの抑制効果についての報告がなされているが,慢性腎臓病(CKD)に対する効果ははっきりしない. このため,当院でのCKD患者にオメガ3脂肪酸エチルを投与した結果について,各種疾患やCKDステージとの関連を含めて検討した.
疫学概論 疾病の自然史と予後の測定 Lesson 6. 疾病の自然史と 予後の測定 S.Harano,MD,PhD,MPH.
St. Marianna University, School of Medicine Department of Urology 薄場 渉
疫学概論 感度と特異度 Lesson 19. 評価の指標 §A. 感度と特異度 S.Harano, MD,PhD,MPH.
遺伝子診断と遺伝子治療 札幌医科大学医学部 6年生 総合講義 2001年4月16日 2019/4/10.
発光絶対光量測定法の開発と 生物発光の量子収率測定
表1 Monoclonal Immunoglobulin deposition disease(MIDD)
緊急輸血・大量輸血 山形大学輸血部 田嶋克史.
生体親和性発光ナノ粒子の医薬送達担体への応用
卒業研究進捗報告 2009年  月   日 研究題目: 学生番号:         氏名:          
ノニの血圧上昇抑制のメカニズムに関する研究
患者さんへの説明補助イラスト -脳せきずい液中のオステオポンチン に関する疾患比較研究- 版
高齢慢性血液透析患者の 主観的幸福感について
サンプルとミックスして泳動するだけのローディングバッファータイプ Post Staining required
病理学実習2:女性生殖器Ⅱ 卵巣の疾患・絨毛性疾患
酵素表層発現酵母を用いた有機リン農薬検出法の構築
裏面に新たな認定基準の一覧を掲載していますので、ご参照ください。
トピック6 臨床におけるリスクの理解と マネジメント 1 1.
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第13回 メタゲノミクス
不規則抗体の意義・ 検査法 名古屋大学輸血部 山本晃士.
脱水・ 循環血液量低下.
病理学実習5課題:泌尿器系 腎臓・尿路の腫瘍性疾患 前立腺・精巣の腫瘍性疾患
諏訪邦夫 (当時東京大学医学部麻酔学教室所属)
疫学概論 §C. スクリーニングのバイアスと 要件
臨床検査結果のハーモナイゼーションに対して、国際コンソーシアム(ICHCLR)が作 製した技術手順のツールボックスを用いて検討した、アルコール症バイオ マーカーである糖鎖欠損トランスフェリン測定のハーモナイゼーションに ついて C. Weykamp, J. Wielders, A. Helander,
Presentation transcript:

腎臓特異的タンパク質myo-イノシトールオキシゲナーゼ免疫測定法の開発、急性腎障害バイオマーカーの候補 J.P. Gaut, D.L. Crimmins, M.F. Ohlendorf, C.M. Lockwood, T. A. Griest, N.A. Brada, M. Hoshi, B. Sato, R.S. Hotchkiss, S. Jain, and J.H. Ladenson May 2014 www.clinchem.org/content/60/5/747.full © Copyright 2014 by the American Association for Clinical Chemistry

序論 急性腎障害 (AKI) は、一般的で重大な問題である 代表的な診断であるクレアチンや尿量は、特異性に乏しく感度が悪い 45%の重篤患者、20%の入院患者に見られ、罹患率・死亡率の上昇を引き起こす結果となる 軽度のAKIにおいても、慢性腎疾患のリスクを上昇させる 代表的な診断であるクレアチンや尿量は、特異性に乏しく感度が悪い 筋肉量、食事、肝機能に依存する 腎機能が50%低下するまで、変化しない場合がある

序論 早期の、かつ信頼性のあるAKIバイオマーカーが求められている 構造的なバイオマーカーは、障害後に上昇する Kidney injury molecule-1, neutrophil gelatinase associated lipocalin, interleukin-18, tissue inhibitor of metalloproteinase-2, insulin-like growth factor-binding protein-7 内因性の構造的なAKIバイオマーカー Alkaline phosphatase, a-glutathione-S-transferase, g-glutamyltranspeptidase, N-acetyl-b-glucosaminidase

疑問 理想的な腎障害バイオマーカーは何か?

材料と方法 腎臓特異的遺伝子の同定 抗myo-イノシトールオキシゲナーゼ (Anti-MIOX) 抗体 ジーンクリップアレイ (Affymetrix) 分析が、3匹のC57Bl/6マウスから採取された脳、肝臓、脾臓、腎臓、骨格筋、肺、膵臓、腎臓、小腸で行われた。 腎臓中で平均差分値が10,000以上、他の組織に比べて腎総で10倍以上の高発現、近位尿細管に発現している遺伝子が検索された。 抗myo-イノシトールオキシゲナーゼ (Anti-MIOX) 抗体 ヒト組換えGST-MIOXに対するウサギポリクローナル及びマウスモノクローナル抗体が作製された。 組換えMIOXは、N末端エドマン配列分析により確認された。

材料と方法 MIOX免疫測定 2種類のマウスモノクローナル抗体を用いた、電気化学発光検出システムによるMIOXサンドイッチ免疫測定法を開発した。 標準曲線作製には組換えヒトGST-MIOXを用いた。 動物モデル 8-12週齢のC57Bl/6マウスに、両側腎虚血術を30分間行った。 手術1週間前に血清を収集し-80°Cで凍結保存した。 2匹の偽手術動物に対しては、血管茎クランプ未施行以外は同一の手順を行った。 手術後24時間に血清及び腎臓を収集した。

材料と方法 ヒト患者 24-72時間で血漿クレアチンが上昇した成人重篤患者をスクリーニングした。 血漿クレアチンが72時間安定した患者もスクリーニングした。 慢性腎疾患や膀胱留置カテーテルを有さない患者は除外された。 クレアチニン上昇前 (time 0) 及びクレアチニン上昇後 (time 54) の残余血漿検体を収集した。 クレアチンの安定した代表的な患者の1検体を取得した。 患者の医療記録、基本情報、尿量、診断をレビューした。 乏尿は少なくとも6時間の尿量が、0.5 mL/kg/h未満で定義した。

疑問 バイオマーカー研究における残余サンプルを用いた利点と欠点は何か?

MIOXの腎臓特異性 Figure 1. (A) マウス組織中のMiox mRNA 発現。 (B) ヒト組織ホモジネート中のMIOX発現 (50 mg protein/lane)、ウサギ抗MIOXポリクローナル抗体による検出。観察されたタンパク質はカルボニックアンヒドラーゼ (CA, 29 kDa) とオボアルブミン (OVA, 45 kDa) の間に泳動される。 SBTI, 大豆トリプシンインヒビター (20 kDa)。一次抗体非存在下での染色は認められなかった。

抗MIOX抗体 Figure 2. (A)正常ヒト肝臓ホモジネート (kidney) のウサギ抗MIOXポリクローナル抗体 (pAb R9544) 及びマウスモノクローナル抗体12H06、1D10によるウェスタンブロット。GST-MIOXをトロンビンで切断、同一ゲルで泳動、PVDF へ転写し、タンパク染色を行った (Protein Stain) 。 タンパク染色されたバンドはエドマン配列分析され、MIOX及びGSTである事が確認された。3種類の抗体全てに反応した唯一のバンドは組換えMIOX (~33 kDa) と一致した。

マウスAKIモデル Figure 4. ベースライン及びAKI後24時間のマウス血清中のMioxを測定した (n=5)。血清Mioxは障害24時間後で上昇した(2.8 ± 0.7 ng/mL; mean ± SEM). *P<0.02 (paired t-test)。(B) 代表的な障害24時間後の腎皮質切片。広範囲な尿細管壊死が認められる (矢印、H&E, 400×)。偽手術マウスの尿細管に壊死は認められない

ヒト患者のMIOX Figure 5. 重篤及び入院患者のMIOX。 (A) 血漿クレアチニン (Cr) は先行測定値Cr (time 0) と比べて54.3±3.8時間 (time 54) でピーク を示し、AKI患者time 54で上昇した (**P < 0.005) 。 (B) AKI患者は非AKIに比べtime 0及びtime 54で高値の血漿MIOX濃度を示した (*P = 0.002) 。

ヒト患者のMIOX Figure 6. (A) 血漿クレアチンはtime 0において全ての群で同様な値である。 (B) 血漿MIOXはtime 0において乏尿及び透析の必要な患者で上昇した。 *P<0.05.

疑問 急性腎障害バイオマーカーとしてのMIOXの利点と欠点は何か? MIOXの生物学に関して解答すべき追加の疑問は何か?

Thank you for participating in this month’s Clinical Chemistry Journal Club. Additional Journal Clubs are available at www.clinchem.org Download the free Clinical Chemistry app on iTunes for additional content! Follow us